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兄シャツ萌え?
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色んな具材が入ったおにぎりに、卵焼きとウインナー、そして味噌汁が完成した。配膳をレイに任せて俺は寝室にアキを呼びに向かった。
「アキ、ご飯出来たぞ~……!?」
寝室に佇んでいたアキは制服を着ていた。俺の制服だ、丈が少しだけ余っている。
「オッ……フ」
「……! にーに!」
俺に向かって走ろうとしたアキはスラックスの裾を踏んで転びかける。俺が慌てる必要もないほど自然に体勢を立て直した彼は俺を見つめてにっこりと微笑む。
「にーにぃ、嬉しいです?」
「へっ?」
「にーに、ぼく、にーに、服、着るする嬉しい、せーか言うするしたです」
そういえば俺がハルとリュウと彼シャツについて話していた時、セイカが雑にまとめた説明をアキにしていたな。アキは今彼シャツを実践しているのか。
「ぼく、にーに嬉しいする、欲しいです! にーに嬉しいする、ぼく嬉しいです。にーに、嬉しいです?」
「……お兄ちゃん超嬉しい! 感激! 感涙!」
アキは大抵Lサイズの服を着ていて、俺は服にもよるがXLから3Lを買っている。痩せる前は5~6Lを着ていたっけな。
「ちょっと丈余ってるなぁ……ふふ、アキは俺より一回り小さいもんな。可愛いよ」
冬服を引っ張り出したようで、アキが今着ているのは長袖だ。アキのことだから 故意ではないのだろう萌え袖が可愛らしい。首元が大きく露出しているのもイイ。
「やっぱりリュウの言ってた通り大きめの制服買った成長期前の男子みたいな感じはあるなぁ……でも可愛いよ、すごく可愛い、可愛い」
《お、最後の方は何言ってるか分かったぜ。可愛い、だろ? しかも何回も。へへへー……兄貴喜んでるなー。やったぜ》
「……ロシアの制服ってどんなのなんだろ、制服なんかどこも一緒かなぁ? でも寒いとこだしちょっともこってしてないかなぁ、もこってしてたら可愛いよなぁ」
なんて言いながら、アキは日光とイジメを理由に学校に通えていなかったと彼の母親から聞いたことを思い出し、今呟いてしまったことがアキに聞き取られていないことを慌てて祈った。
《ヤる時ゃ裸なんだから服なんかに兄貴がそんなこだわるとは思わなかったぜ。俺はファッション楽しめる身体じゃねぇしな》
「聞き取れてない……かな。よかった。よしよし、可愛いよアキ、ご飯出来たから行こうか。ご飯の後でたっぷり愛でてやるからな」
《陽の光が届かない場所でしか長袖長ズボン以外の服着れねぇんだ、そんな局所的なオシャレ楽しくねぇよ。でも兄貴が部屋ん中だけのファッションショーでも喜ぶんならいくらでもやるぜ、好きな服着せてくれよな》
「ふふふ……何言ってくれてるのかなぁ」
手を繋いでダイニングに戻り、楽しい夕食の時間を過ごした。リクエストしただけあってアキはおにぎりをとても喜んでくれて、手のひらを痛めた甲斐があったとヒリヒリと痛む手で小さなガッツポーズを作った。
「何回も握ってれば慣れてきて痛くなくなるっすよ」
「やりたくないんだけど、アキが喜ぶからなぁ……アキ、他に好きな料理とかないのか? 痛くないヤツ」
「りょー、り……?」
「あー……好きな、食べる物。お兄ちゃん、作る」
アキは数秒考え込んだ後、満面の笑みを浮かべた。
「…………にーに、作るする、美味しいです。たくさん、食べるする欲しいです」
「たくさん……量じゃなくて種類っすかね? 文脈的に」
「そっか、知らない料理も多いだろうしな。まずは色々食べたいよなぁ、しばらくは和風を心がけるか」
「和食だけじゃなくて日本で魔改造された他国の料理とかもいいと思うっすよ、カレーとか」
