冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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反社の推しカプ (水月+ネイ・フタ・サン)

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食事を進めていくと更に緊張がほぐれてきた。今ならネイに話しかけられそうだ。

「あのー……ネイ、さん?」

「…………はい」

「ノヴェムくんのことなんですけど……今は、歌見先輩とスイさんが見てくれてます。二人とも弟妹が居て面倒見のいい優しい人です」

「……ありがとうございます。いつも、ノヴェムのことを任せてしまって……申し訳ないとは思ってるんですが」

「い、いえ、今日はホント……ごめんなさい。あ、あのっ、アレ、俺達事前に知らされたりしてなかったんで! 俺達も本当に、本当に撃つんじゃないかって……すっごい焦って。すいませんでした……」

責任逃れや言い訳と捉えられるかもしれないが、人質作戦については本当に秘書が勝手にやっただけで俺は巻き込まれただけなんだ。これのせいでネイからの好感度が下がるなんて理不尽だ、どうにか分かってもらいたい。

「水月くん……あなたに怒ったりしていませんよ、あなたが本気で焦ってノヴェムをどうにか助けようとしてくれていたのは伝わっていました。私が許せないのは、そこの男ただ一人です」

青く鋭い視線が秘書を射抜く。

「たとえ偽物だろうとも、ノヴェムはそれを分かっていなかった。私も……ノヴェムにトラウマが刻まれたらどう償ってくれるつもりなんでしょうね」

「公安警察がオモチャと本物の区別つかないってどうなんでしょうね」

「無料ビデオ通話のあの画質で見分けをつけられるヤツなんて居ない! 話を逸らすな、私はノヴェムの心に傷を付けたことに怒ってるんだ! 水月くん、あの後ノヴェムの様子はどうでしたか?」

「…………泣いてました。すっごく」

真実を伝えれば当然、ネイの怒りのボルテージは一段階上がる。顔を真っ赤にして怒っている。

「……っ! やっぱり許せない」

「俺いつ許してって言いました?」

「…………あなたがこれまで犯した殺人は全て、被虐待児を救うためのように思えました。私は、思っていました。あなたは子供の味方だと……だからあなたが動いている神秘の会の案件は、子供が犠牲になっているのだろうと判断した。私はあなたをある意味信頼していた、なのにあなたはノヴェムに銃を突きつけた。あの子はアメリカで生まれ、これまで育った……銃への恐怖はこの国の子供よりもずっと身近なんです。それを分かっていますか? ノヴェムへの罪悪感は……本当にないんですか?」

「勘違いしてますね。俺は子供の味方でもなんでもない」

ローストビーフを箸に挟んだまま、秘書は無表情で回答した。

「俺の両親は優しい人だったのに、俺が高校生になってすぐに死にました。ぐっちゃぐちゃになって。だから、俺の両親より優しくない親が、俺の両親より長生きするのは、バグなんです。この世のバグ。バグは取り除かないと……ユキ様の生きる大切な世界なんですから、ね」

淡々と語られるその言葉には一切の嘘偽りがない、俺はそう感じた。

「若神子家の仕事は怪異への対処なので、怪異を製造するような組織は放っておけない。神秘の会を調べたりしてたのはそういう理由ですよ。子供とか関係ありません」

「…………よく分かりました。たまたま対象が私にとって生きる価値がないと思える部類の悪人だっただけの、殺人鬼。それがあなたです」

「殺人鬼って。大袈裟ですねー、バグ取りしてるだけなのに」

「君頭おかしいと思うよ」

「ユキ様まで……」

「昔僕を襲ったヤツ殺した時はもう少しヘコんでただろ、いつからそうなったの」

「……俺がヘコんだのはユキ様が殺人に躊躇ないタイプ嫌いかなって勘違いしちゃったからですよ?」

「君頭おかしいと思うよ」

「………………お嫌いですか?」

「引くけど、嫌いって訳じゃないかな。結果的には社会が取りこぼしてる子供助けてる訳だし……ほら、害虫食べるからって蜘蛛は益虫扱いでちょっとイメージいいだろ? 蜘蛛の動機は食欲であって人間のために害虫を取ってる訳じゃないけど、それ知ったところでイメージ下がらないだろ? そういう感じ」

「目と足が多くてカッコイイですよね、蜘蛛」

「……ふふ」

冷たい表情ばかりだった社長が柔らかい笑顔を見せた。なんで? 今なんで笑ったの?

「私は結果より動機を重視しちゃいますね……ちょっと嫌いです、あなたのこと」

「そうですか。俺は無です。あなたに対しての感情」

「……お、俺はネイさんのこと好きですよっ」

「ありがとうございます……別にフォローしてくれなくていいんですよ」

「フォローって、俺は本当にっ!? いっ、た……なんで頭突きするんですかフタさんっ」

ゴッ、と鈍い音が自分の頭から鳴った。側頭部がズキズキする。

「水月が他の男好きとか言うからじゃない? ねぇ兄貴」

「えっヤキモチなの可愛い……違うんですよフタさぁん、そういう好きじゃないんですよぉ。人間としてって言うか、ね?」

まぁ、全く恋愛感情がないとは言えない。ネイとそういう関係になれたらと思うと心が躍る。でも、ネイが俺に好意的な言動をしていたのは仕事のためだ、俺の恋は敗れたのだ。

「……みつき、俺好き?」

「愛してますよ」

「なんかそっちのがカッコいい……俺も、みつき愛してます!」

「フタさぁん……はぁ、傷付いた心に染み入る癒し」

「みつきどっか痛いの?」

「ふふ……俺弟刺されたこと忘れてるなぁ、フタさん……でも今はそれが癒し…………ぅう、アキぃ……お兄ちゃん必ず、お前を刺したヤツの腹に先輩に貸してもらったナイフぶっ刺してやるからな……だからちょっとだけフタさんに癒されるの許してくれ……恨みは忘れないから……」

「みつき話長い~……俺分かんない……」

「要するに、フタさん可愛いねってことです」

「え~? かわいいのはみつきじゃん」

あぁ、本当に癒されるなぁ……これなら憎悪に支配されてミタマに俺を諭す手間をかけずに済む、冷静な頭でアキの復讐と荒凪の奪還を完遂出来るだろう。

「フタさんと若こそ癒しだわ……」
「分かる。推せる」
「フタさんがとうとう幸せに……俺もう泣きそう」

社員達からの祝福の声も聞こえてきた。反社のくせにちょっとオタクっぽいけど。

「…………アイツら兄貴だけが水月のだと思ってんだよね~。はぁ……ややこしいから隠しとく方向でいいけどさぁ、水月はボクのでもあるのにね?」

「サン……! ごめんね、今度また二人きりでイチャつこう」

小声で語られた苛立ち混じりの愛の言葉にも、申し訳なさを感じつつも癒された。
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