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アファルータ共和国編
初めての調査依頼①特別
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季節は春。恋の季節とはよく言ったもので、僕と兄さんの関係は倦怠期の訪れを微塵も感じないくらい順調だ。
ほがらかな空気が心地よい。街行く人々の服装が日を追うごとに軽くなっていく。その様子に季節の移ろいを感じて見ているだけで楽しい。
春を心地よく感じるのは人だけではない。魔物の動きも活発になり依頼も増えた。
現在リフケネ支部は繁忙期真っ只中だ。依頼書が消えたと思ったらそれ以上に増えていき終わりが見えない。
そんな忙しい時期なのに、僕達は依頼を受けることなくギルドの鍛練場にいた。3日前に担当の受付嬢から合同調査依頼の話をされたからだ。
なんでもリフケネの街から馬車で5日ほどかかる場所で遺跡が発見されたとか。
そこの調査のためアファルータ共和国内で権威を誇る学院が、条件に合った冒険者に調査の補助と護衛を依頼したいとリフケネ支部へ通達した。
忙しい時期とはいえ国が運営する学院からの依頼は断れず、リフケネ支部は渋々条件に合った冒険者を選定した。僕達はそのお眼鏡にかない晴れて指名されたというわけだ。
指名される条件は二つ。依頼者に絶対暴力をふるわない程度の人格であることと素材の扱いがある程度まともであること。以上。
学者達が思い描く冒険者像がとてもよく伝わる、単純明快な素晴らしい条件だと思う。考えた人が調査隊にいないことを願うばかりだ。
遠出の依頼なんて美味しいものがないと受けたくないが、理由もないのに指名依頼を断ると冒険者ギルドからの印象が悪くなるので仕方なく受けることにした。
リフケネ支部は所帯持ちが多いから選定も苦労したに違いない。鍛練場にいる人数の少なさがそれを物語っている。
「思ったより冒険者が少ないね」
「所帯持ちが多いからな。遠出の依頼は理由をつけて断る者が多いのだろう」
「アイザックさん!ルカさん!おふたりも依頼を受けるんですね。よろしくお願いします!」
「よろしく」
「リアムも依頼受けるの?銅級のパーティーに所属してなかったっけ?」
「そのパーティーがダンジョンへ行くことになったので、少し前からソロでやってます」
「ソロは大変じゃない?」
「まあ、ぼちぼち頑張ります。限界になったらまたどっかに所属するつもりですし。というわけでアイザックさん!強くなるためにまた手合わせお願いします!」
「わかった。今度魔物をソロで狩る時のコツを教えよう」
「ありがとうございます!」
なんだろう。ふたりの会話にもやもやする。兄さんは誘われても手合わせなんてほとんど受けなかったのに、リアムとはよく手合わせをする。
初めて仲良くなった後輩冒険者だから断りにくいのだろうか。
そんなことをうだうだ考えていると、ギルド職員と学者の代表が、冒険者達に今回の調査依頼について説明し始めた。
慌てて思考を切ってそちらに集中する。説明が終わった後は、夜番の担当決めや調査隊メンバーで軽く挨拶を交わした。その合間を縫って兄さんとリアムが手合わせの予定を立てていた。
その日の夜、夕食を食べ終えた僕達はソファでくつろいでいた。
「兄さん膝借りるよ」
「いきなりどうした?」
「なんとなく。うーん、あんまり寝心地よくないね。ガチガチに硬いや」
「それはそうだろう。男の太ももなんてそんなもんだ」
「でも兄さんこの前僕の膝枕で寝たじゃん」
「それは、その……ルカは特別だから」
「僕だけ?特別?」
「ああ、ルカだけ特別だ」
「へー、そっか……そっかぁ」
なんだかくすぐったい気持ちになって兄さんの太ももに頬擦りする。
「ルカ」
