冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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だって、なるもん (〃)

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カサネは部屋に積み重ねられたダンボールの中から開封されている物を選び、中からミネラルウォーターを一つ取り出した。俺が渡された物と同じだ。

「んっ……ん…………はぁっ、ちょっととことん話し合おう。それはそれとして対戦はしよ、ダブルバトルね」

本当に常温派なんだな、とカサネがペットボトルをダンボールの上に乗せるのを見守る。俺は冷えた物しか飲みたくないので、よく分からない感覚だ。しかし俺の分をわざわざ冷やしておいてくれたというのは、とても胸がときめく。

「うし、やりましょ。で、先輩なんて呼ばれたいんです? ステロ撒きまーす」

「ステロやるよなそりゃ……なんて呼ばれたいかって、決めるもんなのか? 普通……俺、今まで友達とか居なかったから分かんないんだけど」

カサネは俺の隣に戻らず、ゲーミングチェアに腰掛けた。対戦ゲームなら相手の手の内が覗ける位置に居ない方がいいし、俺を避けている訳ではないと思いたい。

「……なら俺の距離感がバグってるとか言えないのでは?」

「いや絶対バグってるって他の子なんも言わなかった!? えっちょ……怯んだ!? クソ、お前怯み食らわせんの好きだな……」

友達居ないから距離感がどうとかはよく分からないな。

(…………いつ切り出しましょう。ハーレム作ってることとか、カサネたんも入って欲しいこととか。今話しちゃいましょうか? いえ、もう少し駆け引きを……うーん、でも、脈アリっぽいし、でも脈アリっぽいからこそ今突っ込むのは危ないような。カサネたんにはあんまりこの顔通じてないというか、この顔だからこそスムーズに行けてない感じするというか)

ゲームでの技の選択の悩みに、カサネにいつ告白するかの悩みも重なり、口数が減ってしまう。

「……お前黙ってるとイケメンだな」

「え、喋るとダメです?」

「喋ると残念イケメンだ……ゃ、女にはウケいいかもな、口説いてるみたいなセリフしか吐かねぇし。付き合った後は浮気野郎ってビンタされそうだけど……へへっ」

「…………」

「あ、そういえば彼女居んの? その顔でフリーはないよなって感じと、その顔だからこそフリーで遊んでるのかなって感じもあるし……でも顔抜きで考えると、童貞感すごいんだよなお前」

シュカが未だに俺を童貞扱いしてくるのはからかい半分なところがあると思っていたけれど、知り合ったばかりのカサネにまで言われると本当に童貞臭さが抜け切っていないのではと怖くなってきた。

「居ませんよ、彼女は。女の子にはこれっぽっちも興味ないです」

「あ、そうなの…………ちょっ、おい、待て待て待てそのセリフ吐いた上でジリジリ距離詰めてくんのやめろ」

「どうしてです?」

「ちょっと座れ。正座」

「はい……あっドロポン当てましたね!? クソ……俺がさっき打っただいもんじは二回も外れたのに」

ゲームでは不利になってきた。リアルではどうなんだ? 軽いジャブを打ってみたのだが、カサネにまた正座をさせられてしまった。これはどういうことだろう。

「説教するぞ」

「……俺なんかしました?」

「正直に答えてくれ。ここでの回答は決して誰にも漏らさないと俺はこの地に住まう全ての精霊に誓う」

「は、はぁ……分かりました。正直に……はい」

誓うの、神とかじゃないんだ。

「……お前さ、その……マジな、薔薇の方? 直接的に言うなら……同性愛者、です?」

「…………はい」

「……俺のこと、そういう目で見てる?」

「はい!」

「やっぱりかちくしょう元気な返事やめろっ! はぁあ生まれて初めてモテたのが歳下のデカい男とか……俺の人生どうなってんだ?」

これ、脈アリなんだよな? 雲行きが怪しくなってきた気がする。

「よし、よし……分かった。じゃあ説教、本番だ」

「はい」

「うん……あっ、説教の内容なんだけどな、俺の勝手な考えというか……ちょっとその、差別的なアレかもしんないからぁ……聞きたくなかったらもう俺のこと殴り倒してくれてもいいから」

「……はぁ、まぁ、何言われても殴りはしませんけど」

「あのね……同性愛者ってどうしても少数派なのね? 多数派の可能性のが高い人間にぃ……あんまりその、ガンガンモーションかけてかない方がいいと思うなぁ……お互いのために。来られる側は怖いし……嫌だし……お前も負け確の恋愛して傷付くのはよくないと思うからぁ……」

「…………ゲイはそういうバー行ったり出会い系アプリでも使ってろってことですか?」

「い、いや、そういうつもりじゃ……ぉ、おいっ、正座やめるなって。なんだよ、ぉ、怒った? いや、そのっ、今のはお前が今後嫌な思いしないようにって、俺は誰にも言わないけどこの先お前が明かした相手が言いふらしたりしてお前が傷付けられるかもって! だから、だからっ……やっぱり、殴らないで」

ゲーミングチェアの上でカサネはまた小さく丸まった。彼の前に立った俺は彼の肩に優しく手を置き、さすり、もう片方の手を膝に乗せ、ゆっくりと下ろさせる。

「……やっぱり優しいですね、先輩。ずっと俺が傷付くかどうか気にしてくれてる……この先まで」

優しく、慎重に、丁寧に、でも力づくで、丸まったカサネの身体を開いていく。

「でも先輩、同じ嗜好の人の中だけから好みの人を見つけるなんて消極的なやり方じゃあなたを見つけられなかった。ねぇ先輩……誰しもがみんな自分が何を好きか分かってる訳じゃないでしょう? 今、気付いた。なんてこともあるんじゃないですか? カサネ先輩、新しい扉……俺に開けられちゃったんですよね。ねぇ……答えて先輩。正直に言いますよ、俺。俺カサネ先輩が好きです、友達じゃやだ……」

「…………っ、お前、は……やっぱり、第一印象の通り……なんでも自分の思い通りになると思ってる、横暴なヤツだっ……! でも……仕方ない、よな。なるもん……全部、なんでも、思い通りに」

ぎゅっと力が入ったままだった腕が震えながら伸びていく。俺の首に腕が絡む。

「……責任、取れ。俺の……ダメな扉、開けた責任」

「…………はい!」

「わやにしやがってぇ……これで俺落とせるか仲間内で賭けて遊んでたとかだったら、さ、刺すからな……ひいひい爺ちゃん秘伝のナイフで」

「そんなことしてません! っていうか何ですそのナイフ、ひいひいお爺さんって……錆びずに残ってるならそれもうなんか、しっかりした物じゃないですか。博物館にでも寄贈してください」

途中かなりヒヤヒヤもしたが、結局は上手くいった。カサネの言う通り俺は何でも俺の思い通りになると思ってしまっているのかもしれない、でもカサネの言う通り仕方ないんだ。だって、なるんだもん。
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