「あー……なるほど、色々調べないとな」
「せんぱいの料理レパートリーが増えれば俺も嬉しいっす」
ネットに載っているレシピ通りに作るだけの料理を、母の作るものに比べれば何段階も劣る料理を、楽しみにしてくれる美少年が二人も居る。こうなってくるとスマホの向こう側の人の猿真似ではなく、多少のオリジナリティを含んだ俺の味というものを覚えさせてやりたくなる。
(料理……ママ上に教えてもらいましょうか。しかしそれではママ上の真似……いえ、まずは真似をして、そこからアレンジを……ふぅむ、料理の道は奥深いものですな)
俺の場合、料理教室などに通うより、料理を主題としたBL系の作品にハマった方が上達が早いかもな。
料理の道を見つけてしまったが、まずは目先のテストをやり過ごさなければ。赤点だけは回避するのだ。
「美術ならある程度は教えられるんすけどねぇ……俺。高校は今通信で通い直してるとこっすし、せんぱいの学校頭いいとこなんで俺のアドバイスなんか同級生以下っす」
夕飯の後、アキがさっさと風呂に入ってしまったのでムラムラしたまま机に向かっていると、レイが俺のテスト勉強の様子を見に来てくれた。しかし役に立ってくれそうにない。
「あ、情報はどうなんすか? そっちも強いっすよ俺」
「表計算ソフト使った実技みたいなのがあるらしくて、今回はそれだけで採点するってさ。今のとこ不安はないかな」
「絵とネット以外で得意なもんなんてないっす、お役に立てそうもないっす……申し訳ないっす」
「い、いいよいいよ。気にすんな」
その後、俺は隣で応援してくれるレイに励まされながらテスト勉強を進めた。とりあえずは今日セイカが教えてくれたことの復習だ。
「はぁ……愛でてやるって言ったのに一人でさっさと風呂入っちゃうんだもんなぁ、アキは自由過ぎる……」
「せんぱい、集中するっす集中!」
すぐに意識が勉強から逸れてしまう俺を、レイはパンパンと手を叩いて注意してくれる。その度に俺はレイにときめき、自分の集中力のなさに辟易するのだった。
「アキ、ご飯出来たぞ~……!?」
寝室に佇んでいたアキは制服を着ていた。俺の制服だ、丈が少しだけ余っている。
「オッ……フ」
「……! にーに!」
俺に向かって走ろうとしたアキはスラックスの裾を踏んで転びかける。俺が慌てる必要もないほど自然に体勢を立て直した彼は俺を見つめてにっこりと微笑む。
「にーにぃ、嬉しいです?」
「へっ?」
「にーに、ぼく、にーに、服、着るする嬉しい、せーか言うするしたです」
そういえば俺がハルとリュウと彼シャツについて話していた時、セイカが雑にまとめた説明をアキにしていたな。アキは今彼シャツを実践しているのか。
「ぼく、にーに嬉しいする、欲しいです! にーに嬉しいする、ぼく嬉しいです。にーに、嬉しいです?」
「……お兄ちゃん超嬉しい! 感激! 感涙!」
アキは大抵Lサイズの服を着ていて、俺は服にもよるがXLから3Lを買っている。痩せる前は5~6Lを着ていたっけな。
「ちょっと丈余ってるなぁ……ふふ、アキは俺より一回り小さいもんな。可愛いよ」
冬服を引っ張り出したようで、アキが今着ているのは長袖だ。アキのことだから 故意ではないのだろう萌え袖が可愛らしい。首元が大きく露出しているのもイイ。
「やっぱりリュウの言ってた通り大きめの制服買った成長期前の男子みたいな感じはあるなぁ……でも可愛いよ、すごく可愛い、可愛い」
《お、最後の方は何言ってるか分かったぜ。可愛い、だろ? しかも何回も。へへへー……兄貴喜んでるなー。やったぜ》
「……ロシアの制服ってどんなのなんだろ、制服なんかどこも一緒かなぁ? でも寒いとこだしちょっともこってしてないかなぁ、もこってしてたら可愛いよなぁ」
