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最下位確定か

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お次はシュカのチームとアキのチームの対戦だ。

「シュカせんぱい、アキくんの球取る秘策とかあるんすか?」

「ありませんよ。これは捨て試合です。サンさんが普通に試合に参加出来るとなれば優勝は不可能です。あとは最下位を避けることに尽力します。ここで試合をしておけば、年積さんのチームか水月のチームに連戦をさせられます。消耗狙いですよ」

「……なるほどー?」

「もちろん手は抜きません、全力で勝ち筋を探しますよ。ミフユさん、お願いします」

「うむ!」

シュカとアキが向かい合う。ミフユが彼らの間でボールを高く飛ばし、素早くコートの外に出る。

「……っ、何なんですかそのジャンプ力」

またもや先攻はアキだ。そのまま一方的な試合が続き、やはりと言うべきかアキチームが勝利を収めた。

「一発くらい取ってくださいよ」

「無理っすよぉ、俺動体視力自信ないんす」

「ぼく、あんまり……前、見えな……」

「はぁ……次の試合は絶対勝ちますよ、虫握るなんて絶対嫌です。全く水月も酷い罰ゲームを考える……もし最下位になったら二度と見られない顔にしてやりますよ」

シュカは俺に聞こえるように少し声を張り、俺を睨みながらレイ達とそう話した。シュカは俺の顔が好きだから流石に原型を留めないほど顔を殴られたりはしないと思うが、多少の暴力はあるだろう。

「……ミフユさん達に最下位になってもらわないと俺の心か体どっちかが死ぬ」

「マジでさぁ……なんで罰ゲームとか余計なこと言ったの……」

「まぁ最悪土下座すれば何とかなるだろ」

「……だよねー。フナムシとかそんな簡単に見つからないよね~?」

次は俺のチームとミフユのチームの対戦だ。ネザメを狙っていこうと短い作戦会議を終えて、コートに入った。

「頼むぞ天正一年生」

「あかんくても怒らんといてな」

「先攻取ってねみっつん」

「任せろ」

リュウは俺よりもかなり背が低いしジャンプ力が高い訳でもない、予想通り先攻は簡単に取れた。

「よしっ……!」

後はネザメを狙っていけば確実に点を取れるはずだ、と思っていた。その後ネザメを狙って打ったアタック四発全てミフユに防がれた。リュウを見つめて打ったりミフユを見ながら打ったりと視線を誤魔化したりはしたのだが、ダメだった。

「水月! 読まれてる!」

「……分かってますよ」

ミフユはアタッカーなのに、ネザメ周辺を狙ったボールを拾いに受けに行くから運動量が多い。

(単純にポンコツなネザメちゃまのミス狙いでありながら、ミフユどのの疲れ狙いでもあるのですよ)

俺は続けてネザメを狙ったアタックを三回ほど打った。全て防がれたが、ミフユの息は確実に上がってきている。

(次辺りからフェイントとかかけていきまそ)

そう考えながらネザメの下手くそなトスを眺める。

「はぁっ……はぁっ…………やぁっ!」

呼吸を荒らげ、顔を真っ赤にしたミフユはもう狙いを付ける余裕もなかったようで、彼が打ったボールはまっすぐ俺の胸元に飛び込んできた。

「おっと」

俺は冷静にボールを弾き上げ、アタックのため右手を振りかぶった。ネザメを見つめながら今度はミフユの足元を狙った。

「……っ!?」

ミフユは俺の手がボールに触れる寸前にネザメの前へと走り、自分からボールから離れてしまった。

「一点!」

審判役のシュカが手を挙げる。

「くっ……申し訳ありませんネザメ様!」

「いいよいいよ、頑張ってるね。次は僕が打つよ」

「ダメです! 天正一年生、貴様が打て」

「……まぁ紅葉はんよりはマシや思いますわ。せやけどあんま期待せんといてくださいね」

リュウはコートの後ろの方でずっとボーッと突っ立っていた。俺がネザメばかり狙って、ミフユが一人で防いで一人でアタックを打っていたからリュウの体力は有り余っているだろう。まぁ、それほど警戒する相手でもない。

「…………リュウ? 早く打てよ」

「……おぉ、すまんの。すぐ打つわ。いてこましたるから覚悟しぃ」

「悪いな、その方言は雰囲気しか分かんねぇよ」

リュウはボールを高く上げ、予想通り下手くそなアタックを打った。ハルが楽に防いだようだ。

「年積はん、アタック俺がやります。拾て回してください」

「分かった、任せるぞ」

リュウがアタッカーに変わったのなら防御は問題ない。ミフユの体力を回復させずこのまま押し切る。

「行っけぇっ!」

再びネザメを狙う。しかし彼もいつまでもお荷物のままではいない、腕に当てて落下だけは防いだ。それをミフユがリュウへと繋ぐ。リュウは思い切りボールを打ったが、歌見が受けてくれた。

