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兄に盲目 (〃)
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笑顔と共に提案された目隠しプレイ、提示されたアイマスク。
「……ライブグッズか何かか?」
「うん、今度出すグッズ。ライブの時、遠征? ってのしてくれる人多いみたいで、新幹線とかで寝る人居るらしいから、出してみるんだ。ってグッズ部の人が言ってた」
「へぇー」
「ハルちゃんにあげたら喜ぶかな?」
「あぁ、喜びそう……いや、そういうフラゲは嫌がるタイプかもな、ハルは。正当なファンってヤツだ」
「そっかぁ」
「ま、余ってるんなら一応聞いてみたらどうだ?」
「うん! ハルちゃん僕見ると緊張しちゃうみたいだから、これ着けてれば普通に話せるかもだし、受け取って欲しいなぁ」
アイマスクで視界を塞いだところでハルが感じ取る推しアイドルの気配が薄れることはないだろう。
「……カミアって割と天然だよな」
「そこ、が……いいとこ」
「まぁそうだな、可愛い弟で羨ましいよ」
「えー? えへへ、みぃくんにだって可愛い弟居るじゃん」
天然呼ばわりは聞こえていなかったのか、カミアは「可愛い」と「羨ましい」だけ拾って照れている。
「アキくんすっごく可愛いよね、あんな顔整い俳優さんやモデルにだって居ないよ。ほんのりエキゾチックなところもいいよね、異質さって特別さや憧れに近いから売れると思うなぁ」
外国っぽいとか異国情緒とか、そんな意味の言葉だったと思うから異国の血が混じったアキを評するのにエキゾチックという言葉はピッタリなんだと思うけど……
「エキゾチックって言うとなんかこう、褐色の肌で……締まってて、宝石と透ける布で飾り立てた、踊り子っていうか、なんかそんなイメージあるから……アキをエキゾチックって言われると違和感あるなぁ」
「ぼく……顔、ぺたんこの、イメージある」
「お兄ちゃんのそれは猫のせいだと思うなぁ。あぁもう話脱線した、アキくんの話だよアキくんの話」
元は目隠し3Pの話だよ。
「あんな可愛い弟居るのに、僕が羨ましいなんて言っちゃダメだよ」
「……だって言葉通じるし」
「あ、ぁー……そっかぁ、アキくん日本語まだ覚えてないんだよね」
「勉強してる気配もないよ。ったく、セイカに頼りっきりで……そうだよセイカばっかりなんだよアキは。にーににーにってあんなに懐いてきて、俺が留守にしたら泣くくらいだったくせに、最近はセイカにべったりでさぁ……俺が頼りにならないのが悪いのかな。なぁカミア、兄に求めるものって何かな? こうしたらお兄ちゃんもっとよくなるのになー、的な?」
「お兄ちゃんは産まれた時から完璧だから改善点なんてないんだよ?」
「目ぇかっぴらいて言うなよ……」
聞き方を間違えた。
「俺がお兄ちゃんだったとしたら、何が足りないと思う?」
「んー、そうだなぁ……身長足り過ぎ。小狡さがない。イタズラっ子要素が薄い。強制的に信仰させるような求心力がない。えっち過ぎ。僕を愛せって命令されてるような、脳を揺さぶる歌声がない。ルックスが人間離れ時すぎててたまに怖いからもう少し親近感あった方が売れると思う。あと、正直過ぎるからもっと嘘やハッタリを効かせてだね……」
「カンナと比べた時に足りないものじゃなくてな? 後半アイドル業に必要なものだしな?」
「カミア、嘘とハッタリ下手でしょ」
「お兄ちゃんが上手過ぎるのぉ! お兄ちゃんには処女懐胎で産まれたって急に言い出しても信用させる力があるし……」
それはカミアが兄に盲目過ぎるだけだろ。
「お兄ちゃんが処女懐胎しても僕そんなに驚かないけど」
なんて真っ直ぐな目で言うんだ、冗談であってくれと祈ってしまうじゃないか。会わなかった期間が長過ぎてカミアの中でのカンナ像が狂ったんじゃないか?
