俺が送ったメールは瞬時に既読になる。けど、アイツからの返事は一切ないんだ。……俺はいつまで待っていればいい? 〜明日のその先〜

もこ

文字の大きさ
82 / 134
3:田崎駿也

1

しおりを挟む
「えっ? え? どういう事?」
ですか? 駿也の体から離れて、机にあったティッシュペーパーを取ってで顔を拭った。敬語になりそうになって寸で止める。駿也が……田崎さん?

「座ろうか。」
駿也がマグの乗ったお盆を片手にもう片方の手で俺の手を掴んできた。誘われるままベッドを背に床に座る。涙がいつの間にか止まり、俺は駿也から目が離せなかった。

「これは望のマグか?」
大きくNと描かれた白いマグを手に取って駿也が聞いてきた。

「あ? うん。」
何故か普段使ってない方の黒いマグを俺に押し付けて、駿也が俺のカップに口をつけた。

「何か聞きたい事、ある?」
コーヒーを飲んで「美味い。」と呟いた駿也が俺に聞いてきた。

聞きたい事。え? 何だろう……。
「田崎さん、だったの?」
とりあえずこの混乱した頭をどうにかしたい、俺は単刀直入に聞いてみた。

「ああ。でも、2ヶ月半前の俺は、俺であって俺ではなかった。」
「は?」
駿也? 田崎さん? が何を言ったのか分からなかった。

「田崎駿也であって、佐崎駿也ではなかったという事。」
「えっ? でも……ここに来た時はハッキリと佐崎駿也って……。」
俺はますます分からなくなった。

「ごめん、望。混乱してるだろ? でも今はこれ以上話せないんだ。」
徐に横から肩を引き寄せられた。マグに入ったコーヒーが溢れそうになって慌てた。

頭に駿也の顔が当たる。ちゅっとリップ音が響いてますます慌てた。そういえば……さっき瞼にキスをされたような……。

ドキドキしてきた。駿也が田崎さん? 少しずつ顔が赤くなっていくのが分かった。
「望? ……今、誰かと付き合ってる?」
駿也の声色が変わったのが分かった。……緊張してる?

「付き合った経験がないのは、田崎さんだったのなら、知ってるじゃないですか。」
黒のマグを見つめながら呟く。俺の言葉で、抱えられた肩にギュッと力が入ったのが分かった。

「飲みに行く約束は? まだ有効?」
少しだけなんだけど、駿也の声が甘く聞こえたような気がして益々顔が熱くなった。甘いながらもどこか哀願するような、そんな声の調子に聞こえた。

「俺、あれからずっと待ってた。」
「……望!」
もう片方の腕が俺の肩に回されて、駿也の体が覆い被さるようなかたちになった。俺の額に駿也の額が重なる。

「望、待ってて。絶対に全て話せるようにする。だから……。」
そう言ったと思うと駿也が立ち上がり、俺も腕を引っ張られて立たされる形になった。

「俺は……望が好きだ。田崎駿也としても、佐崎駿也の時もずっと望に片想いをしていた。」
駿也の大きな手が俺の手を取って重ねられた。な、何コレ……。顔が上げられない。

「今、望が混乱しているのは分かっている。でも、ようやく望の近くまでやってこれた。このまま……まだ、このままでいいから、俺を傍に置いてもらえないか?」
俺、俺……今勘違いじゃなければ告白されてる? 何か、何か言わないと……。

頭をグルグル回転させても、混乱した頭はすぐには元に戻らなかった。黙って頷く。頭のいい駿也だったんだから、ここは任せるべきだ。

「良かった!!」
その瞬間、今日、一番の力でギュッと駿也に抱きしめられた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

処理中です...