冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,737 / 2,304

友達は大事 (水月+歌見・荒凪・セイカ・アキ)

しおりを挟む
すっかり乾いた荒凪の髪を捲り、人間のものに変わった耳を眺めている歌見を見下ろす。俺より少し背の高い彼の頭頂部を見る機会は少ない、彼が膝立ちになっている間につむじその他を堪能しよう。

「不思議だなぁ……鱗とかヒレとかボロボロ剥がれてったけど、痛かったり痒かったりするのか? 日焼けした後みたいな感じかな」

「ひやけ? すこしちがう、いたくない」

荒凪は日焼けを知っているのか?

「やっぱりこのインナーカラー綺麗だな。俺もインナーカラーにしとけば大学デビュースベらずいい感じになったかな……」

「先輩の短髪でどうインナーカラーにするんです」

「そうだけどさ……毛先ちょっとだけとか、どうにかもう少し地味な感じにしてれば大学デビュー成功もあったかも……本当に友達居ないんだよ俺」

歌見は荒凪から手を離し、項垂れる。彼の第一印象は太陽のような笑顔が眩しい快活そうな人だったから、友達が居ないという彼の悩みにどうにも実感が持てない。

「枯れ専な先々輩々は?」

「……無患子先輩か? アレは先輩。ちょくちょく勉強見てくれるし、たまに昼一緒に食ってくれたりするけど」

「友達じゃないですか」

「その代わりにボディガードやらされてるし……」

「男子大学生のボディガードってよく分からないんですけど。確かに線細くて童顔で、ノンケでもイケるギリギリのラインって感じはしますけど」

「俺も最初はギャグか、デビュー失敗した俺を気遣って適当言ってるんだと思ってたよ……ガンッガンおっさんに絡まれまくるあの人を見るまではな。すごいんだ本当」

肺に溜めた空気を全て使い切るようなため息からは深刻さが伝わってくる。

「声掛けてくるおっさん達最初めっちゃフレンドリーだし名前呼んでるし、絶対パパ活してると思うんだよあの人。厄介客俺の顔で追っ払ってるんだ。それに気付いてからは……うん、ギブアンドテイクの関係にしようって。仲良くならない方がいいなと思った」

「なるほど……」

「流石に縁切るのはな。テスト詰むからなぁ。覚えとけよ水月、大学で一番大事なのは人脈だ。ぼっちで黙々と真面目に授業出てノート取ってても、ふとしたことで単位は落ちる……大学を卒業出来るのは友達が居るヤツだ」

悲痛な叫びだ。

「他に友達作ったらいかがです? 先輩明るいし面倒見いいし、人に好かれるタイプだと思うんですけど」

「もうグループ出来上がっちゃってるからな……」

「まーぜてって」

「……お前、出来るか?」

「俺は無理ですけど、先輩なら出来そうだなって」

「買いかぶりだよ、その信頼? はありがたくもあるが……っと、本当にそろそろ帰らないとな。じゃあな、荒凪くん」

「……? なな、どこ行く」

立ち上がった歌見の裾を荒凪が掴む。

「家に帰るんだよ」

「ここ、いえ」

「水月達のな。俺の家は他にあるんだ。惜しがってくれるのか? ふふ、今度また来るよ。だから離してくれ」

「きゅるるるる……」

荒凪の喉が不満げな音を鳴らす。金魚のおもちゃを気に入っていることから分かっていたが、歌見に相当懐いている。

「ん? なんだ、腹減ったのか? 早く作ってもらっておいで」

「あ、今の喉です。荒凪くんなんか鳴くんです、イルカっぽくて可愛いでしょ」

「喉?」

「きゅー」

「おぉ、ホントだ。腹って感じじゃないな。へぇ…………さて、帰るよ。ほら離せ、じゃあな荒凪くん」

荒凪の手をシャツから無理矢理引き剥がし、鞄を持つ。去っていく歌見を追うため荒凪はふらふらと立ち上がり、覚束無い足で彼を追った。

「じゃあ先輩、また月曜日」

「あぁ、またな水月。荒凪くんも」

「……ばいばい」

歌見を見送り、窓からダイニングへ。アキとセイカは既に席に着いていた。

「にーに、ららなぎ、早く座るするです」

「さっさと座れよ鳴雷、秋風が早く食べたいってうるさい」

「先に食べてていいのに……」

「秋風はそうしたがったけどな、やっぱダメだろ」

「お堅いなぁ」

セイカの刈り上げた側頭部を手の甲でさする。相変わらずいい手触りだ。

「やめろ……」

やめさせる気のない頭の僅かな逃げと、小さな声が何とも愛らしい。

「……鳴雷、明日デートだよな?」

食事を始めてしばらく、セイカがそう切り出した。

「そうなの? あのピンクの子? へぇー、いいなぁ……どこ行くの?」

義母がノってきた。セイカを軽く睨みつつ、本当のデート相手はカミアなんだけどなと少し申し訳なく思いつつ、答えた。

「遊園地です」

カミアからのメッセージ。ここに来てと送られた位置情報、それは最近新エリアが追加されるらしい遊園地を指していた。

「へぇー! いいなぁー……ね、唯乃ぉ。私も久しぶりに遊園地行きたい」

「そのうちね」

「唯乃ぉ~……」

実母がその恋人に甘えられている様、見てて愉快なものではないな。見ているだけで癒されるアキとセイカの様子でも眺めていよう。

《ゆーえんち、ってロシア語で言うと何?》

《遊園地……こないだテレビで見たろ、ジェットコースターとかあるとこだよ》

《日本語分かんなかっただけで遊園地は知ってるっつーの。いいな、楽しそうじゃん。俺も行きたい。な、兄貴、俺も行っていい?》

「…………鳴雷、秋風が遊園地行きたいって」

セイカが気まずそうに俺を見る。

「え、ダメよアキ、水月お兄ちゃんデートなんだから」

「んー……入り口まで行って、遊園地の中は別行動なら……」

カミアと会う機会は貴重だ。彼がカンナを呼んでいないのなら、俺もアキを連れていく訳にはいかない。

「秋風一人じゃ可哀想だろ。また今度別で連れてってやれよ」

「セイカは嫌なのか? 遊園地」

「健常者の遊び場だろああいうとこは」

「セイカなら半額くらいで遊べるぞ。片手片足なくてもジェットコースター別に問題ないと思うし」

「……そう? なら……行きたいかも」

「じゃあ今度みんなで行こうか、シルバーウィークにでも。そっちの方が涼しいし、いいだろ?」

「うん……秋風にもそう言っとく」

ほんのりと頬を染め、口元を緩めながら、セイカは俺には分からない言葉でアキに説明を始めた。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...