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III プレ女王国連合の成立
セレネと旅 6 海と山とに挟まれた小さき王国へ…… 2 失踪した姉妹と鏡
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「どうですかな? お二人は昼食は摂りましたか?」
王様が笑顔で砂緒とセレネに聞いてくる。
「あ、まだです……」
「では是非一緒に食べましょう! 昼食に招待しても良いですかな」
「ところでお二人はどの様な関係なの? 聞いてもよいかしら」
お后さまが二人の関係性に興味津々という感じで聞いて来た。
「従者で……」
「許嫁です!」
「まあっ! 素敵ね、許嫁二人であちこち巡るなんてロマンチックだわ!」
「ちがっ」
お后様がうっとりとして頬に両手を当てた。
「今、確か従者という声が聞こえましたぞ、従者なのか許嫁なのかどちらなのですかな?」
「従」
「許嫁です!」
「お前いい加減にしろよな、口先だけのエセエロ男爵の意気地なしの癖に、偉そうに許嫁とか言うなよ」
「いつまで同じ事を言うのですか? もう違うフェーズに移行している事を理解して欲しいですね」
二人が取っ組み合いの喧嘩をする勢いで言い合う。
「まあまあ仲が良いのね? 本当に従者だったらその様な口をきくはずも無く、きっと従者プレイなのね、素敵だわ」
「なんと……従者プレイとな? 初めて見ましたぞ」
「え、お、お二人共何を仰っているのですか?」
(駄目だ、この二人も結構変だ……)
「そうなんですよ、そういうプレイなんです、普段は偉そうに言っていますが、二人きりになると途端に甘えてくるタイプなんですよ」
「おおお、それはお羨ましい……」
「貴方ー?」
「と、ともかくゆっくりとお食事してお話を聞きたい物ですな」
しばらく待たされると、大きな明るい広間で昼食を招待される事になった。
「じ、実は私は王女の癖に畏まった食事が苦手の無作法者でして、失礼があったら申し訳ないです」
セレネがあらかじめ優しい二人を前にして本心を言った。
「良いのよ、自分の家だと思って好きな様にくつろいで欲しいの」
「ありがとうございます!」
「………………」
セレネは素直に喜んだが、砂緒はあまりに優しい二人に違和感を覚えた。
「という感じで今セブンリーフ大陸北部では列国が同盟を結び、同盟女王雪乃フルエレ様という素晴らしい女性を推戴しているのに対して、ここ中部小国群、すいません小国とか言って、ではメドース・リガリァという国が次々と侵略を進めているのです!」
「え、そうなの!? 全然知らなかったわ……」
「わしらの国は昔から強い結界で守られておってな、外の世界の事には疎いのじゃ……」
「ほほう? 桃源郷みたいですな……それをセレネがぶち壊したと?」
「チッコラ……す、すいません……」
「いやいや気にせんで下され、一週間ほど魔導士達が魔力を貯めれば復元されますぞ!」
「その一週間の内に偶然敵が攻めて来るなんて事はないでしょうね、うふふ」
お后様があっけらかんと笑った。よくこんな国がすぐに滅びてないなとセレネは心配した。
「所で……お后さまは何故その様に美しいのですか? 先程から見とれてしまって申し訳ない」
突然砂緒が唐突にお后さまを褒めだした。
「お、おいお前失礼だぞ、お前の守備範囲が広すぎて怖いわ」
「ま、まあ、どうしようかしら、うふふふ」
「お后さまを見ていると、まるで他人という気が致しません! なんと申しましょうか運命的な出会いと申しましょうか、奥様好きです!!」
砂緒は突然王様の前でお后様に告白した。
「な? お前殴るぞコラ、外出ろ!!」
セレネが慌てて砂緒の胸ぐらを掴み、引き摺り出そうとする。
「ご安心下さい! こう見えてもコイツは口先だけの根性無しで危険性は全くありませんから!」
「いい加減な事を言わないで頂きたい! それ以上言えば上四方固かけますよ!」
「お前があたしに勝てる訳無いだろーー! うりゃっ背負い投げ!!」