(やっぱり防御は大丈夫ですな)

そう慢心し、またアタックを放つ。ミフユに防がれた、もう肩で息をしているのにまだあれだけ動けるのか……厄介だな。

「キッツイのん行くで!」

ミフユからリュウへとボールが繋がる。リュウは大きく手を振りかぶり、ボールに触れる寸前で腕を失速させ、軽くボールを叩いた。

「一点!」

「あっ……ご、ごめんみっつぅんっ! 思ったより緩いボールで取れなかったぁ!」

ボールは一つ前のような遠くまで飛ばすアタックを警戒し、コートの後ろまで下がっていたハルと歌見が間に合わない、比較的前側の位置に落ちた。俺が油断していなければ俺が取れたかもしれない位置だ。

「い、いや……まだ一対一だ、大丈夫」

今度こそ慢心しない。そう改めて心に決め、思い切りアタックを放つ。しかしネザメやミフユがレシーブでそのボールを受けるのを待つことなく、リュウがボールを俺達のコートに叩き返した。俺のアタックの勢いそのままに、俺の真横にボールが打ち込まれた。

「一点!」

「えっ……ク、クソっ、そんな真似してくるなんて思わなかったぞ。バレー上手いんだな、リュウ」

ボールを拾い、凹んだ地面を足でならしながら平静を装うためあえてリュウを褒めた。

「……水月のアタックの癖覚えてもうた。狙い色々変えてるつもりやろうけど、ほとんど同じようにしか打たれへんやろ。ボール気ぃ付けて見とったら打つ前に軌道読めるわ」

「は……? い、いやいや、そんな訳」

「水月ぃ、俺なぁ? 前の試合も水月のことだけずーっと見とってんで。カッコよかったわぁ」

「……そんな訳ないって、今すぐ証明してやるよ!」

うっとりと目を細めていたリュウの不意を突いてアタックを放つも、リュウは再び俺のアタックを弾き返した。

「一点! 試合終了、第三チーム勝利!」

「痛た……水月アタック強いなぁ、手ぇいったいわぁ……へへ、水月からの痛み…………水月ぃ、勝たせてもぉておおきに。堪忍なぁ、俺も虫は嫌いやねん」

「…………関西弁は強キャラの法則っ!」

「み、水月! 水月ーっ!」

ダイイングメッセージを叫びながら倒れていく俺を歌見が素早く支え、ノってくれた。

「じゃないんだよ負けちゃったぞどうすんだ!」

「いてっ」

しかし、すぐに離され地面で頭を打った。まぁ湿った砂浜なので大して痛くはないが。

「えーっと、しゅーんとこ一勝、俺らゼロ勝、フユさんとこ一勝、アキくんとこ二勝……残りは全チーム一試合ずつ……!?」

「しかも俺達の次の相手アキくんだぞ、詰んだな。土下座の練習とフナムシ掴みのイメトレどっちする?」

「みっつんみっつんみっつんが罰ゲーム言い出したんだからね!? みっつんが三匹握ってよぉ!」

二人ともアキチームに勝つ未来を妄想すら出来ていない。

「こうなったらもう最終手段だ……」

「な、何? なんかあんのみっつん」

「……セイカに恨みを語ってくる!」

「やめてやれ」

ゴツン、と歌見に脳天を殴られた。かなり痛い。

「もしそれで次勝っても鳥待のとこか年積のとこと同点になって、最下位決定戦だ。やっとちょっと明るくなってきたんだから、たかが遊びのビーチバレーのためにまた病ませてどうする!」

「怒られると分かっててのボケなんですからそんなしっかり説教しなくても……」

「なんか言ったか!」

「ごめんなさい」

しっかりと叱られて落ち込んだ俺はアキの膝の上に座り、犬を撫でながらサンと楽しげに話しているセイカに目をやった。

「ホントすごいよセイくん、しばらくボクにおんぶされて過ごさない? クロックポジションも出来るんだよね、すっごい便利~。もう外付けの目じゃん」

「そ、そんな……俺は動けないから、せめて指示くらいは正確にって思ってやってただけで……」

「思って出来るのがすごいんだよ」

《んだよサンとばっか話しやがってよぉスェカーチカぁ、俺にも構えよ~。昨晩は俺しか要らないなんてぬかしてたじゃねぇかよ、ありゃ嘘か? あぁん?》

サンに褒められてセイカは頬を赤らめている、アキは何故か機嫌が悪そうだ。

「……モテやがってよぉ! 全員俺の彼氏のくせに俺抜きでイチャコラしやがってもっとしてくださいっ!」

「ほーら大人しくフナムシ掴むイメトレしような~、鳴雷 変態 水月~」

「変なミドルネーム付けられたァ!」

俺達が最下位だともう決まったようなものだ、後はもう岩場を探してもフナムシが見つからないことを祈るしかない。
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