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止まってって言ったけど

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息が整ったら気張り、挿入時の快感に悶えては静止を叫び、また息を整えて気張り──歌見は少しずつだが確実に俺の陰茎を受け入れていった。

「はぁっ……はぁっ、ぁ、はっ……はぁ……」

「頑張りましたな、パイセン」

とうとう結腸口と俺が呼んでいる大きめの弁に亀頭が触れた。ここに先端を押し付けるとキスをされている気分になれてイイ。

「これ、でっ、全部……?」

「もうちょいありまそ」

「長、過ぎる……も、お前の……みぞおちくらいまで、きてるっ……」

「多分臍の下でそ」

胸を大きく上下させている歌見の顔はきっと真っ赤なのだろう、けれど薄暗いオレンジの電灯の下では顔色なんて分からない。

「慣れてないからキツいのでそ。ちょっと落ち着いてきたみたいですので、往復していきますぞ。止めて欲しかったらすぐ言ってくだされ、わたくし射精秒読み時点だろうと止めてみせますので!」

「ん……」

頷いた歌見の頬を撫で、唇に口付け、上体を起こして腰を引く。

「……っ、あ、あぁああっ!? ひっ、めくれるっ! ひっくり返るぅっ! ぅあっあぁあっ!?」

「くっ……」

強く吸い付く穴から陰茎を引き抜く快感に思わず声を漏らす。亀頭だけをしゃぶらせる位置で一瞬腰を止めたが、外気に晒された幹部分がまた歌見に包まれたいと騒ぐので、俺は仕方なく息子のワガママを聞いてやった。

「ひっ、ぃ、ぐっ、んんゔっ、ゔあっ、あぁあああーっ!?」

たった今まで俺の陰茎を咥えていたはずなのにまたきゅっと締まっていた穴を、肉を裂くように進み、陰茎への暴力的な快感に吐息を漏らす。

「ペース上げますぞ」

俺の下で跳ねる身体のシルエットを目で楽しむ。雄々しい嬌声を耳で楽しむ。立ち上る雄の匂いを鼻で楽しむ。汗に濡れた肌が手のひらに吸い付く感触を楽しむ。舌への楽しみも欲しいところだ、後でまたキスをしよう。

「んっ、ひぃいいぃいっ!? ゔっ、あぁああんっ! んぅっ、んっ、めくれるっ、めぐれりゅぅゔっ……ぁゔぅんっ!」

腰を振るペースを少しずつ上げていく。陰嚢が張ってきた、精液が上ってくる感覚がある、射精が近い。出したい、歌見の中でイきたい。

「んっ、ゔぅっ、あぁあっ……ゃ、待って、待っでぇっ! とめてぇえっ!」

「……っ、はい」

本当に射精寸前のところで止められるとは思っていなかった。あと数秒待って欲しかった。

「ふっ、ふぅっ、ぅう、ぅ……」

「大丈夫ですかな? パイセン」

「ちょ、と……休憩」

「分かりました、大丈夫そうになったら言ってくだされ」

熱い頬を撫で、見えないだろうと分かっているのに微笑む。射精寸前で止められた陰茎の苛立ちが歌見の不規則な呼吸に煽られる。

「……っ、ん、んんっ……」

後孔は激しく収縮して俺の陰茎を揉む。歌見自身の意思ではないのだろうその内臓のうねりに快感を与えられた歌見は、そのうち快楽を求めて自ら腰をくねらせ始めた。

「クッ、ソ……入ったまま、止めるとぉっ……こん、な……あぁあっ……息が、整わない……ない、のにっ……欲し……じんじん、する。水月、水月ぃっ……ごめん、やっぱり動いてぇ……」

射精寸前で焦らされた精神的な苛立ちは涙混じりのおねだりで浄化された。

「いっぱい擦って……あっあぁああっ!? ひっ、んんっ! んゔっ! ぐっ、ゔあっあぁああっ、ゔっんんっ! イっ、ぐ……イぐぅっ! イくぅぅゔぅうっ!」

前立腺を狙った訳ではない、穴を慣らすための規則的な腰振りで歌見は泣き喘いで絶頂を迎えた。少量だが射精はしたようだ、ドライオーガズムも今日中にはさせたいなと新たな目標を得た。

「イっ、ひっ!? さっきイったばっか……あぁあんっ! きもちっ、気持ちいぃっ! めちゃくちゃっ、イイっ! もっと、水月もっとぉっ! もっといっぱいこしゅってぇっ!」

「あぁもうっ、可愛いこと言うんですから! そんなこと言われたらもうっ、出ちゃうっ……! はぁっ……はぁ……」

歌見の中で射精に至った。互いの荒い呼吸音だけが薄暗い部屋に数秒間続いた。静寂を破ったのは歌見だった。

「……んっ、ん……!? 水月ぃっ……俺の、ナカでっ、勃たせるなぁっ……!」

「パイセンがイったばっかのてぃんてぃん揉むからでそ!」

「揉んだ、つもりはっ、ぁ、あぁあっ……どんどんデカくっ、ぅゔ……」

「慣れてきたっぽいので弱点集中責めしていきますな」

「……は? ま、待てっ、弱点ってぇっ……」

腰をゆっくりと引き、背骨側の腸のひだをカリに引っ掛け、弾く。

「んっんんぅっ!」

先程何度か往復した際に発見した弱点だ。耳や首や胸は誰しもが性感帯とする部位だが、その敏感度合いや好みには十人十色の順位付けがなされている。そんなふうに、腸壁に存在する粒やひだ、ちょっとした凹凸の中に好みの部分があるのは自然なことだ。俺はそれを察せられる。

「ふっ、ふぅっ……ふぅ、うっ……」

歌見は今多分、俺が弱点と呼んだものが前立腺ではなかったことに安堵している。この少し他より敏感なだけの部位を集中的に責められるのだと勘違いしている。俺の仕掛けたブラフに見事に引っかかっているはずだ。

「んぁっ……ぁゔっ!? ぅ、あっ、ああぁっ!?」

俺は当初の予定通り前立腺を突き、カリを使って微かな膨らみを何度も引っ掻き、亀頭を押し当ててぐりゅぐりゅと揉んでやった。

「ぁひっ! ひ、ぃっ、イっ……ぐぅゔっ!」

ハッキリとは見えないが、歌見は自身の腹を精液で汚したようだ。暗いからこその雰囲気と感覚の鋭敏さは確かに素晴らしいものではあるが、明るい中で歌見の全てを目に焼き付けたかった思いも強い。

「イくっ! 水月っ、水月ぃっ!? そこイぐぅうっ! イぐっ、とこらからぁっ! ゃ、だっ、イくっ、まだイぐゔゔぅぅっ……!」

どんな灯りの下でも声だけは変わらず俺を癒し続けてくれる。
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