冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
上 下
1,323 / 2,054

身代わり人形ver2

しおりを挟む
ミタマの自己紹介を聞いたシュカは「胡散臭い」と呟いた。流石のシュカでも初対面でいきなり悪口を言うとは考えにくい。思わず、不意に、本音が漏れてしまっただけだろう。

(だからこそコンたそが可哀想なんですけどな! どうしてこんなに胡散臭い顔してるんでそ)

自在に化けられるのならもう少し人相を工夫すればいいのに。

「鳥待 首夏です……よろしくお願いします」

「うむ、礼儀正しい子じゃのう。めんこいめんこい」

「ちょっと、何なんですか……触らないでください」

わしゃわしゃと頭を撫で回されたシュカは心底不愉快そうにミタマの手を払う。シュカは髪の毛を整えながらミタマを睨み付け、俺の後ろに回った。

「水月、何なんですかこの人」

「出会いの詳細はまた今度話すよ、談話スペースって言っても一応ここ図書館だしな」

「……そうですか」

馴れ初めには興味ありませんとでも言うように、シュカは無表情に戻ると席に着いてノートパソコンを開いた。

「みんな触ると嫌がるのぅ……あっちゃんは喜びょんのにのぅ……」

可哀想にミタマは落ち込んでいる。

「コンちゃん結構スキンシップ多めなタイプなんだね~」

「はーちゃんは受けれてくれるたいぷかの?」

「ん~……コンちゃん結構ゴツいし、激しいのは嫌かな~。手とかならいいけどね~」

ハルは男らしい体格の男が苦手だ。ミタマは俺よりほんの少し細身なだけ、あの程度なら男性恐怖症のストライクゾーンに入っているのだろう。

「しぐは仲良くなれば結構許してくれるよ。頭は絶対ダメだけど! あと~……りゅーはスキンシップよさそうだけど~? ねっ、りゅー」

「……あぁ」

「なんかさっきから元気なくない? どったの?」

「いや……」

「…………! おい、リュウ。ちょっとツラ貸せ」

ある可能性にようやく気が付いた俺はリュウを呼び付けた。素直に着いてくるリュウを俺はあまり人気のない本棚の影に誘導した。

「リュウ、どうした? 何か気付いたことや気になることがあるならハッキリ言ってくれていいぞ」

「……体調とか聞けへんっちゅうことは、水月は分かってて連れとるっちゅうことでええんやんな? あの、ミタマとか言うん……アレ、なんなん?」

ミタマと顔を合わせてからリュウの様子はおかしくなった。やはりミタマの正体に薄々気が付いていたのだ。

「神さんと似ぃたような気配するんやけど……氏神さんやらに比べたら格落ちするっちゅうか、妖怪っぽさもあるっちゅうか……なんや、不気味やねんなぁ、あの気配」

「……付喪神だよ。京都でハルと行った稲荷神社の狛犬ならぬ狛狐の像の首が取れてて、修理を手伝ったら気に入られてな。超好みの美少年に変身してきたから思わず口説いたら、東京まで着いてきてくれたんだよ」

「付喪神……! なるほど……妖狐イメージで自己形成しとるんやね。せやから妖怪感あるんや、あの不気味さ胡散臭さ……狛犬の付喪神やったらもうちょい清廉な感じやったんやろうなぁ」

「犬と狐ってそんなに変わるのか」

「古今東西色んな昔話で狐はずる賢い生きもん言われとるからなぁ、そういう伝承……人間のイメージ、想像に引っ張られるんやろ」

「俺は狐はエロい生き物だと思ってる」

「知らんわ。はぁ……またよぉ分からんもん拾てきて。付喪神、付喪神なぁ……まぁ、神隠し出来るほどの力もあれへんやろし、警戒せんでもええな。せや水月、身代わり人形作ったったやろ」

「あぁ、肌身離さず持ち歩いてるよ。一週間が限度とか言ってたけど……そろそろヤバそうか?」

「逆や。さっき見た感じ身代わり人形のパワーが減ってへん、っちゅうか……補充されとる言うた方がええか。心当たりあれへんか?」

身代わり人形について知っているのは俺だけだし、俺は何もしていない。そういえば、ミタマと初めて出会った時身代わり人形に言及された覚えがある。

「コンちゃんは人形の存在察知してるみたいだったけど」

「ほな補充してくれはったんかな」

「そうなのかな? 後で聞いてみるよ。じゃあ新しいの要らないってことか?」

「せやなぁ、せやけど……デカいやろアレ。俺あの後神さんに相談してなぁ、改良して……ちょっとデカいストラップくらいのサイズダウンに成功したんよ」

リュウは両手で握られるくらいの大きさの、パンッパンの人型のぬいぐるみを俺に見せた。

「背中ちょっと縫ってへんとこあるから、こっから髪と爪入れて縫い直したら完成や」

「パンッパンだな」

「小さくても効力が落ちん秘密でいっぱいなんや。神秘と数学のマリアージュやで」

「ありがとうな、俺のために頑張ってくれて。めちゃくちゃ嬉しいよ、今度お礼する」

「ぁ……ほな、やりたいプレイあるんやけど……」

「あぁ、アザが出来なくて血が出ないなら何でもやってやるよ」

抱き締めて額にキスをし、感謝を示す。

「しっかしこのサイズ鞄に付けたら古のギャルって感じだな。でも白くてつんつるてんで初期スキン感あるデザインはマスコットっぽくないし…………これ服着せたりして大丈夫か?」

「ええけど、へのへのもへじは消さんでな」

「へのへのもへじ……あぁ、この顔な。この上に何か被せるのもアウト?」

「セーフや。人形に針と糸新しく通さんのやったら何しても大丈夫やで」

かなり改造出来そうだな、不気味な人形をぶら下げているよりも可愛いマスコットをぶら下げている方がまだ目立たないだろう。

「コンちゃんが補充してくれはったんやったらもう三個目四個目は要らんな。後で聞いて、補充してくれてはっとったら今後も頼んどくんやで」

「あぁ、そうするよ。ありがとうなホント……」

器用な彼の指には傷跡という証拠こそないが、針仕事を頑張ったのだろうその指を唇で労った。
しおりを挟む
感想 469

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...