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コミケに向けて
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フタの仕事を邪魔してはいけないし、明日はコミケだ。準備をしなければ。
「フタさん、俺そろそろ帰りますね」
「帰んの?」
「はい、お仕事中失礼しました。頑張ってくださいね。さようなら、また今度」
「おー……ばいばーい」
「ばいばい。ふふっ……」
手を振り合い、事務所を後にした。家に帰る前にゲームセンターに寄り、札を小銭に両替して財布を太らせた。
「早く十八歳になりたいな……」
明日のコミケで買いたい全年齢本を改めて確認し、十八禁の本を買えない悲しみにため息をついた。
コンビニに寄ってソフビフィギュアをワンセット購入後、アキに電話をかけた。
『……もしもし』
「もしもし、セイカ? 今から帰るんだけど、お昼ご飯あるか? ないなら何か買って帰ろうと思って」
『あぁ、もしかして遊園地にデートしに行って朝帰りどころか昼帰りかまそうとしてる鳴雷水月くんでいらっしゃいますか?』
「めっちゃキレてる……!?」
『え……あぁ、いや、ごめん……ちょっと。えっと、飯な。俺らの分は用意してくれてる、自分のだけ何とかしてこいよ』
「そっか。分かった……じゃあ、今から帰るから」
『……ん。気ぃ付けて』
通話を切り、セイカの不機嫌の理由を考えるも心当たりは当然ない。謝ったということは俺不在のせいで機嫌が悪い訳でも、おふざけでもなく、純粋に機嫌が悪かったという訳で……うーん、アキが大音量で音楽でもかけていたのかな?
考えて分かることでもないのでスーパーで昼飯を買って帰った。予想外にも空調が点いていたようでダイニングは涼しく、リビングのソファには二人が居た。
「セイカ、アキ、こっちに居たのか」
「……鳴雷こっちで飯食うと思って」
《兄貴何食うんだ? くれよ》
ソファでくつろいでいた二人は俺が昼食の準備を終える頃にはダイニングに移っていた。
(セイカ様、アキきゅん……! こっち来てくださるなんて、かわゆいですな。そもそもこっちの部屋で待っててくれたことがまず可愛いでそ、はぁ~愛おしい)
一人の食卓でなくなったことに感謝しつつ一人手を合わせ、食事を始める。
《もーらいっ》
「あっ、もぉ……アキ、盗んで食う唐揚げは美味しいか?」
「…………すごく美味しいってさ」
「ったく。ぁ、そういえば……今日はノヴェムくん来てないんだな」
「あぁ、なんか遠慮してるみたいで連日はナシってことに決めてるっぽい」
ノヴェムへのお土産も買ってきたのにな。まぁまた今度でいいか、どうせまたすぐに遊びに来るだろう。
「遊園地にデートに行っただけだから、その日のうちに帰ってくると思ってて……俺、晩飯前には帰ってくるだろうって言っちゃったから、夜中になってもお前帰って来なくて……アイツ、大泣きしちゃったんだ」
「え……そうなの、ごめん……母さんには泊まりになるかもって言っといたんだけど、そういやセイカ達には言ってなかったな」
「…………余計なこと言わなきゃよかった」
「そう落ち込むなよ、安心させたかったんだろ? セイカの優しさじゃないか、たまたま空回りしちゃっただけでさ」
「違う……仏頂面が鬱陶しくて、言っただけで…………優しさとか、そんなんじゃない。そんなもの俺にはない」
優しさがない、は無理がある。セイカはとても優しい人だ、俺もアキも心底理解している。
「…………鳴雷、明日はどうするんだ?」
「コミケに行く! ほぼ三日間空けると思ってくれ、一応毎日帰ってくるけど戦利品置いてシャワーと睡眠取ったらすぐ行くから、飯一緒に食うのも無理だと思う」
「マジかよ……秋風やノヴェムに泣きつかれるのは俺なんだぞ」
「あー……リュウとか呼んだらどうだ? 懐いてたしいい感じだろ。いつも暇そうだし来てくれるよな」
セイカは深いため息をついてジトっとした目で俺を睨んだ。
「グルチャ見てないのか」
「え……今日の朝頃に見たけど」
また何かあったのかと通知が溜まっているメッセージアプリを開いてみると、リュウがちょうどコミケの日から大阪に帰るとの報せがあった。
「帰省……!? マジか……」
よくよく見てみれば、ハルもその翌々日に京都に帰ると言っているではないか。
「ハルぅ……ハルの母さんは京都の実家とは折り合い悪いんじゃなかったのか? 悪いだけで帰るのは帰るのか……居心地悪そう。ってそうじゃなくて、えぇ~……そっかぁ、じゃあレイ辺りに頼んでみるか? ショタの資料提供するとか言ったら食い付いてくるだろ」
俺の発言にドン引きしているセイカをよそに、俺は不意に思い出した。レイことイラストレーターのコノコノがコミケに参加することをSNSで前々から告知していて、俺もブースに行く約束をしているということを。
「……っ、あぁダメだレイもコミケ行くわ。先輩はどうなのかな……聞いてはないな。えー、どうしよ、シュカは多分来てくれないしな……カンナ、は多分ちっちゃい子苦手だろうし、ネザミフコンビはそんな簡単に遊びに出歩ける身分じゃない。フタさんサンさんは仕事がある……カミアも当然無理。ぁー、ダメだ、全員ダメだ」
十三人も彼氏が居るのに全員の都合が合わないなんて、そんなことあっていいのか?
