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エルフの国と闘技大会編
エルフの国シュッツァリア入国
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汗が額から滴り落ちるほどの暑さにうんざりする。兄さんも服の襟元をバサバサと煽いで暑さを誤魔化していた。
現在、僕達はリフケネの街から一番近い港にいる。やっとエルフの国へ向かう船が乗船できるようになったので、乗り込もうと歩き出すと兄さんに呼び止められた。
「ルカ。今後は不用意な発言をしないと誓うから、船に乗る前にせめて顔だけでも見せてほしい。リフケネの街ではルカと周囲に迷惑をかけっぱなしだった。本当に申し訳ない。反省してる」
そう、リフケネの街から乗合馬車でこの港に到着するまでの間、僕は兄さんの顔をまともに見ることができなかった。
親しい人物に惚気話をしたいという気持ちはわかるのだ。僕だってそんな気分になったことがあるし、ちょろっと話したこともある。
しかし物事には限度というものがある。リアムから惚気話の一部を教えてもらった時、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
だがいつまでもこの態度でいるのはよろしくない。ここは気持ちに折り合いをつけることにしよう。
「冷たい態度をとってしまってごめんなさい……恥ずかしくて」
「俺も申し訳なかった。そういう話は控えるようにする」
「いや、別に惚気話はしてもいいと思うよ。僕もする時あるし。でもあの、褒めまくるのはやめてほしいっていうか」
「すまない。普段から思っていることを全部口に出してしまった」
「そういう惚気は、今度からまず僕に言って」
「いいのか?」
「いいよ。もちろん恥ずかしいけど、それ以上に悔しいから」
「悔しい?」兄さんが小首を傾げて話の続きを促す。
「兄さんが思ってること、僕が一番最初に聞きたいから。僕はかっこいいなとか好きだなって思ったら、まず兄さんに直接言ってから他の人に話すのに……不公平じゃん」
自分から言っておいて照れ臭くなってきた。だから兄さんの返事を聞く前に次の行動に移す。
「ほら、早く船に乗ろう」
兄さんの手を引っ張って早足で移動する。この際、人の目は気にしないことにした。
「ルカ?」
兄さんが慌てたように僕の名前を呼ぶが無視をして足を進める。結局船に乗り込むまで僕が兄さんと顔を合わせることはなかった。
アファルータ共和国からエルフの国シュッツァリアまで10日間の船旅が始まった。乗船初日の今日は特に何をすることもなく、兄さんと海を眺めたりぼんやり過ごした。
今は船室にて寝支度を済ませ、ふたり並んでベッドに腰掛けている。
「ルカ」
兄さんが右手で僕の頬を押さえながら、顔を近づけてきた。そっと目をつぶるとやがて唇が重なり合う。触れ合った部分から伝わる体温は心地よくて、このまま溶けてしまいそうだ。
時折角度を変えながらしばらくキスをしていると、だんだん身体の奥底から熱くなってくるような感覚に襲われる。
その熱から逃れるように慌てて顔を離そうとしたら、兄さんが唇をぺろりと舐め上げた。驚いて目を見開く僕を見て微笑みを浮かべる。
「……っ!」
「顔真っ赤だぞ?可愛いな」
「もう!やめてよ今そういうこと言うの」
すまない、と言う兄さんの低く甘い声に情事を思い起こして胸が波打つ。これ以上は本当にいけない。歯止めがきかなくなる。そうなる前に釘をさすことにした。
「外ではそういうこと禁止って約束したよね?今のはまだ大丈夫だけどこれ以上はだめだよ」
「加減がわからなくて。なあ、どこまでなら許される?」
「そんなの」
「ん?」目を細めて笑うその表情に色気を感じて思わず目を逸らす。
「そんなのいちいち説明してられないから、一つずつ試してみたら?だめなら魔法で止めるから」
「それは恐ろしいな」
嘘つき。兄さんは恐怖を微塵も感じていない顔で、楽しそうに笑いながら僕の耳に唇を落とした。
それからしばらく経った頃、久しぶりに変なやつ撃退魔法が発動したのであった。
兄さんとのんびり過ごしたり、魔法やナイフの鍛練をしていたらエルフの国シュッツァリアの港町キロバスに到着した。
乗船中、船員や乗客から情報収集を行い拠点にする街も決めた。いきなり街を飛び出して旅に出る形となったが、順調に情報が集まって一安心だ。
エルフの国の拠点は、僕の独断でリトレの街にすることに決めた。
リトレは首都からほど近いそこそこの規模の街で、魔銀鉱山があることで有名な街だ。あと国立の魔法学院があるらしく、学生が多い街でもあるようだ。
港町キロバスからリトレの街まで乗合馬車で2週間ほどの距離だ。その間、野営や宿屋暮らしが続くが仕方ない。僕はある目的のため1日でも早くリトレに行かなければならない。
キロバスからリトレへ行く乗合馬車の出発を待つ間、兄さんと話をして暇を潰す。
「ルカは魔銀を集めたいからリトレに行くと言っていたが、なぜ魔銀を?」
「ちょっと武器を作りたくて。とにかく大量に集めたいんだ」
「手持ちで足りるか?」
「大丈夫!概算だけどね。足りなかったら依頼受けてどうにかするし」
「無理しないようにな」
「ありがとう」
