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31、急変
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翌早朝に家を出て、僕は王都の西駅からアーリングベリに向かう列車に乗る。
アーリングベリは西海岸に面した海辺の街だから、王都からだとだいたい、丸一日かかる。
僕はいろいろ考えた挙句、まずはオルコット男爵家を訪ね、オルコット男爵に、妹のローズマリーとの結婚の許しを求めた。
突然やってきた僕にオルコット男爵はただでさえ驚いていたが、目的を告げるとさらに仰天した。
「よろしいのですか? 妹は傷物ですし、侯爵家の当主夫人にはいささか……」
「今時、侯爵夫人だからなんて面倒なことはほぼありません。僕も医師の仕事を再開する予定ですし」
昨今、新興資本家の勃興が甚だしく、貴族が体面を維持するのもなかなか困難になりつつある。早晩、爵位は単なるアクセサリーに変わっていくだろう。
僕は持参した結婚証書の、証人のところに男爵のサインを求める。花嫁の欄が空欄になったそれに、オルコット男爵が栗色の眉を顰める。
「……ローズは、未婚の母であることを気にしているのです。あなたのサインがあれば、ローズの決心の後押しになると思います」
「なるほど……ローズをよろしくお願いします」
オルコット男爵がサインをして、僕に証書を手渡す。
「僕は兄が死んで爵位を継いだばかりで、あまり大げさな式はできないと思います。また、王都に出てきていただければ是非――」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
ものの小一時間で、用件はあっさりと片付いた。
おそらく面倒くさいのはリントン伯爵の方だ。
僕は先に、伯爵家の顧問弁護士であるアーヴィングの事務所に顔を出した。受付嬢に声をかけると、しばらく僕の顔を凝視したあと、慌てて奥に飛んでいき、アーヴィングを呼んできた。
「これはイライアス卿!」
「突然すまない。……ライラが、王都の家に戻っていると知って」
僕を事務所の応接室に案内しながら、アーヴィングが頷く。
「そうなのです。オルコット嬢の産んだデニス様の子を養育するように伯爵が言ったら、受け入れられないと言い、ご実家に戻ってしまわれた」
「当然でしょうね。ライラはまだ若い。産んでもいない子育てに人生を浪費するより、再婚して自分の子を産みたいと思うでしょう」
「……ご実家の後押しがきちんとある女性ならば、そうでしょうな」
勧められたソファに座ると、さっきの、受付嬢がお茶を運んできた。三十近い痩せぎすの女で、冴えないモスグリーンのスーツを着て、顔にはそばかすが浮いている。……こころなしか、さっきより化粧が濃い?
妙にジロジロとみられながらお茶を出され、僕は嫌な予感がする。
「それで、リントン伯爵は?」
なぜかいつまでも下がろうとしない女を、アーヴィングが手振りで追い払ってから、僕が尋ねる。
「しばらくはカンカンでしたが、奥方や周りの者に諭されたようです。ひとまずは庶子として認知する書類を出した上で、王家に相続の許可を得る方向で考えていますが――」
「いけそうなのですか?」
アーヴィングが紅茶を一口飲んで、ソーサーに戻す。
「通常ならば、かなりの大金を上納する必要がありますが、デニス坊ちゃまは戦死ですので、法務局に問い合わせたところ、通常、優遇されるだろうと」
他に、近い男性の親族もいないこともあり、ライラの養子にしなくとも申請は通りそうだという。
「一番近い男性親族が旦那様の弟で、ですがもう五十を超え、娘しかいません。その次が従兄弟の、こちらは同じくアーリングベリのロズモンド子爵を継承していますので――」
「ルーカスへの継承が認められる可能性が高いのですね」
僕はアーヴィングに提案した。
「せめて寄宿舎に入れる年齢になるまでは、母親の元で過ごさせたいのです。こちらの家では養育できる人はいなさそうですし」
