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予想外の対応
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席に戻るとレイは既に居なかった。彼氏達は皆硬い表情で俺を見上げていたが、アキだけは肉にがっついていた。
「レ、レイ……レイは、レイはっ!? レイ!?」
「水月、レイちゃんなら机の下だよ」
覗いてみるとシュカの足にしがみついているレイが居た。
「鳴雷、これ……武器に」
セイカに手渡されたのは彼の義足だ。程よく長く、金属の部分もあって硬いとはいえ、これが武器になるだろうか? 言っている場合ではないがこれを振り回すビジュアルがだいぶ嫌だ。
「鳴雷 水月さん」
低く色気のある声に名を呼ばれ、全身から冷や汗が吹き出す。義足を震える手で握り締めて振り返る。
「……っ」
ただ振っても受け止められるだけだろう、ヤツは投げ付けられたハサミをつまんで止める反射神経を持っている。隙を伺うのだ。
「誠に……申し訳ございませんでしたぁっ!」
隙だらけだ。見事な土下座だ。驚きで思考が停止してしまい、身体が動かない。
「…………へっ?」
「もちろん治療費などはお支払いさせていただきますし、こちらの食事代も全て俺が持ちます」
「やったぁ」
サンが呑気に喜ぶ、ぺたぺたと足音を立てて戻ってきたフタが笑顔のサンに気付き、頬を緩めた。
「なぁにサンちゃん、機嫌いいじゃ~ん」
サンの隣に膝をつき、頭を撫でている。癒される光景だ。っと癒されている場合ではない。
「誠に申し訳ございません……差し支えなければ経緯の説明をしていただけますか? 俺にはまだその怪我が俺の従弟によるものだということしか分かっていません」
「え、ぁ……従弟?」
「……? はい。形州 國行は俺の従弟です」
なるほど、それで親戚だったり兄弟だったり情報が割れていたのか。従兄弟なら歳が近い、それも彼らの目元のそっくりさなら兄弟のように見える。
「じょ、状況説明ですね……えっ、と…………とりあえず! 立ってください。あの……お、お肉、お肉食べながらにしましょう。ほら、座ってください」
多くの人間が靴を履いて踏み締めてきたであろう通路にいつまでも頭を擦り付けさせるのは、謝られている俺の方が罪悪感を膨らませてしまう。これが土下座の力か、過ぎた謝罪は圧力だ。
「…………」
立ち上がった男は頭や膝を払い、俺がぽんぽんと叩いた座布団をじっと見つめた。
「………………お金ならいくらでも出しますので、ヤらせろとかは勘弁してください……それだけは」
「んなこと要求しません! お、俺の隣嫌なら別のとこでもいいですから!」
ここまで拒絶されたのは初めてだ、俺は超絶美形になったのに。頑固なノンケ、いや、ここまで嫌がるのならホモフォビアの可能性もある。視線にも気を付けよう。
「えっと、まず……レイが元っ……か、形州くんと付き合ってたんです」
そうっと机の下から顔を出したレイの頭を撫でる。
「それで、別れたんですけど……しつこくて、ストーカー化してて、俺達で……その、やばいよなって、どう対策していこうかって前から話し合ってて……その最中、レイが家に押し入った形州くんに攫われてしまったんです」
結局立ったままの男は深いため息をつきながら顔を覆った。
「つ、続けますよ?」
親戚の非道な行いに酷く傷付いている、彼は元カレとは違い随分とまともな感性を持っているようだ。
「それで、俺が形州の家に行ったんです。返せって……あっ、場所は地図アプリで調べました、苗字打ったら出てきたんで。それで、えーっと……取り返しに行ったんですけど、ご覧の通り惨敗で……でもレイが逃げる時間だけは稼げたんです。で、俺もボコボコにされた後割と放置されたんで逃げて……そんな感じです」
