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話が合うタイプではある
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本音を言えば厨房だとかに隠れさせて欲しいところだが、生肉を扱うこの店では特にそういう訳にはいかないので、机の下の奥の方というやや不安なところにレイを隠れさせた。元カレは背が高いから余計に見えないだろう、きっと大丈夫だ。
「鳴雷、生肉って食べていいのか?」
「えっ、ダメだろ……」
「生欲しいの? あるよ、ユッケ。鶏と牛どっちがいい?」
「あ、この店そういうのも頼めるんですね」
「外で話しちゃダメだよ、ネットにも載せないでね」
こっそり出してるのか……
「ダメですよ絶対ダメです! アキきゅんにそんな危ないもの食べさせないでください! 馬ならいいですよ、馬刺しあげてください」
俺も同意見だ、暴力団と関係があるから正式には許可を取っていないだけで検査を受ければクリア出来る状態だったとしても、リスクの高いものは食べて欲しくない。ノーリスクで美味しいものはたくさんあるのだから、そちらで満足していて欲しい。
「馬は大丈夫なんですか?」
「馬は体温が高いので」
「へー……?」
「俺が払いますので、どうぞ高いもの選んで食べちゃってください。特にアキきゅん」
「あの……人の弟きゅん付けで呼ぶのやめてくれません? ちょっと、その……気持ち悪いですよ」
「あなたに言われたくはありませんでしたが、ごもっともですね。今後は気を付けます」
確かに俺の方が気持ち悪いな、初対面で一発ヤらせろとか言ったからな俺。
《秋風、馬なら生で食べられるんだってさ。今持ってきてもらうからちょっと待ってろよ》
《馬? 食ったことねぇなー》
「そうそう、アキくん。髪邪魔じゃありませんか? お肉のタレとかで汚れちゃったらいけませんし、髪食べちゃったらせっかくお肉食べてるのに不快ですよね」
《……俺今話しかけられてる?》
《髪邪魔じゃないかって》
アキの髪は目の下辺りまでは伸びているが、食事の邪魔になる長さではない。サンの方が髪が邪魔そうだ。
《んー、まぁたまに目に入って鬱陶しいぜ。分け目つけてるとはいえな……しぐーはよくあんな髪型してられるぜ、尊敬するね》
「鬱陶しいそうです」
「そうですかそうですか、そうでしょうとも。そんなアキくんにこちらのカチューシャをプレゼント!」
男はカバンからレース付きのカチューシャを取り出した。オタク的には神器とも呼ぶべき聖なる頭飾りことホワイトブリム、メイドがよく頭に付けているアレだ。
《カチューシャ? へぇ……あ、結構いいかも。ちょっと女々しいが……ま、いいや。せんきゅ》
「ありがとう、だそうです」
「どういたしまして」
にこっと微笑んだアキに男は目眩を起こすことも言葉を失うことも理性の糸を切らすこともなかった。これだけアキに変態的な言動を繰り返しておいて……ネザメなら緊急搬送されていた場面だぞ。
「俺の弟に何させてんですか」
「本人が喜んでるんだからいいじゃないですか」
「何でそんなにアキを気に入ってるんです?」
俺のことは警戒して手の届く距離にすら来ないくせに、似たような顔のアキには随分甘い。
「何で、ですか…………俺の妻は髪と目の色がアキくんによく似ているんです、名前も一文字違いで……妻は子供が産めないんです。だからあなたのお母様から彼の写真を見せられた時、あぁ……妻の子供のようだ、と」
しんみりとしてしまった、そんな理由があったならもう怒れない。
(そうだったんですか……なら、アキのこと少しくらいは子供扱いして可愛がってもらっていいですよ)
「人妻かよエッロ。谷間チラ見せ泣きボクロ和服美人人妻とかエロ過ぎるだろ反省しろ属性過多なんだよ」
「キッショ」
「えっ、あ、すいません本音と建前が逆転してしまって!」
「すみません俺も逆転してました」
「本当すいません……ちなみに逆転しなかったらなんて言ってたんですか?」
「キッショ」
建前が本音に侵食され切ってしまうほど俺は気持ち悪かったのか。
「マジでごめんなさい。えっと、奥さん! 奥さんいらっしゃったんですね、そういえば指輪してますねぇ」
「いつも様々なメイド服を着てもらってますよ」
「様々な……!? そ、それはまさか、クラシカルとかヴィクトリアンとか……」
「当然。中華もフレンチもメイド服風水着も取り揃えております」
「サイバーはあるんですか、アンドロイドメイドは!」
「もちろん。和風もゾンビ風もスチームパンクだってありますよ」
俺と男はどちらともなく硬い握手を交わした。
「あなたとはいい酒が飲めそうです」
「未成年です。お使いになっているコスチュームショップやサイトを教えてもらっても構いませんか? メンズもありますか?」
「俺も酒嫌いなんでジュースでやりましょう。すぐに教えましょう。もちろんメンズの女物もございますよ」
これでアキにメイド服を着せられる、ホワイトブリムのせいで陰茎が苛立っていたんだ。他のコスも気になる、確認しておかなければ。
「おぉぉ!? このサイトすごい……!」
「でしょー。あとこの店、通販もやってるんですけど実店舗は都内なので──」
色々な情報をいただいていると、男の電話が鳴った。
