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終章 ゴーレムの王子は光の妖精の夢を見る
庭園で
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エルシーは、まさか俺本人が、俺の代理人としてやってくるとは想像もしていなかったらしい。
あっけにとられて声も出ないのか、そのまま凍り付いている。それから眩暈を感じたように、ふらりと俺の背中に倒れ込んできたので、俺は慌てて体の向きを変えて、エルシーを抱きとめた。
黒い喪服に包まれた、華奢な身体。黒い帽子の下で、亜麻色の髪がふぁさりと散る。
「……申し訳……」
「いい、何も言うな」
俺が耳元で囁けば、エルシーは疑問を飲み込んだらしい。
エルシーの体温に、俺の心臓がバクバクと音を立てる。――もう、手放したくない。絶対に。
俺たちをよそに、ロベルトにひねり上げられた男は、みっともなく悪態をついて暴れ、遅れてやってきたマクガーニに詰問されている。
「ダグラス・アシュバートン君。今の狼藉については特に不問に付そう。ただし次はない」
「狼藉って別に……」
そうか、この男がダグラス・アシュバートン、現伯爵の息子で、エルシーと結婚しようとしていた男。
俺はいかにも素行の悪そうな男を上から下までじっと見た。
髪はくすんだ金髪で、エルシーとの血縁を思わせる。瞳は茶色で、容姿そのものは悪くはない。王都の歓楽街にはよくいるスケコマシ風の男。
――おばあ様がエルシーとこの男の結婚を断固拒否して城を出たのも納得だ。
マクガーニはダグラスに対して商談を始めた。
「それよりも、だ。……実は、この庭の奥を売りに出しているそうだね。アルバート殿下が、その土地に興味を持たれている」
「あ、アルバート殿下が? ……王子様がこんな田舎の土地を?」
「まあ、わしは代理で契約を依頼されたにすぎん。やんごとなき方の気まぐれに、いちいち理由なんてないさ。……この奥を見せてもらうことはできるかね?」
「あ、ああ……でも、今は無理だ。鍵は俺が持ってるけど、部屋にあるんだ……」
「ならば明日の午後、葬儀の後でもいいかね? 殿下の代理人にも見てもらいたいのでね」
その話を、エルシーは息を飲んで聞き耳を立てている。そしてエルシーの両手が、無意識に俺の肘のあたりをぎゅっと掴んでいた。抱きとめた背中は微かに震えて、顔色は蒼白だ。
――きっと恐ろしい思いをしたのだ。俺の、エルシーに、あの野郎。
俺は解放されて逃げていくダグラス・アシュバートンの背中に悪態をついた。
「……あの野郎。今度俺のエルシーに手を出してみろ」
ぶっ殺してやる――。不穏な言葉を飲み込んだ俺を、ロベルトが茶化す。
「おしのびだからって、いくらなんでも砕けすぎ。仮にも王子殿下の代理人のくせに、柄が悪すぎっすよ。まるで下町のチンピラじゃないっすか」
「お前に言われたくない」
マクガーニが俺たちの言い争いを無視し、エルシーに言う。
「危なかったな。……やはり、一人で出歩かぬ方がいい」
「申し訳ありません。……昔の、自分の家だと思うと、つい……」
エルシーの、「昔の」という言葉に、俺の胸が痛んだ。ここはエルシーが生まれ育った城、大好きだった庭なのに――。
俺は改めて、鉄条網で区切られた庭の奥を見た。
ここから先は噴水のある散歩道が続き、壁に囲まれた庭が連なり、ローズの庭がある。ここから見えるだけでも、美しかった庭は寂れ、廃れていた。
奪われた庭。奪われた思い出。……エルシーやおばあ様の気持ちを思うと、俺は不当に相続を却下した奴らへの怒りがブスブスと胸の奥で燃え上がるのを感じる。
「……顔色が悪い。中に入ろう……」
俺がエルシーの肩を抱いて促せば、エルシーがハッとして、俺とロベルトやマクガーニを見回した。
「なぜ、殿下ご自身が……?」
マクガーニが深いため息をついて言った。
