冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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最後の電話

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食材やその他をカゴに入れ、レジに並ぶ。サングラスをかけた俺達兄弟は目立つようで周囲の視線を集めてしまう。

(うーむ目立ってますな。あんまり顔ジロジロ見られるのも嫌ですし、かけてない方がいいんでしょうか。ゃ、それじゃカミアどのの放送を見ていた方に気付かれてしまいまそ。マスクとかのが馴染めますかな、目元丸出しじゃ変装にならない気も……うぅむ、悩みますぞ。なんでわたくし有名人でもないのにこんな……超絶美形だから仕方ありませんなぁ! いやー辛い辛い)

おっと、今はレイ以外に悩んでいる場合ではない。

「ひっ……!? んゔぅっ!? んっ、んんっ……!」

悩みを消すためポケットに入っているリモコンを弄り、リュウに挿入しているディルドを稼働させた。突然の振動に驚き、快感を得て、慌てて声を押さえる彼の仕草には癒される。悩みが消えていく。

「母さんからもらった電子マネー結構余ったなぁ、お小遣いとしてもらっとくか。バイト休んでるしちょうどいいや」

「んっ、んんっ、ぅ……水月、水月ぃっ、止めっ、てぇ……」

「……あぁ、忘れてた。そろそろ止めないと歩けないな」

袋詰めの最中、リュウが俺の袖を掴んで限界を訴えてきたのでリモコンを操作し、ディルドの動きを止めてやった。もちろん「忘れてた」というのは嘘だ。

「荷物持ち、やってくれるんだよな?」

「んっ……ぅ、ん。持つ……」

《別に面白ぇもんなかったなー、昼間ちょくちょく行ってるとこみたいに試食させてくれたりしねぇし、その場で立ち食い出来ねぇし……退屈だったぜ》

「ごめんアキ、お兄ちゃんロシア語分かんない。そろそろ帰るするぞ?」

よろよろと歩くリュウに合わせて歩くスピードを落とし、店を出る。店の灯りや街灯があるとはいえ夜道は暗く、色の濃いサングラスをかけたままではろくに前が見えない。俺は仕方なくサングラスを外し、人目を気にしつつ帰路に着いた。

「晩飯作るから適当に待っててくれ。リュウかアキ、どっちでもいいけどシュカとセイカ呼んできてくれるか」

休憩はせずキッチンに立ち、調理を開始。フライパンから立ち上る熱気を浴び、額の汗を拭いつつダイニングの様子を眺める。

「水月達が買い物に行っていた数十分で英語への理解が深まった気がします。狭雲さんは教師に向いてますよ」

「そう……? よかった……ぁ、あのさ、俺の親ちょっと前に離婚したから、実は俺の苗字早苗になったんだ」

「……じゃあ早苗さん?」

「あっ、今は鳴雷の家に世話になってる訳だし、全然そんな、気にしなくていい……呼びやすい方でいいからっ、狭雲に慣れてたらそっちのままで」

「文字数も頭文字も同じですし、正直どっちでもいいですね……」

キッチンからダイニングを見られる我が家の構造、かなり好きだ。将来、彼氏達と住む家を建てることになったらこの造りを採用したい。

《しゅーかとよろしくヤってたみたいだなスェカーチカ。嫉妬しちまうぜ》

「秋風……俺、秋風と鳴雷にも勉強教えてるんだけどさ、二人とも微妙で……俺教えるの下手なんだと思ってた。鳥待が褒めてくれてすごく嬉しい」

《何話してんだよスェカーチカぁ、俺にも構え~》

「……やる気がない人に教えるのはそりゃ捗らないと思いますよ?」

「それだ! 鳴雷も秋風もやる気がないんだよ……! 鳥待はちゃんと説明聞いてくれるし、分かんないところ隠さなくてすごく教えやすい……なるほど、そっか、やる気……やる気ってどうやって出させたらいいんだろ。鳴雷はすぐセクハラ質問したり尻触ったりしてくるし、秋風は体動かしたがるし……ぅうぅ……」

「大変ですねぇ」

…………セイカを悩ませてしまっていたみたいだ、今度からお触りは控えよう。

「よし、晩飯出来たぞお前ら~。皿運ぶの手伝え!」

《秋風、飯運ぶの手伝えってさ》

「そろそろ怠けるのはやめますか。天正さん、立ちなさい」

「ちょお待って、はよ動いたらケツが……んぁんっ!? こっ、し……叩くなや、アホぉっ……軽ぅイってもた。あかん、足震えるぅ……」

シュカが多く食べるだろうから生姜焼きは山盛り作ったし、キャベツも一玉丸々千切りにした。彼氏達に手伝ってもらって運び終え、楽しい時間を過ごした。食事を終えて皿をまたキッチンに運び、洗っているとスマホが鳴った。

「……レイ!」

「このめんから電話来たん?」

「早く出てください、お皿は私達が……天正さんが洗っておきますから」

「なんで俺だけに言い直してん!」

「私手怪我しちゃったので」

「あぁ……ほな俺がやっとくわ」

濡れた手を拭いてキッチンから数歩離れ、スマホを耳に当てる。

「もしもし、もしもし、レイ?」

『もしもし……』

「レイ! あぁ……レイ、あのさ……えっと、元気か? ちゃんとご飯食べてるか?」

『食べてるっす、食べてたせいで……何でもないっす。あの……めっちゃ電話かけてきてたっすよね、なんか用っすか?』

何か用か、だって?

「……っ、お前が、別れたいなんてメッセ送ってくるから! アレは、ぁ……そ、送信ミスか? なんか、仕事関係のとか……? そうだよな、レイ……俺と別れたいなんて、そんな」

『…………ごめんなさい。急でホント申し訳ないんすけど……俺と別れて欲しいっす。合鍵は今度ポストに入れておくっす。クマちゃんは適当に捨てて欲しいっす、中身は複雑で……ガワは可燃っすかね』

「は……? えっ、ま、待って……待って、レイ。本気なのか? 本当に、別れるって……言ってるのか? 今日は四月一日じゃないぞ?」

『本気っすよ。別れてくれるっすよね?』

「……理由を聞かせてくれ」

足に力が入らなくなってきた。ソファにでも座ろう。

『理由……理由、なんか……どうでもいいっしょ。理由話しても俺の意見は変わらないっすし、別れたがってる俺と無理に付き合っててもいいことないっすよ』

「納得出来ないんだよ! 俺の納得なんかどうでもいいって言うのか? ついこの間まで俺に好きって言ってくれてたレイが、将来の約束までしてたお前がっ、こんな何の前触れもなくメッセや電話で別れてくれなんて……おかしいよ、何があったんだよレイ! 会って話したい、明日にでも、頼むよ。時間作ってくれ」

『……嫌っす。もうせんぱいとは会わないっす』

「なんでっ……!?」

ぐす、と鼻を鳴らしたような声が聞こえた。スマホを離したようで微かな音だったが確かに聞こえた、レイは泣いている。

「レイ……? 泣いてるのか? どうしたんだ、なぁ……本当に、俺何かしたかな? 俺の何が嫌になったんだ? 話してくれ、悪いとこ直すから考え直してくれ! 頼むよ……別れたくない、好きだよ、大好き……レイ、愛してるんだ。こんな別れ方嫌だよ、もう会わないなんて言わないでくれ、レイ……」

『……っ、しつこい! 別れるったら別れるの! もう二度と電話してこないで!』

涙混じりの絶叫の後、一方的に通話が切られた。その後何度電話をかけても出てくれず、メッセージを送っても反応は返ってこなかった。
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