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夏休み

がまんがまん、ろく

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鞭を収納した雪兎は俺に鞭の説明をするために使った空き缶を持って部屋を出ていく。捨てに行くのだろう。

「はぁ……はぁ……ぁ、かゆ、い」

胸と太腿に与えられた皮膚が裂けたような痛みが引いてきた、所詮は腫れにもならない程度の跡ということだ。痛みが引くと痒みが帰ってくる、いやずっとそこに居た、俺の意識が痛みに傾いていただけだ。

「……っ、んん……痒い、はぁ……ぁあ、搔きたい」

足を軽く開いた状態で足首を固定された俺は、太腿を擦り合わせて陰茎の痒みを誤魔化すことすら出来ない。

「鞭……乳首に、欲しかった……」

勃ったままずくずくと痛みに近い疼きと痒みに襲われている乳首に刺激を与える方法は存在しない。手は腰の後ろで手錠をかけられているし、シーツに擦り付けようにも首輪の紐をベッドの柵に短く繋がれているから寝返りすら打てない。

「ユキ様……遅い、なんで……」

空き缶を捨ててくるだけならもうとっくに戻ってきてもいい頃だ、何かあったのだろうか? もし何か問題があって、それはしばらく俺に構えないようなものだったら、俺はここでこのまま痒みに侵されたまま何時間も放置されるのか。

「ゃ、だ……ぁああっ、して欲しい……やだ、ユキ様、ユキ様ぁっ……!」

痒みにすら対処できない情けない姿を雪兎に見ていて欲しい。
雪兎に情けない姿を見せることすら出来ない情けなさが欲しい。
その二つの矛盾した被虐欲は俺の中でむくむくと膨らみ、同時に陰茎も膨らみ、金属製の貞操帯に締め付けられて痛んだ。

「ぁあっ……! は、あ……勃たせるのも、できない…………へ、へへ……情けないの……ぁあ、見て、見てくださいユキ様ぁ……見下して、いえ、そんな願いさえ叶えないで、俺をもっと貶めてぇ……」

痒みと痛みという不快に襲われ、俺は雪兎を軸にした妄想でへらへらと笑った。腰をくねらせてはベッドの柵に短く繋がれた首輪で自らの首を絞め、快感を覚えた。

「ポチー、ただいま! ごめんね時間かかっちゃって。首絞まってない? あー、心配だったよぉ、出る前に首だけ外してけばよかったね」

「ユキ、さまぁ……」

「よしよし、ごめんね。ポチは可愛いねぇ」

ベッドに膝立ちになった雪兎は俺の頬を包むように撫で、ペットの犬を可愛がる少年らしい無邪気な笑顔を浮かべた。

「ユキ様、ユキ様ぁ……は、ぁん……気持ちいい……ユキ様」

雪兎の滑らかな肌が俺の厚い肌に触れ、頼りない指先が耳や毛先に微かに触れる。俺はそんな僅かな刺激でも鳥肌が立つほどの快感を覚える。

「ユキ様、ユキ様ぁ……は、ぁああっ……ユキ様っ……! ぁ、痛いっ、痛いぃ……」

無垢な愛撫に快感を覚える自分の下卑た敏感さを自ら蔑み、興奮で勃ち上がった陰茎を貞操帯が締め付けて痛みが走るのを罰と捉える。

「……ふふふ」

雪兎は何も言わずに微笑んだまま俺の顔を撫で続けた、俺がそれだけで快感と痛みに苛まれると分かっているのだ。無邪気な笑顔は少しずつ嗜虐的に変わり、赤紫の瞳が完璧に性欲と冷酷に染められた時、俺は静かな絶頂を迎えた。
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