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アファルータ共和国編
初めての調査依頼②意外
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※本日2話投稿です。1話目。
調査依頼初日の朝。爽やかな風が体を通り抜ける度に少しだけ体温が奪われる。けれど少し待てば春の陽気が身体を暖めてくれるだろう。そう思わせるほど気持ちのいい晴れっぷりだ。
「アイザックさん、ルカさん。今日からよろしくお願いします!」
「リアムおはよう。朝から元気だね」
「途中でへばるなよ」
リフケネの街から遺跡まで馬車で5日の距離だ。でも悪路が多過ぎて歩くのとさほど変わりない速さでしか馬車を走らせることができないので、街からそこまで離れているわけではない。
遺跡を調査する時に必要な道具や資料など馬車に乗せる荷物が多いため、冒険者は基本歩きで移動することになる。悪路を進む馬車に乗るより、むしろ歩いた方が楽だと思うからそこは感謝だ。
探知の魔法を発動させながら無心で歩く。幸い僕達が護衛している馬車に魔物が襲撃することはなかった。
ずいぶん歩いたなと思っていると、だんだん馬車の速度が落ちていく。今日はここが野営地になるようだ。
調査隊のリーダーの指示で野営の準備を行う。冒険者は基本的にパーティー単位で野営場所を振り分けられた。夜番の担当もパーティー毎の輪番制だ。
人数の関係で僕達はリアムと一緒に3人で行動することになった。
野営の準備を進めていると、女性の学者がフラフラとした足取りで荷物を運んでいた。依頼者に怪我をさせてはいけないと慌てて声をかける。
「どうかされましたか?」
「あ、ごめんなさい。足が言うことを聞かなくて。でもこの荷物を運ばないといけないから」
「どこまで運べばいいですか?お手伝いしますよ」
「いや、さすがに申し訳ないです。私は大丈夫ですから」
「ここで無理して怪我でもしたら元も子もありませんよ。重いものは僕達冒険者に任せてください。それとも、僕だと頼りないですか?」
「そんなことないです!……あ、大声出してごめんなさい。あの、お願いしてもいいですか?」
「もちろん。案内をお願いします」
荷物を運び終わり野営場所まで戻ると、リアムがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ルカさんも隅に置けないですね。彼女、ルカさんに惚れちゃったりして」
「そんなことあるわけないでしょ。荷物持っただけだよ。てかリアム見てたなら手伝ってよ」
「あれ結構重そうだったのでつい……こういう時身体強化使える人は便利ですね」
「あれくらいで身体強化使わないよ。体鍛えたいし」
「ルカさん意外と筋肉ありますよね。服の上からだとわかりにくいですけど」
「これでも冒険者だからね。さすがに少しはあるよ」
「リアム。ルカを見過ぎだ。今すぐ視界から外せ」
「あ、はい。すみませんでした。怖いのでその顔やめてください」
兄さんが薪拾いから帰ってきた。これだけあれば夜番の時も明かりを確保できるだろう。僕の魔法で明るくしてもいいが、念のため魔力を節約したいので多めに拾ってきてもらった。
「今からホーンラビットの肉でシチュー作るけどリアムの夕飯は?」
「俺はパンと干し肉です」
「ずっとそれはキツくない?材料は分けるからシチュー作ったら?作り方教えるよ。僕が持ってきた鍋だと2人分しか調理できないから、どこかで鍋を借りないといけないけど」
「ありがとうございます!ぜひ!誰かから鍋借りてきます」
リアムは軽快な足取りで知り合いの冒険者パーティーの野営場所に向かった。
「兄さん、薪とホーンラビットありがとう」
「大したことない。ルカがリアムの分も調理をしないのは理由があるのか?そこが意外に思って」
理由を聞かれてしまった。恥ずかしいから言いたくないけど、はぐらかすのも違う気がする。
「僕が作る料理は兄さんだけのものって決めたから」
昔は振る舞っていたけどね。兄さんと恋人になってからは、兄さん以外の人に作る気がなくなった。
「ルカ……」