「ぼく処女じゃないよ」
否定するとこそこじゃないだろカンナ。
「あっそっか。みぃくん、ちゃんと認知してね?」
男だからデキないんだってば。
「みぃくん……嫌なら、ぼく一人でも育ててみせる……!」
カンナが悪ノリし始めたな。
「みぃくんお兄ちゃんになんてこと言わせるの! 認知しなさい!」
「みぃくん、に……迷惑は、かけないっ」
「こんなに健気なお兄ちゃんを見ても心を入れ替えられないのみぃくん!」
「しっかりとした演技力で俺をクズ男に仕立て上げる茶番をするのはやめろよぉ! 何にもしてないのに段々なんか罪悪感湧いてきたよ!?」
それまで涙ながらに強い覚悟を語る演技をしていたカンナはくすくすと笑い出した。笑顔のまま俺の頬にキスをして「ごめんね」と首を傾げる。ズルい、こんなことされたら許すしかなくなってしまう。
「……あっ、えへへ……ごめんねみぃくん」
おい今の「あっ」は何だ。カンナの悪ノリにノって段々と冗談だということを忘れてきていたとかそんなのじゃないだろうな。
「はぁ……で? 目隠しして何するんだよ」
「目隠し……? あっ!? そうだった、面白そうな企画考えてきたんだよ」
「企画て」
芸能人だなぁ。いや、配信者っぽいか?
「題して! みぃくんは僕達双子を目隠ししたままでも見分けられるのか~! どんどんぱふぱふー……はい! というわけで今回はね」
配信者っぽいな。
「爪の白斑や歩幅がどうだなんて気持ち悪い観察眼をしているみぃくんは、そんな目を封じられた状態で僕達を区別出来るのか! 完全正当で豪華賞品をプレゼント~!」
「なるほどな。俺はアイマスクして、カンナかカミアからのキスとかを待てばいい訳だ」
「うんうん、触ったら分かるだろうから、手も使っちゃダメだからね」
髪型の違いはもちろん、カンナの爛れた肌の触り心地は独特だ。触れればすぐに分かる。
「了解。じゃ、アイマスク着けてくれよ」
「はーい」
アイマスクが俺の目元を覆う。目を開けても何も見えない、視界が真っ黒だ。
「どう? みぃくん」
「……瞬きすると、なんかガサガサ鳴る」
「睫毛かな? あんまり瞬きしてると抜けちゃうかもだから、閉じておいた方がいいと思うよ」
閉じても開けても視界は同じだ。俺は素直に目を閉じ、カンナとカミアの動きを待った。
「……ライブグッズか何かか?」
「うん、今度出すグッズ。ライブの時、遠征? ってのしてくれる人多いみたいで、新幹線とかで寝る人居るらしいから、出してみるんだ。ってグッズ部の人が言ってた」
「へぇー」
「ハルちゃんにあげたら喜ぶかな?」
「あぁ、喜びそう……いや、そういうフラゲは嫌がるタイプかもな、ハルは。正当なファンってヤツだ」
「そっかぁ」
「ま、余ってるんなら一応聞いてみたらどうだ?」
「うん! ハルちゃん僕見ると緊張しちゃうみたいだから、これ着けてれば普通に話せるかもだし、受け取って欲しいなぁ」
アイマスクで視界を塞いだところでハルが感じ取る推しアイドルの気配が薄れることはないだろう。
「……カミアって割と天然だよな」
「そこ、が……いいとこ」
「まぁそうだな、可愛い弟で羨ましいよ」
「えー? えへへ、みぃくんにだって可愛い弟居るじゃん」
天然呼ばわりは聞こえていなかったのか、カミアは「可愛い」と「羨ましい」だけ拾って照れている。
「アキくんすっごく可愛いよね、あんな顔整い俳優さんやモデルにだって居ないよ。ほんのりエキゾチックなところもいいよね、異質さって特別さや憧れに近いから売れると思うなぁ」
外国っぽいとか異国情緒とか、そんな意味の言葉だったと思うから異国の血が混じったアキを評するのにエキゾチックという言葉はピッタリなんだと思うけど……
「エキゾチックって言うとなんかこう、褐色の肌で……締まってて、宝石と透ける布で飾り立てた、踊り子っていうか、なんかそんなイメージあるから……アキをエキゾチックって言われると違和感あるなぁ」
「ぼく……顔、ぺたんこの、イメージある」
「お兄ちゃんのそれは猫のせいだと思うなぁ。あぁもう話脱線した、アキくんの話だよアキくんの話」
元は目隠し3Pの話だよ。