「とりあえず先輩に聞いてみるか、電話かけるぞ………………ぁ、もしもし先輩? 先輩ってコミケ行きます? はい……はい、ぁ、そうなんですかー、いえ、失礼しました」
「なんて?」
「コミケ行くって」
「…………鳥待は?」
「多分ダメだと思うけどなぁ」
と思いつつ、ダメ元で電話をかけてみた。
「なんて?」
「……ちんぽがないのに何故あなたの家に行かなければならないんですか? だってさ」
「そう……まぁ、いいや、お前の彼氏って若干数人を除いて戦力外通り越して障害物みたいなもんだからな」
「ワンオペ頑張ってくれ!」
「…………」
ジトっとした不健康そうな目に睨まれるのはたまらない。今回はわざとではないし、今後もセイカを困らせたくはないけれど、いつかこの顔が見たくてわざと何かやらかすのではないかと自分に不安を抱いた。それほどまでにセイカのジト目は可愛いのだ。
「フタさん、俺そろそろ帰りますね」
「帰んの?」
「はい、お仕事中失礼しました。頑張ってくださいね。さようなら、また今度」
「おー……ばいばーい」
「ばいばい。ふふっ……」
手を振り合い、事務所を後にした。家に帰る前にゲームセンターに寄り、札を小銭に両替して財布を太らせた。
「早く十八歳になりたいな……」
明日のコミケで買いたい全年齢本を改めて確認し、十八禁の本を買えない悲しみにため息をついた。
コンビニに寄ってソフビフィギュアをワンセット購入後、アキに電話をかけた。
『……もしもし』
「もしもし、セイカ? 今から帰るんだけど、お昼ご飯あるか? ないなら何か買って帰ろうと思って」
『あぁ、もしかして遊園地にデートしに行って朝帰りどころか昼帰りかまそうとしてる鳴雷水月くんでいらっしゃいますか?』
「めっちゃキレてる……!?」
『え……あぁ、いや、ごめん……ちょっと。えっと、飯な。俺らの分は用意してくれてる、自分のだけ何とかしてこいよ』
「そっか。分かった……じゃあ、今から帰るから」
『……ん。気ぃ付けて』
通話を切り、セイカの不機嫌の理由を考えるも心当たりは当然ない。謝ったということは俺不在のせいで機嫌が悪い訳でも、おふざけでもなく、純粋に機嫌が悪かったという訳で……うーん、アキが大音量で音楽でもかけていたのかな?