ああ、ここが野営地じゃなかったら思いきり抱きしめたのにと思っているに違いない。兄さんの行き場を失った手が雄弁にそう語っていた。
調査依頼初日の朝。爽やかな風が体を通り抜ける度に少しだけ体温が奪われる。けれど少し待てば春の陽気が身体を暖めてくれるだろう。そう思わせるほど気持ちのいい晴れっぷりだ。
「アイザックさん、ルカさん。今日からよろしくお願いします!」
「リアムおはよう。朝から元気だね」
「途中でへばるなよ」
リフケネの街から遺跡まで馬車で5日の距離だ。でも悪路が多過ぎて歩くのとさほど変わりない速さでしか馬車を走らせることができないので、街からそこまで離れているわけではない。
遺跡を調査する時に必要な道具や資料など馬車に乗せる荷物が多いため、冒険者は基本歩きで移動することになる。悪路を進む馬車に乗るより、むしろ歩いた方が楽だと思うからそこは感謝だ。
探知の魔法を発動させながら無心で歩く。幸い僕達が護衛している馬車に魔物が襲撃することはなかった。
ずいぶん歩いたなと思っていると、だんだん馬車の速度が落ちていく。今日はここが野営地になるようだ。
調査隊のリーダーの指示で野営の準備を行う。冒険者は基本的にパーティー単位で野営場所を振り分けられた。夜番の担当もパーティー毎の輪番制だ。
人数の関係で僕達はリアムと一緒に3人で行動することになった。
野営の準備を進めていると、女性の学者がフラフラとした足取りで荷物を運んでいた。依頼者に怪我をさせてはいけないと慌てて声をかける。
「どうかされましたか?」
「あ、ごめんなさい。足が言うことを聞かなくて。でもこの荷物を運ばないといけないから」
「どこまで運べばいいですか?お手伝いしますよ」
「いや、さすがに申し訳ないです。私は大丈夫ですから」
「ここで無理して怪我でもしたら元も子もありませんよ。重いものは僕達冒険者に任せてください。それとも、僕だと頼りないですか?」
「そんなことないです!……あ、大声出してごめんなさい。あの、お願いしてもいいですか?」
「もちろん。案内をお願いします」
荷物を運び終わり野営場所まで戻ると、リアムがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ルカさんも隅に置けないですね。彼女、ルカさんに惚れちゃったりして」
「そんなことあるわけないでしょ。荷物持っただけだよ。てかリアム見てたなら手伝ってよ」
「あれ結構重そうだったのでつい……こういう時身体強化使える人は便利ですね」
「あれくらいで身体強化使わないよ。体鍛えたいし」
「ルカさん意外と筋肉ありますよね。服の上からだとわかりにくいですけど」
「これでも冒険者だからね。さすがに少しはあるよ」
「リアム。ルカを見過ぎだ。今すぐ視界から外せ」
「あ、はい。すみませんでした。怖いのでその顔やめてください」
兄さんが薪拾いから帰ってきた。これだけあれば夜番の時も明かりを確保できるだろう。僕の魔法で明るくしてもいいが、念のため魔力を節約したいので多めに拾ってきてもらった。
「今からホーンラビットの肉でシチュー作るけどリアムの夕飯は?」
「俺はパンと干し肉です」
「ずっとそれはキツくない?材料は分けるからシチュー作ったら?作り方教えるよ。僕が持ってきた鍋だと2人分しか調理できないから、どこかで鍋を借りないといけないけど」
「ありがとうございます!ぜひ!誰かから鍋借りてきます」
リアムは軽快な足取りで知り合いの冒険者パーティーの野営場所に向かった。
「兄さん、薪とホーンラビットありがとう」
「大したことない。ルカがリアムの分も調理をしないのは理由があるのか?そこが意外に思って」
理由を聞かれてしまった。恥ずかしいから言いたくないけど、はぐらかすのも違う気がする。
「僕が作る料理は兄さんだけのものって決めたから」
昔は振る舞っていたけどね。兄さんと恋人になってからは、兄さん以外の人に作る気がなくなった。
「ルカ……」
ああ、ここが野営地じゃなかったら思いきり抱きしめたのにと思っているに違いない。兄さんの行き場を失った手が雄弁にそう語っていた。
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