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【番外編】モーガン公爵夫人アイリス・ローレンソン
募る想い
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ハミルトン先生への想いは募る一方だった。
夫の身勝手で白い結婚を強いられ、恋も知らず、性の歓びも知らず、子を産むことも知らず、ただ公爵家に閉じ込められ、萎れていくだけの人生のはずだった。
――しかし、四十を超え初めて、わたくしは歓びを知り、恋を知った。
同時にわたくしは、これもまでの自分がいかに惨めであったのか、改めて知るのだ。
わたくしに白い結婚を強い、指一本触れなかった夫の残酷さも、ようやく理解する。
二十年前、夫はおそらく、アビゲイルに真剣な恋に落ちたのだ。公爵家の跡取りと、娼婦上がりの卑しい女。身分の差ゆえに夫婦としては結ばれぬ悲劇の愛に酔い、お飾りの妻を据えることで、二人の愛を貫き通そうとした。
ただ一人への愛を貫く思いは、崇高なことだ。だが、そのために無関係なわたくしを巻き込んだ。
実家の借金と家族の暮らしを人質に取られ、犠牲を強いられたこれまでの日々。――なんて理不尽な。
そう、わたくしは何も知らなかった! 夫婦の――愛し合う男女の間で交わされる愛の行為も、何一つ。
ハミルトン先生の掌が、わたくしの肌に触れる。温もりがじかに肌に伝わり、指が秘密の場所を探り、わたくしに快楽をもたらしていく。怯えるわたくしを宥めるように静かに語り掛ける声は、耳朶を通してわたくしの脳を融かしていく。
わたくしは先生に縋りつきたかった。――心の底から彼を慕い、会う度に高鳴る胸の鼓動に、恋を意識した。
治療の後にお茶を振る舞い、わたくしは今までのことを、お話した。いかに傷つけられ、蔑ろにされてきたか。先生はそれを黙って聞いてくださった。
「苦しかったですね。でも、今でも立派に公爵夫人として務めていらっしゃる。この邸の使用人にも慕われて。頭が下がります」
「先生――」
優しい言葉に、わたくしはますます先生に傾倒する。先生の年齢がわたくしの半分しかないことも、すっかり忘れて――
そのうちに、夫は眠る時間が長くなり、昏睡状態に陥るようになった。
「……言いにくいですが、もう、長くはないと思います」
夫の命など惜しくもないけれど、先生と会える機会がなくなるのは嫌だった。
「早いうちに、息子さんを王都にお呼びになる方がよろしいと思います」
沈痛な表情のハミルトン先生に告げられ、わたくしは頷いた。でもその内心では、もうすぐこの忌々しい夫がこの世からいなくなる喜びに、沸き立つような気分であった。
夫の命がもうすぐ尽きる。そのことに浮かれて、わたくしは望んではならないものを望んでしまった。
治療の先を望んだわたくしを、ハミルトン先生は冷たく突き放した。
「僕は医師です。治療の域を越えることはしません」
わたくしはその言葉にハッとする。
わたくしは、はっきり先生に恋焦がれている。どこかで、先生もそうだと思い込んでいた。
貴女はただの患者だと言われ、わたくしは打ちのめされる。――当たり前だ。治療を始める前にも、警告されていたのに。
彼の愛撫に身を任せるうちに、わたくしはそこに愛があると勘違いしてしまった。
でも――二十年にわたって虐げられてきたわたくしの、これはきっと、最初で最後の恋なのだ。
先生のいない部屋で、わたくしは自身の姿を鏡に映してみる。
痩せて乾いた肌。艶のない唇。ブリュネットの髪には実は少しだけ白髪が混じる。
――濃い化粧をすれば誤魔化せるだろうか。でも、もともと、わたくしは華やかなところが欠けていた。だから、夫に足元を見られたのだけれど――
ハミルトン先生はまだ若く、そして美しい。わたくしたちが並べば、親子にしか見えないだろう。
実際、息子として届け出ているベネディクトとは同じ年なのだ。
わたくしは無駄に老いるだけだった年月を思い、神様に願う。
