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一週間の御奉仕
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母の予想通りの要求に、一番に反対したのは義母だった。
「ダメダメダメダメ絶対ダメぇっ! 知ってるんだから、アンタがド変態って唯乃に聞いてるんだから! どうしてクソ男から逃げてきたのにまたクソ男のところにアキをやらなきゃいけないのよ!」
「うるっさ……ぁー、俺女性のそういう声嫌いなんですよねぇ……」
「アキを一週間借りて何をするつもりなの?」
「ナニよナニ! 一週間じっくりたっぷりアキをしゃぶりつくすつもりなんでしょこの変態!」
そういう妄想を始めてしまったのに陰茎がピクリとも反応しない。ミタマに二日分の精力を吸い尽くされたというのは事実のようだ……精力を吸い尽くすって言うとちょっとエロいな。
「メイド服を着せて御奉仕させます」
「母さんすごいね……内容も期間もバッチリ言い当ててる」
「コイツが秘書見習いの頃からの付き合いだからね」
「メイド服を着せて御奉仕させるだけです、やましいことなんてありませんよ」
「メイド服を着せて御奉仕って文言が既にやましいでしょうが!」
「……あなたが想像しているような下品な真似はしないと言ってるんです。心配なら貞操帯でも着けさせればいかがです?」
貞操帯を身に付けている、メイド服姿のアキ……!
「せんぱい何ニヤニヤしてるんすか」
「い、いや……」
「分かりました。御奉仕は会社内でのみと限定しましょう、心配なら唯乃さんがずっと監視していればいい……どうですか?」
「ダ! メ! って最初っから言ってるでしょ!」
喚いているのは義母だけで、母は真剣に悩んでいるらしくアキの方をチラチラと見ている。
「葉子……ちょっと黙って。手を出さないって意味ではコイツは一応信用出来るのよ。貞操帯着けてるのだってアンタの方でしょ?」
「……人の下着を言い当てるなんて、無礼な人ですね」
「こんな弱小ヤクザのボスぶって何がしたいの? アンタは社長の犬でしょ? 偉ぶるのも大物ぶるのもいい加減にしなさいよ、いつもみたいに必死こいて人間様の言うこと聞いてりゃいいのよ、バカ犬なんだから」
「前戯、ですよ」
ボスは余裕を崩さずにっこりと微笑んでそう言った。
「俺に絶対服従のチンピラ共……仔犬を集めて野良犬の王様になって、いい気になって調子こいて、自分が何より偉いんだと勘違いした犬が、人間様に上下関係を叩き込まれクンクン媚びるだけの飼い犬になる……それが何より気持ちいい。勝手な早退に無理な休日、ご主人様はきっと俺をこっ酷く躾けてくださる……! 想像しただけで濡れちゃいますね」
ボスの指は彼自身のチョーカーを、赤い首輪を愛おしそうに撫でている。
「ちなみに……俺が何よりも嫌いなのは、ご主人様以外に犬扱いされることなんですよねぇ」
鋭い視線が母を射抜く。
「何が人間様だ。俺は犬、俺の手下は仔犬、アルビノの生物は愛玩動物。可愛い可愛いおとーとの國行に、愛しい妻。そして俺のご主人様、その血族の方々……その方々こそが人間様。それ以外の生命体なんざ羽虫ほどの価値もねぇんだよゴミカス共が。顔も名前もハッキリしねぇてめぇらが國行に怪我させたんだ、愛玩動物くらいスっと提供しやがれ」
「…………アキをメイドに寄越せって言ってきたって、社長に告げ口してあげましょうか?」
「どうぞ」
「あら、焦らないのね……困ったわ。ふふ……本当に困ったわ…………葉子、アキの貞操は私が保証するからアキの貸し出し許可してくれない?」
母でも打開策が思い付かないのか……
「……あ、あのー、俺がヅラ被ってカラコン入れて、メイド服着るとかはダメですか?」
「は?」
「ごめんなさい……」
「……ふむ、これでよいのじゃな?」
ポンっ、と音を立ててミタマがアキの姿に化ける。その服装は明治大正頃の女給のようなもので、メイド服とは少し違った。でも可愛い。
「ワシが行けばよかろう。のぅ、ゆーちゃんよーちゃん」
「……それ私と葉子のこと?」
「ダ、ダメだってコンちゃん! さっき消されかけたのに……!」
「そりゃ怖いが、話が進まんのじゃろ?」
「コンちゃんが俺の見た目がアキに見える幻術とかを使えば解決だよ!」
「んなもん使えん……」
もう八方塞がりだ。土下座も泣き落としも効かなさそうだし、アキはもちろんミタマも渡せない……そうだ!
