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少し大人しい弟
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レイに温めてもらったコンビニ弁当を食べ、傍を離れないアキに唐揚げを一口与えようとする。
「……にぇっ」
アキはぷいと顔を背けてしまった。
「いらないのか? いつも勝手に取るくせに……お兄ちゃん食べちゃうぞ?」
本当に落ち込んでいるみたいだ。俺はそういう時こそたくさん食べるタイプだから、アキとは逆だな……ん? だから昔太っていたのか?
「にーにぃ、でんわです」
「ん、あぁ、飯食ってるのにな……」
行儀が悪いなぁと思いつつも俺は一旦箸を置き、水を一口飲んでからスマホを耳に当てた。
「もしもし?」
『…………』
「もしもーし、鳴雷ですけど」
『………………俺だ』
「いや名前出てるから分かるけどさ……起きたんだ? 形州。具合どう?」
『……痛いだけだな。熱は引いた』
早いな。恵まれているのは体格だけでなく治癒力もか。
「よかったー……ごめんな本当」
『……レイは?』
「古い肉食って腹壊してる」
「もう大丈夫っすよぉ!」
「みんな無事だよ、ありがとう」
『………………そうか』
ふぅ、とため息のようなものが聞こえた。安心したのか? やめて欲しいな、そういうイイヤツ感を出すのは。
『……約束通り、兄ちゃんには何も言うなよ』
「分かってる」
というか、連絡取れないし。多分レイも元カレの従兄に連絡なんて取れないんじゃないか? 定期的にこの街に来ているみたいだから、告げ口の方法はない訳ではないけれど……レイの脅迫、ほとんどハッタリだよな。
『……ところで、お前らこれからどうするつもりなんだ? アイツ……後輩共に監視は続行させようか』
「んー……海外から来てるから、絶対滞在期限あるはずなんだよな。母さん達には嘘の期限伝えてたみたいだけど……本当の期限が切れるまで俺達は外に出ないから、監視は別に……ぁーでもいつ帰ったか分かんないの困るな、もう少しで夏休み終わるし」
『…………飯はどうするつもりなんだ?』
「配達でも頼むよ。家が割れてたお前の時と違って、配達員にすら警戒しなきゃいけないって訳じゃないからな」
『……そうか。ならもう解決だな、二度と俺を面倒に巻き込むな。もう関わってくるなよ』
「ホント助かったよ。ありがとう。じゃ、永遠にさよなら」
俺も二度と会いたくない。その意志を感謝と共に示しつつ電話を切った。弁当が少し冷めてしまっていた。
昼食の後、荷物を置いてくると言って鞄を寝室に運んだ。他の者の荷物も寝室に運び込まれている。
「コンちゃん、ごめんね遅くなって。稲荷寿司買ってきたから……んっ?」
ミタマに話しかけながら鞄を開けると、リュウが作ってくれた身代わり人形の上に空っぽの稲荷寿司のパックが二つと、米粒を口の周りにつけた仔狐が居た。
「天使か……?」
お腹を膨らませて心地よさそうに眠っている仔狐の口元をティッシュで拭い、毛布代わりのハンカチで仔狐を包み、鞄を閉めて部屋に戻った。
「ミタマ殿は余程疲れたと見える」
「無茶させちゃったなぁ……やっぱり俺も一緒にここに来るべきだったのかな?」
「ミツキの負傷、ミタマ殿の疲労、弟君の号泣……と、形州という男の怪我の度合い……が、天秤にかけられる……で、合っているか?」
「そんな感じかな。俺にとって一番大事なのは彼氏達なんだけど……一応俺には全ての美少年は幸福であるべきというポリシーというかモットー的なものがあってさぁ……形州、目付き悪過ぎるけど顔はいいしまだ未成年だろ? だから一応美少年なんだよ……デカいけど、デカいけどな。だから俺のハーレムに入ってなくてもまぁ、大怪我したり不幸になられると俺の主義に反するって言うかぁ……」
