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騒がしい食卓 (〃)
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せっかく俺の、いや、俺達人間のことを信用し、出した食事を警戒することなく美味しそうに食べていたクンネを酷い目に遭わせてしまった。
「想像力が足りなかった、ってヤツだよね。ボク画家なのにぃ~……ごめんね?」
「まさかタマネギがダメだとはなぁ」
「ボクが目見えてればもうちょいサイズ感掴めて、タマネギがダメって思い至ったかもね~」
「いやぁ、見てても気付けないっすよ」
「まぁアンタら目明の連中はそういうの疎そうだもんねぇ」
クンネは人間不信になって……なさそうだな。顔を洗ってスッキリした様子でベーコンを齧っている。
《大丈夫ですか? おにいさま》
《もう何ともないぞ。ほら、ペケレもこれ食え。ん? この黒いのは……辛っ!?》
「また!? 今度は何食ったんだべクンネくんっ」
カルボナーラに使われているブラックペッパーを齧ったクンネが噎せている。香辛料は彼らの身体には大き過ぎるのかもしれない、今後気を付けなければ。
「粒をこう、潰して……粉を麺に塗り広げて……どうだ?」
「……ピリ辛で美味い的なことを言ってる」
「粗挽きがダメなのか」
昼食の時には何も気にしていなかった、いや、ニンニクについては俺が彼らが食べる前に注意を呼びかけたんだっけ? どちらにせよ夕飯の方が気にすることが多い、人数は視点の数だ、特に歌見は細かいことによく気が付く。ガサツそうな見た目なのに、面倒見がいいからだろうか? 萌えポイントだな。
少々騒ぎはあった夕飯の時間が終わる。みんな満腹、満足だ。クンネ兄妹もそう感じているとカサネが教えてくれた。
「コンちゃんら本当に帰ってこねぇのな」
『そうなんですよねぇ』
パグ犬に夕飯を与えるカサネの隣に座り、スマホを使って彼と話す。
『ところで何でちょっとずつ手でやってるんですか? 餌皿持ってくるの忘れちゃったんですか?』
「早食い防止だべ。知育系のは色々買ったんだけど、バラ撒かれちまうから他人の家ではちょっとな」
知育系? バラ撒く? よく分からないな。
《見たことない獣だな……カサネの猟犬か? 言っちゃ何だが鈍そうだな》
「ん……? ぉわっ、鳴雷くんクンネくん達床歩いてるべ。フランクが舐めちゃう、机上げたげて」
「あっ……はい」
妹をおぶったクンネをつまみ上げ、リビングのローテーブルの上に乗せた。彼らはダイニングの背の高い机の上に乗せていたはずだが、一体どうやって床に降りたのだろう。
(……いや普通に飛び降りたんでしょうな。クンネたんめっちゃ運動神経いいですし)
あの施設で化けガラスの群れに襲われた時、クンネは俺や化けガラスを足場に跳び回っていた。ただ人間を縮尺して身体能力を考えてはいけない、小さく軽ければそれだけ重力の負担も軽くなり、その上彼らは一応怪異、霊的な力も働いている。
《なぁ、それ猟犬?》
《狩り、ではない。私、心癒す、重大な役割》
《んー……? 心を……? よく分かんないけど、まぁ危なくはなさそうだな》
『フランクちゃん怖がられてます?』
「ゃ、鈍臭そうとか言われてる」
実際どうなんだろう。紅葉家で飼われているボーダーコリーの身体能力は以前、フリスビーを使った遊びで見せてもらった。だが、パグ犬の方は寝ている姿ばかりで彼がどれほど動ける犬なのかよく分からない。
「せんぱ~い!」
『お疲れ様』
走ってきたレイを抱き止めて、彼の背後でスマホを操作して返事をする。彼と歌見は食後の後片付けを行っていた。俺は手を怪我しているので免除され、カサネは犬の世話を理由に逃げたのだ。
『レイ、何回か連絡したけど全然返事ないよな。まだ既読ないし。どうしたんだ?』
「連絡してくれてたんすかせんぱい! 嬉しい……あ、返事出来なくてすみませんっす。俺スマホ失くしちゃったんすよ、多分せんぱいの家だと思うんすけど……ほら、殴られて、病院運ばれて……」
『そっか。明日探そうか。家おいで』
「ありがとうございますっす!」
笑顔のレイの頭を撫でようとして、彼は一時意識を失うほど強く殴られたばかりなのだと手を止める。