「あんな可愛い弟居るのに、僕が羨ましいなんて言っちゃダメだよ」
「……だって言葉通じるし」
「あ、ぁー……そっかぁ、アキくん日本語まだ覚えてないんだよね」
「勉強してる気配もないよ。ったく、セイカに頼りっきりで……そうだよセイカばっかりなんだよアキは。にーににーにってあんなに懐いてきて、俺が留守にしたら泣くくらいだったくせに、最近はセイカにべったりでさぁ……俺が頼りにならないのが悪いのかな。なぁカミア、兄に求めるものって何かな? こうしたらお兄ちゃんもっとよくなるのになー、的な?」
「お兄ちゃんは産まれた時から完璧だから改善点なんてないんだよ?」
「目ぇかっぴらいて言うなよ……」
聞き方を間違えた。
「俺がお兄ちゃんだったとしたら、何が足りないと思う?」
「んー、そうだなぁ……身長足り過ぎ。小狡さがない。イタズラっ子要素が薄い。強制的に信仰させるような求心力がない。えっち過ぎ。僕を愛せって命令されてるような、脳を揺さぶる歌声がない。ルックスが人間離れ時すぎててたまに怖いからもう少し親近感あった方が売れると思う。あと、正直過ぎるからもっと嘘やハッタリを効かせてだね……」
「カンナと比べた時に足りないものじゃなくてな? 後半アイドル業に必要なものだしな?」
「カミア、嘘とハッタリ下手でしょ」
「お兄ちゃんが上手過ぎるのぉ! お兄ちゃんには処女懐胎で産まれたって急に言い出しても信用させる力があるし……」
それはカミアが兄に盲目過ぎるだけだろ。
「お兄ちゃんが処女懐胎しても僕そんなに驚かないけど」
なんて真っ直ぐな目で言うんだ、冗談であってくれと祈ってしまうじゃないか。会わなかった期間が長過ぎてカミアの中でのカンナ像が狂ったんじゃないか?
「ぼく処女じゃないよ」
否定するとこそこじゃないだろカンナ。
「あっそっか。みぃくん、ちゃんと認知してね?」
男だからデキないんだってば。
「みぃくん……嫌なら、ぼく一人でも育ててみせる……!」
カンナが悪ノリし始めたな。
「みぃくんお兄ちゃんになんてこと言わせるの! 認知しなさい!」
「みぃくん、に……迷惑は、かけないっ」
「こんなに健気なお兄ちゃんを見ても心を入れ替えられないのみぃくん!」
「しっかりとした演技力で俺をクズ男に仕立て上げる茶番をするのはやめろよぉ! 何にもしてないのに段々なんか罪悪感湧いてきたよ!?」
それまで涙ながらに強い覚悟を語る演技をしていたカンナはくすくすと笑い出した。笑顔のまま俺の頬にキスをして「ごめんね」と首を傾げる。ズルい、こんなことされたら許すしかなくなってしまう。
「……あっ、えへへ……ごめんねみぃくん」
おい今の「あっ」は何だ。カンナの悪ノリにノって段々と冗談だということを忘れてきていたとかそんなのじゃないだろうな。
「はぁ……で? 目隠しして何するんだよ」
「目隠し……? あっ!? そうだった、面白そうな企画考えてきたんだよ」
「企画て」
芸能人だなぁ。いや、配信者っぽいか?
「題して! みぃくんは僕達双子を目隠ししたままでも見分けられるのか~! どんどんぱふぱふー……はい! というわけで今回はね」
配信者っぽいな。
「爪の白斑や歩幅がどうだなんて気持ち悪い観察眼をしているみぃくんは、そんな目を封じられた状態で僕達を区別出来るのか! 完全正当で豪華賞品をプレゼント~!」
「なるほどな。俺はアイマスクして、カンナかカミアからのキスとかを待てばいい訳だ」
「うんうん、触ったら分かるだろうから、手も使っちゃダメだからね」
髪型の違いはもちろん、カンナの爛れた肌の触り心地は独特だ。触れればすぐに分かる。
「了解。じゃ、アイマスク着けてくれよ」
「はーい」
アイマスクが俺の目元を覆う。目を開けても何も見えない、視界が真っ黒だ。
「どう? みぃくん」
「……瞬きすると、なんかガサガサ鳴る」
「睫毛かな? あんまり瞬きしてると抜けちゃうかもだから、閉じておいた方がいいと思うよ」
閉じても開けても視界は同じだ。俺は素直に目を閉じ、カンナとカミアの動きを待った。
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