サンの関わりやシュカの無免許運転を隠すため、少々省略させてもらった。
「………………ごめんなさい」
「あっ、いえいえ、そんな……あなたは悪くないんですから、あなたがそんな気に病む必要はありませんよ」
「あの……レイさん?」
声をかけられたレイはビクッと身体を跳ねさせ、俺の手をぎゅっと握って小さく震えた。俺の膝で半分顔を隠したまま男を見上げて「なんですか……」と消え入りそうな声で返事をしている。
「この度は誠に申し訳ございません。傷はございませんか? 治療費などはお支払いさせていただきます、精神科等に通う必要があればそちらももちろん……」
「ぁ、やっ、お、俺は何ともっ、大丈夫っす」
「……そうですか。本当に申し訳ございません……本当に」
「あのっ、俺……お金よりもして欲しいことがあって」
「見抜き以上は嫌です」
「あっ見抜きはセーフなんだ……じゃなくて! 違くて! 形州くんにレイを諦めるようあなたから言ってくれませんか? 今日は逃げてきただけで説得とか出来た訳じゃないんです、まだまだレイは狙われてそうで……あなたなら何とか出来ませんかね?」
「ええ、もちろん……先程一緒に昼飯を食おうと誘ってしまったので、そろそろ着くかと思います。この場で約束させます」
「……えっ」
元カレがこの場に来る? それはまた話が違ってこないか?
「レイ……もう少し奥の方に隠れとけ。シュカの向こうとかに」
一番端に座っているシュカの方まで下がっておくよう伝えるとレイは慌てて机の下を進んでいった。
「はぁ……」
男はまたまた深いため息をつき、俺達に背を向けて蹲った。かなり責任を感じているようだ、元カレと同じタイプだなんて思ってしまって申し訳ない。
「マジかよ國行ぃ……あのバカ、国宝級美少年の兄貴殴るとかないわぁ……仲良いらしいし絶対傷付いてるよアキきゅん……あぁあこの俺がアルビノ美少年に対しこんな失態をっ……」
なんか思ってた落ち込み方と違う。
《この肉マジうま。そういや日本人って魚も卵も生で食うけど肉は生で食わねぇの?》
母は一体アキのどんな写真を彼に見せたんだろう。
「レ、レイ……レイは、レイはっ!? レイ!?」
「水月、レイちゃんなら机の下だよ」
覗いてみるとシュカの足にしがみついているレイが居た。
「鳴雷、これ……武器に」
セイカに手渡されたのは彼の義足だ。程よく長く、金属の部分もあって硬いとはいえ、これが武器になるだろうか? 言っている場合ではないがこれを振り回すビジュアルがだいぶ嫌だ。
「鳴雷 水月さん」
低く色気のある声に名を呼ばれ、全身から冷や汗が吹き出す。義足を震える手で握り締めて振り返る。
「……っ」
ただ振っても受け止められるだけだろう、ヤツは投げ付けられたハサミをつまんで止める反射神経を持っている。隙を伺うのだ。
「誠に……申し訳ございませんでしたぁっ!」
隙だらけだ。見事な土下座だ。驚きで思考が停止してしまい、身体が動かない。
「…………へっ?」
「もちろん治療費などはお支払いさせていただきますし、こちらの食事代も全て俺が持ちます」
「やったぁ」
サンが呑気に喜ぶ、ぺたぺたと足音を立てて戻ってきたフタが笑顔のサンに気付き、頬を緩めた。
「なぁにサンちゃん、機嫌いいじゃ~ん」
サンの隣に膝をつき、頭を撫でている。癒される光景だ。っと癒されている場合ではない。
「誠に申し訳ございません……差し支えなければ経緯の説明をしていただけますか? 俺にはまだその怪我が俺の従弟によるものだということしか分かっていません」
「え、ぁ……従弟?」
「……? はい。形州 國行は俺の従弟です」
なるほど、それで親戚だったり兄弟だったり情報が割れていたのか。従兄弟なら歳が近い、それも彼らの目元のそっくりさなら兄弟のように見える。
「じょ、状況説明ですね……えっ、と…………とりあえず! 立ってください。あの……お、お肉、お肉食べながらにしましょう。ほら、座ってください」
