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ちゃんと出来ない (水月+ヒト・ミタマ・ネザメ・ミフユ・カンナ・ハル)

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ミフユに下品だと言われた気がしたが、サンのスーツ越しの尻肉の弾力や匂いを堪能出来たので問題ない。

「ヌシら三人揃うと圧がすごいのぅ」

「そうですか? まぁ……背が高いので仕方ありませんね」

「みんな怯えとる。愉快な自己紹介でもせぇ、ヌシらはここでは新人なのじゃからな」

「コンちゃんのが新入りじゃん……」

「全員集まるとなると初対面同士も多いね、自己紹介は全員揃ってからにしようよ」

「全員揃ってないんですか? もう随分居ますけど……」

ヒトが辺りを見回す。彼の目を引いたのは歌見だ、正確にはその背後に隠れた可愛い双子。穂張三兄弟の圧に怯えて彼らが入ってきた時からずっと歌見の背に隠れている。ヒトの位置からでは顔が見えないのか、アイドルだと分からないようで特に驚いた様子はない。

「繰言くんがまだだよね。彼……来るよね?」

「確認します…………車酔いで、少し遅れるとのことです」

「おや、心配だね」

よくよく観察してみれば、ハルはシュカの背後に、レイは隅に居る。ミフユがネザメの前に出張っていないのは意外だ、穂張三兄弟を信用しているということだろうか。ヒトとフタとは初対面のはずだから、彼らを選んだ俺を信頼していると考えて自惚れていいのかな?

「先輩やから俺らは繰言先輩と知り合いですし、学校組だけでも先穂張さんらに自己紹介しときましょか」

「後一人は学校の方なんですね。でしたらそうしましょう。あなたには大阪でもお世話になりまして、その際にも思いましたがやはり気が回るお方ですね」

「えー、そうですか? へへ、お褒めの言葉ありがとぉちょうだいしときますわ。ほな俺の自己紹介はええですよね。しぐー、ハルー、とりりーん、自分らさっさと済ませてまい」

シュカの背後に居るハルがビクッと身体を跳ねさせる。シュカは先程からずっとフタを睨んでおり、フタが俺に近付くと今にも飛びかかりそうな姿勢になるので、俺は慌ててフタから距離取らざるを得ない。この自己紹介で少しは警戒が解けてくれるといいのだが。

「時雨、自己紹介だってさ。行っておいで」

「ボクみんな知ってるからいいや。兄貴達聞いといて」

サンが抜け、ふらふらと着いていこうとしたフタの腕をヒトが掴む。190センチ超えの男二人の前に立ち、カンナはウサギのように震えている。

「すいませんヒトさんフタさん、カンナはちょっと気が弱くて。初めての人苦手なんです」

「見れば何となく分かりますよ」

ヒトは身を屈めてくれているが、フタは興味がないのか料理か気になり過ぎるのか、キョロキョロと辺りを見回している。

「カンナ、名前だけでも言えるか? 他のことは俺が全部言ってやるよ」

「……っ、し…………ぐれっ……か……な……ですっ。ょ、ろっ……く、ぉ……が…………しま、す」

「時雨……さんですね? よろしくお願いします」

「カンナは俺が一番最初に口説き落とした子なんです、大人しくて怖がりなので優しくしてあげてくださいね」

ヒトの表情から彼が不機嫌になり始めたことを察する。

「ヒトさんだから言うんです。一番大人で気遣いの出来るすごい人だから、きっとカンナに優しくしてくれるって」

「……! ふふ、信頼してくださっているようで嬉しいです。期待にはお応えしますよ」

よし、機嫌良くなったな。割と簡単なんだよなこの人。フタさんは何も聞いていなさそうだったけど、まぁいいか。

「次、ハルおいで~」

「ぅ……は、はーい」

カンナが歌見の背後に戻る。身体を反らして覗いてみると、カミアに慰められていた。歌見は少し気まずそうだ。入れ替わりにハルが来て、俺の隣に並ぶ。

「……フタ、ちゃんと聞け」

「痛っ、何ぃ~……?」

またふらふらとどこかへ行こうとしたフタの腕をヒトが掴み、引き戻す。フタは不満そうに眉間に皺を寄せたが、俺を見つけるとパァっと笑顔になった。

「……霞染──」

「みつきぃ! 居たんだ~。ここすごいよねぇ、お肉後で焼いてくれるんだってさ。みつきお肉好き?」

「フタぁ……!」
 
「ヒトさん抑えて! ごめんなハル、ちょっと待ってくれ。フタさん、今日は俺の彼氏の誕生日パーティなんです」

「たんじょーび? おめでと~」

「俺じゃなくて、俺の彼氏のネザメさんです」

さっきもこの会話したぞ。

「だから俺の彼氏がいっぱい集まってるんです。初めて会う人も居るので、自己紹介しましょうってなってて。今からハルがするので、聞いてください」

「…………?」

「フタには少し……長いかと」

フタは首を傾げ、ヒトは困ったような顔ですまなさそうに呟く。

「この子誰?」

首を反対側に傾げ、ハルを指す。

「今から言いますから聞いててください! ハル、どうぞ」

「…………霞染 初春です。みっつ……水月とぉ、同じクラスです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。あなたも十二薔薇高校の生徒さん……なんですよね? 男子校と聞いていますが……その」

「ハルは男の子ですよ。俺、男にしか興味ないですし……ハルはファッション的に女子の服に慣れてて、似合うから着てるだけで他は普通に男の子ですし。な、ハル」

「えっ、ぁ、うん。はい……き、気にしないでください。心身共にごく普通の男なので……姉ちゃん三人居るから、ファッション引っ張られちゃっただけで」

「あぁ……失礼しました」

微笑んで軽く頭を下げるヒトの隣、フタは既にこちらを向いてはいない。ハルの名前を聞いてくれただろうか。

「フタ! ちゃんとしなさい!」

ヒトが腕を掴んでいるから歩き回りはしないけれど、辺りを見回したりどこかへ行こうとしたり落ち着きがない。フタに礼儀を期待していた訳じゃないが、豪奢なパーティ会場では悪目立ちしているな。
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