趣味に割くお金を抑えたらなんとかなるだろう。前回のサンダーバードのロティサリーチキン計画は失敗に終わったので、今回は絶対に成功させたい。
こうして僕は総魔銀大剣を兄さんにプレゼントするため、計画を進めていくことにした。
現在、僕達はリフケネの街から一番近い港にいる。やっとエルフの国へ向かう船が乗船できるようになったので、乗り込もうと歩き出すと兄さんに呼び止められた。
「ルカ。今後は不用意な発言をしないと誓うから、船に乗る前にせめて顔だけでも見せてほしい。リフケネの街ではルカと周囲に迷惑をかけっぱなしだった。本当に申し訳ない。反省してる」
そう、リフケネの街から乗合馬車でこの港に到着するまでの間、僕は兄さんの顔をまともに見ることができなかった。
親しい人物に惚気話をしたいという気持ちはわかるのだ。僕だってそんな気分になったことがあるし、ちょろっと話したこともある。
しかし物事には限度というものがある。リアムから惚気話の一部を教えてもらった時、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
だがいつまでもこの態度でいるのはよろしくない。ここは気持ちに折り合いをつけることにしよう。
「冷たい態度をとってしまってごめんなさい……恥ずかしくて」
「俺も申し訳なかった。そういう話は控えるようにする」
「いや、別に惚気話はしてもいいと思うよ。僕もする時あるし。でもあの、褒めまくるのはやめてほしいっていうか」
「すまない。普段から思っていることを全部口に出してしまった」
「そういう惚気は、今度からまず僕に言って」
「いいのか?」
「いいよ。もちろん恥ずかしいけど、それ以上に悔しいから」
「悔しい?」兄さんが小首を傾げて話の続きを促す。
「兄さんが思ってること、僕が一番最初に聞きたいから。僕はかっこいいなとか好きだなって思ったら、まず兄さんに直接言ってから他の人に話すのに……不公平じゃん」
自分から言っておいて照れ臭くなってきた。だから兄さんの返事を聞く前に次の行動に移す。
「ほら、早く船に乗ろう」
兄さんの手を引っ張って早足で移動する。この際、人の目は気にしないことにした。
「ルカ?」
兄さんが慌てたように僕の名前を呼ぶが無視をして足を進める。結局船に乗り込むまで僕が兄さんと顔を合わせることはなかった。
アファルータ共和国からエルフの国シュッツァリアまで10日間の船旅が始まった。乗船初日の今日は特に何をすることもなく、兄さんと海を眺めたりぼんやり過ごした。
今は船室にて寝支度を済ませ、ふたり並んでベッドに腰掛けている。
「ルカ」
兄さんが右手で僕の頬を押さえながら、顔を近づけてきた。そっと目をつぶるとやがて唇が重なり合う。触れ合った部分から伝わる体温は心地よくて、このまま溶けてしまいそうだ。
時折角度を変えながらしばらくキスをしていると、だんだん身体の奥底から熱くなってくるような感覚に襲われる。
その熱から逃れるように慌てて顔を離そうとしたら、兄さんが唇をぺろりと舐め上げた。驚いて目を見開く僕を見て微笑みを浮かべる。
「……っ!」
「顔真っ赤だぞ?可愛いな」
「もう!やめてよ今そういうこと言うの」
すまない、と言う兄さんの低く甘い声に情事を思い起こして胸が波打つ。これ以上は本当にいけない。歯止めがきかなくなる。そうなる前に釘をさすことにした。
「外ではそういうこと禁止って約束したよね?今のはまだ大丈夫だけどこれ以上はだめだよ」
「加減がわからなくて。なあ、どこまでなら許される?」
「そんなの」
「ん?」目を細めて笑うその表情に色気を感じて思わず目を逸らす。
「そんなのいちいち説明してられないから、一つずつ試してみたら?だめなら魔法で止めるから」
「それは恐ろしいな」
嘘つき。兄さんは恐怖を微塵も感じていない顔で、楽しそうに笑いながら僕の耳に唇を落とした。
それからしばらく経った頃、久しぶりに変なやつ撃退魔法が発動したのであった。
兄さんとのんびり過ごしたり、魔法やナイフの鍛練をしていたらエルフの国シュッツァリアの港町キロバスに到着した。
乗船中、船員や乗客から情報収集を行い拠点にする街も決めた。いきなり街を飛び出して旅に出る形となったが、順調に情報が集まって一安心だ。
エルフの国の拠点は、僕の独断でリトレの街にすることに決めた。
リトレは首都からほど近いそこそこの規模の街で、魔銀鉱山があることで有名な街だ。あと国立の魔法学院があるらしく、学生が多い街でもあるようだ。
港町キロバスからリトレの街まで乗合馬車で2週間ほどの距離だ。その間、野営や宿屋暮らしが続くが仕方ない。僕はある目的のため1日でも早くリトレに行かなければならない。
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「ルカは魔銀を集めたいからリトレに行くと言っていたが、なぜ魔銀を?」
「ちょっと武器を作りたくて。とにかく大量に集めたいんだ」
「手持ちで足りるか?」
「大丈夫!概算だけどね。足りなかったら依頼受けてどうにかするし」
「無理しないようにな」
「ありがとう」
趣味に割くお金を抑えたらなんとかなるだろう。前回のサンダーバードのロティサリーチキン計画は失敗に終わったので、今回は絶対に成功させたい。
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