ビターと砂緒が大理石の床に背中から叩き付けられる。
「せ、セレネ……? ほ、本気で痛いですよ今の……」
「ほらよ、回復魔法!」
「ま、まあまあ、どうしようかしら!? 困りましたわ、私には夫のある身……」
お后様は赤面して頬に両手を当てた。
「わはははははははは、これは面白い! 夫である儂が居る横で、我が妻である后を口説くとは、なんたる豪傑! そして目の高さか! 気に入ったぞこの若者、息子に欲しいくらいじゃ」
セレネは王様が笑い出した事で、砂緒を席に戻した。
「まあ、貴方ったら、心が広いわぁ……」
「もちろんこれは本気です!! 本気で好きと思っていますとも」
「しつこい! だからもうやめいて 王様が丸く収めてくれただろが」
「と、私のウイットに富んだ会話で場が和んだ事で本題に入りたい、何故お二人はそれ程不自然な程に無礼な初対面の我々二人に優しいのですか? 何か愛に飢えきっているという雰囲気をビンビン感じます」
「お前出ろっ! マジで出ろ! 蹴り倒すぞコラ!! 失礼な事を言うな!!」
今度こそ本気で砂緒を外に引きずり出そうとするセレネを、王様がぴっと手を差し出して制止する。威厳のある王様の指先の動き一つで大国のセレネ王女は動きを止めた。
「貴方……この若者……」
「うむ……この若者、豪傑であるだけで無く、その虚ろな眼と無表情な顔でありながらも、繊細な心の機微すら洞察してしまう御人のようじゃな……只者ではあるまいて」
「へ?」
和気あいあいとした雰囲気から一転、王様夫妻二人が突然悲し気な顔に変わってセレネは戸惑う。
「その砂緒殿の言う通りじゃ……実は儂らはそなたら二人が訪ねて来てくれて、とてつもなく嬉しかったのだよ。なにしろ愛する娘二人が立て続けに失踪し、儂ら二人は悲しみに暮れておった所じゃったから……」
「貴方……」
しばらくの間気まずい沈黙が続く。
「すいません……根は悪いヤツじゃないんですが、無神経な所があって……」
「良いのだよ、娘二人が消えた事を一瞬でも忘れんがために、無理に二人を熱烈歓迎しようとした事も不自然であったかもしれん」
「よろしければ、失踪された娘さんお二人のお名前を教えて下さいませんか? 私達は婚前旅行中、どこかですれ違うかも知れません! お二人の力になれれば」
「婚前旅行じゃねーよ」
さすがに砂緒でも何故失踪したか等のプライベートに関わる事を根掘り葉掘り聞く事は無かった。
「ええ、姉の名前は夜宵、妹の名前は依世と言うのよ」
「おお、夜宵さんに依世さんですか……奥様に似てとても美しい美少女姉妹なのでしょうなァ」
砂緒はまるで他人事の様に言った。
「ええ、二人共花の様に美しい姉妹で……けれど私達があの二人に負担を掛け過ぎた所為で失踪を……ううぅっうっ……」
「お前、お客人の前で泣くで無い。失礼しますな、これは二人の事を思い出すといつも心配で泣いておって。しかし二人とも普通の女の子とは比べ物にならない強さも持っております。きっと何処かで幸せに暮らしておると信じておるのだ」
王様がお后さまを慰めながら言った。
「そうでしょう、そうでしょうなあ……これ程素晴らしいお二人のご息女の事、しっかりした生き方をしておる事でしょうな……」
砂緒は遠い目をした。
「しかし……心配ごとはそれだけでは無いのです。先に長女夜宵が失踪した時と同じくして、我が国の最高国宝である真実の鏡という魔法器までもが忽然と消えてしまいましたのじゃ。その行方も心配で心配で」
「あはーそれは多分、ご長女が一緒に持っ」
「てめー、それ以上言うと秒で口聞けん様にしたるぞコラー?」
セレネが慌てて砂緒の口を塞ぐ。
「して、その最高国宝である、真実の鏡とはどのような物なのですか?」
セレネが慌てて話題を換える。
「ええ、真実の鏡とは百年分毎日魔力を貯め続けるか、それに相当する程の魔力を一気に注入する事で、天下の覇者になる事も、天下を亡ぼす事も、果ては死んだ者を蘇らす事すら可能な、恐ろしい魔法器なのです。そんな物がもし悪人の手にでも渡ったらと思うと……」
「ほほう、死んだ者すら蘇らす事も可能とな? そんな物があったら良いですなあ、まさにド〇エモ〇ではないですか、はははははは」
「まあ、にわかには信じられない話じゃろうな」
「すいません、コイツ頭が悪い上に失礼なヤツで、すいませんすいません」
セレネはそう言いつつ、砂緒に瀕死の状態から必死に蘇生させてもらった事を思い出した。
「そう言えば、あの鏡の様にピカピカな銀色の魔ローダーですか? あれも凄い物なのではないですかな?」
「ええ、凄い物です。私とフルエレが見つけた物ですから!」
「フルエレさん? あれ、このセレネさんと見つけた物ではないのですかな?」
「……いえ、フルエレの事はもう良いです……」
砂緒は突然沈み込んだ。
「まあ……豪傑の貴方にも色々事情があるのね、皆同じなのよね」
優しいお后は泣き止んで砂緒を慰めた。
「……気が早いのだけど……今日はお二人はどうするの? もしかしてすぐ出発するの? もし良かったらなのだけど、今晩はお夕食を一緒に食べて、ここにお泊りして、明日出発されないかしら?」
お后様が目を輝かせて砂緒とセレネ、二人を交互に見つつ言った。セレネも砂緒も慌てる必要も無く、姉妹が失踪した寂しい二人を少しでも楽しませる事が出来るならと、今晩は泊る気持ちになった。
「ええ、厚かましいですが、泊めてもらえるなら、ありがたい事です」
「私もセレネと同じ考えです」
お后さまはさらに目を輝かせた。
「では、お部屋は一緒で良いのよね? だって許嫁だものね」
「いえ、別々でお願いしたい」
「はい、一緒で」
「は?」
砂緒は別々に、セレネは一緒にと同時に言って混乱するお后さま。
「え? え? 彼女は一緒にしたくて、砂緒さんは別々が良いのね?」
「はい、我々は結婚式を無事に済ますまでは、お互い清い関係でいようね、交換日記以上の行為は禁止だよねって誓いあっているのです!」
「また訳分らん事を……」
「まあ、素敵ね……きっと貴方を大事に思っているのね……」
お后様が赤面して目を閉じた。
「違います!! ただ根性が無いだけなんです!! はぁはぁ」
「とりあえず、部屋は二つ用意するから、後は若い二人の判断にまかせようぞ……」
王様が越前裁きをした。
王様が笑顔で砂緒とセレネに聞いてくる。
「あ、まだです……」
「では是非一緒に食べましょう! 昼食に招待しても良いですかな」
「ところでお二人はどの様な関係なの? 聞いてもよいかしら」
お后さまが二人の関係性に興味津々という感じで聞いて来た。
「従者で……」
「許嫁です!」
「まあっ! 素敵ね、許嫁二人であちこち巡るなんてロマンチックだわ!」
「ちがっ」
お后様がうっとりとして頬に両手を当てた。
「今、確か従者という声が聞こえましたぞ、従者なのか許嫁なのかどちらなのですかな?」
「従」
「許嫁です!」
「お前いい加減にしろよな、口先だけのエセエロ男爵の意気地なしの癖に、偉そうに許嫁とか言うなよ」
「いつまで同じ事を言うのですか? もう違うフェーズに移行している事を理解して欲しいですね」
二人が取っ組み合いの喧嘩をする勢いで言い合う。
「まあまあ仲が良いのね? 本当に従者だったらその様な口をきくはずも無く、きっと従者プレイなのね、素敵だわ」
「なんと……従者プレイとな? 初めて見ましたぞ」
「え、お、お二人共何を仰っているのですか?」
(駄目だ、この二人も結構変だ……)
「そうなんですよ、そういうプレイなんです、普段は偉そうに言っていますが、二人きりになると途端に甘えてくるタイプなんですよ」
「おおお、それはお羨ましい……」
「貴方ー?」
「と、ともかくゆっくりとお食事してお話を聞きたい物ですな」
しばらく待たされると、大きな明るい広間で昼食を招待される事になった。
「じ、実は私は王女の癖に畏まった食事が苦手の無作法者でして、失礼があったら申し訳ないです」
セレネがあらかじめ優しい二人を前にして本心を言った。
「良いのよ、自分の家だと思って好きな様にくつろいで欲しいの」
「ありがとうございます!」
「………………」
セレネは素直に喜んだが、砂緒はあまりに優しい二人に違和感を覚えた。