「どうしても、ご自身でレディ・アシュバートンの葬儀に出て、マックス・アシュバートンの墓にも詣でたいと。だが、殿下のご身分では無理だ。……つまりは苦肉の策だな」
「俺は十二年前、リジー・オーランドと名乗ってこの城に滞在したことがある。俺の顔を憶えている者もいるかもしれない。アルバートの名で来るのはまずいんだ。……今は、まだ」
「……リジー……」
エルシーのつぶやきに、俺はエルシーの肩を抱く手に力を籠める。
「それに、どうしてもお前ともう一度話がしたくて――俺は……」
「あー、はいはい! お二人の話はお二人だけの時にお願いします!」
ロベルトが割り込み、マクガーニも釘を刺す。
「節度は保たれるように。エルスペス嬢は未婚で、祖母君の喪中だ」
俺は仕方ないと肩を竦める。俺が肩を抱く手を、エルシーが拒まないことで俺は言いようもなく安堵していた。それに、さっきは俺にしがみついてくれた。
エルシーも、不安だったんだ。
リンドホルム城の内実は様変わりしていた。
使用人頭である執事のアーチャーと家政婦のスミス夫人は相変わらずだが、領主である伯爵一家がとてもじゃないが、人の上に立つ器量のない者たちだった。
現伯爵、サイラス・アシュバートンは元町医者の俗物。マックスの従兄で大学は出ているから、そこそこの教養はあるのだろうが、その女房のジェーン夫人となると、どう見ても田舎の農婦上がり。……どうやら、看護婦をしていてサイラスと知り合ったという。身分であれこれ言いたくはないが、この屋敷の格に当主夫人が全く調和していない。さらにジェーン夫人の姪だというヴィクトリア。さっきのスケコマシ、ダグラス・アシュバートンの恋人というよりは、情婦って感じだ。赤い髪に合わせた派手なドレスが、妙な場末感を醸し出して俺は目のやり場に困る。……そう、このちぐはぐな感じは、旧ワーズワース邸の成金舞踏会を思わせる。伝統ある重厚な古城の、中身の住人がどう見ても場違いだった。おばあ様でなくても、こんな奴らと暮らすのは無理だとさじを投げたくなるだろう。
そんな中で、喪服を着たエルシーの、禁欲的で凛とした佇まいはまさしく「掃きだめに鶴」。さっきからダグラスがギラギラした視線でエルシーを舐めまわすように見ていて、で、その視線に対し、ヴィクトリアが嫉妬の籠った視線を向ける。さらに不愉快なことに、時々俺にまで思わせぶりな視線を寄越してくる。やめろ、こっち見んな。
ジェーン夫人は陸軍大臣であるマクガーニだけでなく、第三王子の側近の若い男二人と食卓を囲んでいることにやたらはしゃいでいて、反比例するようにエルシーは食欲もないようだった。
「折角ですもの、皆さん、お食事の後はブリッジでもしませんこと! ぜひ!」
厄介になる身としては、拒否することもできない。だがエルシーは「疲れているから」とブリッジを断り、一人自室に戻ろうとする。俺はジェーン夫人やヴィクトリアの目を盗んでエルシーを追いかけ、人気のない階段の踊り場でようやく二人っきりになった。
「エルシー!」
驚いて立ち止まるエルシーの顔色はよくない。俺は抱きしめてキスしたかったが、階段の下に黒いテールコートの影を見て、思いとどまる。……アーチャーだ。
俺はただ、すれ違いざまに耳元で囁くことしかできなかった。
「――あとで、部屋にいく。話があるんだ」
ブリッジ・ルームに向かう途中、ロベルトが電話室から出てきて、耳元で囁いた。
「……ジョナサンから電話がありました。たいへんなことになったっす」
「何があった?」
「王都の大衆紙に、エルスペス嬢の名前が出ました。情報リークがあったみたいっす」
俺は息を飲む。
「その手の記事はすぐに飛び火する。リンドホルムに情報が流れるも、あっという間と思います」
俺は頭の中ですばやく計算する。
「とりあえず、明日の葬儀は予定通り。午後に庭の仮契約を済ませ、明後日の汽車で王都に戻ろう。……王都着がしあさっての早朝。――ビルツホルン行は毎日夜十九時発だったな」
「……強行軍っすね。でも、エルスペス嬢が王都に戻れば、たちまちハイエナみたいな新聞記者の餌食になっちまう。それしかないかもしれません」