考えて分かることでもないのでスーパーで昼飯を買って帰った。予想外にも空調が点いていたようでダイニングは涼しく、リビングのソファには二人が居た。
「セイカ、アキ、こっちに居たのか」
「……鳴雷こっちで飯食うと思って」
《兄貴何食うんだ? くれよ》
ソファでくつろいでいた二人は俺が昼食の準備を終える頃にはダイニングに移っていた。
(セイカ様、アキきゅん……! こっち来てくださるなんて、かわゆいですな。そもそもこっちの部屋で待っててくれたことがまず可愛いでそ、はぁ~愛おしい)
一人の食卓でなくなったことに感謝しつつ一人手を合わせ、食事を始める。
《もーらいっ》
「あっ、もぉ……アキ、盗んで食う唐揚げは美味しいか?」
「…………すごく美味しいってさ」
「ったく。ぁ、そういえば……今日はノヴェムくん来てないんだな」
「あぁ、なんか遠慮してるみたいで連日はナシってことに決めてるっぽい」
ノヴェムへのお土産も買ってきたのにな。まぁまた今度でいいか、どうせまたすぐに遊びに来るだろう。
「遊園地にデートに行っただけだから、その日のうちに帰ってくると思ってて……俺、晩飯前には帰ってくるだろうって言っちゃったから、夜中になってもお前帰って来なくて……アイツ、大泣きしちゃったんだ」
「え……そうなの、ごめん……母さんには泊まりになるかもって言っといたんだけど、そういやセイカ達には言ってなかったな」
「…………余計なこと言わなきゃよかった」
「そう落ち込むなよ、安心させたかったんだろ? セイカの優しさじゃないか、たまたま空回りしちゃっただけでさ」
「違う……仏頂面が鬱陶しくて、言っただけで…………優しさとか、そんなんじゃない。そんなもの俺にはない」
優しさがない、は無理がある。セイカはとても優しい人だ、俺もアキも心底理解している。
「…………鳴雷、明日はどうするんだ?」
「コミケに行く! ほぼ三日間空けると思ってくれ、一応毎日帰ってくるけど戦利品置いてシャワーと睡眠取ったらすぐ行くから、飯一緒に食うのも無理だと思う」
「マジかよ……秋風やノヴェムに泣きつかれるのは俺なんだぞ」
「あー……リュウとか呼んだらどうだ? 懐いてたしいい感じだろ。いつも暇そうだし来てくれるよな」
セイカは深いため息をついてジトっとした目で俺を睨んだ。
「グルチャ見てないのか」
「え……今日の朝頃に見たけど」
また何かあったのかと通知が溜まっているメッセージアプリを開いてみると、リュウがちょうどコミケの日から大阪に帰るとの報せがあった。
「帰省……!? マジか……」
よくよく見てみれば、ハルもその翌々日に京都に帰ると言っているではないか。
「ハルぅ……ハルの母さんは京都の実家とは折り合い悪いんじゃなかったのか? 悪いだけで帰るのは帰るのか……居心地悪そう。ってそうじゃなくて、えぇ~……そっかぁ、じゃあレイ辺りに頼んでみるか? ショタの資料提供するとか言ったら食い付いてくるだろ」
俺の発言にドン引きしているセイカをよそに、俺は不意に思い出した。レイことイラストレーターのコノコノがコミケに参加することをSNSで前々から告知していて、俺もブースに行く約束をしているということを。
「……っ、あぁダメだレイもコミケ行くわ。先輩はどうなのかな……聞いてはないな。えー、どうしよ、シュカは多分来てくれないしな……カンナ、は多分ちっちゃい子苦手だろうし、ネザミフコンビはそんな簡単に遊びに出歩ける身分じゃない。フタさんサンさんは仕事がある……カミアも当然無理。ぁー、ダメだ、全員ダメだ」
十三人も彼氏が居るのに全員の都合が合わないなんて、そんなことあっていいのか?
「とりあえず先輩に聞いてみるか、電話かけるぞ………………ぁ、もしもし先輩? 先輩ってコミケ行きます? はい……はい、ぁ、そうなんですかー、いえ、失礼しました」
「なんて?」
「コミケ行くって」
「…………鳥待は?」
「多分ダメだと思うけどなぁ」
と思いつつ、ダメ元で電話をかけてみた。
「なんて?」
「……ちんぽがないのに何故あなたの家に行かなければならないんですか? だってさ」
「そう……まぁ、いいや、お前の彼氏って若干数人を除いて戦力外通り越して障害物みたいなもんだからな」
「ワンオペ頑張ってくれ!」
「…………」
ジトっとした不健康そうな目に睨まれるのはたまらない。今回はわざとではないし、今後もセイカを困らせたくはないけれど、いつかこの顔が見たくてわざと何かやらかすのではないかと自分に不安を抱いた。それほどまでにセイカのジト目は可愛いのだ。
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