冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,299 / 2,304

大切なのは学歴

しおりを挟む
いつもやっている皿洗いを終わらせただけなのに、レイが俺の腕を揉んでくれている。

「ありがとうな、レイ。でももういいよ、売れっ子イラストレーターの指をこれ以上浪費させるのは申し訳ない」

「浪費なんかじゃないっすよ、正しい使い道っす」

「ほんっとにもう、レイは……」

「そういえばせんぱい、夏休みそろそろ終わりっすよね。宿題ちゃんと終わらせたっすか?」

「……嫌なこと思い出させるなよ」

「やなことってせんぱい、せんぱい委員長なんすよね。ちゃんとやらないと普通よりカッコ悪いっすよ」

正論だ。だからといって俺のやる気が出る訳ではない。

「一学期の総復習テストはセイカに教えてもらったりしてどうにか終わらせたけど、問題はアナログの方の課題なんだよなぁ。読書感想文とか、自由研究とか、日記とか……」

「せんぱいの夏休みは日記のネタの宝庫じゃないすか。旅行二回もしたんすから」

「それはそうなんだけどさぁ……やったの乱交だぞ?」

「ビーチバレーの話でも書いときゃいいんすよ。近畿の方は何したんすか?」

リュウとヤったり、不倫を始めたり、女の子二人に腕を抱かれたりした。そんなこと書いたら職員室に呼び出されてしまう。

「グルメ旅行でしたよね、鳴雷さん」

「そうなんすか」

「ええ、天正さんに案内していただいて、ソース系のB級グルメとフグ鍋を……」

「すごいじゃないすか! 羨ましいっす、それ書けばいいんすよぉ。読んだ先生が次の休みに大阪行っちゃうようなの書くんすよ!」

「ビーチバレーをしました、楽しかったです。フグを食べました、美味しかったです。で終わりだよ。文才ないもん俺」

「もぉ~! 小学生だってもっとマシな文書くっすよ!」

好きなアニメの感想や考察なら何百文字でも書ける、SNSでそれを書き散らすだけで今や数万のフォロワーが居るのだから、文才は一応あるような……いや、うーん……情熱で集めたって言うか、他の人の意見聞きたくて相互になった人も多いって言うか、ワンクールごとにアカウント変えるタイプの人も多くて今は動いてないアカウントが大半って言うか……

「鳴雷さんって頭悪いんですか?」

「なんてド直球にものを言うんですか! ヒトさん!」

「私、バカが一番嫌いなので……」

「鳴雷は十二薔薇に合格してるんだ、鳴雷でバカならこの世の九割の人間はバカだぞ」

「十二薔薇……! 名だたる重鎮がそこに息子を入れたがる、高潔で聡明な男子だけが入学を許される日本最後の花園……素晴らしい、結婚してください」

「してるでしょ! もぉ……セイカも編入予定だし、リュウも、他の彼氏だって十二薔薇ですよ。それに偏差値だって七十はない……よな?」

「こないだ見た時は六十後半だった」

「女子校は花園ってよく言うっすけど男子校はあんまり言わないっすよ」

「え、ゲームとかでよく見るけど」

「BLゲームの常識を持ち出さないで欲しいっす」

しかし十二薔薇がそんなふうに言われているとは……授業中に寝ているリュウや、授業中にメイク直しをするハルや、元ヤンのシュカだとかが居るからあまりそんな気がしていなかったけれど、そういえばクラスメイトにも上品でおっとりとしたネザメタイプが多かった。

(共学でないと男子校も女子校も動物園になるとはよく言われたもんですが、十二薔薇はそうでもないんですよな。多少騒いでる生徒達も予鈴でキビキビ動いてますし)

俺は十二薔薇普通から大きく外れた者ばかりを彼氏にしてきたのかもしれない。

「あなたも十二薔薇なんですか?」

「あ、うん……二学期からだけど」

「秋風さんも?」

「こいつはまだ歳的には中学生だけど……小学校中退って感じかな。体質的に虐められやすくてさ。地頭は悪くないんだけど勉強する気はないから、多分入れないよ」

「なんだ……あなたは?」

「俺は高校中退っす。今は高卒資格だけ取ろうと思ってオンラインでやり直してるんすけど」

「ふーん……」

露骨だな。ヤクザのトップのくせして学歴重視タイプだったのか。

「やっぱり私には鳴雷さんしか居ませんね。ぜひその卓越した頭脳で作り上げた文が読んでみたい、早く日記と読書感想文仕上げてください」

「言われなくてもやりますけどぉ……今日何日だっけ?」

「二十八、あと三時間ちょっとで二十九っすね」

「三十一日までに自由度高めの課題を仕上げるのかぁ……はぁあ……自主性のない俺には辛いよ」

「ハーレム主に自主性なかったら誰に自主性あるって言うんすか」

「……ハーレム系漫画の主人公って没個性的だろ」

「自主性のない人間に魅力はないっす、せんぱいはとっても魅力的だから俺達は惚れてるんすよ!」

「俺の魅力なんか顔だけだろ」

課題に追われて落ち込んで、沈んだ気分のまま俺は拗ねた台詞を吐いた。レイからの返事がないことを不思議に思って顔を上げると、彼は拳を強く握って涙目になっていた。

「せんぱいのバカ! もう知らないっす、宿題忘れて委員長クビになっちゃえばいいんす! うわぁーんアキくぅーん!」

《っと、よしよし……ハハっ、モテモテだぜ》

ヒトの腕を片手で揉みつつ、もう片方の手でレイの肩を抱き、親しげにセイカに話しかける。あれ? ハーレム主ってアキの方だっけ? 顔的には違和感ないな。

「はぁ……鳴雷はホント顔以外に自信ないよなぁ」

「そうなんですか。あの顔で顔に自信がないと言われるとぶん殴りたくなりますが、だけとなると哀れですね。あれ、でも……十二薔薇に入っているのなら頭脳はかなりのものでは?」

「同じクラスの彼氏がアイツより賢いからかな」

「俺はっ、俺はぁ……ボロボロになってもくーちゃんから俺を取り返してくれた、せんぱいがっ……好き、でぇ……そりゃ始まりは顔だったけど! すぐに……優しさが分かって、すごく大事にしてくれて……だからぁ……俺は」

「な、泣くなよレイ……ごめん、軽い気持ちで言っちゃって」

自分が愛している相手が自分を卑下していたら、傷付くし腹が立つ。愛おしい人が自分を低く見ているのは単純に悲しいし、自分の見る目まで否定されているような気になる。それはよく分かる、だから俺は心底から謝罪した。

「そうだぞ木芽。そんなことないよ、の返事が欲しかっただけだコイツは」

「え? いや、本心は本心なんだけど……優しいとかって、それはほら、レイがあんなもんと付き合ってたからであって、俺の優しさは普通だと思う」

「せんぱいのばかぁ!」

「ヒトさん、ヤクザなら躾とかに詳しい? この底抜けの善人に自分を正しく見つめられる目を習得させられない?」

「私が出来るのはバカを大人しくさせることだけです……」

「え、えぇ……? いや、だってさぁ……そりゃ十二薔薇入ったのは世間的にはなかなかのことなんだろうけど、俺より頭いいのなんか山ほど居るし、性格だって本当なら一途な人が評価されるべきだし、運動神経も大したことないし、陰キャだし……顔だけだろ、俺」

「ミツキのバカ!」

「痛っ!? なっ、何、今頭叩かれたんだけど!」

「……怒りで一瞬だけ実体化してしまったようだ。酷く疲れた……ミツキのせいだ」

「頭叩かれたのに何か悪いことにされた!」

加害について訴えたが俺以外の誰にもサキヒコの声は聞こえていない上に、俺の背後に一瞬だけ現れたはずの彼の姿も見えていなかったらしく、俺は三人から「何言ってんだコイツ」と言う目で見られてしまった。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...