「母さん、一回OKしちゃおう」
「ちょ、ちょっと水月くん何言ってるの!?」
「黙って葉子……続けて、水月」
母が俺の意見を聞く気になってくれた。認められた気がして、俺はやる気を出して策を話した。
「コンちゃんはお願いを叶える力があるんだ。百万当てたり、一斗缶当てたり、俺と形州を助ける人を呼び寄せたり……だからさ、OKした後……アキを渡す前にさ、コンちゃんにいっぱい稲荷寿司あげて、ありがとうして、お祈りもして……イケるんじゃないかな?」
「アキが行かなくて済みますようにってお祈りするのね? 神頼みって訳ね。その子の力、信用出来るのね?」
「俺は何度も経験して信頼してる」
母は静かに頷いた。
「分かったわ。私はその子のことをまだよく知らないから、水月の信頼を信頼します。託すわ」
「え、えぇ~……そんなぁ、唯乃ぉ」
「ダメだったら責任取らせてあの子をアキに化けさせて送ればいいのよ」
「なるほど! 唯乃賢い!」
「ワシもワシ自身で責任が取れるんじゃったら気が楽じゃ」
俺はミタマの力を信じている。責任を取ることになんてならないだろう。
「お兄さん、構いませんか?」
「……俺が死んで契約がなかったことになる、とかじゃないのなら」
「そんな叶え方しないと思いますけど、念の為お願いに入れておきます」
「なら構いません。アルビノメイドが欲しくなくなる何かが起こるのならそれは楽しみにしてよさそうですし、正体が秋風くんか狐かなんてどうだっていいですし」
それにしても、とボスは自身のスマホを見つめる。
「……秋風くんのお父さん発見のお知らせ、来ませんね。仔犬共、躾け直した方がいいんでしょうか」
ミタマの存在がバレたことや、ボスのメイド要求で薄れてしまっていたが、今問題なのはアキの父親なのだ。
「…………これだけ言っておいて、アイツがマキシモにあっさり負けたらちょっと面白いよね。困るけど」
義母のクスクスと笑いながらの軽口に、俺は少し同意してしまった。
「ダメダメダメダメ絶対ダメぇっ! 知ってるんだから、アンタがド変態って唯乃に聞いてるんだから! どうしてクソ男から逃げてきたのにまたクソ男のところにアキをやらなきゃいけないのよ!」
「うるっさ……ぁー、俺女性のそういう声嫌いなんですよねぇ……」
「アキを一週間借りて何をするつもりなの?」
「ナニよナニ! 一週間じっくりたっぷりアキをしゃぶりつくすつもりなんでしょこの変態!」
そういう妄想を始めてしまったのに陰茎がピクリとも反応しない。ミタマに二日分の精力を吸い尽くされたというのは事実のようだ……精力を吸い尽くすって言うとちょっとエロいな。
「メイド服を着せて御奉仕させます」
「母さんすごいね……内容も期間もバッチリ言い当ててる」
「コイツが秘書見習いの頃からの付き合いだからね」
「メイド服を着せて御奉仕させるだけです、やましいことなんてありませんよ」
「メイド服を着せて御奉仕って文言が既にやましいでしょうが!」
「……あなたが想像しているような下品な真似はしないと言ってるんです。心配なら貞操帯でも着けさせればいかがです?」
貞操帯を身に付けている、メイド服姿のアキ……!
