【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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9. 異世界40日目 とりあえず生きています

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9. 異世界40日目 とりあえず生きています
 この世界で頑張ると決めてから1ヶ月が過ぎた。この世界にやってきたのは2月5日で今は3月13日とこの世界に来てから40日たったことになる。
 時々もっと他に何かよい働き口がないか確認はしていたんだけど、やはりそうそういいものはなく、結局冒険者として活動している。今のところ大きな怪我もなく無事だ。

 狩りは朝から夕方まで5時間、晴れた日はほぼ毎日頑張った。さすがに毎日同じ狩り場に行くと魔獣も減ってくるのでいろいろと狩り場を変えてやった。ゲームで言うところの序盤の経験値稼ぎと言ったところか?宝箱とかの特典はないのでお金についてはゲームとは違うんだけどね。

 ゲームと実際で大きく違うのは雨が降ったときだ。一度雨の日に狩りに行ってみたんだが、視界は悪いし、足場も悪いし、魔獣は見つからないしで散々だった。戦うにしても怪我を負うリスクの方が高そうだったしね。
 雨は少ない時期らしいけど、それでも1週間に1~2日ほど雨の日があり、その日はさすがに狩りには行っていない。雨の日はおとなしく図書館で勉強したり、魔法の練習をしたりしている。

 狩りの対象は初階位のスライムや角兎や狼もどきや大蜘蛛の他に並階位の大蛇、毒スライムや毒蛾、単独行動していた狼なども倒している。ただ並階位の魔獣の遭遇率はそれほど高くない。
 残念ながら素材として買い取ってくれる対象は少ないのもなかなかお金が貯まらない要因の一つだ。狼や大蛇の買い取りは結構いいんだけど、狼などは群れでいたらどうしようもないしなあ。今はまだ涼しいからいいんだけど、今後暑くなってきたら肉の持ち帰りも問題になってきそう。


 剣と短剣の扱いについては大分慣れてきた感じがする。お金がかかるが短剣は1回だけ講習を受けておいた。やはり最初の基礎については知っておかないと危ないと思ったからね。
 手のひらにはまめができてしまうんだがけど、治療をするといつまでたってもまめができてしまうので完全な治療をしないようにした。おかげでまめはできにくくなったけど、手のひらが硬くなってきているのは仕方が無いだろう。

 魔法は頑張った甲斐があって火、風、水、土の4つの魔法が使えるようになった。最初に風魔法が使えるようになったので、石を操る感じで土魔法を覚えた。そのあと土を粘土みたいに使うことができるようになってある意味面白かった。
 火魔法はろうそくの火を大きくしたりして操作を覚えるところから、ろうそくの火をつけることで火を生み出すことがで来るようになった。今は魔素を変換して空中に火の玉を生み出せるようになっている。
 ちなみに魔法で作った火も水をかけると消えるのでつくってしまえば他の火と同じ扱いみたいだ。ただ魔素を供給し続けると水の中でも燃えるという現象は確認できている。
 水魔法もコップの中の水を動かすことから始めて、魔素から水を生み出せるようになった。魔法で造り出した水は飲むことができるようだ。ただ魔素を変換して水が出ているのか、空気中の水分が凝集して水になっているのかはわからないけど、出てくる水の量を考えると空気中と言うことはなさそうだ。
 しかし世界の水の循環についてはどうなっているんだろうね?水の量って変わらないという話だったから水がずっと増えていたらとんでもないことになるので生まれた分の水がどこかでなくなっているのかねえ?