兄さんが僕の頭を撫でながら呼びかける。その瞳に熱を感じた僕はすぐ起き上がり、兄さんの太ももに跨った。そして兄さんの首に腕を回してそっと顔を引き寄せた。
ほがらかな空気が心地よい。街行く人々の服装が日を追うごとに軽くなっていく。その様子に季節の移ろいを感じて見ているだけで楽しい。
春を心地よく感じるのは人だけではない。魔物の動きも活発になり依頼も増えた。
現在リフケネ支部は繁忙期真っ只中だ。依頼書が消えたと思ったらそれ以上に増えていき終わりが見えない。
そんな忙しい時期なのに、僕達は依頼を受けることなくギルドの鍛練場にいた。3日前に担当の受付嬢から合同調査依頼の話をされたからだ。
なんでもリフケネの街から馬車で5日ほどかかる場所で遺跡が発見されたとか。
そこの調査のためアファルータ共和国内で権威を誇る学院が、条件に合った冒険者に調査の補助と護衛を依頼したいとリフケネ支部へ通達した。
忙しい時期とはいえ国が運営する学院からの依頼は断れず、リフケネ支部は渋々条件に合った冒険者を選定した。僕達はそのお眼鏡にかない晴れて指名されたというわけだ。
指名される条件は二つ。依頼者に絶対暴力をふるわない程度の人格であることと素材の扱いがある程度まともであること。以上。
学者達が思い描く冒険者像がとてもよく伝わる、単純明快な素晴らしい条件だと思う。考えた人が調査隊にいないことを願うばかりだ。
遠出の依頼なんて美味しいものがないと受けたくないが、理由もないのに指名依頼を断ると冒険者ギルドからの印象が悪くなるので仕方なく受けることにした。
リフケネ支部は所帯持ちが多いから選定も苦労したに違いない。鍛練場にいる人数の少なさがそれを物語っている。
「思ったより冒険者が少ないね」
「所帯持ちが多いからな。遠出の依頼は理由をつけて断る者が多いのだろう」
「アイザックさん!ルカさん!おふたりも依頼を受けるんですね。よろしくお願いします!」
「よろしく」
「リアムも依頼受けるの?銅級のパーティーに所属してなかったっけ?」
「そのパーティーがダンジョンへ行くことになったので、少し前からソロでやってます」
「ソロは大変じゃない?」
「まあ、ぼちぼち頑張ります。限界になったらまたどっかに所属するつもりですし。というわけでアイザックさん!強くなるためにまた手合わせお願いします!」
「わかった。今度魔物をソロで狩る時のコツを教えよう」
「ありがとうございます!」
なんだろう。ふたりの会話にもやもやする。兄さんは誘われても手合わせなんてほとんど受けなかったのに、リアムとはよく手合わせをする。
初めて仲良くなった後輩冒険者だから断りにくいのだろうか。
そんなことをうだうだ考えていると、ギルド職員と学者の代表が、冒険者達に今回の調査依頼について説明し始めた。
慌てて思考を切ってそちらに集中する。説明が終わった後は、夜番の担当決めや調査隊メンバーで軽く挨拶を交わした。その合間を縫って兄さんとリアムが手合わせの予定を立てていた。
その日の夜、夕食を食べ終えた僕達はソファでくつろいでいた。
「兄さん膝借りるよ」
「いきなりどうした?」
「なんとなく。うーん、あんまり寝心地よくないね。ガチガチに硬いや」
「それはそうだろう。男の太ももなんてそんなもんだ」
「でも兄さんこの前僕の膝枕で寝たじゃん」
「それは、その……ルカは特別だから」
「僕だけ?特別?」
「ああ、ルカだけ特別だ」
「へー、そっか……そっかぁ」
なんだかくすぐったい気持ちになって兄さんの太ももに頬擦りする。
「ルカ」
兄さんが僕の頭を撫でながら呼びかける。その瞳に熱を感じた僕はすぐ起き上がり、兄さんの太ももに跨った。そして兄さんの首に腕を回してそっと顔を引き寄せた。
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