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四人寄れば何の知恵?
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ソファに浅く腰掛け、スマホを握り締めたまま、深いため息をつく。
(…………フラれた? なんで? どうして……一緒に買い物行っただけで夫婦みたいって笑って、幸せそうにしてて……ちょっと恋人っぽいことする度に泣いて喜んでた……レイ、が……? なんで? どうして?)
カミアやネザメ辺りならまだ俺をフるのは分かる。一般の男子高校生なんかにうつつを抜かしていていい立場じゃないし、正直……俺じゃなきゃダメだってほどの愛情を向けられているようには感じない。でもレイは、レイは違う、俺に一目惚れをしてつきまとって、ちゃんとした恋人として扱っただけで涙を流して喜んだ、俺のプロポーズ紛いの言葉に頷いてくれた。
「レイ……」
レイの気持ちが全く見えない。さっき電話で話したのに現実感がない、演劇や何かのような……レイの感情をあまり感じない会話だった。最後以外は。
(泣いてましたよな。わたくしと別れるのが本当は嫌……? でも、なら、何か話してくれるはず。わたくしをフる理由を一切話さず、もう電話もかけるなって……不治の病が見つかって、わたくしを悲しませないためにこっ酷くフって嫌われようとしてるとか……出来の悪い邦画みたいなストーリーですな)
会いたい。ちゃんと顔を見て話したい。別れたくない。
「……フラれちゃったんでしょうか?」
「このめんの声は聞こえんかったけど……水月のんと今の様子見たら、別れたいっちゅうんは本気やったみたいやね」
「なんでなんだろ、木芽って鳴雷のことすごい好きそうじゃなかった?」
「ん~……なんや不自然やねんなぁ。しかし……八月に紅葉さんが別荘連れてってくれる予定やねんけど、このめん不参加なんかなぁ」
「そりゃそうでしょう、別れといて旅行だけ来るなんて頭おかしいですよ」
「鳥待はグルチャ見てへんから知らんかもやけど、このめんめっちゃ旅行楽しみにしててんで? 誰か一緒に水着買いに行こー言うて、なぁせーか。せーかスマホ持ってへんけどアキくんのんで一緒に見てんねんやろ? たまにアキくんの使うて返信してくれるもんな」
「えっ、ぁ、うん……あの、木芽……に、俺、相談乗ってもらってた。髪ボサボサだから、切ったりしたいなって……木芽、髪染めてて詳しそうだから、聞いてて……今度美容院連れてったげるって言ってくれて、でも俺お金ないからって……」
「ううん……? 色々予定立てとってんなぁ、やっぱり変やで……水月ぃ、俺このめんと直接会って話した方がええ思うわ」
キッチンでシュカ達と話していたリュウが寄ってきてそう言った、眉尻を下げてこちらの様子を伺うような表情はリュウらしくない。
「……あぁ、俺も……そう思う」
「せやんな」
「でも、電話もメッセも……返してくれなくなっちゃった。電話かけてくるなって言われたし……」
「んー……家知っとんのやし行ってみたらは? 俺も付き合うたるわ」
元カレと同じじゃないか、なんて思ってしまって頷けないでいると、目の前にしゃがんでいたリュウはため息をついて立ち上がり、キッチンに戻った。
「すまんすまん、俺が洗うから大丈夫やで」
「どうも。水月、どうしましょう、そっとしときます? 話しかけた方がいいんでしょうか」
「鳥待意外とこういう時慌てんねんな……皿洗ってから考えるわ。先水月んとこ行っといて」
リュウと入れ替わりにやってきたシュカは俺の隣に腰を下ろした。しかし座り方は静かで遠慮がちで、俺から拳一つ分離れていた。
「ふぃー、終わった……なんや、話してへんの」
皿を洗い終えたリュウは食事用テーブルから椅子を離してソファの前まで引きずり、跨るように座って背もたれに抱きついた。
「……水月ぃ、俺らこのめんがなんて言っとったか聞こえてへんかってん、急に別れる言うた理由は話してくれたん?」
俺は首を横に振った。
「やっぱりぃ? せやろ思った。ふぅん……どないしたんやろなぁ、このめん……」
「……単になんか冷めたとか飽きたとかいう理由なんじゃないかと思うのは、私が冷たい人間ということでしょうか」
「あんま話してへんからとちゃう? 鳥待は人情深いヤツや思うで、俺は」
「そう……です、か」
「あ、あのさっ、木芽……体調悪かったりとかなかったか?」
「……確かに風邪引いた時とか気分が落ち込みますけど、それで別れるまでいきますかね」
「ぁ、そういうことじゃなくてさ、俺なら……鳴雷と別れたくなる時ってどんな時だろって思って、考えて……それ、でさ……あの、なんか、病気とかで……もうすぐ死にそうなら、急いで別れるなぁって。ボロボロになってくとこ見られたくないし、鳴雷を悲しませたり傷付けたりするの、もう嫌だし……だから、木芽……重い病気だったりしないかなーって」
発想が俺と同じだな。
「んー……元気そうやったけどなぁ。まぁ病気って見て分かるもんばっかとちゃうし……可能性はありそうやね。急で理由も話されへんとなれば」
「急で理由も話せない……他に可能性があるとすれば、誰かに脅されてるとか?」
「ありやね。せやけど病気より実感湧かんわ。なんやねん水月と別れろて脅すて。意味分からんわ」
俺が感知していない俺の過激ストーカーが居たとしても、最近会えていないレイを脅すのは筋が通らない。やはり分からないな、俺の頭が悪いからか?
「ですねぇ」
「………………元カレ、ヤバいヤツなんだよな。木芽って」
「あっ……そういえばそうでした。まさか見つかっちゃったんですか? それで今彼の水月と別れなきゃ殺すと脅された……?」
「えー、かーくんそんな酷いことせんて」
「いやアイツ一回会ったけど犯罪者ヅラだったぞ」
「犯罪者ヅラなだけやよ。根はええ子やで、ヤバいとこあるけど」
元カレ……元カレか、マンションの前をウロついてたまにインターホンを押すだけのアイツに怖がりで慎重な引きこもりのレイが見つかるとは思えないけれど、可能性としてはあるか。
「なんでそんなに元カレさんを庇うんだか。じゃあこれはどうです? 見つかったか見つかってないかは置いておいて、元カレさんのストーカー行為が激化。水月にも危険が及びそうだと判断し、縁を切る決断を下した」
「なるほど……っていうか警察に相談すればよくないか?」
「ま、それはそうですよね」
「男同士で証拠もろくにあらへんかったら警察動かへんて」
「天正さんは妙に警察を信用しませんね……ここは東京ですよ、府警とは違うんですよ」
「府警はちゃんと仕事しとるわ! 警察嫌いやけどそう言われるとめっちゃムカつくわ!」
「家の周りウロウロしたり色んなヤツに聞き込みしたりって十分警察動けると思うけどなー」
警察に相談しろ、とセイカが言い出すのは意外だな。親からの虐待やら重大な交通事故に遭わせられるようなイジメやら、警察に駆け込むべき時に沈黙してきたくせに。
「話し合って出るのはこんなところですかね。水月、水月がフラれる理由その一、単純に飽きた。その二、重い病気が判明した。その三、元カレ関連。私達が思い付くのはこの辺りです。水月はどう思いますか?」
「…………一人で考えてた時は、病気とかかなって思ってた。電話……最後の方、レイ泣いてたんだ。だから飽きたとかならそんな、泣くってのは変だし……二か三かなぁ」
「泣いてた……? 変わってきますね、天正さんもう少し考えましょう」
「……ごめん、少し一人にさせてくれ。みんなは……なんか、映画見たり、ゲームしててくれていいよ。俺が甲斐性なしでフラれただけかもしれないし、それなら考えてもらうの情けないし……アキ、部屋借りるな」
一人退屈そうにぷらぷらと足を揺らしていたアキの頭を撫で、窓から庭に出た。狭くなったウッドデッキから数える程しか星が見えない夜空を見上げた。
(…………フラれた? なんで? どうして……一緒に買い物行っただけで夫婦みたいって笑って、幸せそうにしてて……ちょっと恋人っぽいことする度に泣いて喜んでた……レイ、が……? なんで? どうして?)
カミアやネザメ辺りならまだ俺をフるのは分かる。一般の男子高校生なんかにうつつを抜かしていていい立場じゃないし、正直……俺じゃなきゃダメだってほどの愛情を向けられているようには感じない。でもレイは、レイは違う、俺に一目惚れをしてつきまとって、ちゃんとした恋人として扱っただけで涙を流して喜んだ、俺のプロポーズ紛いの言葉に頷いてくれた。
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レイの気持ちが全く見えない。さっき電話で話したのに現実感がない、演劇や何かのような……レイの感情をあまり感じない会話だった。最後以外は。
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「……フラれちゃったんでしょうか?」
「このめんの声は聞こえんかったけど……水月のんと今の様子見たら、別れたいっちゅうんは本気やったみたいやね」
「なんでなんだろ、木芽って鳴雷のことすごい好きそうじゃなかった?」
「ん~……なんや不自然やねんなぁ。しかし……八月に紅葉さんが別荘連れてってくれる予定やねんけど、このめん不参加なんかなぁ」
「そりゃそうでしょう、別れといて旅行だけ来るなんて頭おかしいですよ」
「鳥待はグルチャ見てへんから知らんかもやけど、このめんめっちゃ旅行楽しみにしててんで? 誰か一緒に水着買いに行こー言うて、なぁせーか。せーかスマホ持ってへんけどアキくんのんで一緒に見てんねんやろ? たまにアキくんの使うて返信してくれるもんな」
「えっ、ぁ、うん……あの、木芽……に、俺、相談乗ってもらってた。髪ボサボサだから、切ったりしたいなって……木芽、髪染めてて詳しそうだから、聞いてて……今度美容院連れてったげるって言ってくれて、でも俺お金ないからって……」
「ううん……? 色々予定立てとってんなぁ、やっぱり変やで……水月ぃ、俺このめんと直接会って話した方がええ思うわ」
キッチンでシュカ達と話していたリュウが寄ってきてそう言った、眉尻を下げてこちらの様子を伺うような表情はリュウらしくない。
「……あぁ、俺も……そう思う」
「せやんな」
「でも、電話もメッセも……返してくれなくなっちゃった。電話かけてくるなって言われたし……」
「んー……家知っとんのやし行ってみたらは? 俺も付き合うたるわ」
元カレと同じじゃないか、なんて思ってしまって頷けないでいると、目の前にしゃがんでいたリュウはため息をついて立ち上がり、キッチンに戻った。
「すまんすまん、俺が洗うから大丈夫やで」
「どうも。水月、どうしましょう、そっとしときます? 話しかけた方がいいんでしょうか」
「鳥待意外とこういう時慌てんねんな……皿洗ってから考えるわ。先水月んとこ行っといて」
リュウと入れ替わりにやってきたシュカは俺の隣に腰を下ろした。しかし座り方は静かで遠慮がちで、俺から拳一つ分離れていた。
「ふぃー、終わった……なんや、話してへんの」
皿を洗い終えたリュウは食事用テーブルから椅子を離してソファの前まで引きずり、跨るように座って背もたれに抱きついた。
「……水月ぃ、俺らこのめんがなんて言っとったか聞こえてへんかってん、急に別れる言うた理由は話してくれたん?」
俺は首を横に振った。
「やっぱりぃ? せやろ思った。ふぅん……どないしたんやろなぁ、このめん……」
「……単になんか冷めたとか飽きたとかいう理由なんじゃないかと思うのは、私が冷たい人間ということでしょうか」
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「そう……です、か」
「あ、あのさっ、木芽……体調悪かったりとかなかったか?」
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