「せんぱい何ニヤニヤしてるんすか」
「い、いや……」
「分かりました。御奉仕は会社内でのみと限定しましょう、心配なら唯乃さんがずっと監視していればいい……どうですか?」
「ダ! メ! って最初っから言ってるでしょ!」
喚いているのは義母だけで、母は真剣に悩んでいるらしくアキの方をチラチラと見ている。
「葉子……ちょっと黙って。手を出さないって意味ではコイツは一応信用出来るのよ。貞操帯着けてるのだってアンタの方でしょ?」
「……人の下着を言い当てるなんて、無礼な人ですね」
「こんな弱小ヤクザのボスぶって何がしたいの? アンタは社長の犬でしょ? 偉ぶるのも大物ぶるのもいい加減にしなさいよ、いつもみたいに必死こいて人間様の言うこと聞いてりゃいいのよ、バカ犬なんだから」
「前戯、ですよ」
ボスは余裕を崩さずにっこりと微笑んでそう言った。
「俺に絶対服従のチンピラ共……仔犬を集めて野良犬の王様になって、いい気になって調子こいて、自分が何より偉いんだと勘違いした犬が、人間様に上下関係を叩き込まれクンクン媚びるだけの飼い犬になる……それが何より気持ちいい。勝手な早退に無理な休日、ご主人様はきっと俺をこっ酷く躾けてくださる……! 想像しただけで濡れちゃいますね」
ボスの指は彼自身のチョーカーを、赤い首輪を愛おしそうに撫でている。
「ちなみに……俺が何よりも嫌いなのは、ご主人様以外に犬扱いされることなんですよねぇ」
鋭い視線が母を射抜く。
「何が人間様だ。俺は犬、俺の手下は仔犬、アルビノの生物は愛玩動物。可愛い可愛いおとーとの國行に、愛しい妻。そして俺のご主人様、その血族の方々……その方々こそが人間様。それ以外の生命体なんざ羽虫ほどの価値もねぇんだよゴミカス共が。顔も名前もハッキリしねぇてめぇらが國行に怪我させたんだ、愛玩動物くらいスっと提供しやがれ」
「…………アキをメイドに寄越せって言ってきたって、社長に告げ口してあげましょうか?」
「どうぞ」
「あら、焦らないのね……困ったわ。ふふ……本当に困ったわ…………葉子、アキの貞操は私が保証するからアキの貸し出し許可してくれない?」
母でも打開策が思い付かないのか……
「……あ、あのー、俺がヅラ被ってカラコン入れて、メイド服着るとかはダメですか?」
「は?」
「ごめんなさい……」
「……ふむ、これでよいのじゃな?」
ポンっ、と音を立ててミタマがアキの姿に化ける。その服装は明治大正頃の女給のようなもので、メイド服とは少し違った。でも可愛い。
「ワシが行けばよかろう。のぅ、ゆーちゃんよーちゃん」
「……それ私と葉子のこと?」
「ダ、ダメだってコンちゃん! さっき消されかけたのに……!」
「そりゃ怖いが、話が進まんのじゃろ?」
「コンちゃんが俺の見た目がアキに見える幻術とかを使えば解決だよ!」
「んなもん使えん……」
もう八方塞がりだ。土下座も泣き落としも効かなさそうだし、アキはもちろんミタマも渡せない……そうだ!
「母さん、一回OKしちゃおう」
「ちょ、ちょっと水月くん何言ってるの!?」
「黙って葉子……続けて、水月」
母が俺の意見を聞く気になってくれた。認められた気がして、俺はやる気を出して策を話した。
「コンちゃんはお願いを叶える力があるんだ。百万当てたり、一斗缶当てたり、俺と形州を助ける人を呼び寄せたり……だからさ、OKした後……アキを渡す前にさ、コンちゃんにいっぱい稲荷寿司あげて、ありがとうして、お祈りもして……イケるんじゃないかな?」
「アキが行かなくて済みますようにってお祈りするのね? 神頼みって訳ね。その子の力、信用出来るのね?」
「俺は何度も経験して信頼してる」
母は静かに頷いた。
「分かったわ。私はその子のことをまだよく知らないから、水月の信頼を信頼します。託すわ」
「え、えぇ~……そんなぁ、唯乃ぉ」
「ダメだったら責任取らせてあの子をアキに化けさせて送ればいいのよ」
「なるほど! 唯乃賢い!」
「ワシもワシ自身で責任が取れるんじゃったら気が楽じゃ」
俺はミタマの力を信じている。責任を取ることになんてならないだろう。
「お兄さん、構いませんか?」
「……俺が死んで契約がなかったことになる、とかじゃないのなら」
「そんな叶え方しないと思いますけど、念の為お願いに入れておきます」
「なら構いません。アルビノメイドが欲しくなくなる何かが起こるのならそれは楽しみにしてよさそうですし、正体が秋風くんか狐かなんてどうだっていいですし」
それにしても、とボスは自身のスマホを見つめる。
「……秋風くんのお父さん発見のお知らせ、来ませんね。仔犬共、躾け直した方がいいんでしょうか」
ミタマの存在がバレたことや、ボスのメイド要求で薄れてしまっていたが、今問題なのはアキの父親なのだ。
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