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郊外の一軒家
しょじょがえり、なな
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酸素不足で倒れてしまった。薬を盛られたり失神してしまったりで睡眠時間がめちゃくちゃだ、おかげで時差ボケとやらに悩まされたりはしなさそうだ。
「……おはようございます、ユキ様」
「おはよう」
「すいません……息、落ち着かせていられなくて」
「いいよ、興奮してくれてた証拠だもんね」
雪兎が不機嫌になっていなかったのは僥倖なのだが、もっとあの精液の匂いと酸欠の心地良さを味わっていたかったという思いが強く、つい落ち込んでしまう。
「ポチ? まだ頭ボーッとする?」
「少し……あの、今何時ですか?」
「もう夜だよ。もうすぐ晩ご飯出来るよ。今日はもうゆっくり過ごそうね」
「……はい」
雪兎に言われた通り、俺は雪兎の隣という安心と幸福が保証された場所で美味しい料理を楽しみ、性欲を排除してリラックスしたバスタイムを過ごし、穏やかに眠りに就いた。
「んっ……」
朝、目を覚ました時にはもう穏やかでゆったりとした時間など失われていた。
「……っ!? ユ、ユキ様……?」
仰向けで寝ていた俺に雪兎が跨っていたのだ。それもコスプレをして。
「おはようポチ、朝ご飯食べたらお注射しようね」
プレイ用のコスチュームとしてしか見ることのないミニスカナース服に身を包み、ナースキャップを被った雪兎の手には注射器が握られていた。
「寝てる間に縛っちゃって始めようかとも思ったんだけど、朝ご飯食べてからのがいいかなーって。ポチぐっすり寝てて重かったし」
後者が主な理由だろうな。
「……縛って動けなくして、媚薬か何か使ってお尻拡げるって感じですか?」
「そんなとこ」
「…………早く抱かれる身体に戻りたいです」
心底からの本音を呟いて起き上がり、全裸で眠っていたことに今更気付く。俺の服を脱がしてベッドに運んだのはやはり使用人なのだろうか、俺は今まで一体何人の使用人にあられもない姿を見られてきたのだろう。
「いただきます」
「いただきまーす」
どうせすぐ脱ぐことになるのだからとバスローブを羽織っただけの姿で席に着き、フォークを使って朝食をいただく。雪兎と居るのに机で食事を取るのは久しぶりな気がした。
「……ふふふ」
「ユキ様? どうなされたんですか?」
「ポチが居るなーって」
小さな口をもぐもぐ動かしながら俺を見つめて、飲み込んでは幸せそうに笑う。どうやら雪兎を笑顔にしているのは俺の存在そのものらしい。俺の何がそんなに気に入っているのかは理解に苦しむが、だからと言って雪兎からの愛を否定したり疑ったりはしない、俺がすべきなのは雪兎の愛を享受しそれに応えることだけだ。
「俺もユキ様が傍に居るの嬉しいです」
飼い主からの愛を疑う犬は居ない。犬はただ飼い主を愛し返して尽くすだけだ。
「ふふふっ」
「ふふ」
見つめ合い、笑い合う。幸せだ。
「……本当、幸せ。ポチもう帰んないでよ、ずっと僕の傍に居て」
「俺の意思でどうにかなるならそうします」
「…………だよねぇ。先のことは考えないようにしよう、もう食べ終わるよね? コーヒー飲んだらベッド行くよ」
「はい」
食後のコーヒーを飲んでベッドへ戻る。食器の片付けなどを使用人に丸投げするのには引け目があったが、鼻歌を歌いながら赤い縄に輪っかを作っている雪兎を前にして身体の疼きを抑えることなんて出来ない。
「気付いてる? この部屋、天井に吊るすところ付けてもらってるんだよ」
「そういえばフックありますね。吊るんですか? じゃあベッドに寝転がらなくてよかったんじゃ……」
「ナースの格好したからベッドの方がそれっぽいかなーって思ってたんだもん。やっぱり吊ったやりやすいかなって思い直したの」
拗ねたように言いながら縄を投げ、先程作っていた輪っかをフックに引っ掛ける。その縄使いの上手さは西部劇で見るカウボーイにも引けを取らない。