 火と水については魔素を変換することでそれぞれ火と水を生み出すことができるようになった。ただ他の二つについては魔素を使って操ることはできるんだけど、変換することがうまくできない。変に知識があるせいでイメージがうまく出来ないのかもしれない。
 袋の中に生み出せば何かが出来ているかは分かるんだけど、空気と考えてもうまくいかなくて、窒素と考えると量は少ないが生み出すことが出来た。ただ窒素100%とか怖い・・・。酸素はほぼ100%のものができたことは火が消えかけの棒を入れることで確認できた。
 応用すれば毒ガスとかも出来そうだけど正直言って怖くて生み出すのには躊躇してしまう。まあ窒素とかでもある程度の量を口の周りに発生させることが出来れば即死させられそうだけどね。
 土や石とかについては生み出すことは出来なかった。おそらく気体と一緒なんだろうけど単一物質しか生み出せないのかもしれないし、個体なのでかなりの魔素が必要なのかもしれない。もう少し魔素を操ることが出来るようになれば出来るようになるのかねえ。


 そのものは生み出せてないけど、戦闘には風魔法と土魔法をメインに使っている。火は後始末とか素材がだめになることから使いにくいし、水魔法は生み出さないといけないので手間がかかってしまうためだ。まあ水魔法は狩りの途中の水分補給にかなり役に立っているけどね。飲み水の分の荷物がなくなるというのはかなり大きい。

 風魔法の威力は大分上がってきたけど、なかなか風魔法のみで致命傷を与えるまでにはならない。ちなみに普通の魔法使いは殲滅する一撃必殺の技というわけではなく、物理攻撃する際の補助的な役割の方が大きいらしい。

 土魔法は狩りの時に囲い込みの壁を作ったり、魔獣を分断したりして誘導用に使っている。まあ分断と言っても高さ20cm程度の薄い壁を作るくらいしか出来ないんだけどね。ただそれだけでも今相手をしている魔獣レベルだと結構役に立っている。ぶつかれば壊せるものだけどいきなり壁が現れると回避しようとするからね。
 あとは石を操って飛ばすこともできるんだけど、残念ながら威力がそれほどまで無いのでもう少し威力を上げないと意味が無い。


 解体については役場にあった本を参考にしてやり始めた。最初は解体したせいで買取額が下がったり買い取り拒否になってしまったりした。まあしょうが無いよね。何度も解体していると要領も良くなってきて解体速度も上がってきたので効率は上がっている。

 あと血抜きについては水魔法を使うことでかなり楽に行うことができるようになった。液体のものであれば一応操れるみたいで、時間をおかなくても体内から血を強制的に抜き出すことができたのはありがたい。このおかげで解体も楽になったしね。やっぱり血がいっぱい出ると結構つらいものがある。これで氷魔法が使えるようになって肉を冷やすことが出来ればさらにいいんだけどねえ。
 この血を抜くやり方を攻撃に応用できないかと思ったんだけど、残念ながら生きでいる間は水魔法で操るのはできなかった。レベルが上がればある程度はできるかもしれないが、どうなんだろうね。


 解体スキルのレベルを上げるにはいろいろな種類の解体をしないといけないため、自分の狩っている魔獣の解体だけだとレベルアップは厳しいのかもしれない。どこかの店で解体の仕事でもないもんかねえ・・・。


 多くの冒険者は数日~数週間かけて遠征しているんだけど、さすがに一人で野営ができるレベルにはなっていない。見張りを考えると、どう考えても無理があるだろう。一人でも野営できるための魔道具もあるらしいけど、値段が高いのでもちろん買うことはできない。



 前に魔法の講習で会ったユータとカナの二人と何度か一緒に狩りに行ったりしたんだけど、パーティーを組むというわけではなく、たまには一緒にやってみようというレベルだ。まあまだみんな初心者過ぎてパーティーの役割分担も中途半端な状態だからねえ。なのでまだ日帰りエリアでの狩りしか行っていない。そろそろ遠征も考えないといけないかなあ?
 このため1日の稼ぎは最大で500ドールであり、ここ最近の稼ぎを平均すると400ドールというところだ。おかげで稼いだお金がそのまま消えていくという状態・・・。

 今のところ装備関係はまだ買い換えの必要はないけど、いずれこちらも買い換えを考えないといけなくなっていくことを考えると頭が痛い。まだ薬を使うレベルの怪我はないからいいけど、冒険者って割に合わないかもしれないね。