「……? えへへ」
頭の少し上で止められた手に気付いたレイは、自らその手を引き寄せて頭を撫でさせた。
「せんぱい……せんぱい、せんぱい。くーちゃん事変の時ほどじゃないっすけど、すっごい心配してたっす……無事でよかった。せんぱい、せんぱい、大好き、せんぱい」
レイにとっては命を弄び怪異を作り出してきた物部よりも、元カレの方が危険度が高いのか。いや、あの時の方が傷が重かった気がする……俺にとっても、かな。
「イチャついてるとこ悪いが、ちょっとどいてくれ」
「みつき、いちゃいちゃ、してる?」
「ボクん家で盛っていいのは寝室だけだよ」
「盛ってはいません!」
「みつき、話すのダメ!」
また怒られた……
サンと荒凪と手を繋いでリビングにやってきた歌見の傍ら、俺はまたまた荒凪に説教を受けた。二人をソファに座らせた歌見はテレビのリモコンを握る。
「何か観ていいか?」
「テレビ? 好きにしていいよ。一応サブスクも入ってるから、そっちでもいいよ。入力2ね」
リラックスタイムが始まった。歌見に任せて番組や映画を観るのもいいが、俺には荒凪救出の一件に関して説明する義務がある。テレビに割く意識は半分程度にして、俺はグルチャに事のあらましを書いていこう。
「想像力が足りなかった、ってヤツだよね。ボク画家なのにぃ~……ごめんね?」
「まさかタマネギがダメだとはなぁ」
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「いやぁ、見てても気付けないっすよ」
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クンネは人間不信になって……なさそうだな。顔を洗ってスッキリした様子でベーコンを齧っている。
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《もう何ともないぞ。ほら、ペケレもこれ食え。ん? この黒いのは……辛っ!?》
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カルボナーラに使われているブラックペッパーを齧ったクンネが噎せている。香辛料は彼らの身体には大き過ぎるのかもしれない、今後気を付けなければ。
「粒をこう、潰して……粉を麺に塗り広げて……どうだ?」
「……ピリ辛で美味い的なことを言ってる」
「粗挽きがダメなのか」
昼食の時には何も気にしていなかった、いや、ニンニクについては俺が彼らが食べる前に注意を呼びかけたんだっけ? どちらにせよ夕飯の方が気にすることが多い、人数は視点の数だ、特に歌見は細かいことによく気が付く。ガサツそうな見た目なのに、面倒見がいいからだろうか? 萌えポイントだな。
少々騒ぎはあった夕飯の時間が終わる。みんな満腹、満足だ。クンネ兄妹もそう感じているとカサネが教えてくれた。
「コンちゃんら本当に帰ってこねぇのな」
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パグ犬に夕飯を与えるカサネの隣に座り、スマホを使って彼と話す。
『ところで何でちょっとずつ手でやってるんですか? 餌皿持ってくるの忘れちゃったんですか?』
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知育系? バラ撒く? よく分からないな。
《見たことない獣だな……カサネの猟犬か? 言っちゃ何だが鈍そうだな》
「ん……? ぉわっ、鳴雷くんクンネくん達床歩いてるべ。フランクが舐めちゃう、机上げたげて」
「あっ……はい」
妹をおぶったクンネをつまみ上げ、リビングのローテーブルの上に乗せた。彼らはダイニングの背の高い机の上に乗せていたはずだが、一体どうやって床に降りたのだろう。
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「……? えへへ」
頭の少し上で止められた手に気付いたレイは、自らその手を引き寄せて頭を撫でさせた。
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