沢田くんはおしゃべり２

第４章 沢田くんと別荘の夜

沢田くんと禁断の技

【もう2点も先取されてしまった。森島くん、強い！　こうなったら、あの必殺技を出すしかない……！】

　森島くんは何もしていないけど、2点取られて焦った沢田くんはまた何か必殺技を出そうとしている。
　っていうか、何でそんなに必殺技を持っているんだろう。
　普通の高校生のはずなのに……。

【ただ、あの必殺技は俺の身も危険にする禁断の技。失敗したら精神的ダメージの方がデカい！　その後、ズルズルとペースが崩れ、一点も取れずに終わる可能性も……！　できるのだろうか⁉︎　この究極のぼっちである俺に、アレが！！】

　沢田くんをここまで躊躇させる禁断の必殺技って、いったい何なんだろう。
　私も気になる。
　
【でもやるしかない！　い、いくぞっ！】
　沢田くんの目がカッ！　と見開いた。その時だ。

「空様。サーブ権が移りましたので森島様にボールを渡してください」
【ズコー_(┐「ε:)_】

　残念。できなかったね、沢田くん。
　サーブは２本ずつ打つルールだから仕方ない。次回に期待しよう。


　沢田くんは内心ガッカリしながら無表情で森島くんにボールを投げた。
　森島くんは笑顔でそれを受け取り、「いくぞ！」と構え、すぐにサーブしてきた。
　でもスリッパで打ったせいか、打球はそれほど低くもなく、返球しやすいスピードでもあった。初球だったから慎重になったのかな。
　

【チャーンス！((((；ﾟДﾟ)))))))】
　浮いたボールを見て、沢田くんの目がカッ！　と見開いた。


【必殺！　いきなりスマッシュ！！！(=ﾟωﾟ)ﾉ】


　えっ⁉︎　もうスマッシュ⁉︎　一球目だけど⁉︎


　驚く私たちの注目を浴びながら、沢田くんは思いきりスリッパを振り回した。
　そして──。
　ボールは沢田くんのコートに落ち、沢田くんの握っていたスリッパは森島くんのおでこに突き刺さった。


「ぐはっ」
　森島くんはスリッパを食らって真後ろに倒れた。


「３－０で森島様のポイントです【空様、わざとか？m9(^Д^) ﾌﾟｷﾞｬｰ】」
「はっ……【大変だ！　森島くんを直接倒しちゃった！　((((；ﾟДﾟ)))))))】」

　
　いきなりスマッシュは文字通りの必殺技だった。
　スリッパは飛ばしちゃダメだよ、沢田くん！