「そうですね。……お子さんの母親にあたる元メイドを世話係に雇用するという案も出ていますが、あのような形で追い出した女性が、その話を受けてくれるとは思いません」
この後に及んでローズマリーを「雇用」しようと考えているらしいリントン伯爵に、僕は驚きを隠せない。
「実は――僕はその、ローズマリー・オルコットと結婚するつもりなのです。ですから、僕がそのまま、ルーカスを養育したいと思っています」
僕が言えば、アーヴィング弁護士がしばらくポカンと僕の顔を見詰める。
「ええ? ……ローズマリー・オルコットと、結婚? イライアス卿が?」
「ええ。さきほど、オルコット男爵の許可も得ましたし」
アーヴィングはしばらく目をパチパチさせていたが、大きく息を吸ってから、言った。
「そういうことでしたら……」
ということで、アーヴィングの付き添いの元でリントン伯爵家に向かう。
ライラもいなくなって老夫婦だけになったせいか、リントン伯爵邸はどことなく華やぎを欠いていた。
「……これはイライアス卿」
リントン伯爵と夫人の出迎えを受け、僕は書斎に通される。
「ローズマリー・オルコット嬢の子、ルーカスについての、そちらのご意向を確かめたいと思いまして」
僕が切り出せば、リントン伯爵が疲れたような表情で言った。
「デニスによく似ているそうだし、庶子の届を出した上で、デニスの妻ライラの養子にし、リントン伯爵の継承を願い出る予定だったのだが――」
「ライラが拒否した」
「……そうです」
自らお茶を運んできた夫人が、眉尻を下げる。
「ライラは王都で、元気にしていますか?」
夫人に問われ、僕も首を傾げる。
「実は、先日ようやく、ライラに会いまして。……元気ではありますが、多少、不安定に思われました」
「ヘンダーソン侯爵よりは、ライラの籍を抜くと――」
「ライラはまだ若いですし、生涯、未亡人として縛り付けるのは残酷ではないですか」
「そうなのだが……もう少し情があると思っていたのに」
結婚前とはいえ、よその子に産ませた子供が出てくるのは、女性にとっては辛かろう。
「アーヴィング弁護士に尋ねたところ、ライラの養子になくても、継承は認められるのではと言っていたましたが」
「そうなのだが……」
リントン伯爵が夫人を見る。夫人が首を振った。
「もうわたくしも年ですし、幼い子供の面倒を見るのは体がしんどくて」
伯爵夫人は悪い人ではないのだろうが、今さら幼い子の子育てなどしたくないのだろう。
「実は、僕はローズマリー・オルコットと結婚することにしました。つきましては、このままルーカスを我が家で養育したいと考えています」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような夫妻の顔を、僕はまっすぐに見て言った。
「ここしばらく我が家で様子を見て、僕の母にも懐いていますし。家庭教師は――一度雇ったのですが、少し問題があり、今は、代わりの者を探しているところです。七歳になりますし、秋からは王都の初等学校に通わせようかと考えていますが」
「イライアス卿が? ローズマリー・オルコットと、結婚?」
「ええ」
何度目だと思いながら、僕は頷く。
「今まではローズマリーも警戒して、あなた方にルーカスを会わせるのを拒否していましたが、王都のマクミラン侯爵邸で養育することを確約していただけるなら、会わせてもいいと」
リントン伯爵が呆然と僕を見る。
「あ、会わせてもらえるのなら……」
「では一度、王都にいらしてください。手続きが済んでからならば、僕がルーカスをこちらに連れてきてもいい。将来、伯爵位を継ぐのならば、こちらに長期滞在することも必要になるでしょうが、それは寄宿学校に入れるくらいの年齢になるまでは、待っていただきたいのですが」
僕の提案に、リントン伯爵は一も二もなく頷いた。
「王都のマクミラン侯爵が後ろ盾になってくれるなら、願ってもない。どのみち、継承の請願のために王都に出向く必要はある」
「では、その折にあらためて」
こうしてあっさりと問題は片付いた。
ずっと圧し掛かっていた心の重荷を下ろし、僕はホッとする気分だった。
