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セイカのジト目はまさに(人に)犯罪(を犯させる)級の可愛さ。睨んでいても、いや、睨んでいるからこその可愛さもある。
「無敵か……?」
「何がだよ。はぁ……ほんっと、俺お前が分かんない。もういい……秋風!」
《へいよ》
《抱っこ。クマ拾って部屋帰るぞ》
《え、でも兄貴……》
《明日も出かけるし三日は俺らに構う気ないんだってよ! ほっとこうぜこんな薄情者》
何を話したのかは分からないが、セイカを抱えたアキは一旦ソファに戻ってセイカにテディベアを拾わせると、俺を気にしつつ自室に戻った。
「……待ってくれよ~」
俺は昼食の皿を片付けた後、遊園地のお土産を持ってアキの部屋に向かった。
「アキ、セイカ、お土産があるんだけど」
「デート中に他の彼氏へのお土産買ってくるとかイカれてんのか」
「ま、まぁそう言うなよ……アキ、アキはシャーペン使わなさそうだからこれ、服なんだけど……」
俺は黒色の半袖Tシャツをアキに渡した。体質から言ってアキがこれを外に着ていくことは不可能だろう、部屋着になることを予想してサイズを大きめにしておいたので、リラックスして着られるはずだ。
「アキ、骸骨好きだろ?」
シャツにはティラノサウルスの頭蓋骨のリアルなイラストがプリントされている。
「Tレックスシャツ、これが本当のTシャツ……ってね」
「小学生みたいなデザインだな」
《超クールじゃねぇか兄貴! 最強生物の骨を抱えるとなりゃ、それなりの覚悟が必要だな》
「セイカ、アキ……喜んでるかな?」
「……あぁ、見ての通りな。はぁ……俺のセンスがおかしいのかな。顔がいいお前らは何着ても似合うんだから、お前らのセンスが常に正しいんだよなそうだよな俺が間違いだったよクソ」
今日は機嫌悪いな……俺が明日から三日間ろくに家に居ないと聞いたからか? いや、それもありそうだが、コミケの話をする前からご機嫌ナナメだった。
「セイカにもお土産あるんだ。好きなの選んでくれ」
ご機嫌取りのようになってしまうが、セイカにもお土産を渡そう。俺は1ダース買った恐竜柄で恐竜のストラップも付いている可愛らしいシャーペンを差し出した。
「何これ……」
「学校行くみんなにはシャーペンにしようと思って1ダース買ったんだ。好きなの一本選んでくれ。俺も後で一本選ぶつもり」
「1ダース……十二本? 俺が最初でいいの?」
「ん? うん、セイカが一番だよ」
「……っ、そ、そういう勘違いしそうな言い方はやめろよ」
一番に選ぶのはセイカなのだから、何の勘違いでもないし、勘違いのしようもないと思うのだが。
「これぶら下がってるの全部違うのか」
「うん、チャームはバラバラ。セイカは好きな恐竜とか居るか?」
「恐竜は一つも知らない……試験出ないし。鳴雷に似てるのとか居ないかな」
「えっ? 人間に似てるのなんか居ないと思うけど……」
「……水場に住んでそうなのは?」
俺の名前が『水』月だからだろうかとセイカを可愛く思いつつ、モササウルスとスピノサウルスのチャームが付いたシャーペンを指した。
「この二つ? じゃあ……ぁ、これ見たことある、前にやったゲームで釣った。こっちで」
「モササウルスか、そういや釣ってたな。どうぞ」
「……ありがとう」
少しは機嫌が直ったかな? 原因を教えて欲しいなぁと思いつつも口に出すのははばかられ、尋ねるか黙るか迷ってセイカを見つめてしまっていると、彼は観念したように口を開いた。
「ごめん……ずっと感じ悪かっただろ」
「ぁ、いや、そんな……でも、何かやなことあったのかなとは思ってた」
「……秋風の父親がさ、日本に来ようとしてるらしいんだ。結構前から言ってて……現実味帯びてきたって感じ。来るかもってだけで秋風が……普段すっごく明るくて前向きな秋風が……落ち込んじゃってさ、俺……顔も知らないのに、そいつのこと嫌いで、来るなって……も、飛行機落ちちゃえばいいのにって…………秋風の父親なのは変わらないのに、飛行機には他の人もいっぱい乗るのに……こんなこと思う俺は、やっぱり鳴雷に愛されたり秋風に好かれたりする資格のないクズなんだなぁって、思ったら……なんか、もう」
「…………相変わらず思い詰めちゃうなぁセイカは。そんなの俺だって飛行機落ちろと思うし、その時に他の人のことなんて勘定に入れてないし、それに罪悪感なんか抱かないよ。だって考えてるだけなんだから……みんなそうだと思うよ? なのにセイカは落ち込んじゃうから、やっぱりセイカは純粋で優しいいい子なんだって思った、今聞いて」
そう語りながらセイカを抱き締めると彼は俺に抱きつき、静かに泣き始めた。
「よしよし……アキのために怒ってくれてありがとうな。嫌いなヤツ嫌いって思って落ち込むなんて、セイカは可愛いな……愛してるよ」
《兄貴、また泣かせてやがんのか》
ゴツ、コツ、と二の腕に頭突きをしてきたアキのこともまとめて抱き締める。セイカの腰に腕を回し、もう片方の手で俺に抱きついたアキは幸せそうに目を閉じて笑った。
(この笑顔が陰るなんてわたくしも嫌でそ)
秋風の父親は話しか聞いていないけれど既に嫌いだし、来るなと思っているし、飛行機落ちろとも思っている。でも俺の願いが通じるような都合のいい展開なんて起こりっこないから、どうにか逃げる方法を考えないとな。
