冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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当然ながら痛いのは痛い

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レイによる事情説明と俺の手当てが終わり、レイが俺の腕の中で泣き止み始めた頃、大仕事がやっと終わったとでも言いたげなため息を彼氏達がバラバラについた。

「水月はボッコボコにされてもうたし、サンちゃんのたっかい包丁は失くなったし、たっかい車も凹みめっさついたけど、このめんが無事に帰ってきたんや、めでたいなぁ!」

「ぁ、そうだせんぱいっ、病院行かなきゃっすよ。頭打ったりしたんしょ?」

涙を拭って顔を上げたレイは俺の頭に恐る恐る触れた。

「大丈夫だよ……大袈裟だなぁ。しょっちゅう俺より大怪我してそうなフタさんだって病院行ってないんだぞ?」

「誰っすか?」

「ボクの兄だよ」

「ぁ、そうなんすね……っていうか、自己紹介してなかったっすね。遅れながら、はじめまして、木芽 麗っす。よろしくお願いしますっす」

「穂張 蚕だよ。よろ~、ぁ、ちょっと顔触っていい?」

「へ? はい……」

ぺたぺたとサンに顔を撫でられるレイはくすぐったそうにしている。可愛い。

「ピアスいっぱい空けてるんだね、分かりやすくていいよ」

「……? はぁ……そうっすか」

「改めてみんなにも、穂張 蚕でーす。カイコって書いてサンだよ。穂張って呼ばれんのあんま好きじゃないし、歳上だけどサンさんってなんか変だから気軽にサンって呼んでね。サンちゃんでもいいよ~」

「サンちゃーん」

「なぁにりゅーくん」

俺の知らない間にめちゃくちゃ仲良くなってる。俺が初恋でろくに友人も居らず兄を監禁するほど寂しがりなサンは絶対にコミュ障仲間だと思っていたのに、打ち解けるのが早過ぎないか? 共に困難に立ち向かうと絆が深まるとか何とかってことか?

「ぁ、そういえばレイちゃんも髪の毛元気なかったね、傷んでるって程じゃないけど。染めてるの?」

「ぁ、はい……見えてないんすか?」

「生まれつき何にも見えない」

「あっ、そうなんすか。杖とか廊下の手すりとかからそうかなって思ったんすけど、ちょっとは見えてるのかと……ほら、不良相手にめちゃくちゃ強かったじゃないすか」

シュカとアキだけでなくサンも戦ったのか?

「見えなくても声と足音で大体位置分かるし、当たったら掴めるし、掴んだら身体の向きとか分かるからそれで終わりだし」

「終わりって……」

「金的すれば終わりだよ、男としての人生が」

「内股でぷるっぷるしとったん何人か居ったけど……アレ全部サンちゃんのんか」

「私は腹狙い派ですし、秋風さんは顎で一発KO狙いですからね」

「腹は鍛えてる相手だと手首痛いし、膝蹴りだと足掴まれるリスクあるし、頭狙うと頭突きで返されて拳イッちゃうことあるから、金的が一番だよ。柔らかくてこっちにダメージないし、基本鍛えらんないし……取ってるヤツとか収納出来るヤツたまに居るけど、高校生の不良レベルじゃ居ないっしょ。玉だよ玉」

「いや……同じ男として金的はちょっと、こっちに精神ダメージがあるというか……キツいです」

シュカにもそういう感性あるんだ。

「……漫画とかでよくある、舌鳴らしてソナーで位置把握するとか……出来るっすか?」

俺もオタクの端くれとしてちょっと気になっていたけれど、聞きにくくて諦めていた質問だ。ナイス、レイ。

「ボク、コウモリとかじゃなくて人間なんだよね」

「ぁ……やっぱフィクションなんすね、すいませんっした」

「建物とか壁とかまでの距離ならイケるかもだけど、動き回る人間の位置測って喧嘩するとかは無理だよ? んなことしなくても足音消せるヤツまず居ないし、やる意味なくない?」

「ぅう……ロマンなんすけどねぇ」

「アンタだって目ぇ瞑って舌鳴らしてもそういうの分かんないだろ?」

「まぁ……それはほら、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされてるとか、日頃の練習とか」

「しょっちゅう舌鳴らしてるヤツ、どう思う?」

「……めっちゃ嫌っすね」

「ねー。アンタの言ってる漫画ってバトル漫画ってヤツだろ? 戦わなきゃダメなヤツ。ボクは戦う理由も必要もないし……今日の喧嘩だってガタイでどうにかしてただけだからね」

俺も一応180センチ以上あるのに、何にも出来なかったな。相手が悪かったのだと頭では理解しているが、心が納得しない。

「喧嘩はウエイトが全てだよ」

「私は喧嘩の強さは覚悟の強さだと思います。ほら、秋風さん、木芽さんの元カレさん相手に結構善戦してませんでした? ウエイト差はかなりありましたけど」

「続けとったら勝ってたんかな、アキくんボロボロなるんは絶対嫌やし途中で止め入ってまうやろけど、そういうんは気になるわ」

「最強論争好きなんだ? 男の子だねぇ」

「まずは両者のスペック確認ですね。私気になることがあるんですよ、秋風さんの耐久力についてです。秋風さん、一発しっかり腹に入ってましたけど……アレ効いてなかったんですかね? その後も動き鈍ってませんでしたよね」

「かーくんは足二発蹴られて体重かけんようにしとって、その隙突かれて転んどったし……意外と耐久力はアキくんのが上なんやろか」

「……な訳ないだろ」

アキの抱き枕になっているセイカがベッドの上から話に参加する。

「秋風はな……呼吸がどれだけブレても、痛みで意識が飛びそうでも、筋肉や骨に直ちに異常が出ていない限りは常にトップパフォーマンスを出せるように訓練してあるだけだ」

「…………ノックバック無効ってことっすね!」

ゲームやってるヤツにしか分からない喩えだが、俺にはよく分かったぞ。

「ひるまへんっちゅうこと? そんなん出来るん?」

「理論的には可能ですよね、だって腹を殴られたって手足の筋肉や骨は無事なんですから」

「……ダメージは受ける。我慢強いだけだ。だから今寝てる……つーか痛くて拗ねてる。心配してもあんまり話しかけるなよ、構われたくはないみたいだから」

風邪を引いた時に何度も「大丈夫?」と尋ねられると段々腹が立ってくるアレだな。心配してくれるのは嬉しいけれど、どう答えたって辛さは変わらないし、返事をするのも大変な時には話しかけないで欲しいものだ。けれど弱っている時に一人になると更に心細い、だからアキはセイカを抱き枕にしているのだろうか。余計な声掛けをせず、ただ体温と存在を教え、時折頭や背を撫でてくれる彼を──俺も全身痛いからそんな優しい彼氏に添い寝して欲しいなぁー!
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