冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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с днем ​​рождения!

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扉が開く。先に風呂を出たリュウやネザメにクラッカーを全て浴びせるなんてヘマをしないよう、真っ白な髪が見えてから紐を引いてクラッカーを鳴らした。


パンパパパンパンッ! と破裂音が響き、カラフルな紙吹雪とテープが舞う。自分で鳴らしておいて音に驚いて目を閉じてしまった俺は、カラフルなテープを頭から被ったアキを想像しながら目を開いたが、そこには誰も立っていなかった。

「……あれ?」

確かにアキを視認してクラッカーを鳴らした。扉は開いているし、アキは来ていたはずだ。不思議に思いながら床に落ちた紙吹雪を踏んで廊下に顔を出すと、アキが壁を背にして座り込んでいた。傍にはセイカが立っている、義足を着けた彼はすぐにしゃがむことが出来ずアキの前に立って声をかけている。

「セイカ、アキどうしたんだ?」

「あ、あぁ……大きな音に、驚いて」

「え……それで咄嗟に隠れちゃったのか? クラッカー苦手かぁ。確かに音はびっくりするけどさ、紙吹雪綺麗だから見て欲しかったな」

なんて言いながら俺は床に膝をつき、アキの頭を撫でようとした。しかしその手はアキ自身に止められた。

「……っ!? アキ……!? 痛っ……ぃ」

俺の手首を掴むアキの力は異常なまでに強く、骨が軋んでいる気がした。振りほどくどころか力を入れるのもままならない。

「アキっ……」

「…………!」

俯いていたために前髪に隠れていた赤い瞳が俺を捉え、俺の手首を掴む力が抜けた。アキはもう片方の手で自分の手を掴んで俺の手首から引き離すと、また俯いた。その呼吸は荒く、身体は微かに震えている。

「……セイカ、なんか……おかしくないか? おっきな音にびっくりしたって……こんなに尾を引くもんじゃないだろ、普通」

「俺が出来るのは翻訳で読心じゃないんだ、秋風が何も言ってくれないから分からない」

「…………そっか」

「みっつ~ん? アキくん居たの~?」

ひょこ、とハルが廊下を覗きに来た。他の彼氏達も次々に顔を出す。

「あ、あぁ、クラッカーの音にびっくりして腰抜かしたみたいなんだ……」

「案外小心者ですね、あんなに強いくせに」

「よく聞いたら軽いから全然違うんだけどさ、一瞬銃声と勘違いしちゃうから怖いよね~これ」

「むぅ……大丈夫なのか?」

「とりあえず部屋に入れてあげるっすよせんぱい、抱っこして運んであげたらどうっすか?」

心配そうな彼氏達の中、サンだけは「分かる分かる」とくすくす笑っている。銃声……銃声、か。日本の一般庶民にとっては銃なんて架空の代物に近いけれど、アキはそうではない生活を十何年もしてきた。それも傭兵になるのだと父親独自の訓練を強制させられてきた、熊と出会したなんて話も聞いた、銃声を耳にしたことくらいあるのかもしれない。

《兄貴……》

クラッカーは迂闊だったかなと反省する俺の首にアキが抱きつく。

《悪い、スイッチ切り替えんのに時間かかった、頭ん中のスイッチ……銃の音に、ちょっと似ててな。火薬の匂いもうっすらするぜ、そのせいでスイッチが戻んなくてよ……ま、それはいい、もう大丈夫。はぁ……ちょっと、このままにさせて……》

「最初のぶらっ……? って感じのヤツがお兄ちゃんって意味だよな。その後は……セイカぁ……」

「…………もう少し、このままでって」

アキの話した量に対して圧倒的に少ない文章量に多少の不満を覚えつつも微笑んで礼を言い、アキをそっと抱き締めた。

「ごめんな、アキ……驚かせて」

「怖かった~? ごめんね~?」

「そんなに驚くとは……」

「ビビりですねぇ」

「悪かったよアキくん」

「でも意地悪したかった訳じゃないのは分かって欲しいっす」

彼氏達が代わる代わるわしゃわしゃとアキの頭を撫で回す。アキはしばらく無言でその愛撫を受けた後、くすくすと笑いながら顔を上げ、目元を拭った。

《ゴム弾当たっちまった時のこと思い出してな。アレめちゃくちゃ痛ぇのよ、骨折したし。あのクソ親父今度会ったら殺してやる》

何か言いながら一足先に立ち上がり、俺に手を差し出す。

「……ふふっ、ありがとうアキ」

その手を取り、もう片方の手でカラーテープと紙片を掴み、立ち上がると同時にアキの頭からそれを振りかけた。

《ん……? んだこれ》

この光景が見たかった。俺はすかさずクラッカーの中身を被ったアキをスマホで撮った。

「あはっ、可愛い~」

《何これ》

何が何だか分からないようでアキはきょとんとしている、赤い瞳がまんまるに開かれていて可愛らしい。

「アキ、ほらおいで」

まだ状況を理解していないらしいアキの背に手を添えてゆっくりと優しく押し、アキをダイニングに、いや、パーティ会場に導く。

《…………なに、これ》

アキは驚いた顔のまま無言で数歩歩き、部屋を見回した。壁を飾るガーランドや折り紙の花、サンが描いた絵。天井から吊るされた星や貝殻を模した折り紙。ハルが書いた「誕生日おめでとう」のメッセージや、歌見が膨らませた風船のメッセージはちゃんと読まれているだろうか。

「с днем ​​рождения……」

「…………セイカ、なんて?」

「お誕生日おめでとう……読んだだけみたい」

「読めた~? よかったぁ~、不安だったんだぁ~」

「俺の風船の方じゃないか? あっちのが目立つし」

「お~れ~の~字~の~ほ~ぉ~!」

意地悪な笑みを浮かべる歌見にハルが反論する。さて、そろそろクラッカーの中身を払って円錐形のパーティ帽子を被せてやろうか……と扉近くの棚に乗せていた帽子を取ったその時、アキがへたり込んだ。

「ア、アキっ? ぅお……女の子座り出来るのかお前、流石の軟体だな」

「んなこと言ってる場合か。アキくんどうしたんだ?」

《誕生日……そっか、俺の誕生日……俺の、ために……こんなに?》

「セイカ、ちょっと聞いてくれ、頼む」

廊下に留まっていたセイカもパーティ会場に導く。彼はアキに声をかける前に部屋を見回し「よくやったなぁこんなに」と感嘆の息を漏らした。

《……秋風、どうした?》

《誕生日……祝われたことない訳じゃねぇよ、誕生日は好きだ、ケーキ食えるし何かもらえる……欲しいもんじゃないことが多いけどな》

《うん……?》

《でも……でもさ、高い金注ぎ込んでわざわざ作ったのに出来損ないだから、失望されててさ、泣かれるわ変な訓練でボコボコにされるわ……楽しいこと何にもなくて、産まれたくなかったなって思うこと多くて…………誕生日、嫌いだったんだよな》

《…………そっか》

《……誕生日、大好き。大好き……みんな、大好き》

セイカは一人満足したように微笑んで俺の方を振り向いた。

「……いや通訳してくれよ」

だってさ、みたいな顔で見られても困ると眉尻を下げるとセイカはハッとした表情で慌てて翻訳を始めた。
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