冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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三人がかりで責められて

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俺が無事に戻ったことでアキも随分落ち着いた。今はもう暑がって俺の膝の上から降り、俺の隣に座ることで満足している。

「……セイカは何を熱心にしてるんだ?」

俺が帰ってきた時からずっと、セイカはアキのスマホを熱心に弄っていた。勉強アプリか何かを入れたのだろうかと尋ねてみる。

「お前のママ上に状況報告してる」

「あぁ、報告な……報告ぅ!? えっちょ、言っちゃってるの……? どんな感じで?」

セイカは黙ってアキのスマホを俺に渡した。そこに打たれていた文は、セイカ視点からの事の顛末を可能な限り客観的に書こうという頑張りが見られる、とても分かりやすく事実に近い良文だった。

「……母さんに言われてたりした? 何かあったら言えって」

「いや、しといた方がいいと思って。自主的に」

「めっちゃえらいけど俺には都合が悪い! 一部消させてもらうぞ、コピペして他のとこは送信し直すから……!」

幸いまだ既読マークは付いていない。今のうちに俺にとって都合の悪い部分の送信を取り消してしまおう。そう考えてセイカが送信したメッセージを長押しし、コピーを終えたその時、軽い音と共に既読マークが付いていった。

「あっ終わった」

「……鳴雷に都合の悪いことって何?」

申し訳なさそうな顔をしたセイカが俺の手からアキのスマホを抜き取り、自分が送った文章を再確認し始めた。

「俺が怪我したってとこ……母さんにまた怒られる」

「取り消し間に合わなくてよかった。ちょっとは怒られた方がいいよお前」

「やだぁ! 怒鳴られるとか叩かれるのならまだしも、悲しそうな顔されて淡々と諭されるんだぞ怪我したらぁ! すっげぇ罪悪感あるんだからアレ!」

「せんぱいはちょっと怒られた方がいいっす。怪我するって分かってたのに、くーちゃんに全部任せようって話だったのに、土壇場で急に避難やめたんすから……お馬鹿っすよお馬鹿」

「で、でも、俺が居たから形州は軽傷で済んだんだぞ。いや、軽傷って言えるような怪我かって言われたら疑問だけどさ、とにかく俺が居なかったらもっと酷い怪我してたんだよ!」

「なんでそんなこと言えるんすか? どう考えてもくーちゃんは一人の方が戦いやすかったと思うんすけど」

「一ミリたりとも庇われてはねぇのよ俺! 気遣われてすらない! なんなら足にしがみついて逃げる時間稼げとか言われたからな俺!」

「うーん……それでもくーちゃんだけじゃダメだったってのが分からないっす。穂張って確か、くーちゃんのバックっすよね? 助けてもらえたの、せんぱいがそこの事務所の人の恋人だからとか関係ないっすよね。くーちゃんだけでも助けてもらえたっすよね」

俺が居たから俺に憑いているミタマが俺の願いを叶えて助けが来たんだ、ミタマが俺に幸運を与えなければ彼らが偶然通りかかることはなかった。だから俺は何の役にも立っていないけれど、俺が残らなかったら形州がより酷い怪我を負っていたのは事実なんだ。

(でも証明出来ねぇええ! でそ!)

あの助けが単なる幸運ではなかったことは、鞄の中で稲荷寿司を貪り眠りこけていたミタマの姿が証明している。でも、そもそもミタマの存在を知らせていない彼らに証拠として提出することは出来ない。いっそミタマの存在を知らせてしまうか? いや、でも……いや……

「つまり! せんぱいはこってり絞られるべきなんす!」

「同意だ。俺を居候させたり、木芽を取り戻しに乗り込んだり……助けられる側からしたらありがたいけど、もう正直やめて欲しい」

「俺をくーちゃんから取り返せたのだって運が良かっただけっす、俺はギリギリまで諦めてって祈ってたっす……せんぱいは、自分が守れる範囲をちゃんと理解して、その範囲を超えたらもう、もっと強い人に任せて逃げるとかするべきなんすよ……」

「消防士どころか消防団ですらないのにバケツで水被って火事の家に突っ込んでくタイプだろ、お前」

「そのうち他人のために死ぬタイプっす」

「そんなの嫌だぞ。お前が死んだら俺も死ぬからな、拾ったんだから最後まで責任持てよ」

二人がかりで叱られてしまった……

「自分を動物みたいに言うなよぉ……セイカのバカぁ……」

俺が出来る反論はこの程度だ。

「ま、まぁまぁまぁ! 偉いことした水月くんをそんなに責めちゃ可哀想よ。優し過ぎて無茶しちゃうから、心配するのは分かるんだけどね……」

「ここで徹底的に責めとかないとまたせんぱいは危ないことするんす!」

「そのうち九死に一生を得られなくなるんだ!」

「ぅう……でもぉ、反省してるみたいだし……ねっ? ほら、アキが不安そうにしてるから……仲良くして?」

内心義母を応援しつつ、不安そうな表情のアキを撫で回す。

《秋風、俺達は今他人のために身を削り過ぎる鳴雷の悪癖を責めている》

《そうだったの? んじゃ乗るわ》

「あっ。ごめん水月くん、多勢に無勢」

「えっ? 今何が起こったんです?」

《てめぇ実力にそぐわないことしようとすんのやめろよ》

「あっアキにまで何か責められてる気がする」

俺の味方は皆無だ。正解の選択肢を選べたはずなのに、それは俺の勘違いでやっぱり俺は間違えていたのか? そう自分を疑い始めたその時、俺のスマホが鳴った。

「ごめん電話。あれ、母さん……もしもし、母さん?」

そろそろ会社でも昼休みに入った時間なのだろうか、と時計を見つつ、これから母にまで叱られるのかとため息をつく。

『もしもし水月? でかした! よくやったわ!』

予想外のはしゃいだ声に目を丸くした俺の手からスマホが抜き取られ、スピーカー機能がオンにされた。
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