「ほら、おいで」
愛しの雪兎に赤い麻縄を着せてもらうため、バスローブを脱ぎ捨ててフックの下に立った。
「……おはようございます、ユキ様」
「おはよう」
「すいません……息、落ち着かせていられなくて」
「いいよ、興奮してくれてた証拠だもんね」
雪兎が不機嫌になっていなかったのは僥倖なのだが、もっとあの精液の匂いと酸欠の心地良さを味わっていたかったという思いが強く、つい落ち込んでしまう。
「ポチ? まだ頭ボーッとする?」
「少し……あの、今何時ですか?」
「もう夜だよ。もうすぐ晩ご飯出来るよ。今日はもうゆっくり過ごそうね」
「……はい」
雪兎に言われた通り、俺は雪兎の隣という安心と幸福が保証された場所で美味しい料理を楽しみ、性欲を排除してリラックスしたバスタイムを過ごし、穏やかに眠りに就いた。
「んっ……」
朝、目を覚ました時にはもう穏やかでゆったりとした時間など失われていた。
「……っ!? ユ、ユキ様……?」
仰向けで寝ていた俺に雪兎が跨っていたのだ。それもコスプレをして。
「おはようポチ、朝ご飯食べたらお注射しようね」
プレイ用のコスチュームとしてしか見ることのないミニスカナース服に身を包み、ナースキャップを被った雪兎の手には注射器が握られていた。
「寝てる間に縛っちゃって始めようかとも思ったんだけど、朝ご飯食べてからのがいいかなーって。ポチぐっすり寝てて重かったし」
後者が主な理由だろうな。
「……縛って動けなくして、媚薬か何か使ってお尻拡げるって感じですか?」
「そんなとこ」
「…………早く抱かれる身体に戻りたいです」
心底からの本音を呟いて起き上がり、全裸で眠っていたことに今更気付く。俺の服を脱がしてベッドに運んだのはやはり使用人なのだろうか、俺は今まで一体何人の使用人にあられもない姿を見られてきたのだろう。
「いただきます」
「いただきまーす」
どうせすぐ脱ぐことになるのだからとバスローブを羽織っただけの姿で席に着き、フォークを使って朝食をいただく。雪兎と居るのに机で食事を取るのは久しぶりな気がした。
「……ふふふ」
「ユキ様? どうなされたんですか?」
「ポチが居るなーって」
小さな口をもぐもぐ動かしながら俺を見つめて、飲み込んでは幸せそうに笑う。どうやら雪兎を笑顔にしているのは俺の存在そのものらしい。俺の何がそんなに気に入っているのかは理解に苦しむが、だからと言って雪兎からの愛を否定したり疑ったりはしない、俺がすべきなのは雪兎の愛を享受しそれに応えることだけだ。
「俺もユキ様が傍に居るの嬉しいです」
飼い主からの愛を疑う犬は居ない。犬はただ飼い主を愛し返して尽くすだけだ。
「ふふふっ」
「ふふ」
見つめ合い、笑い合う。幸せだ。
「……本当、幸せ。ポチもう帰んないでよ、ずっと僕の傍に居て」
「俺の意思でどうにかなるならそうします」
「…………だよねぇ。先のことは考えないようにしよう、もう食べ終わるよね? コーヒー飲んだらベッド行くよ」
「はい」
食後のコーヒーを飲んでベッドへ戻る。食器の片付けなどを使用人に丸投げするのには引け目があったが、鼻歌を歌いながら赤い縄に輪っかを作っている雪兎を前にして身体の疼きを抑えることなんて出来ない。
「気付いてる? この部屋、天井に吊るすところ付けてもらってるんだよ」
「そういえばフックありますね。吊るんですか? じゃあベッドに寝転がらなくてよかったんじゃ……」
「ナースの格好したからベッドの方がそれっぽいかなーって思ってたんだもん。やっぱり吊ったやりやすいかなって思い直したの」
拗ねたように言いながら縄を投げ、先程作っていた輪っかをフックに引っ掛ける。その縄使いの上手さは西部劇で見るカウボーイにも引けを取らない。
「ほら、おいで」
愛しの雪兎に赤い麻縄を着せてもらうため、バスローブを脱ぎ捨ててフックの下に立った。
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