多くの人間が靴を履いて踏み締めてきたであろう通路にいつまでも頭を擦り付けさせるのは、謝られている俺の方が罪悪感を膨らませてしまう。これが土下座の力か、過ぎた謝罪は圧力だ。
「…………」
立ち上がった男は頭や膝を払い、俺がぽんぽんと叩いた座布団をじっと見つめた。
「………………お金ならいくらでも出しますので、ヤらせろとかは勘弁してください……それだけは」
「んなこと要求しません! お、俺の隣嫌なら別のとこでもいいですから!」
ここまで拒絶されたのは初めてだ、俺は超絶美形になったのに。頑固なノンケ、いや、ここまで嫌がるのならホモフォビアの可能性もある。視線にも気を付けよう。
「えっと、まず……レイが元っ……か、形州くんと付き合ってたんです」
そうっと机の下から顔を出したレイの頭を撫でる。
「それで、別れたんですけど……しつこくて、ストーカー化してて、俺達で……その、やばいよなって、どう対策していこうかって前から話し合ってて……その最中、レイが家に押し入った形州くんに攫われてしまったんです」
結局立ったままの男は深いため息をつきながら顔を覆った。
「つ、続けますよ?」
親戚の非道な行いに酷く傷付いている、彼は元カレとは違い随分とまともな感性を持っているようだ。
「それで、俺が形州の家に行ったんです。返せって……あっ、場所は地図アプリで調べました、苗字打ったら出てきたんで。それで、えーっと……取り返しに行ったんですけど、ご覧の通り惨敗で……でもレイが逃げる時間だけは稼げたんです。で、俺もボコボコにされた後割と放置されたんで逃げて……そんな感じです」
サンの関わりやシュカの無免許運転を隠すため、少々省略させてもらった。
「………………ごめんなさい」
「あっ、いえいえ、そんな……あなたは悪くないんですから、あなたがそんな気に病む必要はありませんよ」
「あの……レイさん?」
声をかけられたレイはビクッと身体を跳ねさせ、俺の手をぎゅっと握って小さく震えた。俺の膝で半分顔を隠したまま男を見上げて「なんですか……」と消え入りそうな声で返事をしている。
「この度は誠に申し訳ございません。傷はございませんか? 治療費などはお支払いさせていただきます、精神科等に通う必要があればそちらももちろん……」
「ぁ、やっ、お、俺は何ともっ、大丈夫っす」
「……そうですか。本当に申し訳ございません……本当に」
「あのっ、俺……お金よりもして欲しいことがあって」
「見抜き以上は嫌です」
「あっ見抜きはセーフなんだ……じゃなくて! 違くて! 形州くんにレイを諦めるようあなたから言ってくれませんか? 今日は逃げてきただけで説得とか出来た訳じゃないんです、まだまだレイは狙われてそうで……あなたなら何とか出来ませんかね?」
「ええ、もちろん……先程一緒に昼飯を食おうと誘ってしまったので、そろそろ着くかと思います。この場で約束させます」
「……えっ」
元カレがこの場に来る? それはまた話が違ってこないか?
「レイ……もう少し奥の方に隠れとけ。シュカの向こうとかに」
一番端に座っているシュカの方まで下がっておくよう伝えるとレイは慌てて机の下を進んでいった。
「はぁ……」
男はまたまた深いため息をつき、俺達に背を向けて蹲った。かなり責任を感じているようだ、元カレと同じタイプだなんて思ってしまって申し訳ない。
「マジかよ國行ぃ……あのバカ、国宝級美少年の兄貴殴るとかないわぁ……仲良いらしいし絶対傷付いてるよアキきゅん……あぁあこの俺がアルビノ美少年に対しこんな失態をっ……」
なんか思ってた落ち込み方と違う。
《この肉マジうま。そういや日本人って魚も卵も生で食うけど肉は生で食わねぇの?》
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