――一度だけでいい。一度だけでも抱いてほしい。それ以上は望まないから。だから神様――
諦められず、往診のたびに先生の手に取りすがったけれど、先生は首を縦に振らなかった。
「わたくしは先生をお慕いしております」
「僕にとってはただの患者です。それに、ご主人はまだ生きているのですから」
先生の表情も辛そうに見えた。少なくとも、わたくしの手は振りほどかれることはなかった。
愚かなわたくしは、その小さな希望にただ、縋りついた。
それから一月も立たず、夫はハミルトン先生に看取られて旅立った。
大学から駆け付けた息子が立ち尽くす横で、先生は冷静に書類を作成していく。牧師様のお祈りの言葉を、わたくしは心ここにあらずな状態で聞き流す。
――ようやく、自由になった。
葬儀も終わって相続手続きも済んだ。夫は世間体もあったのか、財産だけはわたくしにもしっかりと残してくれていたので、わたくしはそれを手に公爵家の籍を抜けることも考えている。
どのみち、何も知らないベネディクトには真実を伝えなければならない。
「母上、お疲れ様でした。すべて、押し付けてしまってすみません」
ベネディクトが夫ゆずりの赤みがかった金髪をかき上げて言う。
「いいのよ、若い人が病人の世話するなんてよくないわ」
「それで――お話とは何です?」
「大事なことなのよ。……貴方の、本当の母親のことで」
「……本当の、母親?」
ベネディクトが緑色の瞳を見開く。
「どういうことです? 母上は、俺の本当の母親ではないのですか?」
「大きな声を出さないで。この国では正妻が生んだ嫡子しか家を継げない。だから、貴方はわたくしの子として届け出てあるの。よそでは口にしないように」
彼の出生は、限られた者だけが知る秘密だった。――本人の耳にも入らないくらい、厳密に秘匿されていた。ベネディクトはごくりと唾を飲み込む。
「それは……母上に子が生まれないからなのですか? だから、父上が他所の女に――」
「違うわ。父上はそもそも貴方の母を愛していた。でも身分が障りになって結婚できない。だから、お飾りの妻としてわたくしを娶り、その女が生んだ貴方を、わたくしが生んだことにして届け出たのよ」
ベネディクトが息を呑む。
「そんな――」
真っ青な顔で立ち尽くす息子を、わたくしは気の毒に思うが、知らぬままにしておいていいことではない。偽り事で爵位を継いだその事実を、彼自身、知っておくべきだ。
「……この邸で、父上が暮らしていた女性を覚えているかしら?」
「憶えています。……母上を放って、そんな女と暮らすなんてと、僕は父上に意見したかったけれど、執事のブルーノに止められたことが……」
「しなくてよかったわ。きっと烈火のごとくお怒りになっただろうから」
わたくしが言えば、ベネディクトは信じられないという表情で尋ねる。
「その女が、俺の、母親?」
わたくしが無言でうなずく。
「……旦那様がお倒れになったとき、彼女は旅行に行くと言って突然出て行ってしまった。……現金や貴金属が亡くなっていて――弁護士の調査によれば隣国のルーセンの首都のアデレーンにいるみたい。もし、貴方が会いたと思うなら、弁護士に連絡を――」
「その女は、倒れた父上を見捨てて、逃げたのですか?」
「わざとなのかどうかは知らないわ? でももしかしたら、貴方が跡を継いだのを聞いて、戻ってくるかもしれないわね? 法的には財産は残せないけれど、いくらかなら――」
「必要ないですよ! どうしてそんなことを今さら! 俺は聞きたくなかった!」
感情的になっているベネディクトをわたくしは宥める。
「何も知らず、何の覚悟もなく、実の母という女性が突然名のり出てきたら、貴方は冷静に対処できる? 取り扱いを間違えれば、大変な醜聞になるし、貴方の継承すら危うくなるわ。だから伝えたの。それに、偽りの上に生きていくならば、せめて貴方は真実を知らなければ。書類の上の母はわたくしだから、あくまで、先代公爵の愛人だとして扱えば問題はないと思うけれど」