「……ミツキだって美少年だろう。ミツキがミツキを犠牲にするのはミツキの主義には反しないのか?」
「え……?」
「む、そろそろ皆の元に戻るのだな。では私は一旦黙る。またな」
俺が、美少年? 考えたこともなかった。超絶美形になったのだと理解し口に出すようにもしているが、未だに俺の自認はキモオタデブスから動いていなかったのかもしれない。
「ただいまー……」
蒸し暑い廊下に反してリビングは涼しい。ふぅと息を吐き、ソファに腰を下ろすとアキが膝に乗ってきた。
「今日はお兄ちゃんにべったりだな」
小さく丸まったアキを抱き締める。いつも我が物顔でセイカを抱えているアキがこんなふうに俺に甘えてくれるのは嬉しいけれど、理由が理由なので素直に喜べない。
「可愛いなぁ……よしよし、大丈夫だぞー……二度とお父さんに乱暴させたりしないからなー……」
頭を撫でて愛でるくらいは義母の前でもしてもいいよな? 一瞬彼女の存在を忘れていた。ハッとして視線をやれば、微笑ましそうに俺達を眺めている彼女と目が合った。
(セェーフ……)
決して無理矢理だとか、乱暴なことはしていないのだけれど、義母にしてみれば凶悪な夫から逃げた先で息子が男に手篭めにされた訳で……それはもう悪夢だろう。どんな反応をされるか分からない。
「……にぃに」
「んー?」
「だいすき、です」
でも、アキと恋人になったことに後悔なんてない。ときめきで心臓が止まるくらいに可愛いのだから。
「……にぃに? にーにっ?」
《キュン死ってヤツだな、鳴雷はよくしてるから気にするな》
《きゅんし?》
《鳴雷はよくするんだ。しばらくすればまた動き出すから気にするな》
《そっかぁ》
隣に座っているセイカと何やら会話をしたかと思えば、アキは再び俺の肩に頭を預けて大人しくなった。
「……にぇっ」
アキはぷいと顔を背けてしまった。
「いらないのか? いつも勝手に取るくせに……お兄ちゃん食べちゃうぞ?」
本当に落ち込んでいるみたいだ。俺はそういう時こそたくさん食べるタイプだから、アキとは逆だな……ん? だから昔太っていたのか?
「にーにぃ、でんわです」
「ん、あぁ、飯食ってるのにな……」
行儀が悪いなぁと思いつつも俺は一旦箸を置き、水を一口飲んでからスマホを耳に当てた。
「もしもし?」
『…………』
「もしもーし、鳴雷ですけど」
『………………俺だ』
「いや名前出てるから分かるけどさ……起きたんだ? 形州。具合どう?」
『……痛いだけだな。熱は引いた』
早いな。恵まれているのは体格だけでなく治癒力もか。
「よかったー……ごめんな本当」
『……レイは?』
「古い肉食って腹壊してる」
「もう大丈夫っすよぉ!」
「みんな無事だよ、ありがとう」
『………………そうか』
ふぅ、とため息のようなものが聞こえた。安心したのか? やめて欲しいな、そういうイイヤツ感を出すのは。
『……約束通り、兄ちゃんには何も言うなよ』
「分かってる」
というか、連絡取れないし。多分レイも元カレの従兄に連絡なんて取れないんじゃないか? 定期的にこの街に来ているみたいだから、告げ口の方法はない訳ではないけれど……レイの脅迫、ほとんどハッタリだよな。
『……ところで、お前らこれからどうするつもりなんだ? アイツ……後輩共に監視は続行させようか』
「んー……海外から来てるから、絶対滞在期限あるはずなんだよな。母さん達には嘘の期限伝えてたみたいだけど……本当の期限が切れるまで俺達は外に出ないから、監視は別に……ぁーでもいつ帰ったか分かんないの困るな、もう少しで夏休み終わるし」
