冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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開いちゃいけない扉 (〃)

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想像以上にカサネはひねくれている。少々おふざけ混じりだったのは認めるが、好意をここまで悪いように取られると腹が立つ。

「んだよっ、逆ギレしやがって……か、顔がいいからって何でもかんでも思い通りになると思うなよっ! ぉ、俺は騙されないからな、お前に弄ばれたりしないっ! 帰れ、よ…………メ、メッセで言ってたよな、嫌になったらいつでも帰れって言っていいって! 嫌になった! 帰れよ!」

「……言っていいとは送りましたけどそう言ったら帰るなんて俺一言も言ってませんよね」

「はぁ!? 屁理屈こねやがって!」

「ちょっと落ち着いてくださいよ、話し合いましょう?」

「うるさい! お前みたいなイケメンと話すことなんか何もない!」

「イケメンに何されたって言うんですか! なんでそんなに顔がいい男が嫌なんです、先輩だって結構カッコイイのに! 先輩言ってくれたじゃないですか、この顔の気苦労とか語っても自慢としか取らないようなヤツは客観視が出来ない、想像力のないヤツだって……あの時俺、すごく嬉しかったんですよ」

「……な、なんだよ……よく覚えてるな」

「嬉しかったから覚えてるんです。俺が人褒めても嫌味としか取られないって、そういうの苦労してるんだなって……そう言ってくれたあなたは、他人の立場に立ってものを考えられる、すごく優しい人なんだって……そう、思ったのに。今は……イケメンは仲間になれないとか、嘘つくとか、そんなことばっかり」

「…………」

「あなたは俺のことちゃんと見てくれてるんだって感じたのは、ただの勘違いだったんですか? 仲良くなれると思ってたのには俺のセリフですよ」

「な、なんだよ……被害者ぶった顔しやがって。お前がっ! お前が先にっ……俺のことからかって!」

「からかってません! 急に距離詰め過ぎたのは認めます、でも! 俺は何も嘘なんか言ってない!」

「い、言っただろっ! 俺に好かれたいとかっ……!」

「好かれたいですよ! 前からそう言ってるじゃないですか……! 俺、先輩と仲良くなりたいんです。言ったでしょ? 俺、趣味合う人居ないんです」

「…………ほ、本当に、からかってるんじゃないのか?」

今度はひねくれた決め付けの前フリではなさそうだ。ようやく好意が伝わった喜びで顔を緩めながら大きく頷いた。

「あの、イケメン連中と……俺のこと笑ったり、しないな?」

「しませんし、そんな子達じゃないです」

「……財布扱いも、しない?」

「しませんよ。先輩外に出るの嫌いっぽいから今後も家にお邪魔しようと思ってるんですよ」

「…………別に嫌いじゃない。苦手なだけだ」

「そうなんですか。あ、お散歩行ってるとか言ってましたよね。今度ぜひご一緒させてくださいよ」

「……うん」

見当違いの怒りは冷めたようだ。嫌われずに済んだのかな?

「そう……だよ、な。お前、ほんと話合うもん……対戦も、一回しか出来なかったけど結構楽しくて……フランクのことも、分かってくれて。お前は間違いなく俺と同じ趣味の人間だ。悪かったよ…………僻みとかじゃないんだっ、ただ……俺に好かれたいってのが、分かんなくて、今も理解出来てなくて」

「……趣味が合う人と仲良くしたい、その人に好かれたいってのは、ごく自然なことだと思うんですけど」

「………………お前さ、普段からあんな態度なの?」

「えっと、それは……どういう意味ですか?」

カサネの声が僅かに怒気を孕んでいる気がする。また怒らせたのか? 何故? 俺と同じタイプのオタクだと思っていたけれど、全然違う。早急に認識を改めてカサネ専用の会話パターンを脳内に組み上げなければ。

