タビスルムスメ

深町珠

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由布院温泉

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よくある温泉と同じで、由布院のこのオフロも
洗い場は、壁に鏡がいっぱいあって。
蛇口がたくさん。
シャワーがついていて。

そこに、プラスティックの腰掛を持ってきて。
湯桶に、お湯を溜めて。

銭湯だと、底に「ケロリン」なんていう薬のCMが書いてあったりする。


そこの、奥の方で。
菜由は「人吉って言うと、日光さん、どうしたかな、あれから」


ひとつ置いて、入り口のほう。

愛紗は、同じようにしていて
「もう・・・お家で休んでるんじゃない?お兄ちゃんもしばらくは
真由美ちゃんのものだから」


真由美、と言う名前で
さかまゆちゃんは、なんとなく
自分を呼ばれたのかな、と・・・(^^)。

もうひとつ奥のコーナーで、シャボンをたてていて。

「まゆまゆのことですか?」


愛紗は「はい。お兄ちゃんって、でも、いいですね。
ずーっと一緒に居られるし」


さかまゆちゃんは「はい。お兄ちゃんにガールフレンドが出来たら・・・
タイヘンかな」(^^)
なんて、にこにこ。

ともちゃんは、打たせ湯で
肩をお湯に打っている。

天井から、温泉のお湯が落ちてきて
それが、肩に当たって。はじける。


けっこう、大きな力みたい。


菜由は「高校の頃も、お兄ちゃんガールフレンドとか作らなかったのかな?」

と、シャボンを立てたタオルで、肩を洗っている。
がっちりした体型なので、頼りがいがある感じ。


さかまゆちゃんは「さあ・・・それは、偶然、想うものだし・・・。」

ともちゃんは、打たせ湯から出てきて「なんのオハナシ?」と、楽しそう。

さかまゆちゃんは「まゆまゆがいるから、お兄ちゃんがガールフレンド
作らないのかな、って」


ともちゃんは「そーねぇ・・・あのお兄ちゃん、そんなコトしないよ、たぶん。
はっきりしてるもの。好きな人が、たまたま・・・居なかっただけ、じゃないかな」


菜由は「まあ、そうだと思うけど。」

愛紗は「ひとのキモチって、いろいろだものね。その人で違うし」


さかまゆちゃんは「でも。思い切って。まゆまゆは
「お兄ちゃん、好き!」って
言ったらいいと思うの。」

と、バレー部の人らしい。はっきりした言葉。


ともちゃん「それはいいとおもうなー」と、とろーんとした声で。

いつも、そういう感じの話し方をする子。





菜由は「お兄ちゃんも好きだったら、いいけど」と、夢物語に。

愛紗は「シェークスピアーにあるみたいに?」


菜由は「うん。最後、どうなるんだっけ」

愛紗は「シェークスピアだから・・・アンハッピー」

さかまゆちゃんは「西洋の劇だから。派手に書いてあるけど。
そうじゃないお話もありますね」


ともちゃんは「そうそう。でも・・・言わなくても、恋の物語とか
書いたら、気が済むんじゃないかなー。」

愛紗は「かわいいお話ね」と、にこにこ。

ともちゃんも、にこにこ。




愛紗は、それからジャグジーに入って。

壁際にあるジャグジーは、普通のお風呂みたいに見えるけど
温泉のお湯。


空気がぽこぽこ、出ている。


どういう訳か、その隣に玉砂利が敷いてあって。



ゆっくり浸かると、ぱちぱち☆ 泡がはじけて。



菜由は、そのお隣の大きなおふろに。

ここも、ジェット風呂になっていて
お湯が、壁から勢い良く出ている。

菜由は「はー、生き返るー」


愛紗は「死んでたの?」


菜由「それ、友里絵ちゃんふう」

愛紗「ハハハ。明るくなった?」


菜由は「うん。いいコトだよ。悩んでもしかたないもの」

愛紗は「そだね」





さかまゆちゃんと、ともちゃんは
ミストサウナへ。


ともちゃんは「ひゃー」と、
木の扉を開けると。


温かい水滴が、部屋じゅうに。


さかまゆちゃんも「ほんと」


水滴が、全身を温めてくれるみたいな。


壁際に、石作りのベンチがあって
そこに腰掛けて。


気持ちもシャワーできそう。そんなふうに
さかまゆちゃんは思う。








同じ頃・・・・人吉の真由美ちゃんは・・・。

お風呂に入っていて。


お家温泉なので(^^)。


のんびり。


大きな檜のお風呂に、ゆっくり。


ふんわりしているまゆまゆちゃん。
お風呂の中で、浮いちゃいそう。

「明日も、乗務だね」と・・・。
凛として、思う。


それが・・・なんというか。自分の芯になっているような
そんな気がした。

キッカケはなんだっていいけれど。
懸命になれる事って、いい事だと
まゆまゆちゃんは思う。









熊本の・・お兄ちゃんは
既に寝ていた(^^)。

そう、機関士は
雑念があっては勤まらない、重要な任務である。

ひとたび、何かが起これば・・・・。

いや、起こしてはならない。

それが守れる人だけに、許される職務なのだ。


自然と、そう思えば
眠れない、などと言う事はないし
勤務が過酷なので、横になれば寝てしまうくらいだ。


明日も、乗務である。



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