「ジョナサンとは明日の朝、もう一度電話で打ち合わせよう」
「了解っす」
俺はできれば、そのことはエルシーに知らせないままで、ビルツホルン行を説得したいと思っていた。
あっけにとられて声も出ないのか、そのまま凍り付いている。それから眩暈を感じたように、ふらりと俺の背中に倒れ込んできたので、俺は慌てて体の向きを変えて、エルシーを抱きとめた。
黒い喪服に包まれた、華奢な身体。黒い帽子の下で、亜麻色の髪がふぁさりと散る。
「……申し訳……」
「いい、何も言うな」
俺が耳元で囁けば、エルシーは疑問を飲み込んだらしい。
エルシーの体温に、俺の心臓がバクバクと音を立てる。――もう、手放したくない。絶対に。
俺たちをよそに、ロベルトにひねり上げられた男は、みっともなく悪態をついて暴れ、遅れてやってきたマクガーニに詰問されている。
「ダグラス・アシュバートン君。今の狼藉については特に不問に付そう。ただし次はない」
「狼藉って別に……」
そうか、この男がダグラス・アシュバートン、現伯爵の息子で、エルシーと結婚しようとしていた男。
俺はいかにも素行の悪そうな男を上から下までじっと見た。
髪はくすんだ金髪で、エルシーとの血縁を思わせる。瞳は茶色で、容姿そのものは悪くはない。王都の歓楽街にはよくいるスケコマシ風の男。
――おばあ様がエルシーとこの男の結婚を断固拒否して城を出たのも納得だ。
マクガーニはダグラスに対して商談を始めた。
「それよりも、だ。……実は、この庭の奥を売りに出しているそうだね。アルバート殿下が、その土地に興味を持たれている」
「あ、アルバート殿下が? ……王子様がこんな田舎の土地を?」
「まあ、わしは代理で契約を依頼されたにすぎん。やんごとなき方の気まぐれに、いちいち理由なんてないさ。……この奥を見せてもらうことはできるかね?」
「あ、ああ……でも、今は無理だ。鍵は俺が持ってるけど、部屋にあるんだ……」
「ならば明日の午後、葬儀の後でもいいかね? 殿下の代理人にも見てもらいたいのでね」
その話を、エルシーは息を飲んで聞き耳を立てている。そしてエルシーの両手が、無意識に俺の肘のあたりをぎゅっと掴んでいた。抱きとめた背中は微かに震えて、顔色は蒼白だ。
――きっと恐ろしい思いをしたのだ。俺の、エルシーに、あの野郎。
俺は解放されて逃げていくダグラス・アシュバートンの背中に悪態をついた。
「……あの野郎。今度俺のエルシーに手を出してみろ」
ぶっ殺してやる――。不穏な言葉を飲み込んだ俺を、ロベルトが茶化す。
「おしのびだからって、いくらなんでも砕けすぎ。仮にも王子殿下の代理人のくせに、柄が悪すぎっすよ。まるで下町のチンピラじゃないっすか」
「お前に言われたくない」
マクガーニが俺たちの言い争いを無視し、エルシーに言う。
「危なかったな。……やはり、一人で出歩かぬ方がいい」
「申し訳ありません。……昔の、自分の家だと思うと、つい……」
エルシーの、「昔の」という言葉に、俺の胸が痛んだ。ここはエルシーが生まれ育った城、大好きだった庭なのに――。
俺は改めて、鉄条網で区切られた庭の奥を見た。
ここから先は噴水のある散歩道が続き、壁に囲まれた庭が連なり、ローズの庭がある。ここから見えるだけでも、美しかった庭は寂れ、廃れていた。
奪われた庭。奪われた思い出。……エルシーやおばあ様の気持ちを思うと、俺は不当に相続を却下した奴らへの怒りがブスブスと胸の奥で燃え上がるのを感じる。
「……顔色が悪い。中に入ろう……」
俺がエルシーの肩を抱いて促せば、エルシーがハッとして、俺とロベルトやマクガーニを見回した。
「なぜ、殿下ご自身が……?」
マクガーニが深いため息をついて言った。
「どうしても、ご自身でレディ・アシュバートンの葬儀に出て、マックス・アシュバートンの墓にも詣でたいと。だが、殿下のご身分では無理だ。……つまりは苦肉の策だな」
「俺は十二年前、リジー・オーランドと名乗ってこの城に滞在したことがある。俺の顔を憶えている者もいるかもしれない。アルバートの名で来るのはまずいんだ。……今は、まだ」
「……リジー……」
エルシーのつぶやきに、俺はエルシーの肩を抱く手に力を籠める。
「それに、どうしてもお前ともう一度話がしたくて――俺は……」
「あー、はいはい! お二人の話はお二人だけの時にお願いします!」
ロベルトが割り込み、マクガーニも釘を刺す。
「節度は保たれるように。エルスペス嬢は未婚で、祖母君の喪中だ」
俺は仕方ないと肩を竦める。俺が肩を抱く手を、エルシーが拒まないことで俺は言いようもなく安堵していた。それに、さっきは俺にしがみついてくれた。
エルシーも、不安だったんだ。
リンドホルム城の内実は様変わりしていた。
使用人頭である執事のアーチャーと家政婦のスミス夫人は相変わらずだが、領主である伯爵一家がとてもじゃないが、人の上に立つ器量のない者たちだった。
現伯爵、サイラス・アシュバートンは元町医者の俗物。マックスの従兄で大学は出ているから、そこそこの教養はあるのだろうが、その女房のジェーン夫人となると、どう見ても田舎の農婦上がり。……どうやら、看護婦をしていてサイラスと知り合ったという。身分であれこれ言いたくはないが、この屋敷の格に当主夫人が全く調和していない。さらにジェーン夫人の姪だというヴィクトリア。さっきのスケコマシ、ダグラス・アシュバートンの恋人というよりは、情婦って感じだ。赤い髪に合わせた派手なドレスが、妙な場末感を醸し出して俺は目のやり場に困る。……そう、このちぐはぐな感じは、旧ワーズワース邸の成金舞踏会を思わせる。伝統ある重厚な古城の、中身の住人がどう見ても場違いだった。おばあ様でなくても、こんな奴らと暮らすのは無理だとさじを投げたくなるだろう。
そんな中で、喪服を着たエルシーの、禁欲的で凛とした佇まいはまさしく「掃きだめに鶴」。さっきからダグラスがギラギラした視線でエルシーを舐めまわすように見ていて、で、その視線に対し、ヴィクトリアが嫉妬の籠った視線を向ける。さらに不愉快なことに、時々俺にまで思わせぶりな視線を寄越してくる。やめろ、こっち見んな。
ジェーン夫人は陸軍大臣であるマクガーニだけでなく、第三王子の側近の若い男二人と食卓を囲んでいることにやたらはしゃいでいて、反比例するようにエルシーは食欲もないようだった。
「折角ですもの、皆さん、お食事の後はブリッジでもしませんこと! ぜひ!」
厄介になる身としては、拒否することもできない。だがエルシーは「疲れているから」とブリッジを断り、一人自室に戻ろうとする。俺はジェーン夫人やヴィクトリアの目を盗んでエルシーを追いかけ、人気のない階段の踊り場でようやく二人っきりになった。
「エルシー!」
驚いて立ち止まるエルシーの顔色はよくない。俺は抱きしめてキスしたかったが、階段の下に黒いテールコートの影を見て、思いとどまる。……アーチャーだ。
俺はただ、すれ違いざまに耳元で囁くことしかできなかった。
「――あとで、部屋にいく。話があるんだ」
ブリッジ・ルームに向かう途中、ロベルトが電話室から出てきて、耳元で囁いた。
「……ジョナサンから電話がありました。たいへんなことになったっす」
「何があった?」
「王都の大衆紙に、エルスペス嬢の名前が出ました。情報リークがあったみたいっす」
俺は息を飲む。
「その手の記事はすぐに飛び火する。リンドホルムに情報が流れるも、あっという間と思います」
俺は頭の中ですばやく計算する。
「とりあえず、明日の葬儀は予定通り。午後に庭の仮契約を済ませ、明後日の汽車で王都に戻ろう。……王都着がしあさっての早朝。――ビルツホルン行は毎日夜十九時発だったな」
「……強行軍っすね。でも、エルスペス嬢が王都に戻れば、たちまちハイエナみたいな新聞記者の餌食になっちまう。それしかないかもしれません」
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