7 / 158
グレイセル王国からの逃亡
温かい手
しおりを挟む
夕飯を終えて家族全員分の食器を片付け終わった僕は、気まずい空気に叫び出しそうになった。
アイザック兄さん10年ぶりの帰省だよね。話すことたくさんあるよね?何でこんなに静かなんだ。
夕飯前もアイザック兄さんと母が少し話したくらいで父は全然話してないし。
気まずさが空間を支配するが、誰もテーブルを離れようとしない。
僕は耐え切れなかった。本当は父が話し始めるまで待っていたほうがよかったのかもしれない。でも話しかけてしまった。
「アイザック兄さん!10年ぶりの村はどう?」
「変わらないな。みんな昔のままだ」
「えー、そうかな?ブルーノ兄さんとニック兄さんなんてずいぶん見た目が変わったんじゃない?」
「そうだな。大きくなった」
「アイザック兄さんは収穫祭参加するの?」
「その予定だ」
「収穫祭といえば宴会があるよね。兄さんくらい身体が大きいとお酒強そう!たくさん飲めるの羨ましいな」
「兵士の中だとそこまで強くない。酒を水のように飲むやつがゴロゴロいる」
「兵士ってすごいんだね。ねぇ、今度剣術教えて!兄さんみたいに大きくなりたいんだ!」
「わかった」
すんなり約束を取り付けた。目的を達成したのでもうこの空間から離脱したい。ちなみにリリアナは食事が終わってすぐ眠った。羨ましい。
「おい、ルカ。剣術を教わりたいってどういうことだ。絶対に許さんぞ」
僕はまだまだ眠れそうにない。予想はしていたが、こんなに咎められるとは思わなかった。
「父さん、僕は別に兵士になりたいとか考えてないよ。どういったものか興味があるだけ」
「ふんっ。村のガキどもも剣剣剣。そんなにいいものかね」
まずい。父がここまで拗れているとは思わなかった。
申し訳なくてアイザック兄さんをチラリと見る。目が合って兄さんの口角が少し上がった。
その顔は気にするなと言っているようで、口数は少ないけど優しい人だなと僕がひっそり兄さんの評価を上げていると、父がヒートアップした。
「だいたいな、アイザック!お前何しに来た。ろくに知らせもなかったくせにいきなりなんだってんだ!」
「この度魔物討伐の活躍で特別報奨金を頂いたから届けに来た。今までろくに仕送りもできなかったから」
「そうか、ならその金置いてさっさと帰れ!」
「ちょっと父さん!それは言い過ぎだよ!剣術のことなら謝るから落ち着いて」
我慢出来ずに口を挟む。10年ぶりに帰省した息子に対してその態度はさすがに酷いと思ったから。
「ルカ!お前は口出しするな!剣術のことがなくてもあいつにはひと言言ってやろうと思ってたんだ!ブルーノ、ニック、ルカ!お前たちはもう寝ろ」
「アナ。俺とアイザックはカーターのところで話をしてくる。朝食はいらない」
まさか剣術の話からこんなことになるなんて思わなかった。父が母と明日の予定を話してる隙にアイザック兄さんのそばに寄る。
「兄さんごめんなさい。僕のせいでこんなことに」
「お前のせいじゃないさ。庇ってくれてありがとな、嬉しかった。もう寝ろ」
すれ違い様に頭をポンッと撫でられた。
ベッドに入ったが父の拗れっぷりにモヤモヤする。こういう時はさっさと魔力を使い切って気絶してしまおう。
気絶直前でぼんやりしていたら、去り際のアイザック兄さんを思い出した。
頼もしい大きな手だったな。温かくて、くすぐったいけど悪くなかったな。
アイザック兄さん10年ぶりの帰省だよね。話すことたくさんあるよね?何でこんなに静かなんだ。
夕飯前もアイザック兄さんと母が少し話したくらいで父は全然話してないし。
気まずさが空間を支配するが、誰もテーブルを離れようとしない。
僕は耐え切れなかった。本当は父が話し始めるまで待っていたほうがよかったのかもしれない。でも話しかけてしまった。
「アイザック兄さん!10年ぶりの村はどう?」
「変わらないな。みんな昔のままだ」
「えー、そうかな?ブルーノ兄さんとニック兄さんなんてずいぶん見た目が変わったんじゃない?」
「そうだな。大きくなった」
「アイザック兄さんは収穫祭参加するの?」
「その予定だ」
「収穫祭といえば宴会があるよね。兄さんくらい身体が大きいとお酒強そう!たくさん飲めるの羨ましいな」
「兵士の中だとそこまで強くない。酒を水のように飲むやつがゴロゴロいる」
「兵士ってすごいんだね。ねぇ、今度剣術教えて!兄さんみたいに大きくなりたいんだ!」
「わかった」
すんなり約束を取り付けた。目的を達成したのでもうこの空間から離脱したい。ちなみにリリアナは食事が終わってすぐ眠った。羨ましい。
「おい、ルカ。剣術を教わりたいってどういうことだ。絶対に許さんぞ」
僕はまだまだ眠れそうにない。予想はしていたが、こんなに咎められるとは思わなかった。
「父さん、僕は別に兵士になりたいとか考えてないよ。どういったものか興味があるだけ」
「ふんっ。村のガキどもも剣剣剣。そんなにいいものかね」
まずい。父がここまで拗れているとは思わなかった。
申し訳なくてアイザック兄さんをチラリと見る。目が合って兄さんの口角が少し上がった。
その顔は気にするなと言っているようで、口数は少ないけど優しい人だなと僕がひっそり兄さんの評価を上げていると、父がヒートアップした。
「だいたいな、アイザック!お前何しに来た。ろくに知らせもなかったくせにいきなりなんだってんだ!」
「この度魔物討伐の活躍で特別報奨金を頂いたから届けに来た。今までろくに仕送りもできなかったから」
「そうか、ならその金置いてさっさと帰れ!」
「ちょっと父さん!それは言い過ぎだよ!剣術のことなら謝るから落ち着いて」
我慢出来ずに口を挟む。10年ぶりに帰省した息子に対してその態度はさすがに酷いと思ったから。
「ルカ!お前は口出しするな!剣術のことがなくてもあいつにはひと言言ってやろうと思ってたんだ!ブルーノ、ニック、ルカ!お前たちはもう寝ろ」
「アナ。俺とアイザックはカーターのところで話をしてくる。朝食はいらない」
まさか剣術の話からこんなことになるなんて思わなかった。父が母と明日の予定を話してる隙にアイザック兄さんのそばに寄る。
「兄さんごめんなさい。僕のせいでこんなことに」
「お前のせいじゃないさ。庇ってくれてありがとな、嬉しかった。もう寝ろ」
すれ違い様に頭をポンッと撫でられた。
ベッドに入ったが父の拗れっぷりにモヤモヤする。こういう時はさっさと魔力を使い切って気絶してしまおう。
気絶直前でぼんやりしていたら、去り際のアイザック兄さんを思い出した。
頼もしい大きな手だったな。温かくて、くすぐったいけど悪くなかったな。
105
お気に入りに追加
1,077
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね
カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。
本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。
俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。
どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。
だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。
ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。
かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。
当然のようにパーティは壊滅状態。
戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。
俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ!
===
【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる