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誕生日パーティ開始
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昼食を終え、全ての皿洗いを任された俺だけはキッチンに。他の彼氏達はリビングダイニングの飾り付けに勤しんでいる。
「この辺でいいかな」
「うむ、秋風にはここに座ってもらう予定だからな。見えやすい方がいいだろう」
歌見はハッピーバースデーという意味のロシア語らしい風船を壁に貼り付けている。
「お花は壁にお願いするっす」
「じゃあ……このくん、星……天井、に」
「分かったっす。ぁ、貝殻も天井っすかねぇ……回ると綺麗っすもんねこれ、天井から吊る方がいいっすよね」
「た、ぶん……?」
レイもカンナは折り紙を壁に貼り付けたり、天井から吊り下げたりしている。セロハンテープや白い糸を使っているようだ。
「フユさん見て見て~、書けた!」
「おぉ! 素晴らしいな! 流石、書道を習っているだけのことはある。ロシア語の方の上手さの程は……正直、ミフユには判断が付かんが」
「英語で言う筆記体みたいなカッコイイ書き方あんのか分かんないから、翻訳で出た文字そのまま書き写したんだけど~……これ、ゴシック体でクソダサいみたいな感じにならないかな~?」
「むぅ……まぁ、ところどころに書道特有のハネやハライがあって、格好いいとは思うから……多分大丈夫だろう」
ハルは「秋風くん誕生日おめでとう」と二つの言語で書かれた大きな紙を広げてミフユに確認させている。
「それハッピーバースデーの風船と被らないか?」
「いいじゃんナナさん、おめでとうの言葉は多い方が嬉しいって」
「……ま、それもそうか。よし、アキくんを囲んで某アニメの最終話みたいにするか」
「歌見せんぱい、みんな世代でもオタクでもないんすから誰にも伝わらないっす」
オタクなので伝わってしまったが、悟られないように笑いによる震えを必死に堪え、気配を消して皿洗いを続けた。
「何……だと……」
「それもダメかもっすね」
「じゃあ何なら伝わるんだよ」
「……ぼくはたぬきじゃない! とかっすかね」
「わたあめ大好き……」
「そいつの一人称はおれなんすよねぇ」
「子供の頃から思ってるんだが、アレどっちもたぬきに見えないよな」
「青いのと角生えてるのっすからね」
歌見とレイのアニメの話は段々とマニアックな作品の方へと傾いていき、趣味の違いからか次第に口数が減っていく。
「あー……悪い、俺多分そのアニメ見てないわ……バトル系なら結構分かるからそっちで頼む」
「俺ホラーとかグロ系よく見るんすけど、どうすか?」
「ガッツリしたモツはちょっと……」
会話が終わる頃、俺の皿洗いも終わった。手の水気をしっかりと拭き取ってダイニングに移る。
「水月、皿洗い終わりました? この……がらんどう? を付けるの手伝ってくれませんか?」
「ガーランド、な。いいぞ」
「がーらんど……大層な名前ですねぇ、飾りの一言で済むでしょうこんなもの」
ぶつぶつと文句を呟くシュカと共にガーランドで壁を飾り付けていく。上品な雰囲気の白い壁が少しずつ幼稚園のような可愛らしさを得ていく。
「うーん……ここらへんに青色が欲しいかな~」
部屋を見渡す位置に立ったハルがそう呟き、レイがまだ飾り付けていない折り紙飾りの中から青を探す。
「んじゃこの星貼っとくっす」
「……全体の色見んのってこのめんのがいいんじゃないの~? アンタ高校生っての嘘で成人済のイラストレーターなんでしょ~?」
「つ、通信制のは一応マジなんすよ……」
「イラストレーターは色のバランス見れないのって話~」
「ファッションに強いハルせんぱいがやった方がいいっすよ。俺そういう責任負いたくないっす」
「本音出てんじゃ~ん! ずるい大人~!」
「俺を大人扱いしないで欲しいっす! タメもしくはやや下がいいっす!」
相変わらずレイは大人としてはダメだな。でもそういうところがイイ……ダメな大人からしか得られない栄養があるのだ、それは生きる上で必要不可欠なものだ、ビタミンBとかと多分並ぶ。
「ってかこの隙間は何~?」
「サン殿の絵を飾る場所だ」
「なるほど~」
大きな空白地帯の謎が解けたその時、扉が開いた。
「描けたよ~」
また手や顔をクレヨンで汚したサンが大きな紙を持ってダイニングに戻ってきた。
「見て見て、どう?」
丸めてあった大きな紙を広げると、クレヨンを使って描かれた見事な絵画が姿を現した。
「白くて天使みたいだっていうアキくんのイメージを大切にしつつ、秋風って名前から連想した紅葉の景色を添えたよ。まぁボク見たことないから景色なんて聞きかじりでしかないけどね。彼の瞳は赤いらしいし、イメージカラーなんじゃない? どうかな」
紅葉のようにも炎のようにも見える、形容しがたい赤やオレンジの美しい色と模様。それからくり抜かれた、色が置かれていない紙そのままの白いシルエット。うっすらと人型に見えるそれは神々しい。
「真ん中のこの白いシルエットがアキくん?」
「その辺はアンタらの解釈に任せるよ。ボクの専門抽象画だし。まぁモチーフはアキくんだから完全な抽象画ではないんだけどね」
「よく分からんが、なんか……こう、圧を感じる」
「そ? 好評みたいで嬉しいよ」
「早速貼ろう」
サンの絵を壁に貼り、全員でそれを眺める。歌見が言った通り、絵から何とも言えないプレッシャーが放たれているように俺も感じる。他の者もそうなのか、それからしばらく俺達は無言で絵を眺めた。
飾り付けを終え、空が赤く染まる頃、アキ達四人が帰ってきた。
「おかえり! アキ、セイカ、リュウ、ネザメさん。お風呂準備してあるから入っておいで、さぁさ、入っておいで入っておいで」
玄関で彼らを出迎え、ダイニングへの扉の前に立ってアキが中の様子を悟らないようにしつつ、彼らを浴場へ向かわせた。
「帰ってきた!」
「よし、ステーキを焼き始めるか。鳥待一年生は鍋でスープを。鳴雷一年生はオーブンに鶏を」
「はい」
「はーい!」
「その他の者は食器、ジュースを準備しろ」
「は~い!」
大急ぎでパーティの準備を整えていく。寝室にプレゼントを置きっぱなしの者は各々取りに行った。
「ドライヤーの音が止まった……そろそろ来るかも~」
「皆の者! クラッカーを構えろ!」
ミフユの号令で俺達はクラッカーを持ち、アキを待ち構えた。
「この辺でいいかな」
「うむ、秋風にはここに座ってもらう予定だからな。見えやすい方がいいだろう」
歌見はハッピーバースデーという意味のロシア語らしい風船を壁に貼り付けている。
「お花は壁にお願いするっす」
「じゃあ……このくん、星……天井、に」
「分かったっす。ぁ、貝殻も天井っすかねぇ……回ると綺麗っすもんねこれ、天井から吊る方がいいっすよね」
「た、ぶん……?」
レイもカンナは折り紙を壁に貼り付けたり、天井から吊り下げたりしている。セロハンテープや白い糸を使っているようだ。
「フユさん見て見て~、書けた!」
「おぉ! 素晴らしいな! 流石、書道を習っているだけのことはある。ロシア語の方の上手さの程は……正直、ミフユには判断が付かんが」
「英語で言う筆記体みたいなカッコイイ書き方あんのか分かんないから、翻訳で出た文字そのまま書き写したんだけど~……これ、ゴシック体でクソダサいみたいな感じにならないかな~?」
「むぅ……まぁ、ところどころに書道特有のハネやハライがあって、格好いいとは思うから……多分大丈夫だろう」
ハルは「秋風くん誕生日おめでとう」と二つの言語で書かれた大きな紙を広げてミフユに確認させている。
「それハッピーバースデーの風船と被らないか?」
「いいじゃんナナさん、おめでとうの言葉は多い方が嬉しいって」
「……ま、それもそうか。よし、アキくんを囲んで某アニメの最終話みたいにするか」
「歌見せんぱい、みんな世代でもオタクでもないんすから誰にも伝わらないっす」
オタクなので伝わってしまったが、悟られないように笑いによる震えを必死に堪え、気配を消して皿洗いを続けた。
「何……だと……」
「それもダメかもっすね」
「じゃあ何なら伝わるんだよ」
「……ぼくはたぬきじゃない! とかっすかね」
「わたあめ大好き……」
「そいつの一人称はおれなんすよねぇ」
「子供の頃から思ってるんだが、アレどっちもたぬきに見えないよな」
「青いのと角生えてるのっすからね」
歌見とレイのアニメの話は段々とマニアックな作品の方へと傾いていき、趣味の違いからか次第に口数が減っていく。
「あー……悪い、俺多分そのアニメ見てないわ……バトル系なら結構分かるからそっちで頼む」
「俺ホラーとかグロ系よく見るんすけど、どうすか?」
「ガッツリしたモツはちょっと……」
会話が終わる頃、俺の皿洗いも終わった。手の水気をしっかりと拭き取ってダイニングに移る。
「水月、皿洗い終わりました? この……がらんどう? を付けるの手伝ってくれませんか?」
「ガーランド、な。いいぞ」
「がーらんど……大層な名前ですねぇ、飾りの一言で済むでしょうこんなもの」
ぶつぶつと文句を呟くシュカと共にガーランドで壁を飾り付けていく。上品な雰囲気の白い壁が少しずつ幼稚園のような可愛らしさを得ていく。
「うーん……ここらへんに青色が欲しいかな~」
部屋を見渡す位置に立ったハルがそう呟き、レイがまだ飾り付けていない折り紙飾りの中から青を探す。
「んじゃこの星貼っとくっす」
「……全体の色見んのってこのめんのがいいんじゃないの~? アンタ高校生っての嘘で成人済のイラストレーターなんでしょ~?」
「つ、通信制のは一応マジなんすよ……」
「イラストレーターは色のバランス見れないのって話~」
「ファッションに強いハルせんぱいがやった方がいいっすよ。俺そういう責任負いたくないっす」
「本音出てんじゃ~ん! ずるい大人~!」
「俺を大人扱いしないで欲しいっす! タメもしくはやや下がいいっす!」
相変わらずレイは大人としてはダメだな。でもそういうところがイイ……ダメな大人からしか得られない栄養があるのだ、それは生きる上で必要不可欠なものだ、ビタミンBとかと多分並ぶ。
「ってかこの隙間は何~?」
「サン殿の絵を飾る場所だ」
「なるほど~」
大きな空白地帯の謎が解けたその時、扉が開いた。
「描けたよ~」
また手や顔をクレヨンで汚したサンが大きな紙を持ってダイニングに戻ってきた。
「見て見て、どう?」
丸めてあった大きな紙を広げると、クレヨンを使って描かれた見事な絵画が姿を現した。
「白くて天使みたいだっていうアキくんのイメージを大切にしつつ、秋風って名前から連想した紅葉の景色を添えたよ。まぁボク見たことないから景色なんて聞きかじりでしかないけどね。彼の瞳は赤いらしいし、イメージカラーなんじゃない? どうかな」
紅葉のようにも炎のようにも見える、形容しがたい赤やオレンジの美しい色と模様。それからくり抜かれた、色が置かれていない紙そのままの白いシルエット。うっすらと人型に見えるそれは神々しい。
「真ん中のこの白いシルエットがアキくん?」
「その辺はアンタらの解釈に任せるよ。ボクの専門抽象画だし。まぁモチーフはアキくんだから完全な抽象画ではないんだけどね」
「よく分からんが、なんか……こう、圧を感じる」
「そ? 好評みたいで嬉しいよ」
「早速貼ろう」
サンの絵を壁に貼り、全員でそれを眺める。歌見が言った通り、絵から何とも言えないプレッシャーが放たれているように俺も感じる。他の者もそうなのか、それからしばらく俺達は無言で絵を眺めた。
飾り付けを終え、空が赤く染まる頃、アキ達四人が帰ってきた。
「おかえり! アキ、セイカ、リュウ、ネザメさん。お風呂準備してあるから入っておいで、さぁさ、入っておいで入っておいで」
玄関で彼らを出迎え、ダイニングへの扉の前に立ってアキが中の様子を悟らないようにしつつ、彼らを浴場へ向かわせた。
「帰ってきた!」
「よし、ステーキを焼き始めるか。鳥待一年生は鍋でスープを。鳴雷一年生はオーブンに鶏を」
「はい」
「はーい!」
「その他の者は食器、ジュースを準備しろ」
「は~い!」
大急ぎでパーティの準備を整えていく。寝室にプレゼントを置きっぱなしの者は各々取りに行った。
「ドライヤーの音が止まった……そろそろ来るかも~」
「皆の者! クラッカーを構えろ!」
ミフユの号令で俺達はクラッカーを持ち、アキを待ち構えた。
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