『…………飯はどうするつもりなんだ?』
「配達でも頼むよ。家が割れてたお前の時と違って、配達員にすら警戒しなきゃいけないって訳じゃないからな」
『……そうか。ならもう解決だな、二度と俺を面倒に巻き込むな。もう関わってくるなよ』
「ホント助かったよ。ありがとう。じゃ、永遠にさよなら」
俺も二度と会いたくない。その意志を感謝と共に示しつつ電話を切った。弁当が少し冷めてしまっていた。
昼食の後、荷物を置いてくると言って鞄を寝室に運んだ。他の者の荷物も寝室に運び込まれている。
「コンちゃん、ごめんね遅くなって。稲荷寿司買ってきたから……んっ?」
ミタマに話しかけながら鞄を開けると、リュウが作ってくれた身代わり人形の上に空っぽの稲荷寿司のパックが二つと、米粒を口の周りにつけた仔狐が居た。
「天使か……?」
お腹を膨らませて心地よさそうに眠っている仔狐の口元をティッシュで拭い、毛布代わりのハンカチで仔狐を包み、鞄を閉めて部屋に戻った。
「ミタマ殿は余程疲れたと見える」
「無茶させちゃったなぁ……やっぱり俺も一緒にここに来るべきだったのかな?」
「ミツキの負傷、ミタマ殿の疲労、弟君の号泣……と、形州という男の怪我の度合い……が、天秤にかけられる……で、合っているか?」
「そんな感じかな。俺にとって一番大事なのは彼氏達なんだけど……一応俺には全ての美少年は幸福であるべきというポリシーというかモットー的なものがあってさぁ……形州、目付き悪過ぎるけど顔はいいしまだ未成年だろ? だから一応美少年なんだよ……デカいけど、デカいけどな。だから俺のハーレムに入ってなくてもまぁ、大怪我したり不幸になられると俺の主義に反するって言うかぁ……」
「……ミツキだって美少年だろう。ミツキがミツキを犠牲にするのはミツキの主義には反しないのか?」
「え……?」
「む、そろそろ皆の元に戻るのだな。では私は一旦黙る。またな」
俺が、美少年? 考えたこともなかった。超絶美形になったのだと理解し口に出すようにもしているが、未だに俺の自認はキモオタデブスから動いていなかったのかもしれない。
「ただいまー……」
蒸し暑い廊下に反してリビングは涼しい。ふぅと息を吐き、ソファに腰を下ろすとアキが膝に乗ってきた。
「今日はお兄ちゃんにべったりだな」
小さく丸まったアキを抱き締める。いつも我が物顔でセイカを抱えているアキがこんなふうに俺に甘えてくれるのは嬉しいけれど、理由が理由なので素直に喜べない。
「可愛いなぁ……よしよし、大丈夫だぞー……二度とお父さんに乱暴させたりしないからなー……」
頭を撫でて愛でるくらいは義母の前でもしてもいいよな? 一瞬彼女の存在を忘れていた。ハッとして視線をやれば、微笑ましそうに俺達を眺めている彼女と目が合った。
(セェーフ……)
決して無理矢理だとか、乱暴なことはしていないのだけれど、義母にしてみれば凶悪な夫から逃げた先で息子が男に手篭めにされた訳で……それはもう悪夢だろう。どんな反応をされるか分からない。
「……にぃに」
「んー?」
「だいすき、です」
でも、アキと恋人になったことに後悔なんてない。ときめきで心臓が止まるくらいに可愛いのだから。
「……にぃに? にーにっ?」
《キュン死ってヤツだな、鳴雷はよくしてるから気にするな》
《きゅんし?》
《鳴雷はよくするんだ。しばらくすればまた動き出すから気にするな》
《そっかぁ》
隣に座っているセイカと何やら会話をしたかと思えば、アキは再び俺の肩に頭を預けて大人しくなった。
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