冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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日曜日のお見舞い

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日曜日、朝食の後、リビングにて。

「んっ、ぁあんっ! ひっ、あっぁ、あっあぁあっ! せんぱいっ、せんぱいすきっ、ぁ、きもちっ、きもちぃっ! んひぃんっ!」

ソファに座った俺はレイとの対面座位に耽っていた。レイは昨日風呂場で抱いたアキよりも軽く、持ち上げやすい。

「……っ、ふ……出すぞっ……!」

「んぁああっ……! はっ、は、ぁ…………はぁーっ……スッキリしたっす。仕事に戻るっす」

「え、ちょっ……まだ一回しかしてないだろ?」

「最初に言ったじゃないっすか」

今回のセックスはレイから誘われて行った。イラストの仕事が煮詰まってしまったらしく、気分転換にセックスがしたいとねだってきたのだ。

「一回だけなんて聞いてないぞ」

「二回も三回もやったら描く体力なくなるっす! 俺せんぱいみたいに絶倫じゃないんすよ! 次は夜中にお願いするっす、セックスした後って快眠なんすよね」

「俺とのセックスをリフレッシュ扱いしてないか? 俺はもっと愛と欲に溢れたセックスがしたいんだけど。玩具とかももっと使わせて欲しいし」

「お仕事落ち着いたらっすね、クリエイトには性欲と鬱憤がある程度必要なんすよ。せんぱいとのセックスでリア充してると描けなくなるっす。玩具とベッド好きに使っていいんで、ヤりたかったら彼氏呼ぶといいっすよ」

「俺はレイとした……ぁー」

レイは俺の返事を聞かずに浴室に向かった。勃起が治まらない。食後の筋トレに励んでいるアキを誘ってもいいのだが、レイに誘われレイに勃った陰茎をアキで抜くのはちょっとな……

「寿司二皿食った後にパンケーキ出されるような感じなんだよな……いやまだ寿司食いたいんで、って感じ。パンケーキはもうちょい後がいいって言うか」

つまり後二回くらいレイを抱きたかったという話だ。ハメ撮りで抜いて気分が変わるのを待つか……とスマホを探すと、ちょうど電話がかかってきていた。

「はい鳴雷……あ、歌見先輩。どうされました? え、バイト? あぁ……はい、肋骨は、まぁ、そんなに痛くは…………はい、はい……分かりました、月曜からは出てみます。いえ、大丈夫です」

歌見からの電話は何の色気もない業務連絡だった。店長に与えられた一週間の休みが終わったが、明日からはまた来るのかと……店長は傷が痛むようならまだ休んでいいと言ってくれているらしいが、そこまでの重症じゃない。

『分かった、月曜は来るんだな。店長に言っておく』

「ええ、ところで先輩、俺が今何してるか分かります?」

『いや……家がリフォーム中だから木芽の家に泊まってるとは聞いてるが』

「勃起してます。レイは部屋でパソコン弄ってるし、アキは筋トレ中で……一人寂しくひとりえっちに励もうってとこですよ。ねぇ先輩、ちょっと可愛い声聞かせてくれませんか? テレフォンセックスってやつしません?」

『……っ、ふ、ふざけるな!』

電話が切られてしまった。だが、大して嫌がっていなかったのは声色で分かる──ん? メッセージの通知?

「これはこれは……」

歌見から自撮りが送られてきた。目元は見えない角度で、シャツを開いてタンクトップをめくってエプロンを引っ張って右胸を無理矢理露出させた写真だ。これで我慢しろ、という照れながら打ったであろう文も添えられていて高得点だ。

「二発目はこれにしまっそ~」

一発目はレイとのハメ撮り、二発目は歌見の自撮りで抜いた。レイとのセックスも合わせて三度も射精すれば流石に萎える。まぁ何か刺激があれば即勃起なんだろうけど。

「明日からバイト復帰か……そういや月曜って選挙だったな。ネザメさんと進展するかも……シュカも選挙活動なくなったら昼休みにまた、んふふ」

選挙活動で忙しくなったシュカとは一週間ほどご無沙汰だった。溜まってイライラしている様子もあったし、明日は抱かせてくれるだろう。楽しみだ。
選挙管理委員としての仕事は面倒臭そうだけれど、火曜日からはまたいつもの日常が──って、ん? お見舞い……いつ行けばいいんだ?

「やば……」

病院の面会時間はバイトが終わる頃には過ぎている。バイトは放課後すぐからで、病院に顔を出す時間はない。学校が始まる前は面会時間外だ。

(やっべぇですな、どうしましょ。つーか昨日お見舞い行ってませんよな)

先週の火曜から新しく日課になったお見舞いは俺の中で「学校帰り」という条件付けがなされてしまっていて、学校が休みの土曜日……つまり昨日はお見舞いに行くという選択肢が俺の中になかった。
セイカのことを思い出さなかった訳でも、お見舞いに行く時間がなかった訳でもない。だからこそ最低最悪の失態だ。

「…………ごめんレイ! 今日の昼飯は出前で頼む、俺ちょっと出かけてくるから!」

「あっ、は、はい! 行ってらっしゃいっす!」

外出の準備を素早く整え、レイに声をかけてからマンションを出た。駅まで走り、病院最寄り駅に着いてからもまた走った。病院内では走る訳にいかなかったので呼吸を整え、額の汗を拭ってから病室に入った。

「セ、セイカ……? 来たぞ~……」

土曜日に来なかったことで怒っているのではないだろうか。セイカの罵声と共に枕でも飛んでくるんじゃないかと怯えながら、虐められた日々を思い出しながら、カーテンを開けてベッドに近付いた。

「……っ、う……ぅ……ふっ……ひっく…………ぅう……」

セイカはテディベアを強く抱き締めて泣いていた。子供のような仕草にときめくと同時に、泣いている理由を聞く前から自体そのものに胸を痛めた。

「セイカ、セイカ……来たよ、俺だ」

テディベアの頭を押さえて顔を見せると、セイカは勢いよく起き上がった。俺を見て目を見開き、大粒の涙を零した。

「セ、セイカっ? どうした? セイカ…………ごめんな、昨日来れなくて」

泣きながら何も言わずに首を横に振り、左手を強く握っている。靴を脱いでベッドに上がり、セイカを抱き締める。すると彼は声を殺すのをやめて俺の腕の中で泣いた。

「なるかみっ、なるかみぃ……い、生きてっ、生きてるっ? 生きてるよな? ぁ、あぁ……よか、よかった、おれ、おれ、鳴雷が死んだんじゃないかって」

「……うん」

「こ、こわ、こわかっ……くま、クマありがとう、クマなかったら俺、おれ」

嗚咽と共に漏らした言葉は本音だろう。聞き取りづらいその無数の言葉の中に、俺を責める言葉は一つもなかった。
理由すらなく昨日のお見舞いをすっぽかした自分を、罵倒されるんじゃないかと怯えていた自分を、酷く恥じた。
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