125 / 287
125・観察
しおりを挟む「あれがトップの分隊……ちょっとお腹痛くなってきたーー」
あの川辺から拠点を目指して二日目、ジョルクの索敵をフル活用した俺達は全ての敵分隊を避けるステルス行軍で、とうとう目標であった拠点エリアが一望出来る場所まで辿り着いた。
川を渡り、崖を降り、藪を掻き分けーー道無き道の行軍は大変ではあったが、小柄で非力なナルが居なかったお陰で割と順調に来れた。
勿論、ナルが足手纏いだったと言ってる訳では無いが、予定より到着が早かったのは事実だーーナルは歩幅が狭いからなぁ。
そんな訳で、俺達は休憩がてら先人分隊の拠点攻略をコッソリと観察させてもらっている最中なんだけどーーいくら防衛側が有利とはいえ、思ってた以上に難易度が高い!
分隊長であるイリスって女の子も、例え俺がこの肉体美を以って迫っても、キャーキャーと逃げ惑うか弱い感じには一切見え無いーー寧ろあれは、大事な所に蹴りでも入れてきそうなタイプだ。
「ヨイチョの嘘付き……」
「え、何か言った?」
「別に……」
まぁ、俺だってそんな作戦で楽に拠点が取れるなんて思って無かったさ、同じキャーキャー言われるなら悲鳴より歓声のが良いしな。
「兄貴……残念だったなぁ」
「うるせー! 別に楽しみにしてた訳じゃないしっ! それよか、あれどうやって攻略するんだよ……」
全体を見ていたから解る事だが、あのヒースってヤツの作戦は決して悪いものじゃなかった。
まず最初に三人の魔法士が大量の氷柱を同時に撃つ事で正面に注意を引きつけた。
恐らく、狙いは俺達がナル奪還の時にやった陽動ーーだが、規模が違う。
あれだけ大量の氷柱……土壁と違い守る範囲が狭い俺にはあの攻撃を防ぐ手段が無いーーきっと、分隊に何人かの犠牲は出るだろうな。
だが、イリス分隊は違ったーーまるでこの氷の攻撃が分かっていたかの様に正面に陣取っていたのは炎の魔法士だ。蒼天を突く様な大きな火柱が現れると氷柱を次々に溶かしてゆくーー三人の魔法士が放つ範囲魔法が、たった一発の火柱に防がれた!
だがそれは想定済みのだった様で、ヒースはその光景を大して気にもせず次の準備を進めてゆく。
「見て、氷結空間で溶けた氷を再凍結してる! ……あれで氷の道を作ったんだ!」
「それだけじゃ無いですよ、漂う水蒸気をも凍らせて視界を悪くしている様ですね」
「キラキラしてんのはそれかぁ! 眩しそうだよなぁ、アレ」
三人の魔法士は出来上がった氷の道を素早く滑走しながら見張り台がある建物へと切迫する。
しかし、その道の先にはいつの間にか土壁が設置されていた。
「目眩しが仇になりましたね」
「あの視界とスピードじゃ、土壁が急に目の前に現れた様に見えるだろうなぁ!」
霧の中で急に障害物に出くわした場合、止まるか避けるかの二択だがーー速度の乗った滑走は止まれないだろうから逃げ場は空中への一択だろうな。
俺達の予想通り、ヒース達三人は速度を殺す事無く跳躍した。
「やっぱり飛んだね! あのまま建物に突っ込む気だよ!」
「ーー造る土壁の高さが絶妙ですね。アレ以下だと建物内部で待ち構える炎魔法士の攻撃を予測出来てしまう、逆にアレ以上の高さだと飛ぶのは諦めるでしょう」
ーードンッ!
逃げ場の無い空中での狙い撃ち、イリス側からも見えないだろうにタイミングがドンピシャだ! あれは躱せないーー三人は地面へと転がった。
「~~~ッ! 残念!」
だが、ヒースの凄い所は同じ様な事を同時に別の場所でもやっている事だ。こちらからは見えづらいが、建物左手でも同じ様な攻防が繰り出されている。
「あれは……多分、二部隊が結託して拠点攻略へ取り組んでいますね」
「へぇ、そういうのも有りなのか」
「何言ってんだ兄貴? 俺達だってやられたじゃねぇか、なぁ?」
あぁ、そういや初日にバルトとロッシに同時に狙われたんだっけな。
「二分隊が同時に拠点占拠って出来るのか?」
「うーん、ルール的には占拠出来る分隊は一つだよ」
「ーーイリス分隊を排除してから決闘方式で決着を着けるつもりなんでしょう」
そうでもしなくては歯が立たない程の実力差があるって事か……二部隊で相手の戦力を分断し、どちらかが成功すれば良しとする作戦、しかしーー
「それでも突破出来ないのか……」
「いえ、本命は背後からの潜入でしょう」
「えっ、背後から? って事は二部隊でのあの攻撃が全て陽動って事!?」
「はぁ~、だから人数がおかしいのか! ヒースの所が此処に来るまでに二人も欠ける訳無いもんなぁ!」
しかしその本命も失敗に終わった様だーー見張り台から光の矢が降り注ぐのが見えた後、戦闘音が一切消えたのだ。
「終わった様ですね……ほら、審判役の正騎士が向かいましたよ」
「…………マジで強いな、常にトップなの納得だわ」
でも、ヒースってヤツも惜しかった。偶々今回運悪く、氷魔法士のヒースと炎魔法士が対峙したが、あれが違う魔法士だったならーー。
「貴方、これが偶然だと思ってませんか?」
ヘルムがずり落ちる眼鏡を直しながら俺に言う。
「へっ? そりゃそうだろーーあの堀を越えるまではお互いが見えないんだからさ……いや、まさか鳥瞰視点?」
堀から拠点の中心である見張り台まで距離は100m程ーーそして地面に掘られた深い堀の淵は少し高く土砂が積まれている為、そこを越えなければ先は見えない。
しかし、ジョルクの様に優れた索敵魔法が使えるなら……待てよ、相手の居場所は分かるとしても、属性まで分かるもんなのか? そうでなきゃ相手の苦手属性をぶつけるなんて真似は出来ない。
ヨイチョはたった今行われた上位分隊同士の攻防に、少し興奮したのか震える声で俺に言った。
「戦巫女のイリスは『先見の目』を持ってるって言われてるーー彼女は未来が見えるんだ」
ーー未来が!? そんなの有りなん?
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる