冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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運転免許と運転技術

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車のボンネットや車の手前に元カレの子分だろう男達が投げられる。自分の頼みを聞いてくれた連中を轢かれるかもしれない位置に投げ飛ばすなんて、アイツは一体何なんだ。どういう精神構造をしていたらそんなことが出来るんだ。

「くーちゃん投げながら歩いてきてるっすけど、大丈夫っすかねぇ!」

「ドアも窓も閉じました、大丈夫ですよ。流石に叩き割ったりは出来ないでしょう」

バンッ、と後部座席の窓に男が投げ付けられた。

「びっくりしたー……ぅー、前話した時は悪いヤツやなさそうやってんけどなぁ」

「横は……まずいかもしれませんね、バックの時に轢くかも……木芽さん、上手く避けられますか?」

「お、俺ペーパードライバーなんすよぉっ、車持ってないし……色々便利だから免許取っただけでぇっ、運転そんな自信ないんす。なのにこんな高い車ぁっ」

「さっきからめちゃくちゃなんかぶつかってきてない? 車体凹んでないかなぁ、ヒト兄貴に怒られる……」

「人っすよぶつかってきてるのぉ! ぅうう……くーちゃんやば……ひぃっ!?」

とうとう車の真横までやってきた元カレが運転席の窓をバンッと叩いた。

「……開けろ」

窓越しに声は聞こえなかったが、何と言ったかは口の動きで分かった。

「バックバックバック! 木芽さんバック! 今なら後ろには投げられません!」

「ひゃいぃっ! バックぅ!」

斜め後ろに車がバックし始める。ピーッピーッという警告音さえ焦っている今は腹立たしい、この音が早く鳴っても遅く鳴っても車の速度は変わらないのに。

「どっ、どこまで!? どこまでバックっすか!?」

「曲がれるところで曲がりましょう、あなたこの町に住んでるんですから地理分かるでしょう?」

「脇道なんか全然分かんないっすよぉ!」

「じゃあナビ見なさい!」

「前もミラーもナビも見るなんて目ぇ足りないっすぅ!」

泣きごとを言いながらもレイは車をバックさせ、脇道に入ってスピードを上げた。もう元カレの脅威から脱したと考えていいだろう。

「道分かんないっす、ちょっとナビ操作するっす……くーちゃん来てないっすよね?」

「車に追い付いて来てたら本当にバケモンですよ」

「自分らがバッタバッタなぎ倒した連中にバイク乗っとるヤツ居らんかったか?」

「ぁ……木芽さん早く逃げましょう、市街地じゃバイクの小回りには敵いませんよ」

ナビの操作を終えたレイは再び車を動かした。目的地は「自宅」に設定したようだ、この車はサンの物だからサンの家に案内されるのだろう。

「追ってきてませんね……バイク、見つけられてないんでしょうか」

「先回りとかしてんちゃうん、かーくんのホームやろこの辺」

「バイクなら車の方が強いよ、追っかけてきたらぶつけちゃえ」

「法律的には車は一番弱いっすよぉ!?」

「形州 國行轢いたらボスにぶっ殺されるから法律なんか関係ない……ぁ、そうだ水月、包丁返して。持ってったろ」

「え? あっ……ご、ごめん、落とした」

駐車場近くの歩道に落としてそのまま置いてきてしまった。

「えー……」

「ごめん! 本当にごめん……弁償する」

人を刺す目的で勝手に持ち出して、その上失くしてくるなんて最低だ。嫌われてしまってもおかしくない。

「弁償って言われてもなー、アレ確か三年待ちくらいだし……いいよ別に、そんなに使ってなかったし」

「ごめん……」

脇道を抜けて大通りに出たが、元カレが追いかけてくる様子はない。逃げ切ったと思っていいだろう。

「えっと……みんな、来てくれてありがとう。俺一人じゃダメだった、何にも出来なかった……本当にありがとう」

「取り返しに行くなら行くと言って欲しかったですね、急に動くのって大変なんですよ」

「せやせや、このめん心配やったんは自分だけとちゃうんやで」

「うん……ごめん」

「わー俺もめっちゃ参加したい、お礼とか言いたいんすけど運転しながら話すの無理っす後ででいいっすかね」

早口で棒読み、本当に車の運転に慣れていないんだな。不安になってきた。

「アキ、ありがとうな。お前が一番……」

「秋風さっき寝たぞ」

一番の功労者であるアキに礼を言おうと振り向いたが、彼はセイカの肩に頭を預け、セイカの腕を抱き締めて目を閉じていた。

「そっか……疲れたんだろうな、お腹大丈夫かな」

「腹に結構なんもらってたもんなぁ、せやけど平気で動いとったしそない心配せんでええんちゃう? それより水月や、頭打ったやろ」

「俺は大丈夫だよ。あのさ、みんな、どうやってここまで来たんだ?」

「サンちゃんが水月が包丁持って乗り込んだかもしれん言うてきて、車で向かお言うからサンちゃん家みんなで行ったんよ。車でかーくん家向かっとったら逃げとるレイ見っけて、合流して、集まってきよった連中をアキくんと鳥待とサンちゃんが蹴散らしてなぁ……」

「あ、それは何となく分かるんだけど……免許持ってるのレイだけだろ? レイと合流するまで、ここまではどうやって来たんだ?」

年齢的にはサンが免許を持っていてもおかしくないのだが、盲目では取れないと思う……取れるのか?

「あぁ、それはとりっ、むぐっ……むー!」

「内緒です」

「う、うん……まぁ、バイクの免許は今度取るんだもんな」

「何のことですか? ここまで車で来れたことに私は全く関与していませんよ、移動中は寝ていたので何も分かりません」

「うん……ありがとうな。レイを取り返せたんだ、法令遵守なんて言わないよ……俺の方が酷いしな、銃刀法違反……には包丁だからならないのかな? 本来の目的じゃないからなるのかな。殺人未遂にはなるよな、いやでも向こうにダメージないし……計画罪? とかあったっけ?」

「私は何も悪いことはしていません」

無実だと言い張るシュカの頭を撫で、鬱陶しそうで照れくさそうな笑顔を愛でる。

「着いたっす、けど……ガレージ入れるの無理っすぅ! 絶対ガリってやっちゃうっすよ」

「やってもいいよ、車なんて動けばいい」

「こんな高い車擦れないっすよぉ!」

「仕方ありませんね……私がやります、代わりなさい」

さっき頑固に認めなかったのは何だったんだとシュカを見つめていると、顔をぺちっと叩かれ目を閉じていろと言われた。
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