冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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目覚ましパンチ (〃)

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多分、夜が明けても俺の腰は止まらなかったと思う。思う、と言うのはいつの間にか寝てしまっていていつまでセックスをしていたか分からないからだ。フタのスマホのアラームで目が覚めた。アラームのタイトルは「あさめし」だ。フタは俺の隣でぐっすり眠っていて起きる気配がない。

「やっべぇなぁ……」

腰が痛い。起き上がれない。精液臭い。シーツの半分以上の面積がカピカピしている。この腰痛の中身体やシーツを洗うのは、考えただけで憂鬱だ。もう一度眠ってしまおうか、目が覚めたらきっと全部綺麗になっている。

「………………痛っ!?」

顔を叩かれ、飛び起きる。目の前にはモッフモフの猫、尻尾が二本に分かれ始めている猫はじっと俺を見つめている。

「えっと……イチニィミィちゃんのどれか、だよね。起こしてくれたの? ありがとう」

ちょっとデカめの猫の渾身猫パンチ、かなり痛い。

「ん~……痛い~……」

フタは何かを払うように手を振った後、ベッドに顔を埋めた。おそらく俺と同じように叩かれているのだろう、俺には見えないけれど。

「あれ……」

俺を起こしたモフモフおキャット様の姿が見えない。本当に俺、懐かれていないんだな。

「何からしよう……腰痛いしなぁ」

ボーッと扉を見つめていると扉から金髪美少年の頭が生えた。

「ひぃっ!?」

「お、みっちゃん起きとったか。すまんの驚かせて」

ミタマは扉を開けることなく残りの首から下も部屋に入れた。扉を使って出入りして欲しいものだ。

「めちゃくちゃびっくりしたよ……」

「そろそろ腹減らんのか?」

「……腰、痛いんだ」

「昨日はお楽しみじゃったからのぅ、くふふふふ……では、ワシらも朝支度を手伝ってやろうぞ。ふむ……」

ミタマは両手ともで狐を作り、重ねて開いた。狐の窓、とかいう手遊び? 手印? だ。

「……きてますなのじゃ、きてますなのじゃ」

「古いよ……」

「占いの結果! みっちゃんが一番助かるのはしぃつの洗浄をやってやることなのじゃ!」

「まぁ、確かに」

それ以外ないだろ。風呂の介助? 流石にそこまで足腰が立たなくなってはいない。

「さっちゃんおいで、猫ちゃん達もじゃ。ほれほれ立つのじゃ、起きんかふーちゃん。しぃつ剥がすぞい」

猫の霊達とミタマに執拗に肩を揺さぶられ、ようやく起き上がったフタは床に降り、崩れ落ち、寝息を立て始めた。

「……しぃつ、洗うぞいさっちゃん。猫ちゃん達もふみふみしとくれ」

フタを見下ろすミタマの細い瞳は呆れの色に染まっていた。

「フタさん、フタさん、起きてください」

「ん~……」

寝起きが悪いなぁ、なんてフタを寝かせなかった俺が言っていいことじゃない。

「くっ……! おも、いっ、むり……」

俺よりも背が高い上にガタイもいいフタを、腰が痛い今運ぶことは不可能だ。

「どうしよ…………あっ」

今、とてつもなく自己肯定感が高いアイディアが浮かんだ。俺はこんなにも自惚れていたのかと恥ずかしくなったが、他に何も思い付かないので恥ずかしいこれを試すしかない。

「…………」

ダメ元だダメ元。成功するなんて思ってない、俺はそこまで自惚れていない。

「……ぅ、うええん……ひっくひっくー……ぐすん。うえーん」

泣き真似だ。フタはは俺が泣いていると彼がどんな状況にあっても俺を泣き止ませることを最優先してきた、眠気より優先してくれるかな、なんて、そんな自惚れたこと本気で思った訳じゃないけど。

「………………ハッ!? み、みつきっ? みつきどこ……あっ、みつき! みつきどったの? みつきぃ……あれ、泣いてない…………泣いてると思ったんだけど……あれぇ?」

「フタさん……!」

「気のせいかぁ……ん? なんか、お尻ヒリヒリする。まぁいいや」

完全に目が覚めたらしいフタは立ち上がろうとし、膝が勝手に曲がったような倒れ方をし、支えようとしたものの力が足りなかった俺を下敷きにした。

「痛た……ぁーごめぇんみつき」

「いえ、ご褒美です」

倒れてきたフタの胸と俺の顔がぶつかった。屈強な胸筋とぶつかった鼻はかなり痛いが、胸に顔が押し潰されたのはたまらなかった。

「肩貸しますよ」

俺はフタに肩を貸し、ゆっくりと浴室へ向かった。しかし浴室では今ミタマ達がシーツを洗ってくれている。

「む……ワシらは透けとくから、しぃつ踏んで滑って転ぶような真似をせんようにだけ気ぃ付けとけばええぞ。早う身体清めるがええ」

「ありがとうコンちゃん、お言葉に甘えさせてもらうね」

にっこりと笑うとミタマの姿は見えなくなった。しかしシーツは微妙に動いている。俺達はシーツを出来る限り踏まないよう気を付けてシャワーを浴びた。

「なんか尻からめっちゃ白いの出てくるんだけどぉ……こっから出るのって茶色のじゃなかった? なんだろ、膿かな……病気なのかなぁ、俺」

「いえいえ、病気じゃないですよ。恋人と寝るとそうなるんです」

「……みつきも?」

「どっちかだけなんです」

別に嘘をついている訳じゃないのに、なんだか罪悪感がある。

「でも、掻き出さないとお腹痛くなっちゃうので、頑張ってひり出しましょうね」

「ん~……」

昨晩の様子からも危惧していたことは現実になった。フタは掻き出している最中ずっと「気持ち悪い」「嫌だ」「もういい」と嫌がり続けた。

「もぉ尻やだぁ~……やめよ~?」

記憶力が悪いということは、嫌がったけれど続行されたという記憶も保てないということで、嫌がることの無意味さを学習してくれないという訳で……そう、フタは掻き出し終えるまでずっとやんわりと駄々をこね続けたのだ。可愛く思うにも限度がある、何度投げ出そうとしたか分からない。やりきった俺を誰か褒めて欲しい。

「そうだ……! フタさん、褒めてください」

「なんでぇ?」

「俺、頑張ったので!」

「そっかぁ、がんばったかぁ。えらいねぇみつき、すごいすごい。よくがんばれたね、ゆっくり休んでね」

これでよし。
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