 雨の日と夕方には図書館に行って勉強をしていたんだけど、この間ついに鑑定スキルを手に入れることができた。鑑定は学識系のスキルを上げるのが条件となっているのでレベルが低いものや持っていなかった魔法学と神学と天文学を中心にがんばった。

 この3つについて本をいろいろ読んでいたんだけど、神学と天文学については考え方がそんなに難しくないので素直に理解ができた。魔法学についても最初の方は魔法を使うための講義で聞いた内容だったし、ゲームなどの知識と同じ点もあったので理解しやすかった。

 ただスキルを手に入れても脳内に「○○スキルを手に入れました」と案内があるわけではないので正直いつ手に入れたのかは分からない。
 「そろそろ鑑定を使えてもいいんじゃないかなあ?」と思って自分の手を見て、情報を得られないかと試行錯誤していると脳内に情報が出てきた。
 鑑定スキルって、もし運良く手に入れられるようになっても気がつかない人がいるんじゃないのか?そもそも鑑定というスキルがあることもよくわかっていないみたいなのでわざわざものを調べようとはしないだろう。実は学者系には持っている人も多いような気もするね。

 正直脳内に情報が流れてきても横でその内容を言われている感じなので何度も鑑定して書き取らなければ何を持っているかわかりにくいというのが問題だ。ゲームでよくあるポップアップウインドウみたいな表示にできないかといろいろと試行錯誤してみたところ、数日かかってやっとできるようになった。使う魔法ってほんとにイメージなんだな。

 ちなみに鑑定の魔道具の場合は魔道具に持っているスキルが表示されるので、鑑定をするとそのスキルを書き出して渡してくれるようだ。

 鑑定で示されるステータスはこんな感じになった。

名前:ジュンイチ
生年月日:998年10月30日
年齢:17歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者
賞罰:なし
資格:なし
クラス:なし
婚姻:なし

スキル:
片手剣、両手剣、刀剣、短剣、一般魔法、火魔法、風魔法、水魔法、土魔法、治癒魔法、回復魔法、睡眠耐性、演奏、歌唱、絵画、彫刻、工作、料理、裁縫、日本語、英語、ヤーマン語、ライハンドリア公用語、思考強化、鑑定、索敵、商人、採掘、採取、解体

 事前に持っているとわかっているもので算学などの学識系のスキルが表示されていないし、スキルのレベルも表示されていない。おそらく魔道具の鑑定はこの内容になるのではないだろうか。そのせいで学識系のスキルが分かっていないし、レベルも分からないのでスキルやクラスを得られる条件がよく分かっていないのだろう。
 鑑定のレベルが上がると見えるようになるんだろうか?早く学識系のスキルやレベルが分かりたいところだなあ。


 ちなみにアイテムなどを鑑定するとアイテム名が表示されるくらいだ。特に効果や成分などの説明はない。ちなみに今持っている魔獣石をまとめている硬貨を鑑定すると”魔獣石”と出るだけだ。

 また、対象を見るだけで鑑定ができるわけではなく、触らないと鑑定はできない。死んでしまった魔獣は「○○の死体」としか表示されないのでスキルなどの鑑定はできない。瀕死状態の魔獣を鑑定してみたところ、一応持っているスキルについては表示されたけどね。
 持っているスキルには毒攻撃や突撃や隠密などがあったけど、魔法を使う魔獣は魔法のスキルを持っているのだろう。
 ちなみに隠密スキルを持っていると、索敵に抵抗できるみたいで索敵しにくくなるみたい。同レベルまでは意識すればなんとか確認できるが、レベルが上になると索敵は全くといっていいくらいできなくなるようだ。
 隠密スキルは魔素を出ないように押さえ込むことで気配を消す感じだ。まあ漫画の世界では結構あるのでイメージはしやすかったんだけどね。経験的に魔素を押さえるということはできるので、実は隠密スキルを持っている人も多いような気もする。

 他の人についてこっそり鑑定をしてみたけど、見える内容は自分と同じだった。ただ触っている間しか鑑定結果が表示されないのであまりしっかりと見ることはできなかったけどね。


 短剣のスキルがついているので最低限のレベルはあるということだろう。他のスキルはレベルが上がっているのかわからないけど、短剣と大差がないのでそんなに上がっているようには思えない。

 魔法の種類については得手不得手があることが多いようなんだけど、自分はとりあえず今のところそんな感覚はなくまんべんなく覚えられている。ただ使い勝手とかで使用頻度に差が出るので成長度合いに差が出るのは仕方がないところだろう。
 特に火魔法は後処理を考えると使い勝手が悪い。素材もだめになってしまうし、延焼とかも怖い。威力的には一番強いと思うんだけど、今のところ使用回数や経験数が少ないせいか威力はまだまだだ。

 いわゆるバフと言われる身体能力の強化や魔獣の弱体化などの補助魔法についてはどうイメージしてもうまくいかないのはまだスキルレベルが足りないのだろうか?ただ本を読んでもそのような魔法は乗っていないのでそもそも無理なのかもしれない。
 スキルとして肉体硬化や筋力強化など魔素を取り込んで肉体を強化するスキルがあるから、こういうスキルは自己を強化するのみなのかもしれないね。他の人の肉体を強化するというのは他の人を操るみたいなものだから無理なのかな。

 一般魔法に分類されるのか不明だが、こちらについてはいろいろと使い勝手がいいものがある。シャワーとかで体を洗うレベルまではいかないがけど、体の汚れを取り除く浄化魔法はかなり使い勝手がいい。血糊や汚れを大雑把にでも落としてくれるので戦闘の後などはとてもありがたい。武器とか鎧の手入れにも使えるしね。
 倒した魔獣も簡単に汚れを取り除けるので持ち帰るときに臭いが少し薄くなるのもありがたい。最初のうちは毛皮が臭くてしゃれにならなかったからなあ。

 治癒魔法は大分慣れてきて、簡単な怪我であればすぐに治せるようになっている。前に手の指を骨折してしまったときも治療できたのである程度治癒魔法のレベルは上がっているように思う。

 回復魔法は毒スライムを倒したときにピリピリする程度の毒を受けてしまったんだけど、毒を除去するイメージで治療すると毒の除去ができたみたいだったのでそれで覚えたようだ。その後、毒蛾についても麻痺毒だったみたいで筋肉が弛緩したような感じだったので同じように除去と細胞の活性化を試すと治療できたのでやはりイメージさえ合っていれば治療できるようだった。

 視力についてはいろいろと試行錯誤することで普通の生活には困らない程度まで回復した。眼球形状や、水晶体などの再生、目の筋肉の治療、網膜の治療などいろいろな方面で試した結果である。最終的にどれが効いたのか分からないが、大まかなイメージでも効果が出てくれたので良かった。
 おかげで眼鏡やコンタクトを使わなくて良くなったのでありがたい。一応こっちの世界でも眼鏡はあるんだけど、自分が持っているような形状のものはないから違和感がねえ・・・。コンタクトレンズは間違いなくないだろう。それするくらいなら治療する方向かもね。

 回復薬や治療薬は持っていたので気にしていなかったんだけど、値段を確認するとちょっと引いてしまった。薬は初級、中級、上級、特級の階級とそれぞれ低、並、高、良、優のグレードがある。低グレードは普通は販売されていない。
 最初に少し使ったので今持っているのは初級回復薬×5、中級回復薬×2、初級治療薬×3、中級治療薬×2なんだけど、並グレードのもので初級回復薬は一つ300ドール、中級回復薬は一つ2000ドール、初級治療薬は500ドール、中級治療薬は3000ドールとなっていた。
 まあ治療や回復を覚えることができる人は少ない上に知識と時間とお金がかかるからねえ。パーティーで治療できる人がいることが珍しいくらいだし、いても普通は初級程度ができれば十分という感じらしい。このため中級以上の薬の値段がかなり高くなってしまっているし、初級はそもそも普通は使わずに自然治癒を待つというのが普通らしい。
 初級~中級治療薬が初級治癒魔法に相当し、中級~上級治療薬が中級治癒魔法に相当するみたい。上級治癒魔法に相当する特級治療薬は普通売っていないので、大けがをした場合は薬では難しいと言うことになる。