「母上……」
ベネディクトに真実を伝えたわたくしは、ようやく後の憂いもなく、ハミルトン先生に往診を依頼した。
夫の身勝手で白い結婚を強いられ、恋も知らず、性の歓びも知らず、子を産むことも知らず、ただ公爵家に閉じ込められ、萎れていくだけの人生のはずだった。
――しかし、四十を超え初めて、わたくしは歓びを知り、恋を知った。
同時にわたくしは、これもまでの自分がいかに惨めであったのか、改めて知るのだ。
わたくしに白い結婚を強い、指一本触れなかった夫の残酷さも、ようやく理解する。
二十年前、夫はおそらく、アビゲイルに真剣な恋に落ちたのだ。公爵家の跡取りと、娼婦上がりの卑しい女。身分の差ゆえに夫婦としては結ばれぬ悲劇の愛に酔い、お飾りの妻を据えることで、二人の愛を貫き通そうとした。
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実家の借金と家族の暮らしを人質に取られ、犠牲を強いられたこれまでの日々。――なんて理不尽な。
そう、わたくしは何も知らなかった! 夫婦の――愛し合う男女の間で交わされる愛の行為も、何一つ。
ハミルトン先生の掌が、わたくしの肌に触れる。温もりがじかに肌に伝わり、指が秘密の場所を探り、わたくしに快楽をもたらしていく。怯えるわたくしを宥めるように静かに語り掛ける声は、耳朶を通してわたくしの脳を融かしていく。
わたくしは先生に縋りつきたかった。――心の底から彼を慕い、会う度に高鳴る胸の鼓動に、恋を意識した。
治療の後にお茶を振る舞い、わたくしは今までのことを、お話した。いかに傷つけられ、蔑ろにされてきたか。先生はそれを黙って聞いてくださった。
「苦しかったですね。でも、今でも立派に公爵夫人として務めていらっしゃる。この邸の使用人にも慕われて。頭が下がります」
「先生――」
優しい言葉に、わたくしはますます先生に傾倒する。先生の年齢がわたくしの半分しかないことも、すっかり忘れて――
そのうちに、夫は眠る時間が長くなり、昏睡状態に陥るようになった。
「……言いにくいですが、もう、長くはないと思います」
夫の命など惜しくもないけれど、先生と会える機会がなくなるのは嫌だった。
「早いうちに、息子さんを王都にお呼びになる方がよろしいと思います」
沈痛な表情のハミルトン先生に告げられ、わたくしは頷いた。でもその内心では、もうすぐこの忌々しい夫がこの世からいなくなる喜びに、沸き立つような気分であった。
夫の命がもうすぐ尽きる。そのことに浮かれて、わたくしは望んではならないものを望んでしまった。
治療の先を望んだわたくしを、ハミルトン先生は冷たく突き放した。
「僕は医師です。治療の域を越えることはしません」
わたくしはその言葉にハッとする。
わたくしは、はっきり先生に恋焦がれている。どこかで、先生もそうだと思い込んでいた。
貴女はただの患者だと言われ、わたくしは打ちのめされる。――当たり前だ。治療を始める前にも、警告されていたのに。
彼の愛撫に身を任せるうちに、わたくしはそこに愛があると勘違いしてしまった。
でも――二十年にわたって虐げられてきたわたくしの、これはきっと、最初で最後の恋なのだ。
先生のいない部屋で、わたくしは自身の姿を鏡に映してみる。
痩せて乾いた肌。艶のない唇。ブリュネットの髪には実は少しだけ白髪が混じる。
――濃い化粧をすれば誤魔化せるだろうか。でも、もともと、わたくしは華やかなところが欠けていた。だから、夫に足元を見られたのだけれど――
ハミルトン先生はまだ若く、そして美しい。わたくしたちが並べば、親子にしか見えないだろう。
実際、息子として届け出ているベネディクトとは同じ年なのだ。
わたくしは無駄に老いるだけだった年月を思い、神様に願う。
――一度だけでいい。一度だけでも抱いてほしい。それ以上は望まないから。だから神様――
