冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ハイテンションの理由

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歌見から最寄り駅に着いたとの連絡があった。セイカとアキを置いて自室に戻り、ベッドシーツをピンと張らせた。

「ベッドメイク終わり……次は」

歌見が俺に惚れてくれた理由の一つ、チューベローズ系の香水をふんわりと被る。ベッドにもそれとなくかける。歌見はこの香りを俺の体臭だと勘違いしているから、あまり濃くつけ過ぎると不潔に思われてしまう。悩ましいところだ。部屋の他のところには消臭剤をかけておこう。

「ふんふん……うむ、匂いおかしくなってませんし、ほむほむが掃除機かけてくれてたのでホコリ一つナッシング! ベッドはピンシャキ、わたくしは超絶美形! 完璧ですな!」

おっと、ローションを温めておかねば。

「コンドームたくさん、ローションぽかぽか、玩具消毒済み、抱ける……今日抱けるっ、クゥウ~……! イィヤッハッハッハァアアッ! 最高っ!」

奇声を上げてはしゃいでいるとインターホンが鳴った。俺はスキップ混じりに玄関に向かい、すぐに扉を開けた。

「ようこそパイセン!」

「よぉ水月! 何日ぶりだ? 元気だったか?」

「……?」

俺がハイテンションなのは当然だが、歌見がハイテンションなのはおかしい。彼はこういう時照れて縮こまるタイプだ。

「何ぼーっとしてるんだ? 上がるぞ、お邪魔しまーす!」

今日の予定を決めた時だって小さな声で直接的な表現を避けていた、そんな彼が処女を失う日にこんな大声を出すだろうか? こんなにニコニコ笑うものだろうか?

「わたくしの部屋へどうぞ」

戸惑っていても仕方ない、俺は歌見を部屋に案内した。彼は断りなくベッドにぼすんっと勢いよく腰を下ろした、仕草の全てが彼らしくない。

「んー? ふふふっ、どうしたんだ水月」

スパイ映画だとかでよく見かけるマスクを被る変装を疑って頬をつまんで引っ張ってみるも、むにんと伸びるだけで顔がベリベリ剥がれたりはしない。しかし、顔を近付けたことで俺は彼の様子のおかしさの原因に気付けた。

「……センパイ、なんかお酒臭くないですか?」

「そうか? ほんの一口だけなんだがなぁ」

「飲んできたんですか!?」

「……抱かれると思うと緊張してな、酒を飲めば気が大きくなると聞いたから飲んでみた」

顔を真っ赤にした歌見に今日ようやく歌見らしさを感じた。しかしまさか酒に頼るほど羞恥に弱かったとは想定外だ、記念すべき処女は意識がハッキリした状態で行い、思い出を残したかったのだが……どうしよう。

(抱くべきか中止すべきか、それが問題だ)

と、ハムレットごっこをしたって解決しない。記憶が残るタイプの酔っ払いであることを祈って抱くか? 念のために撮っておこうか?

「どうしたんだ水月、難しい顔して……酔っ払いは嫌いか? ん~?」

レイには俺の素の喋り方を知られたくない、レイのテディベアを持ってくれば撮るのは楽だが口調に気を付けなければいけない。歌見は俺の素の喋り方を気に入っているのだし、ここは俺個人で撮るしかない。

「パイセン、記念すべきパイセンとの初めてを記録しておきたいのですがいかがでしょう」

「ハメ撮りしたいのか? 変態だな! いいぞ!」

酔っ払いの悪ノリかもしれないが、同意は得た。しかしそうなるとスマホを持って撮るか置いて撮るかに悩む。

(定点の良さもありますが、手持ちの方がパイセンの表情や反応はよく撮れますよな。しかし手ブレが……このスマホ手ブレ補正どうでしたっけ?)

陰キャオタクはスマホのカメラなんて使わない、近年のスマホはカメラの性能ばかり良くなったと騒ぐからいつも置いてけぼりを食らっていた。しかし超絶美形となり可愛い彼氏達が居る今は違う、映画も撮れるようなカメラを使いこなせる。

(しかしやっぱりブレが怖いしパイセンを両手で触りたいのでスマホは置きまそ)

ベッドが映る位置にスマホを置きながら、バラエティ番組で芸人などがよく使うカメラ付きのヘルメットを羨ましく思った。

「みーつきぃ、彼氏をほっぽってスマホ弄りかぁ?」

「ぅお、セッティング中ですぞ、お待ちくだされ。しかしパイセン……完全に酔ってますな、本当は一体何杯飲んだんでそ」

「一口ってさっき言っただろ、彼氏の言うこと疑うのか? 悲しい! 俺は悲しいぞ!」

「じゃあ何飲んだんです?」

「誕生日にアキくんから貰った酒だ」

アキが歌見に送ったのは確かコニャックとかいう名前のブランデーだったな、度数は四十程だっただろうか。

「……原液?」

「おぅ」

「初心者が原液で飲んじゃダメでそ! 水とかで割るんでそ度数の高い酒は!」

「知らんわそんなん! 買ったそのまま飲めないようなもん売るな!」

「飲めないって訳じゃないんでしょうけど初っ端からそんな……」

「何ぐちぐち言ってるんだ、言いたいことがあるなら大声で言え大声で」

「もぉ~……なんでお酒飲んじゃうんですかぁ、せっかく初めてなのに……二回目以降なら酔いせっせもいいんですけどぉ、一回目は……はぁ……」

「俺は大声で言えるぞ! 水月! 愛してるぞー!」

本当に一口しか飲んでいないのだろうか、それも怪しい。誕生日に酒をもらった時には「今日のことをちゃんと覚えていたいから」なんて言って飲まなかったくせに、今日飲んだだなんて俺との初セックスを覚えていたくないのかと考えてしまう。歌見は緊張をほぐしたかっただけでそんなつもりはないのだろうが、それでもショックだ。

「…………水月? どうしたため息ばっかり……まさか怒ってるのか?」

「怒ってま……すよ! 俺は今日を楽しみにして、大切な日にしようって思ってたのに……飲んじゃうなんて、今日のこと覚えてなくてもいいみたいじゃないですか」

正直に俺が感じた怒りと失望を話すと歌見はシャツを脱いだ、最近は俺の視線を気にしてあまり着ていなかった胸元がざっくり開いたタンクトップが顕になる。

(このタンクトップ超えっちぃでそ! 谷間も横乳も見放題なんて……ふぉおお!)

って興奮してどうする、俺は今怒ってみたんだ。いや、でも、この豊満な胸を前にして怒り続けられる人間なんて居るのだろうか。

「久々なんだから怒らないでくれ、ほら……好きにしていいから」

歌見の腕が頭に回る。抱き寄せられ、顔に分厚い胸筋が押し付けられ、負の感情は全て消え去った。
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