「……キュンときたかとか、好きな人に好かれたいとか、普段から言ってんのかって」

「はぁ……まぁ……」

「ほら、生徒会長室に集めてたあのイケメン共……アイツらにも、そういう態度取ってんの? いや取ってたな!? そういえばなんかメカクレのヤツにギャンかわとか天使とか……! お前やっぱり常時口説きモードなのか!? 十二薔薇だからって薔薇薔薇してんじゃねぇぞ!」

確かに俺は薔薇園を作り上げてはいるが。

「はぁあ……そういうことか納得したわ。ちょっと座れお前、正座。人生の先輩カサネさんが説教してやる」

さっき人生経験浅いとか言ってたのはどこのどいつだ。

「いいか鳴雷 水月……自覚あるかどうかは知らないけどなぁっ、いや多分ないんだろうな……お前、全てのセリフが口説いてるように聞こえるんだよ!」

口説いてるもん。

「孕ませボイスとか言っちゃったのは俺が悪かったよ!? でもそれは客観的意見と言うか、俗に言う耳が孕む声なのは事実じゃん! 普通はなぁ、好かれたいとか好きな人とか好きになって欲しいとか言わないっ……すっ、好きとかなぁっ! ぽんぽん言わないんだよ普通は!」

「……そんなこと気にしちゃうのは先輩が俺のこと意識してるからでは?」

「はぁーっ!? ほらまたそういうこと言う! やめろよお前イケメンなんだから! 軽率に俺のっ、俺のなんか、開けちゃいけない扉開こうとするな!」

脈アリだな。開けちゃいけない扉とやらを自覚した時にはもう、その扉は開いているんだ。

「普通とか語らないでくださいよ、どうだっていいでしょう? そんな基準のないあやふやなもの気にしたってどうしようもない。開けちゃいましょ、その扉」

「わーっ!? 正座崩すなバカこっち来んな顔近付けんなぁっ! お前自分の顔の威力自覚しろよ! 罪の意識を持て! ひぃい触るなっ! 開く! 開いちゃうからぁっ! 閉めさせろバカ!」

先程までとは違い、触るなと叫ばれながら手を払われても悲しくない。でも、そろそろ引かないとまずいかな? また同じ轍を踏んでしまいそうだ。

「はぁ、はぁっ……わやんなる、全部わやんなるべ……イケメン怖い……怖いぃ……」

ベッドの上で小さく丸まって、目の辺りまで伸びたツートンカラーの髪で赤くなった頬をチラチラ隠して、俺を見たり慌てて目を逸らしたり……あぁ、たまらない。

「先輩可愛い……」

「はぁ!? や、やっぱりからかって……!? お、おい、何腕掴んでんだよ……」

「ちょっとだけ、ちょっとだけですから」

「何がだよ!?」

「ちょっとだけ……」

どうしても我慢が出来なくなった俺は丸まったカサネの身体を強引に開き、無理矢理抱き締めた。

「あぁ……! ほっそい、肉ない、可愛い~! ギャンかわですぞカサネたん!」

「な、なんなのお前……」

「…………ふぅ。ゲームしましょっか、何します? 俺ダブルバトルしたいです」

「いやいやいや無理無理無理何その切り替え」

「カサネたんは俺の膝の上でプレイしましょうね」

「切り替えてなかった! カサネたんやめろっ! 下ろせバカ!」

無理矢理乗せてみたけれど、カサネは俺の膝から転がり落ちた。ベッドの上だからって激しく動くじゃないか。

「……だって先輩、呼び方選ばなかったじゃないですか」

「だっ、だからって、カサネたんはないだろカサネたんは! ぁあぁ自分で言ってて寒気してきたキモいキモいキモい無理無理無理無理無理……」

「じゃあなんて呼んで欲しいんですか」

「なんでお前ちょっと怒ってんの……? 怒ってんの俺よ!? 距離感バグ自覚しろっつってんの! 修正パッチはよ! あー、もう……ちょっと待ってろ、喉乾いた」

ベッドから立ち上がるカサネを見送り、彼の耳が真っ赤になっていることにほくそ笑んだ。
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