冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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身代わり人形ver2

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ミタマの自己紹介を聞いたシュカは「胡散臭い」と呟いた。流石のシュカでも初対面でいきなり悪口を言うとは考えにくい。思わず、不意に、本音が漏れてしまっただけだろう。

(だからこそコンたそが可哀想なんですけどな! どうしてこんなに胡散臭い顔してるんでそ)

自在に化けられるのならもう少し人相を工夫すればいいのに。

「鳥待 首夏です……よろしくお願いします」

「うむ、礼儀正しい子じゃのう。めんこいめんこい」

「ちょっと、何なんですか……触らないでください」

わしゃわしゃと頭を撫で回されたシュカは心底不愉快そうにミタマの手を払う。シュカは髪の毛を整えながらミタマを睨み付け、俺の後ろに回った。

「水月、何なんですかこの人」

「出会いの詳細はまた今度話すよ、談話スペースって言っても一応ここ図書館だしな」

「……そうですか」

馴れ初めには興味ありませんとでも言うように、シュカは無表情に戻ると席に着いてノートパソコンを開いた。

「みんな触ると嫌がるのぅ……あっちゃんは喜びょんのにのぅ……」

可哀想にミタマは落ち込んでいる。

「コンちゃん結構スキンシップ多めなタイプなんだね~」

「はーちゃんは受けれてくれるたいぷかの?」

「ん~……コンちゃん結構ゴツいし、激しいのは嫌かな~。手とかならいいけどね~」

ハルは男らしい体格の男が苦手だ。ミタマは俺よりほんの少し細身なだけ、あの程度なら男性恐怖症のストライクゾーンに入っているのだろう。

「しぐは仲良くなれば結構許してくれるよ。頭は絶対ダメだけど! あと~……りゅーはスキンシップよさそうだけど~? ねっ、りゅー」

「……あぁ」

「なんかさっきから元気なくない? どったの?」

「いや……」

「…………! おい、リュウ。ちょっとツラ貸せ」

ある可能性にようやく気が付いた俺はリュウを呼び付けた。素直に着いてくるリュウを俺はあまり人気のない本棚の影に誘導した。

「リュウ、どうした? 何か気付いたことや気になることがあるならハッキリ言ってくれていいぞ」

「……体調とか聞けへんっちゅうことは、水月は分かってて連れとるっちゅうことでええんやんな? あの、ミタマとか言うん……アレ、なんなん?」

ミタマと顔を合わせてからリュウの様子はおかしくなった。やはりミタマの正体に薄々気が付いていたのだ。

「神さんと似ぃたような気配するんやけど……氏神さんやらに比べたら格落ちするっちゅうか、妖怪っぽさもあるっちゅうか……なんや、不気味やねんなぁ、あの気配」

「……付喪神だよ。京都でハルと行った稲荷神社の狛犬ならぬ狛狐の像の首が取れてて、修理を手伝ったら気に入られてな。超好みの美少年に変身してきたから思わず口説いたら、東京まで着いてきてくれたんだよ」

「付喪神……! なるほど……妖狐イメージで自己形成しとるんやね。せやから妖怪感あるんや、あの不気味さ胡散臭さ……狛犬の付喪神やったらもうちょい清廉な感じやったんやろうなぁ」

「犬と狐ってそんなに変わるのか」

「古今東西色んな昔話で狐はずる賢い生きもん言われとるからなぁ、そういう伝承……人間のイメージ、想像に引っ張られるんやろ」

「俺は狐はエロい生き物だと思ってる」

「知らんわ。はぁ……またよぉ分からんもん拾てきて。付喪神、付喪神なぁ……まぁ、神隠し出来るほどの力もあれへんやろし、警戒せんでもええな。せや水月、身代わり人形作ったったやろ」

「あぁ、肌身離さず持ち歩いてるよ。一週間が限度とか言ってたけど……そろそろヤバそうか?」

「逆や。さっき見た感じ身代わり人形のパワーが減ってへん、っちゅうか……補充されとる言うた方がええか。心当たりあれへんか?」

身代わり人形について知っているのは俺だけだし、俺は何もしていない。そういえば、ミタマと初めて出会った時身代わり人形に言及された覚えがある。

「コンちゃんは人形の存在察知してるみたいだったけど」

「ほな補充してくれはったんかな」

「そうなのかな? 後で聞いてみるよ。じゃあ新しいの要らないってことか?」

「せやなぁ、せやけど……デカいやろアレ。俺あの後神さんに相談してなぁ、改良して……ちょっとデカいストラップくらいのサイズダウンに成功したんよ」

リュウは両手で握られるくらいの大きさの、パンッパンの人型のぬいぐるみを俺に見せた。

「背中ちょっと縫ってへんとこあるから、こっから髪と爪入れて縫い直したら完成や」

「パンッパンだな」

「小さくても効力が落ちん秘密でいっぱいなんや。神秘と数学のマリアージュやで」

「ありがとうな、俺のために頑張ってくれて。めちゃくちゃ嬉しいよ、今度お礼する」

「ぁ……ほな、やりたいプレイあるんやけど……」

「あぁ、アザが出来なくて血が出ないなら何でもやってやるよ」

抱き締めて額にキスをし、感謝を示す。

「しっかしこのサイズ鞄に付けたら古のギャルって感じだな。でも白くてつんつるてんで初期スキン感あるデザインはマスコットっぽくないし…………これ服着せたりして大丈夫か?」

「ええけど、へのへのもへじは消さんでな」

「へのへのもへじ……あぁ、この顔な。この上に何か被せるのもアウト?」

「セーフや。人形に針と糸新しく通さんのやったら何しても大丈夫やで」

かなり改造出来そうだな、不気味な人形をぶら下げているよりも可愛いマスコットをぶら下げている方がまだ目立たないだろう。

「コンちゃんが補充してくれはったんやったらもう三個目四個目は要らんな。後で聞いて、補充してくれてはっとったら今後も頼んどくんやで」

「あぁ、そうするよ。ありがとうなホント……」

器用な彼の指には傷跡という証拠こそないが、針仕事を頑張ったのだろうその指を唇で労った。
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