諦められず、往診のたびに先生の手に取りすがったけれど、先生は首を縦に振らなかった。
「わたくしは先生をお慕いしております」
「僕にとってはただの患者です。それに、ご主人はまだ生きているのですから」
先生の表情も辛そうに見えた。少なくとも、わたくしの手は振りほどかれることはなかった。
愚かなわたくしは、その小さな希望にただ、縋りついた。
それから一月も立たず、夫はハミルトン先生に看取られて旅立った。
大学から駆け付けた息子が立ち尽くす横で、先生は冷静に書類を作成していく。牧師様のお祈りの言葉を、わたくしは心ここにあらずな状態で聞き流す。
――ようやく、自由になった。
葬儀も終わって相続手続きも済んだ。夫は世間体もあったのか、財産だけはわたくしにもしっかりと残してくれていたので、わたくしはそれを手に公爵家の籍を抜けることも考えている。
どのみち、何も知らないベネディクトには真実を伝えなければならない。
「母上、お疲れ様でした。すべて、押し付けてしまってすみません」
ベネディクトが夫ゆずりの赤みがかった金髪をかき上げて言う。
「いいのよ、若い人が病人の世話するなんてよくないわ」
「それで――お話とは何です?」
「大事なことなのよ。……貴方の、本当の母親のことで」
「……本当の、母親?」
ベネディクトが緑色の瞳を見開く。
「どういうことです? 母上は、俺の本当の母親ではないのですか?」
「大きな声を出さないで。この国では正妻が生んだ嫡子しか家を継げない。だから、貴方はわたくしの子として届け出てあるの。よそでは口にしないように」
彼の出生は、限られた者だけが知る秘密だった。――本人の耳にも入らないくらい、厳密に秘匿されていた。ベネディクトはごくりと唾を飲み込む。
「それは……母上に子が生まれないからなのですか? だから、父上が他所の女に――」
「違うわ。父上はそもそも貴方の母を愛していた。でも身分が障りになって結婚できない。だから、お飾りの妻としてわたくしを娶り、その女が生んだ貴方を、わたくしが生んだことにして届け出たのよ」
ベネディクトが息を呑む。
「そんな――」
真っ青な顔で立ち尽くす息子を、わたくしは気の毒に思うが、知らぬままにしておいていいことではない。偽り事で爵位を継いだその事実を、彼自身、知っておくべきだ。
「……この邸で、父上が暮らしていた女性を覚えているかしら?」
「憶えています。……母上を放って、そんな女と暮らすなんてと、僕は父上に意見したかったけれど、執事のブルーノに止められたことが……」
「しなくてよかったわ。きっと烈火のごとくお怒りになっただろうから」
わたくしが言えば、ベネディクトは信じられないという表情で尋ねる。
「その女が、俺の、母親?」
わたくしが無言でうなずく。
「……旦那様がお倒れになったとき、彼女は旅行に行くと言って突然出て行ってしまった。……現金や貴金属が亡くなっていて――弁護士の調査によれば隣国のルーセンの首都のアデレーンにいるみたい。もし、貴方が会いたと思うなら、弁護士に連絡を――」
「その女は、倒れた父上を見捨てて、逃げたのですか?」
「わざとなのかどうかは知らないわ? でももしかしたら、貴方が跡を継いだのを聞いて、戻ってくるかもしれないわね? 法的には財産は残せないけれど、いくらかなら――」
「必要ないですよ! どうしてそんなことを今さら! 俺は聞きたくなかった!」
感情的になっているベネディクトをわたくしは宥める。
「何も知らず、何の覚悟もなく、実の母という女性が突然名のり出てきたら、貴方は冷静に対処できる? 取り扱いを間違えれば、大変な醜聞になるし、貴方の継承すら危うくなるわ。だから伝えたの。それに、偽りの上に生きていくならば、せめて貴方は真実を知らなければ。書類の上の母はわたくしだから、あくまで、先代公爵の愛人だとして扱えば問題はないと思うけれど」
「母上……」
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