 冒険者でも調合で薬の作成はできる人もいるけど、材料の確保まで考えると、個人レベルで薬を造るのは難しいようだ。結構いろいろな種類の薬草が必要みたいだしね。
 自分も調合はある程度できそうだけど、今のところ必要性がないのであまり気にしていない。やはり素材の確保がねえ・・・。もっといろいろなところにいけるようになったら考えてもいいかもしれない。ただ販売をするにはいろいろと問題がありそうだけど。

 冒険者が一般的な職業とならない理由の一つがこの治癒魔法が普及してないことだろう。怪我をしたら狩りにいけなくなるし、治療するにしてもその対価が大きすぎる。体が資本なので、動けなくなった時点で収入がたたれると考えるとかなりリスクが高い。
 そして保険のような制度はこちらの世界にもあるが、冒険者が保険をかける場合はかなり支払額が大きく、入っている人は高レベルの人たちの一部くらいらしい。

 このあたりの理由で治癒魔法や回復魔法が使えるとパーティーへの誘いがかなりあるのだろう。まあ治療代を考えると対費用効果が大きいだろうからね。変な勧誘を受けるのもいやだったので、今のところ治癒魔法について公にはしていないのは正解だったかもしれない。

 あとは少し前に手に入れた索敵のスキルも結構有用だった。まだなんとなく気配が分かるというレベルなんだけど、魔獣を探す効率アップに役に立っている。できればレーダーのような感じにできないかと試行錯誤中だ。


 そして肝心のお金なんだけど、当初の予定通りには全く貯まっていない。講習に行ったりしたせいもあるけど、結局お金の残金は8000ドールからさらに減っているという状況だ。
 最初の頃は収支がマイナスだったからしょうがない。ここ最近の狩りのペースも上がっているのでやっと収支がプラスになってきたという感じだからね。

 遠征すれば結構効率も上がるかもしれないけど、やはり野営が問題となって出来ていない。あとは鑑定スキルや治癒魔法でお金も得られるかもしれないけど、それを知られたことによるマイナス面が大きそうだ。基本的にはよっぽど信頼できる人以外には秘密にしておいた方がいいだろう。

 異世界ものの小説だったら1ヶ月もあればイベント目白押しでいろいろな出会いがあったりしているところだけど、そんな出会いなんてものはまったくなかったからねえ。

 ちなみに冒険者の階位は最近になって並階位に上がることができた。普通よりは若干早いほうらしいけど、成長が早いと言うよりは武器や薬など初期投資するお金があったのが大きいのかもしれない。


 今はお金を節約するために一泊200ドールのジュモクという宿に移っている。前払いで長期宿泊をすることでさらに10日間で5%だけど割引をしてくれているので少しだけでもお得だ。一応個室にはなっていて、共用とはいえシャワーやトイレもある。そして自炊や洗濯のエリアもあるところなので、長期滞在には向いている。これより安いと大部屋になってしまうからね。

 夕食は近くにある食堂で30~50ドールの定食を食べている。そのあと宿に戻って洗濯をしてからシャワーを浴びて、寝るまではガイド本で勉強だ。朝食は買いだめしておいたパンで済ませて、お昼はサンドイッチで済ませている。このおかげで1日の経費は300ドール以内で収まっている。

 異世界チートスキルで贅沢三昧、冒険し放題っていうのは無理だよねえ・・・。ゲームで地道に経験値稼ぎをしたりするのは嫌いではなかったし、今のところは楽しめている感じもあるからいいんだけどね。