「無敵か……?」
「何がだよ。はぁ……ほんっと、俺お前が分かんない。もういい……秋風!」
《へいよ》
《抱っこ。クマ拾って部屋帰るぞ》
《え、でも兄貴……》
《明日も出かけるし三日は俺らに構う気ないんだってよ! ほっとこうぜこんな薄情者》
何を話したのかは分からないが、セイカを抱えたアキは一旦ソファに戻ってセイカにテディベアを拾わせると、俺を気にしつつ自室に戻った。
「……待ってくれよ~」
俺は昼食の皿を片付けた後、遊園地のお土産を持ってアキの部屋に向かった。
「アキ、セイカ、お土産があるんだけど」
「デート中に他の彼氏へのお土産買ってくるとかイカれてんのか」
「ま、まぁそう言うなよ……アキ、アキはシャーペン使わなさそうだからこれ、服なんだけど……」
俺は黒色の半袖Tシャツをアキに渡した。体質から言ってアキがこれを外に着ていくことは不可能だろう、部屋着になることを予想してサイズを大きめにしておいたので、リラックスして着られるはずだ。
「アキ、骸骨好きだろ?」
シャツにはティラノサウルスの頭蓋骨のリアルなイラストがプリントされている。
「Tレックスシャツ、これが本当のTシャツ……ってね」
「小学生みたいなデザインだな」
《超クールじゃねぇか兄貴! 最強生物の骨を抱えるとなりゃ、それなりの覚悟が必要だな》
「セイカ、アキ……喜んでるかな?」
「……あぁ、見ての通りな。はぁ……俺のセンスがおかしいのかな。顔がいいお前らは何着ても似合うんだから、お前らのセンスが常に正しいんだよなそうだよな俺が間違いだったよクソ」
今日は機嫌悪いな……俺が明日から三日間ろくに家に居ないと聞いたからか? いや、それもありそうだが、コミケの話をする前からご機嫌ナナメだった。
「セイカにもお土産あるんだ。好きなの選んでくれ」
ご機嫌取りのようになってしまうが、セイカにもお土産を渡そう。俺は1ダース買った恐竜柄で恐竜のストラップも付いている可愛らしいシャーペンを差し出した。
「何これ……」
「学校行くみんなにはシャーペンにしようと思って1ダース買ったんだ。好きなの一本選んでくれ。俺も後で一本選ぶつもり」
「1ダース……十二本? 俺が最初でいいの?」
「ん? うん、セイカが一番だよ」
「……っ、そ、そういう勘違いしそうな言い方はやめろよ」
一番に選ぶのはセイカなのだから、何の勘違いでもないし、勘違いのしようもないと思うのだが。
「これぶら下がってるの全部違うのか」
「うん、チャームはバラバラ。セイカは好きな恐竜とか居るか?」
「恐竜は一つも知らない……試験出ないし。鳴雷に似てるのとか居ないかな」
「えっ? 人間に似てるのなんか居ないと思うけど……」
「……水場に住んでそうなのは?」
俺の名前が『水』月だからだろうかとセイカを可愛く思いつつ、モササウルスとスピノサウルスのチャームが付いたシャーペンを指した。
「この二つ? じゃあ……ぁ、これ見たことある、前にやったゲームで釣った。こっちで」
「モササウルスか、そういや釣ってたな。どうぞ」
「……ありがとう」
少しは機嫌が直ったかな? 原因を教えて欲しいなぁと思いつつも口に出すのははばかられ、尋ねるか黙るか迷ってセイカを見つめてしまっていると、彼は観念したように口を開いた。
「ごめん……ずっと感じ悪かっただろ」
「ぁ、いや、そんな……でも、何かやなことあったのかなとは思ってた」
「……秋風の父親がさ、日本に来ようとしてるらしいんだ。結構前から言ってて……現実味帯びてきたって感じ。来るかもってだけで秋風が……普段すっごく明るくて前向きな秋風が……落ち込んじゃってさ、俺……顔も知らないのに、そいつのこと嫌いで、来るなって……も、飛行機落ちちゃえばいいのにって…………秋風の父親なのは変わらないのに、飛行機には他の人もいっぱい乗るのに……こんなこと思う俺は、やっぱり鳴雷に愛されたり秋風に好かれたりする資格のないクズなんだなぁって、思ったら……なんか、もう」
「…………相変わらず思い詰めちゃうなぁセイカは。そんなの俺だって飛行機落ちろと思うし、その時に他の人のことなんて勘定に入れてないし、それに罪悪感なんか抱かないよ。だって考えてるだけなんだから……みんなそうだと思うよ? なのにセイカは落ち込んじゃうから、やっぱりセイカは純粋で優しいいい子なんだって思った、今聞いて」
そう語りながらセイカを抱き締めると彼は俺に抱きつき、静かに泣き始めた。
「よしよし……アキのために怒ってくれてありがとうな。嫌いなヤツ嫌いって思って落ち込むなんて、セイカは可愛いな……愛してるよ」
《兄貴、また泣かせてやがんのか》
ゴツ、コツ、と二の腕に頭突きをしてきたアキのこともまとめて抱き締める。セイカの腰に腕を回し、もう片方の手で俺に抱きついたアキは幸せそうに目を閉じて笑った。
(この笑顔が陰るなんてわたくしも嫌でそ)
秋風の父親は話しか聞いていないけれど既に嫌いだし、来るなと思っているし、飛行機落ちろとも思っている。でも俺の願いが通じるような都合のいい展開なんて起こりっこないから、どうにか逃げる方法を考えないとな。
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