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 番外編 その3  ささやかな幸せの、物語。

訪問客

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 ――――

  家の中。
  安楽椅子に腰かけて、エディアは編み物をしていた。
  ルーフェは少し、買い物へと出かけていて家にはいない。いるのは彼女、一人だけと、言うことだ。

 ――ふぅ。何とかここまで、出来たかな――

  エディタは得意げな感じで、自分の塗った編み物を眺める。
  それはとても小さな、上着だった。
  手に持っているものは半分作りかけではあるが、そのすぐ横には一着、完成した上着が置かれている。


  彼女がそんな感じで、編み物をしていた、その時。

  コンコンコン

 家の扉から、ノックの音が聞こえた。

 ――あら?  ルーフェが帰ってきたのかしら。でも――

 ルーフェならノックではなく、ただいまと、一言言って家へと入る。
 となると……別の人なのだろう。
 エディアはそう考えながら玄関へと向かうと、その扉を開けた。


「こんにちは、エディアさん!  今日も遊びに来たわ!」

  玄関先にいたのは、村娘のミリナであった。
  それにミリナの他にも、もう一人。

「あの、良ければ僕も、挨拶にって、思ったから」

 一緒にいたのは同い年くらいの少年。
 彼は村で店の手伝いをしている、ケインだ。エディアとも、彼が手伝いをしている店でよく買い物をしているため、顔馴染みではある。

「ケインくんも、来てくれたのね。……嬉しいわ! 
  大したもてなしは出来ないけど、二人ともゆっくりと、していってね」

「ありがとう、エディアさん。
  じゃあケインくんも、一緒に入りましょう」

  ミリナはそう言って、家の中へと入る。
  続いてケインもまた一礼し、彼女の後へとつづく。



 ――――

  エディアの暮らす家へとお邪魔した、ミリナとケイン。

「エディアさん、私、果物を持ってきたわ。
   それこそケインが働いている店で、新鮮で美味しそうなのを、選んできたの!」

  そう話すミリナの手元には、リンゴやブドウにバナナ、様々な果物が詰まったバスケットがあった。
  彼女はエディアの座る椅子の側にある、テーブルへとバスケットを置いた。
  そしてバスケットから、リンゴをひとつ手にとるミリナ。

「せっかくですから、このリンゴ、剥いて置いておきますね。
  お願いケイン、台所からお皿と果物用ナイフを持ってきてくれない?」

「分かったよ。えっと、エディアさん。
  どこに置いているのかな」

「お皿は食器棚に入っているものは、何でも大丈夫。果物用ナイフはそこの台の、すぐ上の引き立ての中ですよ」

「教えてくれてありがとう! じゃあ持って来るね」

  ケインはそう言って、台所の方へと向かうのであった。
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