 今日も狩りに行こうと準備をしているときにふとリュックの底にお金をしまい込んでいたことを思い出した。なんでこんな重要なことを今まで忘れていたんだか・・・。

 魔法を覚えて魔獣石の合成ができるようになったときに盗難対策として1,000ドール10枚をまとめて1枚にしてからしまい込んでいたんだった。まあ思い出したからいいけど、すぐに気がついていたら全財産は18,000ドールとなるのですぐに移動できていたよ。

 とりあえず旅の資金としてはなんとかなりそうだけど、それでも結構ぎりぎりの金額だ。あっちについたときに文無しというのもつらいからなあ・・・。すぐに彼女が見つかるとも思えないので向こうでの滞在費も考えておかないといけない。



 異世界小説設定だけど、魔法は常に使い続けた方が上達が早いということが多いので、常に風魔法で空気を体の周りに循環させている。MPの上限とかないので無意識にできる様になっていた方が何かの時にいいし、魔素の取り扱いにも慣れてくるだろうからね。

 このせいか風魔法の成長は早いように思う。他の魔法はなかなか日常的に使うのは難しいので、狩りに行く途中など特にすることもないので魔法の空打ちをしてできる限り使うようにしている。

 狩りの時は素材や肉を運ばないといけないため、結構荷物が負担になっていた。いきなり襲われない限りはリュックは下ろして戦うのでまだいいんだけど、状況によってはそのまま戦わないといけないからね。それ以前に移動の時も地味に体力が奪われていく。
 なんかいい方法はないかと思っていろいろやっているときに、土魔法だと思うが、これを使うことで荷物の重さを軽減できることに気がついた。もちろん常に魔法を使うことになるので精神的に疲れが出てきてしまうし、同時に使う魔法の威力は下がってしまうんだけど、それでもそっちの方が楽だった。

 大体持ち運んでいる荷物は5kgで帰りには倍くらいになってしまうんだけど、重量軽減の魔法で半分以下くらいまで軽くすることができるようになったのは大きい。このおかげで多くの肉を持って帰ることが出来るようになったからね。


 魔法についてはイメージでいろいろなことができるんだけど、逆にイメージできないと魔法がうまく発動しない。この荷物を軽くする魔法だけど、重力という力を理解しないとうまく発動してくれないみたいだ。
 このため重量軽減の魔法は知られているんだが、うまく扱えないために魔素の使用量が半端なくて実用性があまりないように理解されている。ただし有用性は大きいので魔道具と併用して利用するのが一般的なんだけど、もちろんその魔道具は高いし、消費魔素も多い。
 おそらくだけど、土魔法で重力を軽減するのではなく、漠然と荷物を軽くするイメージみたいで作っているようだ。魔道具の文字は読めていないけど、おそらく軽くするとか言う感じのものだろう。



 朝食をとった後、いつものように町の外へと移動して索敵で魔獣を探しながら狩りをしていく。今日は狼を2匹狩れたので結構おいしい収入だった。
 狼は集団で行動するため5匹とかの集団の場合はとてもではないが相手はできないので群れからはぐれたのか、出現したばかりの狼はいい獲物だ。遠くから風魔法で攻撃を仕掛け、近づいてくるまでにできるだけ攻撃をする。そしてある程度近くに来たところで目の前に土の壁を出現させると驚いて止まるか、引っかかってこけてくれるのでそれでとどめを刺す感じだ。
 まだこのあたりは剣が通らないという感じではないのでうまくやれば一発で首を切り落とすことができるので助かる。攻撃されると防御は難しいからね。


 町に戻ってからいつものように素材を売り払うと今日の収入は950ドールと最高記録となった。毛皮の状態が良かったのが効いたかな。
 合成していた魔獣石は今では千ドールの大きさとなっているんだけど、おそらく1500~2000ドールくらいの価値だろう。面倒だけど地道に調整しておかないといけないかなあ。これをあわせて残金を考えると20000ドールくらいになるかな。



 少しお金に余裕も出てきたので久しぶりに少しいいものでも食べようと以前泊まっていた宿カイランの食堂へとやってきた。前にも食べたビーフシチューを食べていると、「ジュンイチさん!?」と後ろから声をかけられた。
 後ろを振り返ると以前夕食の時に話をした商人で、なぜかいろいろとおごってくれた人だった。たしか名前はコーランさんだったかな?