翌日は一日、アーヴィングと必要書類の打ち合わせてを行い、夕方ホテルに戻って、僕はレセプションで電報を受け取る。
――ろーずまりーリュウザンス。スグカエレ。
アーリングベリは西海岸に面した海辺の街だから、王都からだとだいたい、丸一日かかる。
僕はいろいろ考えた挙句、まずはオルコット男爵家を訪ね、オルコット男爵に、妹のローズマリーとの結婚の許しを求めた。
突然やってきた僕にオルコット男爵はただでさえ驚いていたが、目的を告げるとさらに仰天した。
「よろしいのですか? 妹は傷物ですし、侯爵家の当主夫人にはいささか……」
「今時、侯爵夫人だからなんて面倒なことはほぼありません。僕も医師の仕事を再開する予定ですし」
昨今、新興資本家の勃興が甚だしく、貴族が体面を維持するのもなかなか困難になりつつある。早晩、爵位は単なるアクセサリーに変わっていくだろう。
僕は持参した結婚証書の、証人のところに男爵のサインを求める。花嫁の欄が空欄になったそれに、オルコット男爵が栗色の眉を顰める。
「……ローズは、未婚の母であることを気にしているのです。あなたのサインがあれば、ローズの決心の後押しになると思います」
「なるほど……ローズをよろしくお願いします」
オルコット男爵がサインをして、僕に証書を手渡す。
「僕は兄が死んで爵位を継いだばかりで、あまり大げさな式はできないと思います。また、王都に出てきていただければ是非――」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
ものの小一時間で、用件はあっさりと片付いた。
おそらく面倒くさいのはリントン伯爵の方だ。
僕は先に、伯爵家の顧問弁護士であるアーヴィングの事務所に顔を出した。受付嬢に声をかけると、しばらく僕の顔を凝視したあと、慌てて奥に飛んでいき、アーヴィングを呼んできた。
「これはイライアス卿!」
「突然すまない。……ライラが、王都の家に戻っていると知って」
僕を事務所の応接室に案内しながら、アーヴィングが頷く。
「そうなのです。オルコット嬢の産んだデニス様の子を養育するように伯爵が言ったら、受け入れられないと言い、ご実家に戻ってしまわれた」
「当然でしょうね。ライラはまだ若い。産んでもいない子育てに人生を浪費するより、再婚して自分の子を産みたいと思うでしょう」
「……ご実家の後押しがきちんとある女性ならば、そうでしょうな」
勧められたソファに座ると、さっきの、受付嬢がお茶を運んできた。三十近い痩せぎすの女で、冴えないモスグリーンのスーツを着て、顔にはそばかすが浮いている。……こころなしか、さっきより化粧が濃い?
妙にジロジロとみられながらお茶を出され、僕は嫌な予感がする。
「それで、リントン伯爵は?」
なぜかいつまでも下がろうとしない女を、アーヴィングが手振りで追い払ってから、僕が尋ねる。
「しばらくはカンカンでしたが、奥方や周りの者に諭されたようです。ひとまずは庶子として認知する書類を出した上で、王家に相続の許可を得る方向で考えていますが――」
「いけそうなのですか?」
アーヴィングが紅茶を一口飲んで、ソーサーに戻す。
「通常ならば、かなりの大金を上納する必要がありますが、デニス坊ちゃまは戦死ですので、法務局に問い合わせたところ、通常、優遇されるだろうと」
他に、近い男性の親族もいないこともあり、ライラの養子にしなくとも申請は通りそうだという。
「一番近い男性親族が旦那様の弟で、ですがもう五十を超え、娘しかいません。その次が従兄弟の、こちらは同じくアーリングベリのロズモンド子爵を継承していますので――」
「ルーカスへの継承が認められる可能性が高いのですね」
僕はアーヴィングに提案した。
「せめて寄宿舎に入れる年齢になるまでは、母親の元で過ごさせたいのです。こちらの家では養育できる人はいなさそうですし」
「そうですね。……お子さんの母親にあたる元メイドを世話係に雇用するという案も出ていますが、あのような形で追い出した女性が、その話を受けてくれるとは思いません」
この後に及んでローズマリーを「雇用」しようと考えているらしいリントン伯爵に、僕は驚きを隠せない。
「実は――僕はその、ローズマリー・オルコットと結婚するつもりなのです。ですから、僕がそのまま、ルーカスを養育したいと思っています」
僕が言えば、アーヴィング弁護士がしばらくポカンと僕の顔を見詰める。
「ええ? ……ローズマリー・オルコットと、結婚? イライアス卿が?」
「ええ。さきほど、オルコット男爵の許可も得ましたし」
アーヴィングはしばらく目をパチパチさせていたが、大きく息を吸ってから、言った。
「そういうことでしたら……」
ということで、アーヴィングの付き添いの元でリントン伯爵家に向かう。
ライラもいなくなって老夫婦だけになったせいか、リントン伯爵邸はどことなく華やぎを欠いていた。
「……これはイライアス卿」
リントン伯爵と夫人の出迎えを受け、僕は書斎に通される。
「ローズマリー・オルコット嬢の子、ルーカスについての、そちらのご意向を確かめたいと思いまして」
僕が切り出せば、リントン伯爵が疲れたような表情で言った。
「デニスによく似ているそうだし、庶子の届を出した上で、デニスの妻ライラの養子にし、リントン伯爵の継承を願い出る予定だったのだが――」
「ライラが拒否した」
「……そうです」
自らお茶を運んできた夫人が、眉尻を下げる。
「ライラは王都で、元気にしていますか?」
夫人に問われ、僕も首を傾げる。
「実は、先日ようやく、ライラに会いまして。……元気ではありますが、多少、不安定に思われました」
「ヘンダーソン侯爵よりは、ライラの籍を抜くと――」
「ライラはまだ若いですし、生涯、未亡人として縛り付けるのは残酷ではないですか」
「そうなのだが……もう少し情があると思っていたのに」
結婚前とはいえ、よその子に産ませた子供が出てくるのは、女性にとっては辛かろう。
「アーヴィング弁護士に尋ねたところ、ライラの養子になくても、継承は認められるのではと言っていたましたが」
「そうなのだが……」
リントン伯爵が夫人を見る。夫人が首を振った。
「もうわたくしも年ですし、幼い子供の面倒を見るのは体がしんどくて」
伯爵夫人は悪い人ではないのだろうが、今さら幼い子の子育てなどしたくないのだろう。
「実は、僕はローズマリー・オルコットと結婚することにしました。つきましては、このままルーカスを我が家で養育したいと考えています」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような夫妻の顔を、僕はまっすぐに見て言った。
「ここしばらく我が家で様子を見て、僕の母にも懐いていますし。家庭教師は――一度雇ったのですが、少し問題があり、今は、代わりの者を探しているところです。七歳になりますし、秋からは王都の初等学校に通わせようかと考えていますが」
「イライアス卿が? ローズマリー・オルコットと、結婚?」
「ええ」
何度目だと思いながら、僕は頷く。
「今まではローズマリーも警戒して、あなた方にルーカスを会わせるのを拒否していましたが、王都のマクミラン侯爵邸で養育することを確約していただけるなら、会わせてもいいと」
リントン伯爵が呆然と僕を見る。
「あ、会わせてもらえるのなら……」
「では一度、王都にいらしてください。手続きが済んでからならば、僕がルーカスをこちらに連れてきてもいい。将来、伯爵位を継ぐのならば、こちらに長期滞在することも必要になるでしょうが、それは寄宿学校に入れるくらいの年齢になるまでは、待っていただきたいのですが」
僕の提案に、リントン伯爵は一も二もなく頷いた。
「王都のマクミラン侯爵が後ろ盾になってくれるなら、願ってもない。どのみち、継承の請願のために王都に出向く必要はある」
「では、その折にあらためて」
こうしてあっさりと問題は片付いた。
ずっと圧し掛かっていた心の重荷を下ろし、僕はホッとする気分だった。
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