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第4章 沢田くんと別荘の夜
沢田くんと本気と書いてマジ
しおりを挟む沢田くんから異様なオーラが立ち上っている。
その気合が熱すぎて、卓球台の端から溶けてしまいそうだ。
【佐藤さんのために、俺は勝つ!!o(`ω´ )oメラメラ】
いつもだったら嬉しいけど、今はそんなに頑張って欲しくない。複雑な気持ちだ。
一方、卓球台の向こうの森島くんはスリッパを構えているけど、チラチラと杏里ちゃんの方を見ている。
【いいところを見せて、佐藤杏里を惚れさせるぞ!】
余裕の笑みまで浮かべているけど、大丈夫かな?
「それでは、空様のサーブから始めます。1セット11点を先取した方が勝ちとなります【どうでもいい~( ´Д`)y━・~~】」
審判の矢野さんが沢田くんにボールを渡して、ついにゲームが始まった。
「頑張って~! 森島くん!」
「沢田くんも頑張って~!」
女子が黄色い悲鳴をあげる中、沢田くんが天井近くまでボールを高くトスした。
【ぼっち卓球奥義……必殺! 見えなくなる白球!o(`ω´ )o】
ええっ⁉︎ ぼっち卓球⁉︎ 沢田くん、そんな技を持ってたの⁉︎
しかも見えなくなる球なんて、超必殺技じゃない! そんなサーブ打たれたら、森島くんが負けちゃう!
焦る私の目の前で、落ちてくる球に合わせて沢田くんがスリッパを振る。すると。
かんっ。
軽い音を立てて、球は床で弾んだ。
えっ⁉︎
「1-0で森島様のポイントです【空様、からぶりダッセーm9(^Д^) プギャー】」
なんと、沢田くんは空振りだった。
【しまった……見えなくなる白球は俺の目にも見えなくなるほどライトに近い場所までトスをする奥義。゚(゚´Д`゚)゚。成功するためにはサングラスが必須】
何やってんの、沢田くん! いや、結果オーライだけど!
「焦ったぜ、沢田。あんな高さから急にサーブされたらいくら俺でもヤバかったかもな」
森島くんはまだ余裕しゃくしゃくだ。
「勝負は……まだこれからだ」
沢田くんはスリッパを持ち直す。今度こそすごいサーブを打ちそうな気配だ。
【ぼっち卓球奥義……必殺! 二重に見える魔球!o(`ω´ )o】
それはすごい! と思ったら、沢田くんはボールをこっそり二つ持っていた!
スカッ。
しかも二つとも空振り。
「2-0で森島様のポイントです」
「おい、真面目にやれよ沢田!」
森島くんは抗議するフリをして、内心沢田くんに感謝する。
【わざと変なサーブで自滅するフリをして、俺を勝たそうとしてくれてんのかな。サンキュー、沢田!(*´꒳`*)】
え、そういうことだったの? 沢田くん!
やるじゃん! と思ったけど。
【真面目にやってるよ! 本気と書いてマジだから!!:(;゙゚'ω゚'):】
どうやら忖度はないようです。
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