「お久しぶりです。コーランさん、、、でしたかね?」

「そうです、そうです。最近この店には来ていなかったようですね。あ、相席してもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ。」

 大きなテーブルに座っていて隣が空いていたのですぐ横にやって来た。

「ちょっと贅沢しすぎたせいでお金がきつくなったので安い宿に移っていたんですよ。別の町に行こうと思って旅費を貯めているんですが、なかなか旅費が貯まらないので・・・。」

「そうだったんですか。ちなみにどちらの町まで行くつもりなのですか?」

「南の方にある港町オカニウムに行こうかと思っているんですよ。」

「なにか面白いことでもあるのですか?」

「いえ、ちょっと知り合いがそこにいるという話を聞いたので行ってみようかと思っているんです。」

「バス代だけでも結構な金額かかりますからねえ。バスだと10日以上かかるでしょ?」

「そうなんですよ。15日くらいかかるみたいなので宿泊費にバス代まで考えると結構な額になってしまうので・・・。」

 しばらく食事をしながら話をしていたんだが、思いついたように言ってきた。

「私も仕事の関係でそちらに行く予定なんですが、もし良かったら車で一緒に行きませんか?途中にかかる経費は払ってもらうことになりますし、車の席も狭いところになりますが、車代は必要ありませんのでかなりお得だと思いますよ。」

「え?」

 自分にとってはありがたい話だけどなんで?なにか裏でもあるのか?

「あ~、不審に思われているかと思いますが、こちらも利益がないわけではないのですよ。以前夕食を一緒にした際にいろいろと話をしたじゃないですか。正直言って、かなり役に立つ話も多くてもっと話を聞けないかと思っていたのです。席もあるので追加で一人車に乗せるだけなら十分に対価を得られると思っての話です。
 あとは、あなたは信用できると思ったことと、話をいろいろ聞いておくべきだと商人としての私の勘が訴えているのです。」

 そんなに役に立つ話をしたのかねえ?まあ、そこそこ大きな商家みたいだし、何か含みがあったとしてもあまりに向こうのメリットがなさ過ぎるよなあ。ヒッチハイクのような感じでのせてもらうのもありかな?人の悪意とか感じる能力も経験もないので表情を見ても分からないからねえ。
 そうは言ってもかなりメリットは大きいんだよな。宿泊費とかがかかるとしても5000ドールくらいでいけると言うことになるし、そうすれば向こうについても1万ドールは余ることになる。

「わかりました。せっかくなので便乗させてもらいます。よろしくお願いします。」

「よかったです。こちらこそよろしくお願いします。」

「ちなみに、移動するに当たって事前に準備の必要なものなどはありますか?」

「基本的に宿泊はすべて町に泊まる予定ですので宿代と朝食と夕食代は一応準備してください。我々と同じ宿でもいいですし、他の宿に泊まっていただいてもかまいません。移動は10日くらいと考えてもらえれば良いかと思います。
 ただいろいろ話を聞きたいので少なくとも食事は同じところでしていただきたいと思います。もし野営するようなことになった場合の食事や宿泊道具はこちらで準備しますので大丈夫です。」

