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第二章
剣術の稽古
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「本日から試験勉強だけではなく、男性貴族としての振る舞いも身につけていただきます。要は男性として生活していただくことになります」
「はあ……」
「良い成績で編入試験を通過したとしても、入学後に女性だとわかってしまったら、そこですべて終わりですから」
「それもそうね」
「……言ったそばからそれですか」
「あ! ごめんなさい……」
エリスは思わず口に手を当てていた。
そのエリスの仕草を見て、クロードは、呆れたように言った。
「まずはその注意力のなさを直すべきでしょうね」
散々な言われようであったが、否定のできない事実であることから、エリスはぐうの音も出なかった。
「それと……今日から『アーサー』様とお呼びいたしますので、お間違いのないよう」
「アーサー……」
「ええ、よろしくお願いいたします、『アーサー』様」
「この剣をお取りください」
そう言ってクロードがエリスに差し出したのは、剣の稽古用の模造刀であった。
「重いっ……!」
片手で模造刀を受け取ったエリスは、模造刀のあまりの重さに驚き、とっさに両手持ちに持ち替えた。
エリスは、クロードが片手で軽々と模造刀を扱っている姿を見て、この模造刀が軽いものだと勝手に勘違いしてしまっていたが、実際は両手で持ってもかなりの重量があった。
「おや、どうされました?」
模造刀相手に悪戦苦闘しているエリスを見て、クロードがわざとらしく尋ねてきた。
「あの、この剣が重くて……。両手で持つのもやっとなんです」
「それは困りましたね。これが片手で自由自在に操れるようにならないと、剣術の稽古は始められません」
「そんな……」
「ならば、一日も早くこの剣を片手で扱えるようになることです。お見受けしたところ、アーサー様は非常に筋力が弱くていらっしゃる。筋力だけではなく、筋肉自体も全くと言ってよいほどついていらっしゃらない」
(元々女性なのだから当然でしょう……?)
とクロードに言ってやりたい気持ちを、エリスはグッと抑え込んだ。
「素振り百回」
「え?」
「とりあえず、朝と晩に、こちらの剣を使った素振りを百回やってみましょう」
エリスは、両手で持つのもやっとの状態の剣を、朝と晩にそれぞれ百回、合計二百回もの素振りを課されてしまったのだった。
「はあ……」
「良い成績で編入試験を通過したとしても、入学後に女性だとわかってしまったら、そこですべて終わりですから」
「それもそうね」
「……言ったそばからそれですか」
「あ! ごめんなさい……」
エリスは思わず口に手を当てていた。
そのエリスの仕草を見て、クロードは、呆れたように言った。
「まずはその注意力のなさを直すべきでしょうね」
散々な言われようであったが、否定のできない事実であることから、エリスはぐうの音も出なかった。
「それと……今日から『アーサー』様とお呼びいたしますので、お間違いのないよう」
「アーサー……」
「ええ、よろしくお願いいたします、『アーサー』様」
「この剣をお取りください」
そう言ってクロードがエリスに差し出したのは、剣の稽古用の模造刀であった。
「重いっ……!」
片手で模造刀を受け取ったエリスは、模造刀のあまりの重さに驚き、とっさに両手持ちに持ち替えた。
エリスは、クロードが片手で軽々と模造刀を扱っている姿を見て、この模造刀が軽いものだと勝手に勘違いしてしまっていたが、実際は両手で持ってもかなりの重量があった。
「おや、どうされました?」
模造刀相手に悪戦苦闘しているエリスを見て、クロードがわざとらしく尋ねてきた。
「あの、この剣が重くて……。両手で持つのもやっとなんです」
「それは困りましたね。これが片手で自由自在に操れるようにならないと、剣術の稽古は始められません」
「そんな……」
「ならば、一日も早くこの剣を片手で扱えるようになることです。お見受けしたところ、アーサー様は非常に筋力が弱くていらっしゃる。筋力だけではなく、筋肉自体も全くと言ってよいほどついていらっしゃらない」
(元々女性なのだから当然でしょう……?)
とクロードに言ってやりたい気持ちを、エリスはグッと抑え込んだ。
「素振り百回」
「え?」
「とりあえず、朝と晩に、こちらの剣を使った素振りを百回やってみましょう」
エリスは、両手で持つのもやっとの状態の剣を、朝と晩にそれぞれ百回、合計二百回もの素振りを課されてしまったのだった。
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