「という感じで今セブンリーフ大陸北部では列国が同盟を結び、同盟女王雪乃フルエレ様という素晴らしい女性を推戴しているのに対して、ここ中部小国群、すいません小国とか言って、ではメドース・リガリァという国が次々と侵略を進めているのです!」
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「わしらの国は昔から強い結界で守られておってな、外の世界の事には疎いのじゃ……」
「ほほう? 桃源郷みたいですな……それをセレネがぶち壊したと?」
「チッコラ……す、すいません……」
「いやいや気にせんで下され、一週間ほど魔導士達が魔力を貯めれば復元されますぞ!」
「その一週間の内に偶然敵が攻めて来るなんて事はないでしょうね、うふふ」
お后様があっけらかんと笑った。よくこんな国がすぐに滅びてないなとセレネは心配した。
「所で……お后さまは何故その様に美しいのですか? 先程から見とれてしまって申し訳ない」
突然砂緒が唐突にお后さまを褒めだした。
「お、おいお前失礼だぞ、お前の守備範囲が広すぎて怖いわ」
「ま、まあ、どうしようかしら、うふふふ」
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砂緒は突然王様の前でお后様に告白した。
「な? お前殴るぞコラ、外出ろ!!」
セレネが慌てて砂緒の胸ぐらを掴み、引き摺り出そうとする。
「ご安心下さい! こう見えてもコイツは口先だけの根性無しで危険性は全くありませんから!」
「いい加減な事を言わないで頂きたい! それ以上言えば上四方固かけますよ!」
「お前があたしに勝てる訳無いだろーー! うりゃっ背負い投げ!!」
ビターと砂緒が大理石の床に背中から叩き付けられる。
「せ、セレネ……? ほ、本気で痛いですよ今の……」
「ほらよ、回復魔法!」
「ま、まあまあ、どうしようかしら!? 困りましたわ、私には夫のある身……」
お后様は赤面して頬に両手を当てた。
「わはははははははは、これは面白い! 夫である儂が居る横で、我が妻である后を口説くとは、なんたる豪傑! そして目の高さか! 気に入ったぞこの若者、息子に欲しいくらいじゃ」
セレネは王様が笑い出した事で、砂緒を席に戻した。
「まあ、貴方ったら、心が広いわぁ……」
「もちろんこれは本気です!! 本気で好きと思っていますとも」
「しつこい! だからもうやめいて 王様が丸く収めてくれただろが」
「と、私のウイットに富んだ会話で場が和んだ事で本題に入りたい、何故お二人はそれ程不自然な程に無礼な初対面の我々二人に優しいのですか? 何か愛に飢えきっているという雰囲気をビンビン感じます」
「お前出ろっ! マジで出ろ! 蹴り倒すぞコラ!! 失礼な事を言うな!!」
今度こそ本気で砂緒を外に引きずり出そうとするセレネを、王様がぴっと手を差し出して制止する。威厳のある王様の指先の動き一つで大国のセレネ王女は動きを止めた。
「貴方……この若者……」
「うむ……この若者、豪傑であるだけで無く、その虚ろな眼と無表情な顔でありながらも、繊細な心の機微すら洞察してしまう御人のようじゃな……只者ではあるまいて」
「へ?」
和気あいあいとした雰囲気から一転、王様夫妻二人が突然悲し気な顔に変わってセレネは戸惑う。
「その砂緒殿の言う通りじゃ……実は儂らはそなたら二人が訪ねて来てくれて、とてつもなく嬉しかったのだよ。なにしろ愛する娘二人が立て続けに失踪し、儂ら二人は悲しみに暮れておった所じゃったから……」
「貴方……」
しばらくの間気まずい沈黙が続く。
「すいません……根は悪いヤツじゃないんですが、無神経な所があって……」
「良いのだよ、娘二人が消えた事を一瞬でも忘れんがために、無理に二人を熱烈歓迎しようとした事も不自然であったかもしれん」
「よろしければ、失踪された娘さんお二人のお名前を教えて下さいませんか? 私達は婚前旅行中、どこかですれ違うかも知れません! お二人の力になれれば」
「婚前旅行じゃねーよ」