「いいんですか?とてもありがたいですけど、そんなに役に立つ話はできないと思いますよ。」

「大丈夫ですよ。特に役に立つと言うことは意識してもらわなくて、普通に雑談でかまいません。出発は3日後となりますがよろしいですか?」

「はい。」

「それでは3日後の朝1時にこの宿の前に集合と言うことでよろしいですかね?あと何かあった場合は連絡しますので冒険者カードの番号を教えていただけますか?」

「分かりました。この番号にお願いします。おそらく日中は狩りに出ていると思いますので対応は夕方になるかもしれません。」

「承知しました。ちなみに移動するメンバーはおそらく運転手の他、私を含めた店員が3名、護衛には”風の翼”というパーティーに依頼しています。」

 風の翼か。たしか男性3人のパーティーで結構面倒見の良い人たちだったな。何度か助言をもらったことがある人たちだ。今は良階位だったはず。

「風の翼のメンバーであれば自分も少し知っている人たちです。」

「そうですか。それだと話はしやすいですね。」

 食事を終えてからお礼を言って店を後にする。宿に戻ってから洗濯のあとでシャワーを浴びてベッドに入る。


 なぜか知らないけど、ただで移動できることになったのでありがたい。風の翼が護衛に付くというのならそんな変なことにもならないだろう。
 とりあえず宿代と考えると10日間でそこそこの宿に泊まっても8千ドールあればよさそうなので今のお金でも十分足りると考えていいだろう。夕食を奮発して良かったなあ。

 移動中は護衛がつくのでおそらく自分が戦うことはないだろう。特に移動がメインとなるので訓練もあまりできる時間がないと思う。移動中もさすがに寝ているわけにもいかないのでいろいろと話をする感じになるのかな?
 オカニウムの町までは大きな町はないので途中の宿泊は小さなところだろう。この移動中の空いた時間は学識系のスキルをあげることに時間をつぎ込むのがいいかな。勉強はガイド本でできるから十分だな。


 もとの世界に帰れなくなったのが分かった後、今後の対応を考えていたときにガイド本というスキルにレベルがあったことに気がついた。
 ガイド本スキルのレベルアップってなにかと思ってガイド本をくまなく読んでいるとwebのリンクみたいにいくつかの内容については詳細が表示されていた。前まではこのようなものはなかったのでレベルアップしたのかもしれなかった。

 追加情報はあくまで自分がいろいろと聞いたり本で読んだりした内容なんだけど、そのあと本を読んだところ、理解しなくても一度大雑把にでも読んだ内容は図を含めてきちんと追記されることが分かった。このためできるかぎり図書館で本を読みまくった。
 現在はネットの某百科事典のような感じに結構いろいろなことが載っている本になってかなり助かっている。


 自然科学などについてはやはりこの世界は遅れているため、こちらの本ではあまり役に立たない。基本的に元素の概念が分かっていないためなんだけど、もちろん周期律表もないからね。
 きっと化学的な現象が魔素で説明できることも多いので元素などについての研究がそこまで進まなかったのだろう。接着剤とかも化学反応ではなく、魔法で固定できるくらいだからねえ。
 このせいで自然科学のスキルレベルの取得やレベルアップができないのではないだろうか?鑑定スキルが一般化していない理由もこれにつきるだろう。

 学識スキルのレベルアップのためにはガイド本に入れてくれていた高校の教科書がかなり役になっている。どうやら自分の学校で使う教科書や図書館の内容すべてを入れてくれていたようで、化学、物理などはどう考えても教科書がなければレベルアップが無理だったと思う。今の感じでは少なくとも教科書の内容を理解できたらレベル4には上がれそうな気もするので頑張ろう。


~魔獣紹介~
狼:
並階位中位の魔獣で、草原に多く生息する魔獣。集団行動をすることが多く、多いときは20匹を超える群れになることがある。群れの数に比例して脅威度は変わり、1~2匹だと並階位下位であるが、10匹を超えると並階位上位から上階位下位となる。
牙や爪が鋭いため攻撃には注意が必要。集団で襲ってくる場合は連携してくるため、リーダーと思われる個体を優先して倒した方がよい。遠距離攻撃の手段があれば遠くから攻撃して群れを分散させることが有効となる。
素材としての買い取り対象は上顎の牙と毛皮となる。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。


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さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

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