冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
752 / 2,304

許さんぞ鳴雷水月

しおりを挟む
俺には言語など過ぎたるものだと黙って食事を進め、空になった皿を流し台に運んだ。食器を洗うのは全ての皿が出揃ってからだ、今は皿に水を注いで汚れが乾かないようにするのに留める。

(さて、シュカたまに電話をかけてみますかな)

呼び出し音を聞きながらソファに、テディベアの隣に腰を下ろす。何の気なしにふわふわの毛に触れると花が咲くように指先から幸せが広がった、いつもセイカをありがとうと労わるように撫でてみる。

(ふわふわふわふわ……ぁ、切れた)

シュカは電話に出てくれなかった。やはりかと思いつつポケットにスマホを戻し、テディベアの触り心地に癒されているとスマホが震えた。シュカからの折り返しを期待したが、表示された名前はカンナだった。

「もしも──」

『鳴雷水月ィイィイイッ!』

「──しぃっ!? な、何、誰っ? カンナ……カンナはっ?」

聞き覚えのない恐ろしい男性の怒号に萎縮しつつも本来の持ち主のはずのカンナの安否を尋ねる。

『カンナは、だぁ? 貴様……俺の可愛いカンナに変態行為をしておいてっ、よもやカミアにまで手ぇ出してんじゃないだろうな!』

「えっ? えっ、と」

『許さんぞ! 鳴雷水月! 許さんぞ!』

「季語なし俳句……じゃなくて、えっと、お義父さんですか?」

『貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いなどっ、なぁーいっ!』

ビリビリと響く大声に思わずスマホから耳を離した。

『ふぅっ、ふぅ……カンナの、父だ。分かっていると思うが……カミアの生放送の最後に貴様がチラッと映った件について、話したい』

「は、はい」

落ち着いてくれたようでよかった。

『まず、貴様はうちのカンナと交際しているんだよな?』

「はい……お付き合いさせてもらっています」

『何故今日、カミアの元に居た?』

「……動画内で作ったハンバーグ、アレを食べるのはカロリー的にアレとかで……俺が呼ばれました」

『どうして?』

カンナの父には当然ハーレムのことなんて話していない、もし打ち明けられたら別れさせられるのは目に見えている。何とか俺の彼氏はカンナだけなのだと釈明しなければ。

「どうしてと言われましても……呼ばれたから、としか」

『お前がカンナとカミアの架け橋になってくれたのは感謝している。けどな、それとこれとは別だ! もし浮気、二股をしているのだとしたらっ……!』

二股どころじゃないんだよなぁ。

『刺す!』

「刺す!?」

『で、実際どうなんだ? 浮気だったのか?』

刺すと言われてはいそうですと答えられる訳がないじゃないか。

「い、いえ……友達です。その……再会の時に俺カンナに誘われて立ち会いまして、その時話して、恩を感じてくれてたようで好感触で……仲良くなって、ハンバーグは……その、カンナがダイエット中らしくて、代わりに俺が」

話しながら嘘を組み立てていく、これがなかなか難しい。

『ダイエット中? ふーん……おい、カンナ、今ダイエットとかしてるか? そうか……』

カンナもその場に居るのかな? じゃなきゃ俺にカンナのスマホを使って電話をかけてきたりしないか。話を合わせてくれたみたいだ、流石カンナ。

「はい、本当……ただの友達として、ゆくゆくは義理の兄弟的な感じで……カミアさんとは仲良くさせてもらってます。話しておらず、あらぬ心配をかけてしまい……申し訳ありませんでした」

『……いや、俺も盛り上がり過ぎた。悪かったな、鳴雷くん……カンナ、誤解っぽい。お前の言う通りだった……ごめんな?』

『お父さん僕のこと全然信じてくれないよね』

『い、いや……お前が心配で』

『もしみぃくんにフラれちゃうようなことがあったら絶対お父さんが原因、お父さん恨む』

『……鳴雷ぃっ、も、もう干渉しないから、恋愛は当人同士に任せるからっ、親が鬱陶しそうとかでカンナ振るなよ? なっ? そそ、それじゃあ…………拗ねないでくれカンナぁ、何でも好きな物買ってやるから……』

通話を切り、安堵のため息をつく。

「ふぅ……もっかいシュカに電話かけとこうかな……まだ寝てないだろうし」

夕飯中で出られなかっただけかもしれないし、と思いつつもう一度電話をかけたがやはり出ない。風呂中だろうか。

「…………出ないな」

見たら電話をくれとメッセージを送り、みんなが食事を終えたようなので皿洗いを始めた。アキとセイカを追いかけて離れ小屋へ入り、ベッドの傍に腰を下ろす。

「アキはプールかサウナか? 飯食ったばっかなのに元気だなぁ……セイカは今日はどうしたんだ?」

「…………」

ベッドに肘を付き、寝転がっているセイカの頭を撫でる。

「何か嫌なことあったのか?」

「……ない」

「やっと声が聞けた。ふふ……じゃあ疲れたか? 昼間はリュウ居たんだもんな、アキと一緒にいっぱい遊んだりしたのか?」

「違う……」

予想のネタが尽きてきた。

「……リュウ帰っちゃって寂しいか?」

「まぁ……」

落ち込んでいる理由そのものではなさそうだ。

「…………じゃあ率直に聞くけどさ、今日はなんでそんな無口なんだ? 晩飯の時もボーッとしたみたいだったけど」

「ごめんなさい……今日、昼間……その、なんだろ……騒ぎ出しちゃって、秋風に締められて……」

「あー……」

「ちゃんと薬飲んでるのに全然治らない、急にギャーギャー騒ぎ出すのなんか欠損の症状じゃない……なんなんだよアレ、なんで俺あんな……嫌なのに。頭、いっぱいになって、ぐちゃぐちゃって、訳分かんなくなって……事故で頭打っておかしくなったんだ」

髪に隠れて見えにくいが、触れると頭も縫った跡があると分かる。頭を打ってはいるのだ、セイカがそう考えるのも仕方のないことかもしれない。むしろ外傷のせいだと思っていた方がセイカ自身は楽なんじゃないだろうか。

「……ありがとうな、話してくれて。薬まだ結構飲んでるんだろ? 飲まなくていいってなるまではそりゃ色々あるよ。大丈夫、俺かアキがだいたい傍に居るんだし、本当に危ないことにはならないよ。安心してゆっくり治していってくれ」

「………………なんでお前俺なんか後生大事に持ってんだよ」

「好きだからだよ」

「趣味悪い……」

スカウトを受けたことを自慢したかったのだが、今はタイミングが悪い。また明日にしよう、元気になったセイカに翻訳を頼んでアキにも自慢してやるのだ。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

処理中です...