さすがに砂緒でも何故失踪したか等のプライベートに関わる事を根掘り葉掘り聞く事は無かった。
「ええ、姉の名前は夜宵、妹の名前は依世と言うのよ」
「おお、夜宵さんに依世さんですか……奥様に似てとても美しい美少女姉妹なのでしょうなァ」
砂緒はまるで他人事の様に言った。
「ええ、二人共花の様に美しい姉妹で……けれど私達があの二人に負担を掛け過ぎた所為で失踪を……ううぅっうっ……」
「お前、お客人の前で泣くで無い。失礼しますな、これは二人の事を思い出すといつも心配で泣いておって。しかし二人とも普通の女の子とは比べ物にならない強さも持っております。きっと何処かで幸せに暮らしておると信じておるのだ」
王様がお后さまを慰めながら言った。
「そうでしょう、そうでしょうなあ……これ程素晴らしいお二人のご息女の事、しっかりした生き方をしておる事でしょうな……」
砂緒は遠い目をした。
「しかし……心配ごとはそれだけでは無いのです。先に長女夜宵が失踪した時と同じくして、我が国の最高国宝である真実の鏡という魔法器までもが忽然と消えてしまいましたのじゃ。その行方も心配で心配で」
「あはーそれは多分、ご長女が一緒に持っ」
「てめー、それ以上言うと秒で口聞けん様にしたるぞコラー?」
セレネが慌てて砂緒の口を塞ぐ。
「して、その最高国宝である、真実の鏡とはどのような物なのですか?」
セレネが慌てて話題を換える。
「ええ、真実の鏡とは百年分毎日魔力を貯め続けるか、それに相当する程の魔力を一気に注入する事で、天下の覇者になる事も、天下を亡ぼす事も、果ては死んだ者を蘇らす事すら可能な、恐ろしい魔法器なのです。そんな物がもし悪人の手にでも渡ったらと思うと……」
「ほほう、死んだ者すら蘇らす事も可能とな? そんな物があったら良いですなあ、まさにド〇エモ〇ではないですか、はははははは」
「まあ、にわかには信じられない話じゃろうな」
「すいません、コイツ頭が悪い上に失礼なヤツで、すいませんすいません」
セレネはそう言いつつ、砂緒に瀕死の状態から必死に蘇生させてもらった事を思い出した。
「そう言えば、あの鏡の様にピカピカな銀色の魔ローダーですか? あれも凄い物なのではないですかな?」
「ええ、凄い物です。私とフルエレが見つけた物ですから!」
「フルエレさん? あれ、このセレネさんと見つけた物ではないのですかな?」
「……いえ、フルエレの事はもう良いです……」
砂緒は突然沈み込んだ。
「まあ……豪傑の貴方にも色々事情があるのね、皆同じなのよね」
優しいお后は泣き止んで砂緒を慰めた。
「……気が早いのだけど……今日はお二人はどうするの? もしかしてすぐ出発するの? もし良かったらなのだけど、今晩はお夕食を一緒に食べて、ここにお泊りして、明日出発されないかしら?」
お后様が目を輝かせて砂緒とセレネ、二人を交互に見つつ言った。セレネも砂緒も慌てる必要も無く、姉妹が失踪した寂しい二人を少しでも楽しませる事が出来るならと、今晩は泊る気持ちになった。
「ええ、厚かましいですが、泊めてもらえるなら、ありがたい事です」
「私もセレネと同じ考えです」
お后さまはさらに目を輝かせた。
「では、お部屋は一緒で良いのよね? だって許嫁だものね」
「いえ、別々でお願いしたい」
「はい、一緒で」
「は?」
砂緒は別々に、セレネは一緒にと同時に言って混乱するお后さま。
「え? え? 彼女は一緒にしたくて、砂緒さんは別々が良いのね?」
「はい、我々は結婚式を無事に済ますまでは、お互い清い関係でいようね、交換日記以上の行為は禁止だよねって誓いあっているのです!」
「また訳分らん事を……」
「まあ、素敵ね……きっと貴方を大事に思っているのね……」
お后様が赤面して目を閉じた。
「違います!! ただ根性が無いだけなんです!! はぁはぁ」
「とりあえず、部屋は二つ用意するから、後は若い二人の判断にまかせようぞ……」
王様が越前裁きをした。
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