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氷崎 玲奈
既読スルー
しおりを挟む『授業中にゴメン(>人<;)
さっき、氷崎先輩からLINE来た。昼休みに二人きりで話したいことがあるから北校舎の裏に必ず一人で来てほしいって。
何だろ? 俺、一人で行くべき?😥』
私は「バッカじゃないの⁉︎」と叫び出しそうになるのをグッと堪えた。
校舎の裏に呼び出されて二人きりで話すなんて、愛の告白シチュエーションしかないでしょう。そんなところに幼なじみの女を連れて行ってどうするんだ。
『一人で行くべき!』
文字はすぐに打った。けど、なかなか送信を押せない。
氷崎先輩の綺麗な顔や想いの強さを思い出したら急に怖くなってしまった。
鈍い陽向だけど、はっきり好きだって言われたらきっと真剣に考える。
氷崎先輩のことだけで頭の中がいっぱいになっている陽向を想像するだけで胸がチクチクして、息が苦しくなる。
バカだなあ。
行動した方がいつだって勝つんだ。
何もしなかった私の負け。
陽向はモテる。
いつまでもフリーでいるわけがないんだ。
だけど、その引導をこの指で押さなきゃいけないなんて、残酷じゃありませんか、神様。
自分を落ち着かせるために深呼吸をしてから、ゆっくりと送信を押した。
『昴は気にならないの?』
既読がすぐにつき、秒で返信がくる。
気になりすぎておかしくなりそうだよ。
だから気にしないフリをしないといけないの。そうしないと、バランスを保てない。
返す言葉が見つからなくて、既読スルーした。
それっきり、陽向からもメッセージは来なくなった。
来なくなったら来なくなったで、また気になってくる。
授業は上の空のまま、時間だけが過ぎた。
今度の日本史のテストはヤバいだろうな。
まとめのポイント、まるっと聞き逃した。ノートの白さがそれを物語っている。
やがて、諦めのチャイムが鳴った。
その音がまだ鳴り止まないうちのことだった。
「昴!」
隣のクラスから、陽向がガラスを破るようにしてうちのクラスに駆け込んできた。
色のついた女子の声が一瞬大きくなる。うちのクラスにも一定数は陽向のファンがいる。だから毎回秘密基地でこっそり待ち合わせしていたのに、何で?
「ちょっと、何して──」
「スマホ無事⁉︎ 取り上げられてない⁉︎」
「は⁉︎」
陽向は私の膝の上にあったスマホに気づいて、はあっと大きめなため息をついた。
「良かった。全然返事来ないから、先生に見つかったんじゃないかって心配になってた……」
安堵の笑顔が間近で揺れた。
ああ、ばか。
こんな私を心配なんか。
ヤバい。顔が勝手に熱ってきた。
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