冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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昔のことは話したくないけど

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涙なき泣き落としに遭い、美味しいたこ焼きを一つ食べさせられてしまったものの、俺の目的は五人でイチャイチャ楽しく過ごすことではなく、シュカと二人きりで濃厚な時間を過ごすことだ。

「チーズもなかなか……でもこれたこ焼きじゃなくてよくないですか」

「よぉさん食うた後の味変っちゅうやっちゃ。どや、せーか、チーズは。どっちのがええ?」

「ん……チーズ、美味しいけど……出汁効いてて美味しい生地には邪魔かな。タコのが好き……ぁ、ごめん、せっかく作ってくれたのに……」

「ええよええよ、なるほどなぁ、色んな具ぅ試すんやったらソースで食べる用のだし粉抜きのがええんかな」

「じゃ、俺とシュカは部屋帰るからな」

「おー、いってらっさい」

名残惜しそうに俺を見つめ続けていたアキの頭を撫で、もぐもぐと口を動かしているシュカを連れてようやく自室へ。

「ふぅ……ほんの挨拶だけのつもりだったのにな。どうだシュカ、久しぶりの俺の部屋は」

「……特に何も変わったようには見えませんね」

ごくりと喉を鳴らして、たこ焼きを食べたばかりのシュカが返事をする。

「最後に来たのは何日前だった? まぁ、変わってないはずだ。どうだよ、変わってないものに逆に安心したりするか?」

「……私は何年も海外に行っていたり、昏睡状態だった訳じゃないんですよ。変わってないと言えばあの人達も、あなたもそうですし」

「そっか」

ベッドに腰を下ろし、ぽんぽんと隣を叩く。ふっと微笑んだシュカは俺の隣に腰を下ろし、太腿をぴったり引っ付けて肩に頭を預けた。

「水月……」

ガバッと行っていいのか? いや、もう少し我慢するべきだろう。腰に腕を回す程度で我慢しよう。

「……水月、本当に……母さんの部屋ちゃんと見てないんですね? 私のこと、何も察せてないんですね?」

「ん? うん……」

「…………そうですか。二度と……二度と、家に来ないでくださいね。忙しくても返信はするよう気を付けますから」

「シュカ……俺はシュカにどんな秘密があろうと変わらずシュカが大好きでい続けるよ。そんな顔するならさ、話しちゃうってのも手じゃないかな?」

頬を撫でながら反対側の頬にちゅっちゅっとキスをして、落ち込んだ表情をほぐそうと試みたが、猫のように突っ張った手に顔を押されてしまった。

「…………適当なこと言わないでください」

「適当なんかじゃないよ、俺は本当に何があっても──」

「うるさいっ! 嫌だって言ってるんですよ、放っておいてください! あなたに嫌われる心配なんかしてない、抱え込んでる訳じゃない、嫌なことは分離して置いておけるんです私は! 今は今として、せっかく家を離れてあなたと楽しもうとしてるのにっ、嫌なことほじくり返さないでくださいよ!」

「…………ごめん。本当に……本当にごめん、泣かないで……」

「泣いてないっ……!」

「……ごめんな」

唇を重ねて涙のしょっぱさを感じながら、ゆっくりと押し倒す。太腿に股間を押し付け、シャツ越しに腹を愛撫する。鍛え抜かれた腹筋の感触はセイカとは違ってどこまで押しても大丈夫そうな安心感を俺に与える。

「ぁ……んっ、そう……です。水月……あなたとは、楽しいことだけ」

「そっか…………都合のいい男だな、俺」

「……? 水月、違う……違います、そんなつもりは」

「シュカ、俺はな、嫌な思い出ほじくり回したり、柔らかいところつついたりがしたい訳じゃないんだ」

恐る恐る右手のひらを合わせて、恋人繋ぎをしてみる。少しずつ手に力を込めて、血が乾いた程度の傷に痛みを与え、シュカの顔を歪ませる。

「……皿割って、片付けようとして、破片握り締めて怪我して……その怪我の対処せず、服着たままお風呂入っちゃうくらい、何も分かんなくなるくらい疲れるような生活、続けさせたくない。帰したら同じ生活続けるなら、帰さない」

「…………気を付けますよ」

「なんでこんなことになっちゃったかちゃんと分かってるのか? 分かってなきゃ気を付けようがないよな」

「節約を……しようとしたんです」

シュカは深いため息をつくと左手を使って右手から俺の手を離し、茶碗の破片で傷付いた手を眺めた。

「……お察しの通り母には介護が必要です。学校に行っている間などはもちろん訪問介護を頼んでいました、水月も今日見たヘルパーさんですね。結構高いんですよ……土日は頼まずに自分でやることもありましたし、夏休みの間ちょっと節約しようと思って……そしたら思ったより忙しくて疲れちゃったんです」

「…………そっか。なんで節約しようとしたんだ?」

「だって……夏休みになったら、水月……色んなところに連れてってくれるかと思って。それで連絡取れなくなって、宿題もろくに進められてないんですから、本末転倒ですね」

「本当だよ。デート代くらいは俺が出すからお金なんて気にしなくていいんだぞ」

「それは……でも…………はい。今後はちゃんとヘルパーさんに頼みます……」

反省してくれたようだ。もう二度と同じ事態は起こさないだろう。安堵した俺はシュカを両腕で抱き締めて再び頬に吸い付いた。

「…………母さんは」

「ん?」

「……私のことが、分かりません」

「…………んっ?」

「私が誰だか分からないんです。だから、ご飯を作って持っていっても、あんまり食べてくれません。投げることもあります」

床に散乱していた食事と、シュカの髪が米まみれになっていたことを思い出す。

「母さんの世話はちゃんとヘルパーさんに頼みます、毎日世話をすれば思い出してもらえるなんて……そんなこと、ある訳がなかったんです」

「シュカ、あの……お母さん、シュカのこと覚えてないって……何、記憶喪失とかなのか? 事故とか……?」

「……認知症です。あの歳にしては珍しいですかね」

「そっか……」

俺にはどうしようもないし、何も言えない。頭を撫でてみるとシュカは俺に抱きついてきて、近過ぎて顔が見えなくなった。

「水月……抱いてください、酷く……」

縋るような声での頼みを断ることなんて、俺には出来なかった。
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