「はいよ。あぁ、國行、何? え? 入口にクローズドって……この店行きつけだから定休日にも入れてんの。店長に開けさせるからそこでちょっと待ってな」
元カレの到着が判明し、同志の情報をいただく楽しい時間は終わりを告げた。
「鳴雷、生肉って食べていいのか?」
「えっ、ダメだろ……」
「生欲しいの? あるよ、ユッケ。鶏と牛どっちがいい?」
「あ、この店そういうのも頼めるんですね」
「外で話しちゃダメだよ、ネットにも載せないでね」
こっそり出してるのか……
「ダメですよ絶対ダメです! アキきゅんにそんな危ないもの食べさせないでください! 馬ならいいですよ、馬刺しあげてください」
俺も同意見だ、暴力団と関係があるから正式には許可を取っていないだけで検査を受ければクリア出来る状態だったとしても、リスクの高いものは食べて欲しくない。ノーリスクで美味しいものはたくさんあるのだから、そちらで満足していて欲しい。
「馬は大丈夫なんですか?」
「馬は体温が高いので」
「へー……?」
「俺が払いますので、どうぞ高いもの選んで食べちゃってください。特にアキきゅん」
「あの……人の弟きゅん付けで呼ぶのやめてくれません? ちょっと、その……気持ち悪いですよ」
「あなたに言われたくはありませんでしたが、ごもっともですね。今後は気を付けます」
確かに俺の方が気持ち悪いな、初対面で一発ヤらせろとか言ったからな俺。
《秋風、馬なら生で食べられるんだってさ。今持ってきてもらうからちょっと待ってろよ》
《馬? 食ったことねぇなー》
「そうそう、アキくん。髪邪魔じゃありませんか? お肉のタレとかで汚れちゃったらいけませんし、髪食べちゃったらせっかくお肉食べてるのに不快ですよね」
《……俺今話しかけられてる?》
《髪邪魔じゃないかって》
アキの髪は目の下辺りまでは伸びているが、食事の邪魔になる長さではない。サンの方が髪が邪魔そうだ。
《んー、まぁたまに目に入って鬱陶しいぜ。分け目つけてるとはいえな……しぐーはよくあんな髪型してられるぜ、尊敬するね》
「鬱陶しいそうです」
「そうですかそうですか、そうでしょうとも。そんなアキくんにこちらのカチューシャをプレゼント!」
男はカバンからレース付きのカチューシャを取り出した。オタク的には神器とも呼ぶべき聖なる頭飾りことホワイトブリム、メイドがよく頭に付けているアレだ。
《カチューシャ? へぇ……あ、結構いいかも。ちょっと女々しいが……ま、いいや。せんきゅ》
「ありがとう、だそうです」
「どういたしまして」
にこっと微笑んだアキに男は目眩を起こすことも言葉を失うことも理性の糸を切らすこともなかった。これだけアキに変態的な言動を繰り返しておいて……ネザメなら緊急搬送されていた場面だぞ。
「俺の弟に何させてんですか」
「本人が喜んでるんだからいいじゃないですか」
「何でそんなにアキを気に入ってるんです?」
俺のことは警戒して手の届く距離にすら来ないくせに、似たような顔のアキには随分甘い。
「何で、ですか…………俺の妻は髪と目の色がアキくんによく似ているんです、名前も一文字違いで……妻は子供が産めないんです。だからあなたのお母様から彼の写真を見せられた時、あぁ……妻の子供のようだ、と」
しんみりとしてしまった、そんな理由があったならもう怒れない。
(そうだったんですか……なら、アキのこと少しくらいは子供扱いして可愛がってもらっていいですよ)
「人妻かよエッロ。谷間チラ見せ泣きボクロ和服美人人妻とかエロ過ぎるだろ反省しろ属性過多なんだよ」
「キッショ」
「えっ、あ、すいません本音と建前が逆転してしまって!」
「すみません俺も逆転してました」
「本当すいません……ちなみに逆転しなかったらなんて言ってたんですか?」
「キッショ」
建前が本音に侵食され切ってしまうほど俺は気持ち悪かったのか。
「マジでごめんなさい。えっと、奥さん! 奥さんいらっしゃったんですね、そういえば指輪してますねぇ」
「いつも様々なメイド服を着てもらってますよ」
「様々な……!? そ、それはまさか、クラシカルとかヴィクトリアンとか……」
「当然。中華もフレンチもメイド服風水着も取り揃えております」
「サイバーはあるんですか、アンドロイドメイドは!」
「もちろん。和風もゾンビ風もスチームパンクだってありますよ」
俺と男はどちらともなく硬い握手を交わした。
「あなたとはいい酒が飲めそうです」
「未成年です。お使いになっているコスチュームショップやサイトを教えてもらっても構いませんか? メンズもありますか?」
「俺も酒嫌いなんでジュースでやりましょう。すぐに教えましょう。もちろんメンズの女物もございますよ」
これでアキにメイド服を着せられる、ホワイトブリムのせいで陰茎が苛立っていたんだ。他のコスも気になる、確認しておかなければ。
「おぉぉ!? このサイトすごい……!」
「でしょー。あとこの店、通販もやってるんですけど実店舗は都内なので──」
色々な情報をいただいていると、男の電話が鳴った。
「はいよ。あぁ、國行、何? え? 入口にクローズドって……この店行きつけだから定休日にも入れてんの。店長に開けさせるからそこでちょっと待ってな」
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