なんて言いながら、アキは日光とイジメを理由に学校に通えていなかったと彼の母親から聞いたことを思い出し、今呟いてしまったことがアキに聞き取られていないことを慌てて祈った。
《ヤる時ゃ裸なんだから服なんかに兄貴がそんなこだわるとは思わなかったぜ。俺はファッション楽しめる身体じゃねぇしな》
「聞き取れてない……かな。よかった。よしよし、可愛いよアキ、ご飯出来たから行こうか。ご飯の後でたっぷり愛でてやるからな」
《陽の光が届かない場所でしか長袖長ズボン以外の服着れねぇんだ、そんな局所的なオシャレ楽しくねぇよ。でも兄貴が部屋ん中だけのファッションショーでも喜ぶんならいくらでもやるぜ、好きな服着せてくれよな》
「ふふふ……何言ってくれてるのかなぁ」
手を繋いでダイニングに戻り、楽しい夕食の時間を過ごした。リクエストしただけあってアキはおにぎりをとても喜んでくれて、手のひらを痛めた甲斐があったとヒリヒリと痛む手で小さなガッツポーズを作った。
「何回も握ってれば慣れてきて痛くなくなるっすよ」
「やりたくないんだけど、アキが喜ぶからなぁ……アキ、他に好きな料理とかないのか? 痛くないヤツ」
「りょー、り……?」
「あー……好きな、食べる物。お兄ちゃん、作る」
アキは数秒考え込んだ後、満面の笑みを浮かべた。
「…………にーに、作るする、美味しいです。たくさん、食べるする欲しいです」
「たくさん……量じゃなくて種類っすかね? 文脈的に」
「そっか、知らない料理も多いだろうしな。まずは色々食べたいよなぁ、しばらくは和風を心がけるか」
「和食だけじゃなくて日本で魔改造された他国の料理とかもいいと思うっすよ、カレーとか」
「あー……なるほど、色々調べないとな」
「せんぱいの料理レパートリーが増えれば俺も嬉しいっす」
ネットに載っているレシピ通りに作るだけの料理を、母の作るものに比べれば何段階も劣る料理を、楽しみにしてくれる美少年が二人も居る。こうなってくるとスマホの向こう側の人の猿真似ではなく、多少のオリジナリティを含んだ俺の味というものを覚えさせてやりたくなる。
(料理……ママ上に教えてもらいましょうか。しかしそれではママ上の真似……いえ、まずは真似をして、そこからアレンジを……ふぅむ、料理の道は奥深いものですな)
俺の場合、料理教室などに通うより、料理を主題としたBL系の作品にハマった方が上達が早いかもな。
料理の道を見つけてしまったが、まずは目先のテストをやり過ごさなければ。赤点だけは回避するのだ。
「美術ならある程度は教えられるんすけどねぇ……俺。高校は今通信で通い直してるとこっすし、せんぱいの学校頭いいとこなんで俺のアドバイスなんか同級生以下っす」
夕飯の後、アキがさっさと風呂に入ってしまったのでムラムラしたまま机に向かっていると、レイが俺のテスト勉強の様子を見に来てくれた。しかし役に立ってくれそうにない。
「あ、情報はどうなんすか? そっちも強いっすよ俺」
「表計算ソフト使った実技みたいなのがあるらしくて、今回はそれだけで採点するってさ。今のとこ不安はないかな」
「絵とネット以外で得意なもんなんてないっす、お役に立てそうもないっす……申し訳ないっす」
「い、いいよいいよ。気にすんな」
その後、俺は隣で応援してくれるレイに励まされながらテスト勉強を進めた。とりあえずは今日セイカが教えてくれたことの復習だ。
「はぁ……愛でてやるって言ったのに一人でさっさと風呂入っちゃうんだもんなぁ、アキは自由過ぎる……」
「せんぱい、集中するっす集中!」
すぐに意識が勉強から逸れてしまう俺を、レイはパンパンと手を叩いて注意してくれる。その度に俺はレイにときめき、自分の集中力のなさに辟易するのだった。
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