ポチは今日から社長秘書です

ムーン

文字の大きさ
191 / 566
夏休み

はだかえぷろん、ご

しおりを挟む
嘘をついたこと、そのくせ笑ったこと。それが俺の罪状、罰則は尻叩き十回。

「十回……ですか」

「何、不満?」

罰の内容を知らされた俺は正直、不満を覚えていた。叩く回数が少ないし、鞭だとかも使わないらしい、嘘をついたらもっと激しいお仕置きをしてもらえるはずなのに……昨日の失神を雪兎が気にしているのだろうか?

「いえ、ご主人様に不満など」

「だよね。あぁそうそう、罰を受けた前後で写真を撮って、反省したかどうか確かめるから、カメラ取ってくるね」

「スマホでよくないですか?」

「いいカスタム出来たんだ。使わせて」

雪兎がカメラに興味があったとは驚きだ。会話できるように俺も勉強しようかな、カメラに関しては平均レベルの知識しかない。

「これこれ。ほら」

「デジカメですね」

厳つさがない、レディースに分類されるものなのだろう。雪兎の小さな手にはそれでも合わない気もする。

「なんと、一億画素!」

「画素数多けりゃいいってもんじゃないって聞きますよ、逆にボケるって」

「写真印刷する時に引き伸ばすから画素数いるの!」

印刷? 俺の写真を? 画素数を無駄に増やして引っ込みつかなくなったからって、そんな資源の無駄遣いをすることはないだろうに。

「印刷なんてしなくていいと思いますけど……撮るんですよね、ポーズ取りましょうか。俺の被写体力はたったの5、そんなゴミでよければ」

「ポチの被写体力はとっても高いよ! ポーズはねぇ……そこでいいや、そこの棚に手ついて」

嫌な予感がしつつも自分の腰ほどの高さの棚に手をつく。

「足もうちょい後ろにして、お尻突き出して」

「え……ぁ、あの、これ以上しちゃったら…………その、穴まで」

「聞こえなかった? 突き出して」

ようやく分かった。俺への罰のメインは尻叩きではなく、撮影なのだ。肉体的苦痛ではなく精神的苦痛を与えるつもりなのだ。

「はい……」

俺は雪兎の持つカメラに陰嚢まで映されると分かっていながら、尻を高く突き出した。

「んー……角度、もう少し……こう」

いつの間にか背後にぴったりと立っていた雪兎に尻を撫でられ、ピクピクと震えながら言われるがままに角度を整える。

「ユキ様……さっきの位置から撮ったら、俺……尻しか映らなくなるんじゃ」

「罰を与えるのはお尻なんだから、それでいいんだよ。僕を一番楽しませてるのもお尻でしょ?」

「はい……いつも、ご奉仕させていただいています。お仕置きも、ご褒美も、この尻に……はい、俺の価値は、ここに、ここだけに……」

俺が買われた理由も、飼われている理由も、どちらも肉体。俺は雪兎に後孔で奉仕するためだけの犬、尻穴奴隷、肉便器……そんなふうに罵られたい。そんな被虐欲で雪兎の罵倒を誘導しようとした俺の髪を、雪兎は乱暴に引っ張った。

「君は自分の価値を理解してないみたいだね、僕を一番楽しませてるのはお尻じゃないでしょ? 違いますって言わなきゃダメだったんだよ君は、主人に従い過ぎる犬はダメなんだ」

「い、たっ…………そんな、俺に……他のところなんて、ぁ、胸ですか? でも使うのお尻の方が多いっ……!? 痛いっ、髪抜けちゃいますぅ……!」

「毟って欲しそうな顔しないの。いい? ポチの価値はね、忠誠心と愛情の強さ深さ。金で買われたくせに僕のこと本当に大切にしてくれる、何かあったら守ってくれる……」

髪を抜けない程度に引っ張りながら感慨深そうに話す。

「雪風と話せてもなかった僕に……誰にも愛されてないって思い込んでた僕に、君は人に愛されるってことも人を愛するってことも教えてくれた。君のおかげで雪風ともおじいちゃんとも仲良くなれた。君はね、人の心をほぐして、人と人を繋げることが出来るんだよ」

髪を離し、俺の頭を抱きしめる。

「……だから自分の価値がお尻だけなんて言わないで」

真剣な声色に俺はようやく自分の本当の罪深さを知った。

「ううん……そう感じさせた僕が悪いよね。ごめんね、ポチ……」

被虐欲に従って自分で自分を貶め過ぎた。卑下は雪兎の愛情と信頼を裏切ることにも繋がるのだ、どうにか挽回しなければ──

「……分かった? じゃ、お尻撮るからね~。こんなボリューミーでえっちなお尻、撮らなきゃもったいないもんね」

──と思ったけど、そんな深刻じゃなかった。ま、雪兎は俺の趣味を深く理解しているはずだし、さっきの謝罪も保険程度の意図だったんだろうな。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司と俺のSM関係

雫@不定期更新
BL
タイトルの通りです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...